これからも応援したい北海道ナチュラルチーズ・コンシェルジェ : チーズのこえ

当店は、北海道のナチュラルチーズ工房が共同出資して開業したお店。
本来ならもっと早く伺っていなければならなかったお店です。
しかし、何せ帯広を離れてから間も無く丸8年。
ほぼ私の食べログキャリアと同じだけの年数が経過していますので、帯広・十勝における私の情報網も大分劣化してきました。
つい先日、ひょんなことから当店のことを知るところとなりました。
平成27年11月にオープンしたお店と聞きますので、オープン後2年3か月後の初訪店。
情報網劣化はかなり酷いもんですね（笑）

共同出資と書きましたが、この共同出資の仕組みをアレンジしたのが株式会社FOOD VOICEの代表を務める今野徹さん。
帯広畜産大学を卒業後北海道庁へ就職し、農林水産省への出向も経験。
平成27年5月の農林水産省出向中に役所を退職し同年8月に同社を設立、そして11月の当店オープンですから実に段取りがいいですね。
恐らく在職中から当店のプランは練り上げていたのではないかと思われます。
共同出資している工房は、今野氏が道内100を超えるチーズ工房の中から30以上の工房を選定したもので、それらの工房から200種類以上のチーズを取り揃えています。
チーズの品ぞろえは、季節によって変化させているのも大きな特徴。
例えば、放牧時期には草のβカロテンの黄色味が色濃く出るチーズを取り揃えたりといったきめ細かい対応もされているようです。
まさに「北海道ナチュラルチーズ・コンシェルジェ」ですね。

この日は、深川めしを食べるミッションを持って清澄白河を訪れましたので、丁度良い機会と捉え、当店を覗いてみることにしました。
場所は、清澄通りから一本入った裏道沿いです。
一本入っただけで静かな住宅街といった趣を感じますね。
ちょっと目立ちづらい立地ではあります。

12時半くらいの入店でしたが、先客はいませんでした。
店頭には、冷蔵ショーケースが２か所あって、主にハード系を中心としたディスプレイ型ケースとフレッシュ系を中心にした平置き型ケースがあります。
ざっと商品を眺めますが、やはり帯広畜産大学ご出身ということもあってか十勝の工房が目立ちます。
「共働学舎新得農場」、「十勝野フロマージュ」、「半田ファーム」といった有名どころの他、私が大ファンの「酪佳」を生産している「さらべつチーズ工房」や足寄の新興勢力「ありがとう牧場（しあわせチーズ工房）」なども入っています。例の○畑牧場は入っていません。
個人的な意見ですが、今や都内の街中の普通の食品スーパーや下手をするとコンビニあたりでも手に入ってしまう○畑牧場が入っているか否かで当店の希少価値のレベルが判るだろうと試す気持ちもあったのですが、十分合格です！（笑）

私と女性の店員さんとの商品に関するやりとりを聞いていたのか、奥から今野さんらしき方が出て来られました。
ひとしきりチーズ談義に花が咲きます。
例えば、
私：足寄のありがとう牧場しあわせチーズ工房って公社ですか？
今野氏：違います。公社は一度駄目になってその後農協が引き受けています。
私：じゃあ、この工房は新しい工房ですか？
今野氏：はい。まだ２年くらいですかね。Ｙさんという生産者の生乳を使用しています。
なんていうとてもローカルな話題で盛り上がります。

折角なので、十勝の工房の商品を購入しようかとも思ったのですが、実は数か月後に帯広に行く用事が出来たので、十勝のチーズはその時に手に入るだろうと考え、この日は、十勝以外の商品から選ぶことにしました。

で、購入したのは、江別市の「米村牧場チーズ工房プラッツ」のプラッツ12か月熟成（1,280円/100g：税別）です。
プラッツは、こちらの工房の主力商品。
ゴーダタイプのセミハードチーズで、熟成期間を記載して販売しています。
12か月熟成は、乳酸と酵母が交わる頃で、一般にチーズ特有の甘みとコクが感じらます。
上記「酪佳」も基本12か月熟成です。

持ち帰って、晩酌タイムにおつまみとしていただきました。
これは抜群に美味しいチーズです。
ＨＰで製法を確認したら「その日の朝搾った質のよい牛乳を、時間を空けずにすぐ工房のチーズバットへ自然落下方式で流し込み、６３℃で３０分の低温殺菌・・・」なんて書かれています。
自然落下方式は共働学舎などでも採用されているこだわり工程の一つ。
それだからか生乳の風味がとても良く生きています。
まろやかで絶妙のコクがあって旨みがじわっと広がってくる素晴らしい美味しさ。
一応、Japan Cheese Award 2016の「非加熱圧搾４カ月以上」部門で銀賞受賞の実績はあるようですが、もっと上位の受賞をしてもいいのでは？と思わせる美味しさでした。

今回、プラッツをいただき、北海道産ナチュラルチーズのレベルの高さを改めて感じました。
ただ、ネックとなるのは、やはり価格の高さでしょうね。
今回のプラッツの100ｇ1,280円（＋税）も決して安くないのは明白です。
日欧EPAの発効を控え、近い将来欧州産の著名なチーズが安価で輸入されるのは確実な情勢。
政策的な支援も打ち出されてはいますが、北海道産チーズがどのようにして生き残っていくのか、大きな試練の時を迎えているのは間違い無いでしょう。
当店がそんな状況に真正面から対峙していこうとしているのは立派だと思いますし、北海道産チーズが生き残るためのビジネスモデルを考えていく場合に当店の存在価値もより大きくなることでしょう。

これからは差別化政策だけでなく価格政策を同時並行して追求していかなければならないと思われます。
私も側面的に支援させていただければと思いました。
リピーターになります！