圧巻の技術力 : ナベノ-イズム

二度目ましてのナベノイムズさんです。 
2か月前に初めてうかがって、料理、空間、サービス共にとても素晴らしく、友達にも「こんないいとこあるんだよ!」と教えたくなるようなレストランで、今回は臨月間近の後輩の出産前祝いに使わせてもらいました。 


9月の終わり。一皿目から秋らしいお皿。アミューズ4品がオレンジの器にモミジが飾ってあり、秋が来たよ!という感じになります。オレンジとトマトのガスパッチョで食欲をそそり、雷おこしやモナカを使ったフィンガーフードは浅草とフレンチのまさに融合。 
こちらのシグニチャーディッシュの一つ、蕎麦掻とキャビアも絶品。そばの香りをていねいに引き出していて、夏とは違う秋のそばの香りがしました。そばにも季節によっての味の違いというのがあるのだと知りました。それを引き出すシェフの技術力にも脱帽です。 

次のお皿は鳩なのですが、こんな鳩初めて!お刺身のようなきれいなピンクの仕上がりでこれは細胞が壊れて外に肉汁が出ないぎりぎりの62度で時間をかけて調理したものだとか。旨味もじゅわーっと口の中で広がり、この食感も肉の繊維を全く感じさせず。付け合わせの鳩の内臓のテリーヌなども香り、テクスチャーともに大好きな味でした。 
この一皿は日本中、いや世界中探しても他に作れる人はいないんじゃないかと思えるような、渡辺シェフの高い技術力に思いを馳せる一品でした。 
次もフレンチらしい食材で、カエルと帆立をスープ仕立てにしてパセリのパンに浸してというお品。これもコンソメの取り方がキレイで、見た目も味も雑味や余分なものを一切排除してきれいに仕立ててあり、素晴らしかったです。 

そして、地元の人形焼き、コーヒー店の素材を使ったフォアグラ。昨今、こんなにがっつりとしたフォアグラを出すフレンチも減ってきた気がしますが、食べてみるとフォアグラはやっぱりおいしいんですよ。それでいて、コンサバティブな印象を残さない。 


ポワソンはエスコフィエ風のクリームソースに鯛のポワレ。伝統的なフレンチのソースを素材を生かすべく現代風にブラッシュアップさせたもので、鯛をうまく生かしています。こちらも温度帯を試行錯誤し、ソースに絡めながら火入れをし、付け合わせのムーステリーヌとは別々の火入れで、という手の掛けよう。 
メインの牛フィレ肉もコンソメがきれいなコンソメで素敵。 
デザートはお口直しのグラッパのソルベ、そしてデザートは秋らしい栗のデザート。 
食後のハーブティーは自家製で、営業前に渡辺シェフが自ら収穫したものだそうで香りが抜群でした。 


フレンチの基礎の技術力、食材に対する知識はフランス人も含めて世界屈指でしょう。 
さらにそれを解釈して表現する力も、ここ数年でミシュランの星を取った若い世代のシェフと比べて頭３つくらい抜けている感じです。 


最後のシェフの挨拶も、長年ロブションで三ツ星を守り続けたという驕りもなく、とても気さくで腰が低く、こんな50代いるんだ!と勇気をもらえるお店です。 
冬料理に代わるころにはいかないといけませんね。 

こちらはロブションで長年三つ星を支えた渡辺雄一郎シェフが50歳を迎えて満を持して独立した浅草のシャトー。 

開業1年ですが、渡辺シェフと長年一緒に働いてきたスタッフの方がついてきているので長年やっているかのような落ち着きです。 
実は浅草という場所柄、割りとざっくりとしたイメージがあったのですが、4階建てのシャトーでサービスもロブション仕込みで非常にスマートです。 
さてお料理。メニューはホームページに詳細が載っています。 
なので、特に印象に残ったお料理をピックアップしてみます。 

前菜…“両国江戸蕎麦ほそ川”の蕎麦粉をソースエミュリュッショネの技法で炊き上げたそばがき、 

こちらは蕎麦掻とは思えない滑らかなテクスチャーでとても高い技術力で感心しました。これが渡辺雄一郎かとまずしょっぱなベテランシェフの技術で印象に残るご挨拶、という感じでした。 

前菜2…鮎を米粉焼きとパテに、サラダ菜とキュウリのプレッセ仕立て 
「セルヴェル・ド・カニュ」と半白キュウリとスイカのマリネを添えて 

渡辺シェフは「鮎を日本の夏のジビエ」と解釈し、鮎一匹を丸ごと食べる定義をパテで表現し、身をフィレにし片面のみを 
米粉焼きにする事で焼き魚の内側の質感をあらわしているそうですが、とにかくこの鮎の火入れ、表面の食感が絶妙。このお皿を作るならばこれしかない、という絶妙な火入れで、さらに鮎の内臓のソースは1年熟成のものと今年の物と合わせて味に奥行きを出しています。これも記憶に残る一皿。 

フォワグラ…V.C.C焼き バッハコーヒー粗挽き仕上げ 創業150年木村家本店人形焼にのせ 
キャラメリゼバナナ、ピスタチオ、針生姜とのハーモニー、ピスタチオオイルとパンデピススパイスを香らせ、エスプレッソとヴァニラのソース 

こちらはフォアグラにコーヒー、バナナとフランス領であったアフリカ赤道付近の食材をあしらったお皿で、フレンチの奥行きの深さを感じ、本当に旅を思わせる一皿でした。 


最後にシャトーを4階のテラスなどもまるっと案内なさってくださったのですが、目の前の墨田川がいい感じにフランスを感じさせてくれる佇まい。銀座や六本木には無い、浅草でしか出すことのできない雰囲気の良さ。 
最後に渡辺シェフが料理や自分のレストランについて熱い思いを語ってくださり、素晴らしい時間を過ごせました。 

いいフランス料理レストランが毎年毎年続々と誕生し、東京のハイクオリティーさは実感していますが、そういうハイクオリティーなお店たちの中で、ナベノイムズは独特の、ここでしかないものでした。 

ここはぜひまた伺いたいお店です。