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店舗情報（詳細）
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店舗基本情報
| 店名 |
閉店
とんかつ 松むら
|
|---|---|
| ジャンル | とんかつ |
| 住所 | |
| 交通手段 |
浅草駅（東武・都営・メトロ）から171m |
| 営業時間 |
営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。 |
| 予算（口コミ集計） |
|
特徴・関連情報
| 利用シーン |
こんな時によく使われます。 |
|---|---|
| ホームページ | |
| 初投稿者 | |
| 最近の編集者 |
|
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午後一時。
晴れていた空が一転にわかに掻き曇り、私の心に微かな不安を生じさせた。曇天の下の雷門通り、客待ちの人力車の列が壮観に連なり、引き手の褐色、筋肉質で健康的な肌が凛々しく映えていた
<H26.4.22 浅草>
蕎麦が食いたくって「尾張屋」の前まで歩いていったら、ちょうど戸が引かれて先客が出てきたところ。覗き込んでけっこうに繁盛している卓に、気圧されて踵を返す小心者の中年男が独り……
「とんかつ 松むら」
そうはいっても一時半に待ち合わせがあるので、うかうかしてはいられなかった。雷門通りを逸れたらとんかつ屋の看板があって、半信半疑で前まで歩いていった。
何故半信半疑だったのかというと、私がトンカツ屋に入ることの出来る条件が、コロッケかメンチか、そんなところに海老フライが組み合わされるくらいで完結されるメニュウを携えている場合に限られるからだ。
店頭のお品書き版に、コロッケを見つけた。コロッケをやっていれば、私は暖簾を割ることが出来る。
戸を引いて足を踏み入れてみれば、入り口寄りの卓に、見るからに上等なスーツに身を包んだ、随分と体格の良い男性陣が二人。私はその横に着いた。続いて入店してきた男性もまた見事なまでに恰幅良く、さすがの私もただうっとりと見惚れるしかなかった。
――そんなこといいけど、終わってないといいんだけど、コロッケ……
続々と続く後客に追われる給仕の女性をカヴァし、カウンターの中から姿を見せてくださった、同じく女性の方が、この空間にあって唯独りの、私のその子供沁みた注文を受けてくださった。
この女性が、調理も担当しているのであろうか
“手造りコロッケ定食” @1,100也。
「こちら特製のおソースです。(宅備え付けの)白いほうはお醤油ですのでお使いください」
幸い、まだコロッケはやっていた。
ご飯のお茶碗が、とんかつ屋にしては随分と可愛いな、と思った。コロッケも、牡蛎フライより少々大きめのものが三つ。お新香と冷や奴の欠片が付いて、御付けは、私にとっては願ってもない、とん汁ではなくて若芽と豆腐のやつ。
日本人女性を一人含む、外国人計四人チームが私のもう一方の隣に着いた。BGMは彼らにお誂え向きの、お琴の和旋法。一番手前の男性が、軽快に貧乏揺すりをはじめた。
――肩凝りと貧乏揺すりって日本人特有のもんだと思ってたけど、少なくとも貧乏揺すりは、違うんだな……
おもむろに、味も確認せずに“特製”と名乗るソースを、“特製”の俺が、コロッケにまわした。無論、千切りキャベツには卓備え付けのウスターソースを。
満を持し牡蛎フライ型コロッケを突き刺したら、目映いばかりの白い肉質が、ほろりと恥ずかしそうにこぼれて揺れた。頬張った。あくまでも謙虚、あくまでも可憐。下町育ちのおっさんからしたら、少々上品に過ぎるコロッケ。いや、クロケットと呼ばなければならなかろうか。
膳全体のボリウムは、とんかつ屋のそれとしてはささやかと言えるかも知れないが、これはキャベツや一欠けのやっこに惑わされたか、別段不満はなかった。やがて隣の男性二人組が揃って立ち上がった。やはり上背もあり、かなりの巨漢である。何の気なしに卓に残った膳に目をやったら、ただでさえ可愛らしい盛りであったお茶碗二膳とも、半分ほどしか手が付けられていない。
立ち去った巨漢の背と残った小さなお茶碗との対比がなんともユーモラスだったが、ただのダイエットならよいが、もしやあの炭水化物、糖質制限というやつであれば、それがいつまで他人事で済まされるのかと、そこはかとなく恐怖した。
――ああ、もしかしたら彼ら、この店のご飯が小さいって知ってて利用してるんだな。どうせ残さなければならないんだったら、山盛りご飯を残すよりも後ろめたくないもん、こっちのほうが……