『満さる』のほかは、不見(みざる)、不齅(かゞざる)、不接近(ちかよらざる) : まさる

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4.2

¥3,000~¥3,9991人
  • 料理・味4.2
  • サービス4.0
  • 雰囲気1.8
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
2019/08訪問2回目

4.2

  • 料理・味4.2
  • サービス4.0
  • 雰囲気1.8
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥3,000~¥3,9991人

『満さる』のほかは、不見(みざる)、不齅(かゞざる)、不接近(ちかよらざる)

斯斯然然(かくかくしかじか)の情由(わけ)があり、
またもや、『滿さる 』"大入江戸前天丼(おほいりえどまへてんどん)"を餐(くら)ふ。
"未醤汁(みそしる)"を加(くは)へ、
對價(あたひ)、三千九百圓也(さんぜんきふひやくゑんなり)。

往古(いにしへ)より東都(えど)には天麩羅店(てんぷらをあきなふもの)多(おほ)し。
就中(わきても)淺草(あさくさ)には、
胡麻油(ごまのあぶら)に炸(あ)げ、澆飯(どんぶりめし)にして售(う)る舖(みせ)、
軒(のき)を競(きそ)ひ、甍(いらか)を爭(あらそ)ふ。

雷門通(かみなりもんどほ)りに老舖(しにせ)『OW屋』、『AOM進』、
傳法院(でんぱういん)方面(のかた)に足(あし)を運(はこ)ぶと、
盛名(そのな)を擅(ほしいまゝ)にせし『NS』、衆人(ひと)の溢(あふ)るゝ『DK家』、
さらに日本堤(にほんづゝみ)には『IS屋』と、不知數(そのかずをしらず)。

しかはあれど、
素材(たね)、技藝(わざ)、口味(あぢ)、何(いづ)れも『滿さる』が奢(まさ)る。
以外(そのほか)は、不見(みざる)、不齅(かゞざる)、不接近(ちかよらざる)
滿さる』は、淺草(あさくさ)どころか、東國(あづまのち)でも頂點(いたゞき)。

膳夫(いたまへ)が二代目親方(にだいめ)に替(か)はれど、
口味(あぢ)は一無變化(ひとつとしてかはりたるところなし)
最上(いとよ)き(いを)を叮嚀(ねんごろ)に扱(あつか)ひ、
上等天麩羅(よきあげもの)へと昇華(な)して蓋盌(ふたつきのまり)に盛(も)る。

曇(くも)る眼鏡(めがね)も、軈而(やがて)霽(はれ)、
掉尾(いやはて)に平生(つね)に倣(なら)ひて"揚玉(あげだま)"を貰(もら)ふ。
これまた、不惜(をしむことなき)大盛(おほもり)。
《〽葦原(よしはら)に行(ゆ)くなら著效(よくきく)"蛤蚧(おほやもり)"》

"揚玉(あげだま)"を包(つゝ)む風袋(ふくろ)には、誇(ほこ)らしげに、
天丼のうまい店 淺草 『滿さる』
とある。
善哉(よきかな)、善哉(よきかな)、萬葉假名(まんゑふがな)。

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【暗匣】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:旭光學 S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.8
     旭光學 S-M-C 微距琢磨(Macro Takumar)4/50 @F4.5

  • まさる - "江戸前大入天丼(えどまへおほいりてんどん)"

    "江戸前大入天丼(えどまへおほいりてんどん)"

  • まさる - "江戸前大入天丼(えどまへおほいりてんどん)"、對蝦(くるまえび)

    "江戸前大入天丼(えどまへおほいりてんどん)"、對蝦(くるまえび)

  • まさる - "江戸前大入天丼(えどまへおほいりてんどん)"、星鳗(あなご)+對蝦(くるまえび)の鬚(ひげ)

    "江戸前大入天丼(えどまへおほいりてんどん)"、星鳗(あなご)+對蝦(くるまえび)の鬚(ひげ)

  • まさる - "江戸前大入天丼(えどまへおほいりてんどん)"、對蝦(くるまえび)頭(あたま)

    "江戸前大入天丼(えどまへおほいりてんどん)"、對蝦(くるまえび)頭(あたま)

  • まさる - "江戸前大入天丼(えどまへおほいりてんどん)"、鼠頭魚(きす)

    "江戸前大入天丼(えどまへおほいりてんどん)"、鼠頭魚(きす)

  • まさる - 未醤椀(みそわん)

    未醤椀(みそわん)

  • まさる - 葅(にらぎ)

    葅(にらぎ)

  • まさる - 筯(はし)

    筯(はし)

  • まさる - 玻瓈窗(びいどろのまど)

    玻瓈窗(びいどろのまど)

  • まさる - 花(はな)

    花(はな)

  • まさる - 揚玉(あげだま)

    揚玉(あげだま)

  • まさる - 揚玉(あげだま)

    揚玉(あげだま)

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2016/07訪問1回目

4.0

  • 料理・味4.0
  • サービス3.5
  • 雰囲気1.8
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥3,000~¥3,9991人

えびはいさ どこにも勝(まさ)る 江戸前は 油は胡麻の 香(か)に匂ひける

【2016-07-25追記】:
花川戸(はなかはと)に唐人(たうじん)商賣(あきな)ふ鍋貼舖(ぎやうざや)あり。
往古(そのかみ)はなかなかの鍋貼兒(ゴーティエアル、やきゞやうざ)なりしかど、
何故(なんのゆゑ)か、前囘(まへ)に續(つゞ)き、
團體樣貸切(だんたいさまかしきり)」の貼紙(はりがみ)。

後髪(うしろがみ)引(ひ)かれつ、踵(くびす)を返(かへ)す。
この界隈(あたり)で晝飧(ひる)に惱(なや)む折(をり)は、
中華菜(ちゆうくわ)『龍圓』、天丼(てんどん)『まさる』の二者擇一(いづれか)。
その縁由(ことのよし)、説明不可能(よくひとにとくをえず)

龍圓』は遠(とほ)く、開店(みせびらき)まで半點(いさゝか)遑(いとま)があり、
一(いち)も二(に)もなく、『まさる』を選擇(えらむ)。
この日(ひ)の菜譜(しながき)は唯(たゞ)"大入天丼(おほいりてんどん)"のみ。
これに未醤椀(みそわん)を附(つ)けてもらふ。

厨(くりや)に立(た)つは二代目(にだいめ)一人(ひとり)。
先代(せんだい)の姿(すがた)はなし。
先代(せんだい)の技藝(わざ)は倅(せがれ)に繼承(うけつが)れ
今(いま)や、その味(あぢはひ)に優劣(よしあし)は皆無(なし)

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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony) α7 II 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :徠卡(Leica)Apo Summicron M 2/50 Asph. @F2

【2015-05-01追記】:
大約(およそ)半年(はんとせ)ぶりの『まさる』。
尋常(つね)なれば、
"車蝦(くるまえび)"、"穴子(あなご)"、"白鱚(しろぎす)"、"女鯒(めごち)"なるところ、
この日(ひ)は"女鯒(めごち)"に替(か)へて"稚鮎(ちあゆ)"。

當家(こちら)で"稚鮎(ちあゆ)"は初(はじめて)。
一昨日(おとゝい)『うを徳』にて啖(くら)ひしばかりなれば、
自(おの)づと、その相違(たがひ)に味覺(した)と眼眶(まなこ)が向(む)かふ。
實(げ)に、「京師(みやこ)と東都(えど)の差(さ)」と云ふべし。

東道(あるじ)に據(よ)らば、
時季(じき)の應(おう)じ、仕入(しいれ)に跟(したが)ふ。」
「蝦(えび)もまた、その時々(ときどき)最佳(まつともよ)きものを擇(えら)む。」
「五月雨(さみだれ)の頃(ころ)には"銀寶(ぎんぽう)"も、、」とのよし。

舖仕舞(みせじまひ)せし後(のち)、
"銀寶(ぎんぽう)"への懐古(おもひで)を談(かた)ること、
宛然(あたかも)、二三日(ふつかみつか)の前(まへ)のことを述(の)ぶるがごとし。
最後(いやはて)に、"揚玉(あげだま)"を貰(もら)ひ辭別(いとまごひ)。

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【照相機】:旭光學賓得士K-三數碼單鏡反光照相機
【鏡頭】 :蔡司(Carl Zeiss) Distagon T* 2.0/35 ZK @F2.0

【2014-05-16追記】:
當家(こちら)には、消費税(ねんぐ)が増(ふ)えてより初(はじめて)。
大約(およそ)半年(はんとし)ぶり。
"大入江戸前天丼(おほいりえどまへてんどん)"が三千五百圓三千七百圓となり、
新(あら)たに、"江戸前天丼(えどまへてんどん)"三千五百圓なるものが品書(しながき)に。

"未醤汁(みそしる)"は二百圓と据(す)ゑ置(お)き。
招牌(かんばん)とも云ふべき大車蝦(おほぐるまえび)は尋常(つね)に異なるところなし。
梅雨入(つゆい)り前(まへ)と云ふに穴子(あなご)は至高(このうへな)き旨(うま)さ。
名のある天麩羅(てんぷら)とは異なれど淺草天丼(あさくさてんどん)の頂點(いたゞき)

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【照相機】:日本光學 尼康(Nikon) Df 數碼單鏡反光照相機
【鏡頭】:.....蔡司(Carl Zeiss) Makro Planar T* 2.0/50 ZF.2 @F2.0

【2012-02-28追記】:
久々(ひさびさ)の『まさる』。
勿驚(おどろくなかれ)、車蝦はこの時季(じき)ですら江戸灣(えどわん)。
小柴(こしば)の濱(はま)に揚(あ)がりたるものと云ふ。
穴子(あなご)、女鯒(めごち)、白鱚(しろぎす)、悉(ことごと)く江戸(えど)のもの。

前田(まへだ)ちャんの色紙(しきし)が戻り、箸も新(あらた)に。
箸(はし)は陳腐(とるにたら)ぬ竹(たけ)から利休箸(りきうばし)となる。
その由緒(すぢめ)を尋((たづ)ぬれば、正眞正銘(まがふかたなき)吉野杉(よしのすぎ)。
これぞ杉(すぎ)の中(なか)の杉(すぎ)、箸(はし)の中(なか)の箸(はし)。

主人(あるじ)、僕(やつかれ)のことを能(よ)く憶(おぼ)え、
高名(なのある)鮨屋(すしや)ですら夏場(なつば)にあるかなきかの、
江戸灣(えどわん)車蝦を 襃(ほ)むるや、忽地(たちまち)相好(さうかう)を崩(くづ)し、
「よくぞこれほどに知(し)りたまふや」と、 欣喜雀躍(をどりあがりてよろこ)ぶこと限りなし。

品書(しなが)きは"大入(おほい)り天丼(てんどん)"一種(ひとくさ)。
稀(まれ)に"車蝦天丼(くるまえびてんどん)"ありと云ふとも纔(わづ)か"一種(ひとくさ)。
商賣(あきなひ)も家族(うがら)三人(みたり)で晝晌(ひるどき)のみ。
倅(せがれ)の力量(うで)も、はや親父(おやぢ)竝(な)み。

【2011-09-15追記】:
またぞろ蟲(むし)が騒(さは)ぎて淺草(あさくさ)新仲見世通(しんなかみせどほ)りに、、。
意(こゝろ)は、一に天丼(てんどん)、二に鰻重(うなぢゆう)、三に(すし)。
つるや』の鰻(むなぎ)は前と同じく『小河原湖(おがはらのうみ)』。
かくて『まさる』に向(む)かふも、俄(には)かに心變(こゝろがは)り。

ひさかたぶりの『橋口』に足を延ばすや、席(せき)粗方(あらかた)埋まりて、
主人(あるじ)、『一杯(いッぱい)!』と鰾膠(にべ)もなし。
已(や)む縡(こと)を得ずして疾(と)く踵(きびす)を返し二(ふた)ゝび『まさる』に。
この纔(わづ)か廿分(にじッぷん)足(た)らずでこちらも滿席(まんせき)。

外(そと)から賈内(なか)、更(さら)に揚げ場前で待つこと卅分(さんじッぷん)。
生平(つね)と變はらぬ『江戸前(えどまへ)大入り天丼)』が目(め)の前(まへ)に、、。
車蝦(くるまえび)、白鱚(しろぎす)、女鯒(めごち)の見事なるは勿論(いふもさら)なり。
穴子(あなご)もこの時季(じき)とは思(おも)へぬ脂(あぶら)の乘(の)り

これに觸(ふ)るゝや、主人(あるじ)、忽地(たちまち)相好(さうかう)を崩(くづ)し、
大黒(だいこく)布袋(ほてい)をも凌(しの)ぐ恵比壽顏(ゑびすがほ)となる。
朝(あさ)〆の蝦(えび)・穴子(あなご)を用(つか)ひ、
寸毫(つゆ)、沙糖(さたう)・旨味調味料(うまみ)を加へず』と鼻高々(はなたかだか)。

遑(いとま)を乞(こ)はんとするに、主人(あるじ)、わざわざ外(そと)に出(いで)、
深々(ふかぶか)と頭(かうべ)を低(たれ)て僕(やつかれ)を見送(みおく)る。
雷門(かみなりもん)では眼精(まなこ)に曇(くも)りなき少女(をとめ)に呼びとめらる。
筑前國(ちくぜんのくに)より來(き)たりしとかや。

【2011-08-23追記】:
有一日(あるひ)、ふらりと東武轍道(とうぶてつだう)淺草停車場にて下車(げしや)。
(武奈伎)を啖(くら)ひそこね、ひさかたぶりに當家(こちら)『まさる』。
勿驚(おどろくなかれ)、前田(まへだ)ちャんの色紙が失せ、
替(か)はりにかの●麻呂(ぴこまろ)などが色紙(しきし)。

客席(きやくせき)はなかば埋まりて教導(あなひ)さるゝ儘(まゝ)櫃臺(かうんた)に。
亭主(あるじ)は厨房(あげば)を離れ、專(もつぱ)ら客あしらひ擔當(あ)たる。
鍋(なべ)に向(む)かふは、顏(かんばせ)に若(わか)さを殘(のこ)す倅(せがれ)
通常(つね)にならひて、『大入り天丼』に『未醤汁(みそしる)』。

霎時(しばし)待(ま)つほどに、件(くだん)の品(しな)。
穴子(あなご)ばかりか、白鱚(しろぎす)女鯒(めごち)も身が肥え頗る美味
車蝦(くるまえび)は勿論(いふもさら)なり。
丼汁(どんつゆ)は纔(わづ)かながらも多(おほ)めで、俗(よ)に云ふ『つゆだく』。

辭別(いとまごひ)に當(あ)たり、主人(あるじ)と諸々(もろもろ)蝦談義(えびだんぎ)。
主人(あるじ)、斯々如此如此(かくかくしかじか)と語(かた)る辭(ことば)に熱が籠る。
蝦(えび)も穴子(あなご)も江戸前(えどまへ)にて、
時化(しけ)などで入荷(にふか)なき時は敢へて暖簾(のれん)を掲(かゝ)げずとぞ。

加旃(しかのみならず)、蝦(えび)の活(い)けのみを用(つか)ふは云はずもがな。
江戸前(えどまへ)の車蝦(くるまえび)は稀少(まれ)なるに、價格(ね)を不問(とはず)、
十中八九(おほかた)當店(こちら)で沽(か)ふ とかや。
なでふ、その熱意(あつきこゝろ)を譏(そし)り冷笑(あざわら)ふべき?

蝦は首(かうべ)をばらりずんと砍(き)り落とされ、胴(どう)と泣(な)き別(わか)れ。
南無阿彌陀佛(なむあみだぶ)、南無阿彌陀佛(なむあみだぶ)!
却説(かくて)、蝦は僕(やつかれ)が口中(くち)に踊(をど)りて、舌に彈(はづ)み、
鼻竅(はな)を擽(くすぐ)り、吭(のんど)へと消(き)えぬ。

【2011-04-14追記】:
『そろそろあそこには天然鰻(てんねんむなぎ)も、、』との淡(あは)き期待を胸に、
東武轍道(とうぶてつだう)淺草停車場(ていしやば)で下車(お)り新仲見世通(とほ)りに。
生憎(あやにく)まだ時(とき)至(いた)らずして天然物(てんねんもの)はなく、
久々(ひさびさ)天丼(てんどん)の『まさる』に向(む)かふ。

この日(ひ)は纔(わづ)か『大入り天丼』一種(ひとくさ)のみの潔(いさぎよ)さ。
これに未醤汁(みそしる)を附(つ)けて貰(もら)ひ出來上(できあ)がりを待(ま)つ。
鍋(なべ)に向(む)かふは(せがれ)と思(おぼ)しき職人(しよくにん)。
主人(あるじ)は傍(かたは)らに立(た)ちてこれを見守(みまも)る。

眼前(めのまへ)の夥(おびたゞ)しき數(かず)の色紙の中にはまへだちャんの名も。
書(しよ)は人(ひと)なり』。
花も羞ぢらふ女子(ぢよし)アナでありながら、一點一畫を疎(おろそ)かにせず、
律儀(りちぎ)・實直(じつちよく)そのもの。

天丼(てんどん)は通常(つね)に寸毫(つゆ)異(こと)なるところなし。
親(した)しき天麩羅通(てんぷらつふ)にしてこれを嫌(きら)はざる者(もの)あらざれど、
天種(てんだね)、(ころも)、丼汁(どんつゆ)とも病み附きになる味はひ。
豆腐(とうふ)に三つ葉の未醤椀(みそわん)も出汁(だし)が效(き)ゝなかなかのもの。

【2010-07-01追記】:
この日、停車場(ていしやば)に降(お)り立(た)つや激(はげ)しき驟雨(にはかあめ)。
あはてふためき蝙蝠傘(かうもり)を買(もと)め、雨宿りがてら、またも「まさる」に。
主人(あるじ)、昭和(せうわ)十九癸未(みづのとひつじ)年生まれの六十七歳(むそぢあまりなゝつ)。
芝増上寺脇(わき)なる電波櫓(やぐら)の普請(ふしん)を懐(なつか)かしむ。

【2010-06-16記】:
江戸の味覺(あぢ)となれば、天麩羅蕎麥
徳川さまの御世(みよ)、鰻(むなぎ)を除(のぞ)かばあらかた屋臺賈(やたいみせ)。
就中(わきても)蕎麥(そば)は辻毎(つじごと)に屋臺(やたい)が立(た)つほどにて、
立喰(たちぐ)ひ蕎麥(そば)の現今(いま)なほ榮ゆるは遍(あまね)く知らるゝところ。

政治(まつりごと)のみならず、萬事(よろづ)京坂(けいはん)より江戸(えど)に移りしは、
徳川時代(とくがはのみよ)も半ばを過ぎたる安永(あんえい)天明(てんめい)の頃(ころ)。
銚子・野田の「地醤油(ぢしやうゆ)」が「下(くだ)り醤油(しやうゆ)」を壓倒、
鰻、蒲燒蕎麥切(そばき)りの二品(ふたしな)は、ほゞ今の姿形(すがた)に。

この頃(ころ)我(わ)が世(よ)の春(はる)を謳歌(うた)ひし黄表紙(きべうし)、
(みなもと)のそばこ」が「うどん童子」を懲らす『化物大江山(ばけものおほえやま)』、
「鰻の蒲燒」の捩(もぢ)り『江戸生艷氣樺燒(えどむまれうはきのかばやき)』に、
能(よ)く蕎麥・鰻の羽振(はぶ)りやその形勢(ありさま)を窺(うかゞ)ひ知る。

これにひきかへ、天麩羅は昔(むかし)とは雲壤(うんじやう)の違(たが)
そも、握(にぎ)り鮨(ずし)の産聲(うぶごゑ)上げしは後(のち)の文政年間。
大きさ現行(いま)の三倍、一つとして生の儘(まゝ)の鮨(すし)だねはなく、*)
下魚(げうを)に過ぎぬ鮪(しび)は天保(てんぽ)年間(ねんかん)以降(よりのち)。

元來(もとより)握鮓(にぎりずし)の嚆矢濫觴(くさわけ)「與兵衞ずし」では
明治の御世(みよ)に至るもこれを用(つか)はで、專(もつぱ)ら屋臺鮨(やたいのすし)。
それとて、傷(いた)みやすき脂身(あぶらみ)は捨つるか、田畑(たはた)の肥しとなし、
赤身(あかみ)は醤油漬(しやうゆづ)けに。

與兵衞(よへい)の末裔(すゑ)小泉迂外(こいづみうぐわい)が書籍(しよじやく)を見るに、
明治の末頃(すゑころ)には「與兵衞ずし」でも鮪(しび)を使ひ出すも、
「仙臺鮪(せんだいまぐろ)」を「場違ひ」と侮辱(あなど)り誹謗(そし)ること頻(しき)り。
津輕邊(つがるあたり)の鮪に浮かるゝ昨今(きのふけふ)とは隔世感(よをへだつるおもひ)。

昭和の頃、天麩羅で名高きは、淺草「中清」、銀座「天金」、新橋「橋善」。
この内(うち)、今(いま)になほ商(あきな)ふは纔(わづ)かに「中清」のみ。
今(いま)をときめく天麩羅店(てんぷらや)は粗方(あらかた)、
銀座「天一」、神田駿河臺「山の上」、神田猿樂町「天政」、茅場町「みかわ」の流れを汲む。

何(いづ)れも京坂(けいはん)の技法(わざ)を取り込みたる輕(かろ)やかな味(あぢ)はひ。
古(いにしへ)の姿を留(とゞ)むる「中清」は淺草(あさくさ)傳法院(でんぱふいん)門前、
土手の伊勢屋」は日本堤(にほんづゝみ)吉原大門(よしはらおほもん)前なればこそ。
銀座・日本橋周邊(あたり)なれば一月(ひとつき)と持(も)たぬ口味(あぢ)。

さても、ける化石(くわせき)天麩羅の今なほ殘(のこ)る淺草(あさくさ)。
胡麻(ごま)の油(あぶら)を最上(さいじやう)と尊(たつと)び、
菜蔬(あをもの)揚(あ)ぐるを「精進揚(しやうじんあ)げ」と蔑(さげし)む。
とは云へ、江戸前(えどまへ)の魚介は稀(まれ)にて、況(まし)て車蝦(くるま)はさらなり。

こちら江戸前、わきても稀少(まれ)なる江戸灣(まえうみ)の車蝦(くるま)を使ふとかや。
とは云へ、かの「ぬきだるま親方」は糞みそ、「維納(うゐん)の若旦那」も★★、と散々。
金輪際(こんりんざい)淺草天麩羅は、え喰(く)らふまじ」と腹を括(くゝ)り、
いざ、その首級(くび)]とばかりに眦(まなじり)結して店内(なか)に。

迎(むか)ふるは菩薩顏(ぼさつがほ)の女將(おかみ)。
物腰(ものごし)柔らかにして、目配り・心配り、おさおさ怠(おこた)りなし。
今一人(いまひとり)は麗(うるは)しき面(おもて)のうら若(わか)き女(をんな)。
これには頬(ほゝ)も緩(ゆる)み、目尻(めじり)の下(さ)がること一度(ひとたび)ならず。

大入り江戸前天丼」に未醤汁(みそしる)、値(あたひ)三千七百圓也。
壁と云ふ壁に溢(あふ)るは河原乞食(かはらこつじき)どもが色紙(しきし)。
およそこの類(たぐひ)のめしやに味(あぢ)佳(よ)きは稀(まれ)。
後方(しりへ)の客の器に高く聳(そび)ゆるは、車蝦(くるまえび)に穴子(あなご)。

ほどなくして此方(こなた)にも運ばれ來(き)たりし品(しな)もまたこれに同(おな)じ。
中身(なかみ)は車蝦(くるまえび)、白鱚(しろぎす)、女鯒(めごち)に穴子(あなご)。
車蝦(くるま)は總州(そうしう)木更津、白鱚(きす)は總州(そうしう)竹岡(たけおか)、
穴子も江戸前とのことなれど武州(ぶしう)羽根田(はねだ)や否や詳(つまび)らかならず。

未醤汁(みそしる)は豆腐(とうふ)に三(み)つ葉(ば)。
蕎麥(そば)出汁(だし)のごとき強(つよ)き旨味(うまみ)舌(した)に奔(ほとばし)り、
その芳香(よきかをり)鼻竅(はな)を擽(くすぐ)り咽喉(のみど)を弄(もてあそ)ぶ。
香の物は、胡瓜(きうり)、蘿蔔(すゞしろ)、胡蘿蔔(にんじん)の糠漬(ぬかづ)け。

往古(いにしへ)より天麩羅屋(てんぷらや)では鞘卷(さやま)きを最上(さいじやう)とし、
中には鞘卷(さやま)きばかりを揚ぐる廛(みせ)の繁盛(さか)えし例(ためし)ありとも、、。
これだけ大きな車蝦(くるま)用(つか)ふは、專(もつぱ)ら流行(はやり)の鮨屋(すしや)。
それも江戸前は夏場(なつば)に限り、ほかの時季(じき)には「(たび)のもの」。

これを一齧(ひとかぢ)りするに、「中清」や嘗ての「橋善」のごときゴハゴハ衣でも、
大黒家」のごときフニャフニャ衣でも、老舖蕎麥屋(しにせそばや)のサクサク衣でも、
況(まし)て山手(やまのて)の薄衣(うすごろも)とも異なるカリカリ衣(ごろも)。
「これぞ天麩羅(てんぷら)顏」したるその衣、見た目よりは遙(はる)かに輕(かろ)やか。

蝦と云はず穴子と云はず、火、芯(なか)まで通りて外はカリカリ
丼汁(どんつゆ)にもくどさあらで、瞬(またゝ)く間に喉(のんど)を過ぎて胃腑(いのふ)に。
主人(あるじ)、小さな眼精(まなこ)に煌(きらめ)きを宿す職人顏(しよくにんがほ)。
天麩羅好きと見るや、忽地(たちまち)そのこだはりぶりを滔々(たうたう)と語る。

名にし負(お)ふ天麩羅(てんぷら)通(つふ)の嫌ふ天麩羅(てんぷら)を嗜(この)むは、
數寄屋橋「茂竹」に次ぎ、これで二軒目(にけんめ)。
徒(いたづら)に他人(ひと)に阿(おもね)りて通人(つふ)に諂(へつら)ひ、
妄りに己(おの)が意(こゝろ)を捻曲(ねぢま)ぐるは、僕(やつかれ)好むところにあらず。

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*)http://kindai.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/848995/1

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店舗基本情報

店名
まさる
ジャンル 天丼、天ぷら
お問い合わせ

03-3841-8356

予約可否

予約不可

住所

東京都台東区浅草1-32-2

交通手段

東武線浅草駅・徒歩5分程
(浅草 新仲見世通りの「今半本店」前の路地の突き当りに在る。)

浅草駅(東武・都営・メトロ)から181m

営業時間
  • 月・火・木・金・土

    • 11:00 - 15:00

      L.O. 14:30

  • 水・日・祝日

    • 定休日
  • ■ 営業時間
    ※材料なくなり次第終了

営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。

予算(口コミ集計)
¥3,000~¥3,999 ¥4,000~¥4,999

利用金額分布を見る

支払い方法

カード不可

電子マネー不可

席・設備

席数

16席

(カウンター3~4人、4人掛けテーブル2つ、2人掛けテーブル2つ)

個室

貸切

不可

禁煙・喫煙

全席禁煙

駐車場

空間・設備

カウンター席あり、座敷あり

メニュー

料理

魚料理にこだわる

特徴・関連情報

利用シーン

一人で入りやすい 知人・友人と

こんな時によく使われます。

ロケーション

一軒家レストラン

オープン日

1947年

備考

材料が残っていれば14時以降も営業していることもあり

http://asakusa-ryoin.jp/sushi_tempra.html

支払いはPayPay使用可能

初投稿者

ソーサソーサ(17)

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