江戸前は寿司だけではないみたいです : 江戸前焼肉 岡本

浅草で仕事の後、数人でお伺いしました。

松屋浅草から新仲見世商店街を20m程歩いて、右に曲がったところの2Fでご商売されています。
1F出入口の間口は大きくありませんが、建物の2Fにいくつかの電照看板が付いており、それが目立ちます。

階段を昇っていくと店内に繋がりますが、そこからでもダウンライトに照らされる落ち着いた店内の様子を感じます。

当日着いたのは18：30頃。
予約なしでお伺いしましたが、かろうじて1卓空いており、案内された席について、メニューを拝見。

1ページ目には店名に付く｢江戸前｣の理由が記載されており、

江戸前の三つの必須条件
一、材料を江戸前の海で仕入れたものであること。
一、職人が仕事をしていること。
一、すし屋であること。

と前置きがあり、

日本初 江戸前 焼肉 岡本の江戸へのこだわり
一、芝浦(江戸前＝東京湾)から材料を仕入れること。
一、焼肉を愛する人達が仕事をしていること。
一、焼肉屋にはないすし屋の内装を取り入れたこと。

と、部分的には無理を感じますが、コンセプトをしっかりと持たれているようです。
2ページ目に進むと｢三大名物｣と書かれたおすすめ品を記載。
ヒレハラ(ハラミ)、テンジャンチゲ、熟成ロースが画像、解説付きで載っています。
これは候補に入れておきます。

3ページ目は肉かと思いきやドリンク。
4ページ目は｢掟｣と墨で大きく書かれた熟成ロースの食べ方であり、ここにもこだわりが。

さぁ次はと5ページ目に進むとコースメニュー。
どこまで進んでも肉のページがないと捲り、やっと出てきました。

単品から盛合せまで30種弱。
前述のおすすめは赤字で書かれており、一際目立ちます。

ビールと共にいくつか注文し、しばしウエイティング。

店内はこだわりに書かれた｢焼肉屋にはないすし屋の内装を取り入れたこと。｣の通り、すっきりとした白木で統一。
無縁ロースターにも白木で蓋をしてあるので、パッと見、焼肉店と思えないつくり。
小料理屋のカウンターなし版のような感じとも見えます。
トングやハサミも、事前にディスプレイのように配置してあります。

また、30席弱の席数なので、広い店ではありませんが、縦長と白木でまとめられているせいか、狭さは感じません。
そして、掃除も行き届いており、脂っぽさは微塵もありません。

運ばれてきたビールで喉を潤し、無縁ロースターの鉄板が温まるのを待つ間、期待感が高まります。

［タン塩(1,100円)］
ヒレハラと合い盛で運ばれてきました。
厚みはごくごく普通で、ほどほどに焼いて戴きますが、ジューシーです。
が、ちょっと塩気強すぎで、口の中いっぱいに塩味の肉汁が広がってしまうのは残念。
ただ、レモン汁をつけて戴くことを推奨しているようなので、その加減を考えての味付けかもしれません。

［ヒレハラ(1,100円)］
｢三大名物｣のひとつ、平たく言うとハラミです。
メニューには｢当店では毎朝、芝浦で仕入れたものを直送してもらっているので、すごく新鮮です。
ステーキ屋さんのヒレに匹敵する位、自信があるという意味で、この名前にしました。｣
と書かれています。
要はヒレハラミを呼びやすくヒレハラとしたみたいです。
厚めの大胆にカットされたハラミを丁寧に返して、レアで戴きます。
食感は確かにハラミの噛み応えを持っていますが硬すぎず、肉のうまみをしっかり感じます。
焼きすぎると、このうまみは活きてこないと思います。
一緒に付いてきた山葵を乗せて戴くと、山葵の風味と共に肉の味わいが広がります。

［熟成ロース(1,100円)］
こちらも｢三大名物｣のひとつ。
メニューには｢当店のロースは、昔から店長が付き合いのある業者と契約し、北海道の牧場から仕入れています。
空輸での届けになり、それをすぐに使用しても、まだ、食べごろではないのです。バナナと同じ感じです。
青いうちに収穫し、店頭に並ぶ頃熟れているという…なので、仕入れてから、専用の冷蔵庫(0～2℃)のチルドの状態で
3～4日寝かしたものを提供しています。｣
と書かれています。
確かこだわりに｢芝浦(江戸前＝東京湾)から材料を仕入れること。｣と書かれていましたが、北海道の牧場から仕入れ？
しかし羽田、すなわち東京湾ということでしょうか。これなら何でもオールOKになってしまうような気も……。

気を取り直して、厚さ20㎜程度ある一枚肉を鉄板の中央に置いて焼こうとした時、｢掟｣を思い出しました。

その｢熟成ロースを美味しく召し上がって頂くための岡本での掟｣には、
その壱 自家炒りゴマと粒コショウをすって、香りを出す。
その弐 良く混ぜた熟成ロース特製ダレを“スリキレ1杯”入れる。
その参 肉を焼く時は、目を離さず、レアで食すこと。
注意
その壱 お肉をレアの状態で召し上がるのが苦手なお客様にはおすすめできません。
その弐 この商品はたれ焼き1番目に食すのがおすすめ。
と書かれており、とにかくレアで焼くことに。

赤身の色合いに深みがあるのを眺めながら、片面をじっくり焼いて、もう片面も。
いい色になったところで、卓上にあるハサミでカット。
周りのみきれいに焼けて、中央はレアの状態で戴きますが、こちらのみ専用のタレが付いています。
甘く、とろみのあるタレを軽くつけて戴くと、サシは多くなくても、きれいに崩れるような歯応えと肉本来の甘み。
タレがなくてもいい位の味わいです。

［カルビ(950円)］
ここからはオーソドックスなカルビを。
脂身が赤身を程よく覆い、焦げないように両面を炙り、即戴きます。
肉自体が柔らかな食感。
下味のタレの甘みも感じますが、ソフトな脂の甘さも感じ、いい食べ応えです。

［中落ちカルビ(980円)］
メニューには｢旨いすじ脂が絶品です。別名ゲタカルビ。｣と書かれています。
中落ちカルビはあちこちで戴いているので、珍しくはないですが、サシがきれいに入っています。
これも焼きすぎは禁物。
カルビより脂感ありますが、やわらかく、溶けるに近い食感。
すぐになくなってしまうのが、悩みどころです。

［ランプ(950円)］※画像なし
赤身を強く感じる味わいに、噛み応えのある食感。
タレの下味も感じますが、肉らしい味の一品。

［切り落とし盛(950円)］
いろいろな部位を盛合せてあります。
ひとり一皿で戴くにはぴったり。

食後には、りんご等フレーバーのスティックアイスとお茶が出され、ゆっくりと余韻を楽しみます。

19：00を過ぎると予約のゲストが徐々に来店し、満卓に。
それでも煙が充満することなく、スマートに焼肉を戴ける環境は、ここにもこだわりの一面を感じます。

浅草は世代交代で新しい店が増え、こちらもその1店。
老舗の名店と肩を並べて、いい環境ですばらしい肉を提供し続けて頂きたいものです。

ただ、予約が多いようなので、ディナータイムは電話されるか、事前予約されることをお勧めします。