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谷記/錦糸町super charger
雨は落ちてきていたが、ほんの出掛け以外は傘を開かずに通している。
今日は最初大森の西友の5階で、松坂桃李さん主演のR18を目指して行ったんだけど、最初の上映がまだ始まったばかりで、整理番号制自由席である切符の販売開始があと10分後、とのことで、大人しくロビーで待っていたら、別のお客さんには席数の少ないスクリーンのこと、初回に入ったお客さんがすべて続けて二本目を見ると仮定すると、あと残り二席しかないのですが、現在お待ちのお客様もいらっしゃいますので ! とかなっているではないか !
―― なんで俺にはなんにも言ってくれなかったんだろう ……
となると、何も言わずにロビーの椅子に着いただけなので、こんなとき、常に影薄い私の存在感が災いして、おそらく劇場の人は私を計算に入れていないだろうなとも思い、且つ残り二つの席など、どうせ入れたとしても一番前の一番端だろうと先回りし、気持ちを切り替えて別の劇場への移動の為に、その場を借りて次の映画の選定に入っていたら ……
「どうぞ ! チケット販売できますので !」
と、劇場の係の人が真っ先に、ちゃんと私をその残数2枚のうちの一人と認識して下さっていて声掛けしてくれるのだが、それは有り難かったけど、でも私の中ではもう気持ちが切り替わっていたのでそれは丁重に辞退させていただきつつ、でもこの劇場のスタッフさんたちも、案外しっかりしてたんだなと感心させていただいた次第
(その私の分は、即座に、窓口で途方に暮れていたさっきのおじさんに上手く回ったようで、こっちも後ろめたさを引き摺ることなく、良かったなと ……)
<R1.12.30>
「谷記」
で、別の映画の切符は、無事錦糸町に移動してオリナスの集合映画館で確保。で、暮れも暮れ。年末年始モードに入った町並みに、絶対ふつうに営っている店、即ち“中国人のとり仕切る系いつものお店”に今日も突っ込んでみたのは、決して消極的判断ではなく、あくまでも能動的行動である
“マーボ豆腐面と半チャーハン” @715也。
この店で麻婆豆腐を注文すると概ねヌルいものが出てくるので(それでも美味いけど)、麻婆麺にしたらそのネガがキャンセルされるのではないかと思っていたんだけど、それを実行したのは、もしかして今日が初めてか。
今日も何らかが“チン !”されて(それが何かはあくまでも分からない)、そのチャイムに合わせて調理が出てくる(笑)。
しかしその表情は、これは悪くないと思った。
まずはその“ふつう”の麺から。
箸がちゃんとチープな割り箸であることが有り難い(このチープであるということがミソとなる。解説は省くが、結論的に“高級な割り箸”などその言葉そのものが矛盾である)。
そして敢えてラーメンの麺だけ啜りながら、まだラーメンの上で原形を留める麻婆豆腐を蓮華で炒飯に与えてやり、麻婆炒飯にした上で、さらなる炭水化物を体内に加速度的にスーパーチャージしてやる ……
ホールの中国の女性たちは、凶暴性を内に秘めているように見えるが、実際にはただ少々無愛想なだけだろう(お~い !)。
(無愛想に見えて、実は奥底には慈愛が隠されている。と、信じたい)
小銭入れの中を確認したら、ちょうどぴったり小銭で715円みつかったので、ほんとうに救われたと思う。質の悪いタクシー運転手に出くわしたみたく、間違って万札とか出したら殴られるんじゃないかと思って、びくびくしながら食べてたので。
だからちょっと味とか、ぜんぜん覚えてない。恐怖しかなかったので。
―― 支配と服従しかないこの店には ……
(嘘ですごめんなさい !!)
谷記/錦糸町MACH
今日も良い天気だった。
錦糸町駅北口を出て最終目標はオリナスなんだけど、その前にお昼ご飯を食べなければならない。いつもの洋食屋さんは、お店屋さん巡りの視野を広げるという観点から考えて些か高頻度に過ぎると思うし、途中のおそば屋の、おそばの印象が残っていない(笑)。
そんなこんな蔵前橋通りが迫りつつあると、もう観念してやはり何度か訪問している、がしかし、まだ開発の余地を残していると思われる中華屋へと引き寄せられて、まずは蔵前橋通りへと出てしまおう
<R1.12月某日 錦糸町>
「谷記 1号店」
引き戸を引いて身体を店内に入れこみ、加減しながら、となるとそれは緩慢な動作となりつつドアを戻していると、小姐が気持ちいらいらした様子で(笑)手動とか自動とか、ドアのことに関する何かを、私ではなくバックヤードに向かって中国語で言い放ったような気がするんだけど、よく理解出来ず。
これ以上もたもたしているとほんとに怒られそうなので、小姐が伸ばした腕の方向のテーブルに全盛期のジャイアント馬場さんのようなマッハの動きで着いて、品書きに目を通しはじめる。
今日狙っていこうとしているのは、最近嵌まっている餃子と白いご飯。しかしぱっと見、みあたらない。グランドメニュウから餃子を単品注文していく手も考えたが、面倒なので、純白のご飯との相乗は、後ろ髪引かれる思いで泣く泣くあきらめることにする ……
“谷記特製炒飯と焼き餃子” @750也。
(お会計時、ミステリアスな計算で何故か769円となる。消費税8%から10%への引き上げ分を律儀に加算したのであろうか)
まずスープと炒飯がやってきた。
その提供時間の早さから、あらかじめ大量生産されてジャーの中で保温されていたものではと疑ってしまうが、それは合ってるのかもしれないけど(おいおいおい !)卵の良い香りは漂ってくる。
スープには瀬戸物の蓮華、炒飯にはSUSのスプウンが突っ込まれていたので、深く考えずにそれを守ることにした。
それはぱらぱら、ということに固執していない私にとっては食感的にはそれほど嬉しいものではなかったが、味わいとしてはちゃんとしており、何より大陸支配系のお店としては雑味、嫌味のようなものを微塵も感じない。ということが、これは全般的な話として、こちらの最も評価できるポイントだと思う。
気付けば良い調子で食べ進んでるんだけど、途中で空恐ろしい事実に気付いてしまった !!
というのは、炒飯を完全に食べ終わったあとにまるまる餃子一皿出てきたら嫌だなぁ、という恐怖である
そろそろ、もしかしたら焼き餃子のセットということが通っていなく炒飯単品ととらまえられてはいないだろうか、との不安が極限に達してきたくらいで、ようやく餃子が舞い下りた。
いや、ふつうであればこのくらいのリードタイムはとりわけ問題を感ずるものではないのだろうが、何もかもマッハの速度でやってくるこちらにしては、ということで(笑)。
その餃子はウィング付き。
やはり嫌味のない、ふつうに美味しい餃子であった ♪
谷記/ファストフードを越えて、もはやファステストフードへ
引き続き快晴の東京。
ノオミ・ラパス ⇒ ルーニー・マーラから、私はそれに賛成する立場をとっていないが更に変遷を遂げたリスベットを、それでも観たいという気持ちはあるんだけど、どの劇場も未だ混雑模様。
依ってそれは諦め、マット・ディモンに似た類人猿的骨格を持つ役者主演のアクション映画を観る為に、錦糸町くんだりまでやってきた。
この日、錦糸町の町はにわかにゾンビで溢れていた。
彼らは日常の習慣を部分的にその行動に残してはいるが、論理的思考はなく、生者にすべからく備わっているべき筈である覇気、ヴァイタルというものの一切を、明らかに喪失していた。
彼らは皆一様に、生きていた頃に身に付いた習慣である“ポケモンGO”というやつをやっているのだろう。
ほんとうに空恐ろしい光景だった ……
<H31.1.20>
「谷記」
二度目の訪問。どんなだったか確認する為に。確か麻婆豆腐の提供時間が半端なく早かったことを、朧気に記憶しているのだが ……。
入店して、慌ただしく動いているお姉さんの意識に自身の意識をシンクロさせてゆけば、どちらでもと言ってくれているような気がして、もう一歩奥へと踏み出した。卓と卓とのクリアランスは狭く、他のお客さんのどんぶりを引っ掛けてしまわないように注意を払いつつの前進。柱の角に四人掛けの席があったので、そこに腰を据えた。
すると図らずもちょうどテレビの真ん前の席となってLucky !!
と思いきや、番組がなんだかつまんない。川口探検隊かワニvsサメが見たかったが、我が儘言える状況ではないので、諦めることにした
“炒飯とミニ麻婆豆腐” @650也。
やはりそれは神速で舞い降りた。
“ミニ”と謳われていたそれは、しかしふつうにフルサイズに近い。早く提供することを最優先している為か、けっこうにヌルいけど(笑)、でも美味しい。でもこのことは、料理にとってけっこう重要な問題だという気がする。即ち、美味しいけどヌルい料理は、しかし、熱々だけど不味い料理よりはまだマシなんじゃないかという(どっちも問題あるけどね/笑)。
実はカミングアウトしてしまえば、私はこのセットを炒飯とミニ麻婆丼のセットだと思って、同額の麻婆麺とミニ炒飯のセットとひどく迷いつつ注文したのだが、料理を待つ間に炒飯に麻婆豆腐が付くだけだったのだと悟り、でも今更変更というのもやらしいので黙っていたんだけど、よく考えたらご飯ものの炒飯に同じくご飯ものの麻婆丼を、ふつうに考えたら合わせるわけがないじゃん !(笑)
こちらのチャーハンは、これはそれらの店が計算づくのこととは考えにくいんだけど、麻婆豆腐 + 炒飯の揃いものをラインナップする店においてその炒飯が軒並み味気ない[注]という法則を打ち破り、炒飯として完成された味付けを持っているものであった。
そしてだからこそ、それと麻婆豆腐を口中調味してみてもとりわけ相乗効果というものを期待できるものではなく、というよりもやはりこの炒飯は炒飯として独立させてやったほうがその持ち味が活かせるだろうと思うし、そしてやはり麻婆豆腐にはふつうの白いご飯がよく似合う、という結論に達してしまうと思うのだが。
しかしながらふつうに考えて、650円で美味しい料理がお腹いっぱい食べられるって心底凄いと思う。
小諸そばの天丼とおそばのセットも 600円(650円でしたっけ?)でお腹いっぱいになり、そしてまた美味しいけど、それはやはり立ち食いとしての延長を、現時点では未だ、覆すまでには至っていないと思うし ……
―― けっこう期待してるんですけどね、その“覆し”というやつを私は ……
注) 麻婆炒飯という料理は、炒飯をあまりくどくしてしまうと麻婆豆腐との相乗効果が得にくいので、敢えてあっさりと、悪く言えば淡泊に作っているのだ。というお店があったとして、且つそれが本当に合点がいくものであればそれはそれは立派なことだと思うが、現実には、各々その店でのふつうの麻婆豆腐とふつうの炒飯を単純に合わせてるお店ばかりではないか、その上で炒飯が味気ないと思わせるということは、単純にそこの炒飯が不味いというだけのことではないか(あちゃ~ !)、という真実にたどり着き始めている、これは私としては全く以て本意じゃないんだけど、そんな今日この頃ではある。
十分に満たされて店をあとにし、愛機のFUJIFILMのストラップを手首に装着しつつ、今度来たら麻婆麺とミニ炒飯のセットを絶対に注文しようと心に誓った。
ラーメンにマウントされれば、ヌルい麻婆豆腐が熱さを帯てみるみると復活し、且つ同時にラーメンが冷めて食べ易くなるという相乗効果が得られるし、そしてそのスープで炒飯をねこまんまに出来るという、無限の可能性を期待できるものではなかろうか。
たった一つの問題は、もしもラーメンまでもがヌルかったらどうするか ? ということだが、そのときはもうしょうがない。
―― だってしょうがないじゃんそんなの ! (笑)
谷記/本格とも、懐かしの町場のとも ……
蔵前橋通り沿い。
快晴。こういうのを秋晴れというのであろうか、頬を軽やかに舐める空気は非常に爽やかながら、何かセンチメンタルな気持ちにこの永遠のチョンガーを誘う。
オリナスには、今日のところは用事はない。食べグロで評判の中華屋を目指し、最高巡航速度をキープしつつポーカーフェイスで歩いていた。
蔵前橋通り沿い。角にYAMAHAのディーラーを見つけた。
ここ二十年で二輪車の新車登録台数はいったいどれだけ減ったのだろうか。想像したくも痒くもないことだと思う一方、未だにバイク屋の多くが成り立っている(かは知らないけど、とりあえず営業を続けている)ことそのものが、私にとってはもはやミステリーの領域に突入している。
それにしても、元々ヤマハのバイクは恰好が良かったが、ウィンドウの中のそれらを見るとディザインが更に洗練され、質感も非常に高く感じられる。しかし私には現実、そこに並んでいるクルマがなんていうのか名前もさえ分からないというまさにそこのところが、二輪業界の低迷を如実に顕していることなのだと心底憂う
<H30.10.22 錦糸町>
「谷記 1号店」
1/3ほど開いていた硝子の引き戸に躯をねじ込むようにして入店。
こないだもこの戸が開けられているのを見て、しかしエアコンの効いていない蒸し暑さの中麻婆豆腐なんか食べるのやだなぁと思って敬遠してしまったんだけど、今日は涼風がほどゆく吹き込んできてくれている。
小姐はヤンキー風。日本人であればこういう娘でも、カラオケで松田聖子を歌えば途端にしおらしい女の子に戻るんだけど、中国で松田聖子さん的国民的歌手がいるのかどうかを、私は知らない。韓国にはチョー・ヨンピルという国民的歌手がいるが、彼の「釜山港へ帰れ」をコリアン・ヤンキーたちが歌ったとしても、きっとその娘たちは純真な少女にはかえれないだろう(笑)。
注文は、実際には少し悩んでしまった。
メニュウと壁に貼られた品書きの膨大な情報量の多さにたじろいだ為だが、まずは初めての注文なので、結局いつものものを頼むことに ……
“麻婆豆腐定食” @627也。
あらかじめ煮込まれて、豆板醤色に染まった麻婆豆腐。
そのヴィジュアルは、しかし何故か私にとってネガには写っていない。ご飯が日本人の目から見たらちょっと純白さにかけるかなとも思うんだけど、しかし希望を持ってスプウンをその物体Xに突き立てた。
当たり前ながら、麻婆豆腐は熱く、そして辛い。ご飯もちゃんと温かく、スープもちゃんと温かい[注]。それだけでももはや感動してしまうという、昨今の絶望的なご飯処環境に慣れてしまった自分に猛烈に腹が立つ。
麻婆豆腐の挽肉が、筋っぽくて口当たりが気になるのと素直でスムースなのとあるが、その違いがどこから来ているのかが分からない。単純にコストの低い肉がNGなのか、或いは挽肉にもいろいろ種類があって、それが自分にマッチしているかいないかの問題なのか。そういった意味でこちらのものは、お世辞でもなんでもなく、ぜんぜん調子良く感じ、これはもしかしたら騙されているのかも知れないんだけど(笑)、なにかミステリアスな美味さに引き込まれる自分を止められない
注) 今気付いた。“温”という感じは温かいとかけばあったかいことだけど、温いと書けば、それは料理としては冷えている、ということになる。同じ漢字なのに意味あいがこうも異なるというのも興味深いなと
私が入店したのが午後1時15分頃だと思ったが、その時点で、座席は別として、卓で言うと1/2~2/3ほどは稼働していたと思う。私は空いていたテレビの見える四人掛けのテーブルに着かさせていただいたんだけど、界隈のお店屋さんスタッフとも見えない、どちらかと言えばホワイトカラー風の(ということは昼休みの時間がきっちり決まっていそうな)方々がその後もぽつぽつと入店してきて、時間的に油断してテーブルを贅沢使いしてしまったことに、やおらヒヤヒヤしてくる。
私の背後には厨房と客席フロアとを繋ぐ秘密の通い窓があり、そこからチャイムとともに料理が連発されてちょっと忙しない気もしたが、そんな贅沢も言っていられない。と、私の料理は入り口付近のレジスタカウンタ側から出てきたりとか、でもそのからくりを解く作業は、今は保留させていただくこととする。
本格とも、また一方では懐かしの町場のともとれなくもないミステリアスな麻婆豆腐が、今まさに私の体温を調子良く上昇させて、健全な新陳代謝の一貫としての発汗を促してくれている。
そんなことで向こうのテーブルに乗っていたこおり水のポットが恨めしく、でもそこには永遠に手の届かないと諦めかけていたところへ思いもよらず小姐が手を差し伸べてくれたことには、今日の涼風といみじくも相乗し、非常に気持ち良くお店をあとにすることができた次第である
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Jackie_m
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店名 |
谷記 1号店
|
---|---|
ジャンル | 中華料理、火鍋 |
お問い合わせ |
03-3622-6008 |
予約可否 |
予約不可 |
住所 | |
交通手段 |
錦糸町から徒歩7分 錦糸町駅から477m |
営業時間 | |
予算(口コミ集計) |
~¥999
~¥999
|
支払い方法 |
カード可 (JCB、AMEX、Diners) 電子マネー可 |
サービス料・ チャージ |
なし |
席数 |
56席 |
---|---|
個室 |
無 |
貸切 |
可 |
禁煙・喫煙 |
全席禁煙 外に灰皿あり |
駐車場 |
無 |
コース | 飲み放題 |
---|
利用シーン |
こんな時によく使われます。 |
---|---|
サービス | 2時間半以上の宴会可 |
備考 |
2号店、3号店 徒歩圏内にあり。 |
その他リンク | |
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「谷記」
またまた“やき”にやってきた。この屋号のほんとうの読み方は知らない。
ホール担当のお姉さんの、こういった中華居酒屋の女の子にしてはちょっとケバいかな、と思わせる印象も変わらず。時刻はちょうど午後1時にして先客の姿なし。
メニュウの非常に豊富なこちらのこと、ほんとうはいつも十分に吟味して注文したいんだけど、そんなことで手持無沙汰のお姉さんにこうもぴったりとマークされてしまっては、またしても慌てて注文せざるを得ず。
―― いつもこれで失敗するんだよ、おれ ……
“ワンタンスープと麻婆丼” @968也。
だから、絶対に失敗しない組合せで注文。
それでは私の、この少年のような冒険心を満たすことは出来ないと分かっていたとしても。そして注文した瞬間、左腕に巻かれたSwissの超高級腕時計、RADOのストップウォッチを機能させようとしたのだが、進んだ老眼に針に目をやることも億劫になっている自分に気が付いて、それをあきらめた。
と、本日は珍しく厨房から麻婆豆腐を炒める音が聞こえて来て、さすがに入店時の閑散から、今日は麻婆豆腐の作り置きはやめているのかと。
さすればストップウォッチは動かさなかったけれど、いずれにしてもこれまでの料理提供時間最速、わずか45秒という記録更新は今日は成らなかっただろうと(笑)、作り立ての料理が出てくることは嬉しい反面、少々寂しい気持ちにもなろうというもの
麻婆豆腐は醤(≒味噌 ?)感があり、チープながらも濃い口で美味しく、またワンタンスープは醤油が強調されて、ワカメのアクセントとも合間れば半ばワカメスープの様相を呈し、しかし下味しっかりのワンタンもちゃんと個性を主張してきて、こちらもgood !
こちらの料理は本格ではないところが、ベクトル的に、これは偶然か計算か分からないのだけれど、味の素の使い方含めて何故か昭和中華の方向に舵が切られており、そこが余所の大陸系中華居酒屋とは一線を画すところである。
長時間に渡ってお釜の中で保温されていたようなご飯も、率直に言って不味いんだけれど(笑)、醤油をかけたザーサイで口中調味すればそれもまた至福。
880円と思って小銭を調整し、レジスタカウンタに向かえばまさか裏切りの、外税で968円 !
トレイに差し出したまったくマッチしていないそれを冷ややかに見つめるお姉さんの、もう溜まらなく冷酷な目線にたじろぎつつ、それでは千円札からで、と観念する自分の不甲斐なさといったらなかった ……
【以下映画の話】
2019年 114分 韓国
「KCIA 南山の部長たち」
或る意味日本と同じく、アメリカ合衆国の傲慢に抗うことを完全に封殺された戦後の大韓民国の憂いの物語。
主人公である稀代の二枚目俳優、イ・ビョンホンは、いつも通りの額縁の中の二枚目ではなく、この事実に基づくフィクションの中においては、自らのハンサムをいみじくも、且つメロディアスに破綻させている。
私のイメイジではイ・ビョンホンという役者は、皆揃って体格の良い韓国の俳優としてとりわけ、ということではないにせよ、それでもかなり長身の役者と思っていたのだが、マイコンにあたれば実際には177cmそこそこということで、となると並み居る強者共演者たちを見上げての、そしてまた時代も時代、古典的横分けの髪型にメガネ、いわゆる、ちょっと“ダサい”状態でもうメロメロになるところが、こういうのこそが映画の美学なんだよ ! とスクリーンにひれ伏した !
1961年。
軍事クーデターを起こして韓国を手中に収めたパク・チョンヒ大統領。
その腹心である大韓民国諜報機関、中央情報部(通称KCIA)部長キム(イ・ビョンホン)は、アメリカに亡命してパク政権の悪政を暴露する本を執筆中の前任者、パク元部長を敬愛しつつも、大統領、および現政権を守り抜く為にパク元部長を処理しなければならないという、そんな身を引き裂かれる立場に立たされていた。
一方で大統領との親密を確固たるものにしつつあるクァク大統領警護室長との確執。かつて韓国最大の裏権力を牛耳っていたKCIAは、それでもアメリカの国力を冷静に客観評価、ということは恐れており、成り上がりのクァク室長は世間(世界情勢)知らずのパク大統領とともに、能天気にも自分のことを腰抜けとバカにする。
自分が死を賭してお守りすると誓った大統領からは見限られ、急激にのし上がってきたクァク室長からはコケにされ、そしてアメリカ大使館からは、もうパク大統領は“終わった”人間なので排除せよ、と、もう四方八方から、同時に無理難題を突き付けられたキム部長は、いい加減狂ってしまったのだろうか ……
【以下未観の方への配慮はございません】
パク大統領だけを実名とし、他の登場人物は仮名とするも、韓国人であれば誰が誰だか一目瞭然という中での、しかし堂々フィクションを名乗る本作。
それが政権交代する度に前任者を裁判所送りにする国柄が故に、案外気楽に成しえたことか、はたまた作り手に決死の覚悟が要求されたことであったのかは、国際政治に疎い私には分からないのだけれど、時代劇ならまだ良いが、未だ関係者がんがん生き残っている中での、このイ・ビョンホンというsuperstarを起用しての長編映画化ということを、そのイデオロギーは別として(というかそのイデオロギーがあったとしてもオレには分からん)、まず評価したいと思う。
asia稀代の色男が、その縮れなき漆黒のstraightな横分けを掻き乱してとり乱せばとり乱すほどに噴水する血の雨 ! その雨が鮮やかに穢してみせることの出来るカンバスは、わずかに白いドレスシャツと、そしてamerican-whiteに翻弄される我々か弱きyellow(黄色人種)の、この徒手空拳のみか ……
「閣下は革命の裏切り者です !!」
斯くしてキム部長(イ・ビョンホン)ご乱心 !!
革命の朝、あなたと酌み交わした酒はこんなクソ不味い酒ではなかった ! 人民を戦車で轢殺せとは何事か !
色男はあくまでも無様に、ジャムったハンドガンを何度も何度も空撃ちしながら醜い死の舞踏を続け、そしてクライマックスでは自分の撒き散らした血糊ですってんころりん !
そうだ ! これはドリフの前半のコントが終わるときのドタバタ ! 古くは古代ギリシャ時代の演劇を力技で強引に終息させるときに用いられたという、これが「deus ex machina」 ってやつだよ !!
些か政治色の強い作品、ながらその作風はいたって真摯。
男には、のたうちまわるという美学があった ! まあその美学を、オレは飲み屋で昔っから実践し続けているんだけどね。
そしてイ・ビョンホン、やっぱ尋常じゃなくカッコいいわ ……
もうそれしか言えね~
Fine