あたたかくてつめたくてそしてやさしくて : il tram

2016/5

あなたが帰ってくるならば、一番一緒に行きたいお店はやはりこちら。
木場で降りて、お店までの道のりはふたりだけの小さな時間。
五月晴れの休日、公園のもえる緑を抜けて。

少し間が空いてしまったのでとても楽しみだった。

タケダワイナリーの泡とオレンジジュースで乾杯。

・バターナッツとかぼちゃのズッパ
パルミジャーノの泡にほんの少し香るクミン。
あたたかいものからはじまるのはいつも嬉しい。

・ブッラータ　フルーツトマト　バジル　レモン
こちらは黒いグラス状の器のなかで新鮮な色合いをはなつ一品。
濃厚なチーズにトマトのあまい冷たさ。
また店主が器をさげるときに、不安定そうな形ですが、ほら、と言って転がすパフォーマンスにびっくり。
そう、おきあがりこぼしのようにコロンとなるが倒れない器なのだ。

・栃木産のアスパラに半熟たまごと羊のチーズ、からすみをからめて
これは何度かいただいたが、アスパラの香りと玉子がからみ実にほっこりするお料理。

果皮ごと作られている少し色づいた白ワインを。
美しいさわやかな白とは違い、味の奥行きを感じる不思議なワイン。
好み。

・ひよこまめのソースのサルシッチャ　ニョッキ　菊菜　フェンネル
包みを開ける前のワクワク感。
ころころのニョッキとサルシッチャの食感も味わいも、フェンネルの香りとともに楽しめる。

・雪下人参とリコッタチーズのカパレッティ　桜海老　キャベツ
桜海老のうま味と人参の甘さの意外な相性。

さっぱりとしたジェラートでこの日も満足なランチ。

この日のお客様には、同じ月数くらいの赤ちゃん連れさんが二組あって、まるい笑顔がかわいらしくてそれも嬉しかった。
ふたりとも男の子で、私は遠い日をあなたの上に重ねてみる。

なごやかな時間、たまにしか伺えないけれど通うほどに温かみとやさしさを感じる素敵なお店。

今度は夜にも伺ってみたい…


2015/11

＜ゴッホの絵のような一皿＞

5か月ぶりのイルトラム。
少し前もって予約を入れた。
最近、このあたりでの注目度No.1のお店と言っていいのではないだろうか。

タケダワイナリーの泡と、オレンジジュースで乾杯。

・ズッパはたくさんのきのこ
途中ですだちをしぼり、さわやかな味の変化を楽しむ。

・たまねぎのパンナコッタ　14年熟成バルサミコ
バルサミコがとてもよい味でパンナコッタのたまねぎの風味をひきたてる。

次のワインはテロワール・ボーギュス 　ピストレロ 。
軽い赤だ。

・きのこのソテー温玉子とともに
たまごがからんでとろーり美味。

・新さんまのインボルティーニ　　パプリカのピュレ　オレガノ
華やかで目がまず喜ぶお皿。
くるくる巻いたサンマとオレンジ色のソースは、なぜだかゴッホの数枚の絵を思いださせる。
ひまわり、収穫、星月夜…
よく脂ののった秋刀魚は丁寧に下処理がなされ、パプリカの甘みと不思議にあう。

・パスタはポモドーロ　バジルとリコッタのムースブカティーニ
ポモドーロは想像より軽やかに仕上がっていて、
バジルのムースを途中で入れるとまた違う深みのある味に変化した…

ドルチェはシェフゆかりの小田原の青レモンのソルベ。
甘酸っぱいソルベは一瞬にして口の中に風を運んでくれる。
もう少しいただきたいと思うほど美味。


来るたびに、着実に以前よりも美味しくなっていて、
うまく表現できないけれど、どんどん進化していっているのが感じられる。

お値段をおさえてここまでできるのは、おひとりでされていることもあると思う。
店主のこれからにますます期待だ。


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2015/05
＜名残惜しいほど＞

ひらり帰ってきたあなたとまた一緒に

駅からのみちのり
公園のなか
ライブ会場をひやかして
ふらふら歩いた

こんがりトーストになりそうなくらい暑いお昼


あなたはカルバドス
私は泡で乾杯

・しんたまねぎのスープ
・黒毛和牛のリエット　カリフラワーとバルサミコ蜂蜜のソース
・初ガツオ　新人参　クミン風味
・アスパラソテー　パルミジャーノ唐墨温玉子添え
・パッケリマッシュルームソース

しんたまねぎはフレッシュでゆらゆらお皿から漂いだす香り

アスパラのソテーは唐墨の塩気と風味で前回いただいたものより30倍くらい美味
もう一皿ほしいくらい

途中お隣のお客さんの真似をして
おすすめの白ワインと
赤をいただいた

最後の
レモンジェラートの爽やかさが名残惜しいほど

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2015/03

年月が風のように過ぎた。
今日みたいにしのつく雨が降る日も、地が激しく揺れた日も、青く晴れ渡る空を見上げる日も。
いつか離れることを心の片隅で知りつつも、
あなたがそばにいてくれると当たり前に思っていた日々。

土曜のお昼、木場から公園の横をお店まで歩く。
土日祝のみランチタイムもやっているという　il tram。


スパークリングで乾杯。

・最初の一皿はきのこのズッパ。
ポルチーニ、大黒しめじ、背脂と生ハム。
セロハンにくるまれたまま深皿にのって登場。
包みを解くときのこの香りと温かさが鼻孔をくすぐる。
様々なきのこやハムの香りと脂のあまみが美味。
心まで温まって、これからのお皿に期待を感じさせられる。

・冷たい前菜は、自家製レモン風味のモッツアレラ、バジルとトマトのソース。
かわいらしい蓋つきのガラス瓶に入ってやってきた。
それぞれの微妙な酸味の違いを楽しめる一品。

・新たまねぎのパンナコッタ、セミドライトマト、アーモンド添えバルサミコソース。
これはかなり優しい味わいだ。
舌の先でパンナコッタのふるふるした食感を楽しむ。


ここでお料理にあわせてもらって、白ワインをいただく。

・温かい前菜は、アスパラのソテーにパルミジャーノと半熟玉子添え。
パルミジャーノと玉子をアスパラにからめながら。
少し淡い味わいで、何かもう少し塩気があったほうが良さそうだった。

・パスタはグリーンピースソースのパッパルデッレ。
優しい緑色と波打つパスタが、春のスカーフのよう。


・ドルチェはしょうがのソルベとマカロン。
そしてコーヒーを。


なぜだろう、終わらない食事は、
この世のどこにもないのだった。

空になったコーヒカップ。

交わした言葉だけでは言い尽くせない思いは、やがてくる桜のころ、
ひらひら、ひらひら、あなたの行く街まで届くだろうか。