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高名(なにしを)ふ 名工(たくみ)の廚藝(わざ)を 拜(をが)みては 山蓼(わさび)の褪色(いろ)も 容認(しのぶ)ほかなし
この宵は 松波ずしを 夕飧(ゆふめし)に 煮たる穴子の 身も啖(くら)ひつゝ
東都(えど)に握鮓(にぎりずし)を生業(なりはひ)とする職人(もの)居多(おほ)しと云へど、
大掴(おほづか)みに兩(ふた)つの類型(るいけい、=たがひにあひにたるかたまり)に分(わ)かたる。
一(ひと)つは往古(そのかみ)よりの技藝(わざ)を繼承(うけつ)ぐ手煆煉(てだれ)の年輩(ねんぱい)"、
そしていま一(ひと)つは日々(ひゞ)新(あらた)なる遣方(やりかた)を摸索(さぐ)る"若手(わかて)"。
"年輩(ねんぱい)"としては、人形町(にんぎやうちやう)『喜壽司』、赤坂(あかさか)『喜久好』、
木挽町(こびきちやう)『ほかけ』、そして當店(こちら)駒形(こまがた)の『松波』。
先日(さきつひ)に尋(たづ)ねたばかりの中野(なかの)『峯八』も紛(まが)ふ方(かた)なき凄腕(すごうで)。
遠州(ゑんしう)生(む)まれ、數寄屋橋(すきや者゛し)の捻(ひね)くれぢゞいもその一人(ひとり)か、、。
"若手(わかて)"で名(な)の舉(あ)がるは、溜池(ためいけ)『さいとう』、銀座(ぎんざ)『青空』、『さわ田』、
烏森稻荷(からすもりいなり)『しみづ』などか、、。
僕(やつかれ)赤坂(あかさか)にありし頃(ころ)足繁(あしゝげ)く通(かよ)ひし溜池(ためいけ)『壽々』、
近會(ちかごろ)贔屓(ひいき)の淺草雷門(あさくさかみなりもん)『橋口』もまた"若手(わかて)"。
銀座(ぎんざ)『水谷』、新橋(しんばし)『鶴八』などもそろそろ老境(らうきやう)の域(いき)なれど、
こゝではこのニ類型(にるいけい)からは除外(はず)ゝ。
"年輩(ねんぱい)"と"若手(わかて)"の間(あはひ)には大(おほ)きなる隔絶(へだゝり)あり。
その相違(たがひ)を論(あげつら)はゞ、枚舉(かぞふる)に遑(いとま)なからん。
それでも、倩(つらつら)、兩者(ふたかた)の相違(たがひ)を考察(かんがみ)るに、
【手際(てぎは)】:
■"年輩(ねんぱい)"は素早(すばや)くほどよき硬(かた)さ、すなはち、
外面(そと)を固(かた)め、内面(うち)柔(やは)らかく保(たも)つ技藝(わざ)に傑(すぐ)る。
舎利玉(しやりだま)を疾(と)く纏(まと)めて、左(ゆんで)拇(おやゆび)を利(き)かせ、鮨(すし)となす。
"年輩(ねんぱい)"に比(くら)べ"若手(わかて)"は押(お)し竝(な)めて稚拙(つたな)し。
■反面(しかれども)、"年輩(ねんぱい)"は"捨(す)て舎利(しやり)"など、
惡習(あしきならひ)を蹈襲(そのまゝにうけつぐ)恨(うら)みあり。
"本手返(ほんてがへ)し"→"小手返(こてがへ)し"、
"捨(す)て舎利(しやり)"→"舎利(しやり)を捨(す)てず"となるは、
唐山(もろこし)傳來(わたり)の算盤珠(そろばんだま)が、
"上ニ・下五"→"上一・下五"→"上一・下四"と變(か)はるにも似(に)た大(おほ)いなる進化(しんくわ)。
【容姿(すがたかたち)】:
■"年輩(ねんぱい)"の多(おほ)くは左(ゆんで)拇(おやゆび)を利(き)かせ、
俗(よ)に云ふ"扇(あふぎ)の地紙形(ぢがみがた)"となすを嗜(この)む。
腕利(うでき)ゝなれば海苔(のり)の帶(おび)を用(つか)ふことなく、
切附(きりつ)けたる鮨種(すしだね)を舎利(しやり)に馴染(なじ)ます。
■"若手(わかて)"は鮨種(すしだね)を薄(うす)く廣(ひろ)く切附(きりつ)け、
舎利(しやり)に卷(ま)くがごとくに鮨(すし)を漬(つ)くること多(おほ)し。
それ故(ゆゑ)、左(ゆんで)の拇(おやゆび)が疎(おろそ)かとなり、容(かたち)は無樣(ぶざま)。
その仔細(わけ)は審(つまびらか)ならねど、
以爲(おも)ふに、舌(した)に接觸(さは)る鮨種(すしだね)の面積(ひろさ)を大(おほ)きくせんがためと、
技藝(わざ)の拙(つたな)さを隱蔽(かく)さんがためならん。
【品書(しなが)き】:
"若手(わかて)"に"お任(まか)せ"を強(し)ひる輩(ともがら)多(おほ)きは歎(なげ)かはしきこと。
己(おの)が稚拙(へた)さを棚(たな)に上(あ)げ不埒(ふらち)にもかゝる商賣(あきなひ)をなすは、
言語道斷(けしくりから)ん舉動(ふるまひ)。
"年輩(ねんぱい)"の多(おほ)くは、
縱令(たとひ)如何斗(いかばかり)り高(たか)き價格(ね)の鮨(すし)を賣(う)るとも、
"握(にぎ)り"、"おきまり"などゝ號(よびな)す廉(やす)き一人前(ひとりまへ)の握(にぎ)りを供(いだ)す。
桶(おけ)や皿(さら)への"盛込(もりこ)み"も"年輩(ねんぱい)"の獨擅場(ひとりぶたい)。
否(いな)、今時(いまどき)の"若手(わかて)"は"盛込(もりこ)み"すら知(し)らで、
"彩(いろどり)"や"流(なが)れ"に無頓着(とんちやくなし)。
【口味(あぢ)】:
■解(ほど)け方(かた)は舎利(しやり)の水分量(みづけ)と握(にぎ)り方(かた)に依存(よる)。
水分量(みづけ)少(すく)なく、外側(そとがは)のみを硬(かた)く握(にぎ)る親方(おやかた)の鮨(すし)は、
解(ほど)け易(やす)きもの。
外面(そと)を固(かた)め、内面(うち)柔(やは)らかく握(にぎ)るは、
"年輩(ねんぱい)"の獨擅場(ひとりぶたい)とおもひしかど、想定外(おもひのほか)に差(さ)は纔(わづ)か。
■"年輩(ねんぱい)"の舎利(しやり)は押(お)し竝(な)めて冷(つめ)ため。
"米粒(こめつぶ)の立(た)ち方(かた)"は水分量(みづけ)と炊方(たきかた)に依存(よ)り、
"米粒(こめつぶ)の滑(なめ)らかさ"は、水分量(みづけ)と沙糖(さたう)の有無(うむ)による。
"米(こめ)立(た)ちてしかも滑(なめ)らか"と云ふが僕(やつかれ)が嗜(この)みなれば、
より暖(あたゝ)かき"若手(わかて)"の舎利(しやり)に軍配(ぐんばい)。
■"鮨種(すしだね)"はさらにその相違(たがひ)が顯著(いちじる)し。
"若手(わかて)"は氷室(ひむろ)より取出(とりいだ)したる冷(つめ)たき鮨種(すしだね)を切附(きりつ)け、
霎時(しばし)うち遣(や)り室温(へやのあたゝさ)に馴染(なじ)ます。
舌(した)に心持(こゝち)よく、解放(ときはな)たれたる香(かをり)は鼻竅(はな)を穿(うが)つ。
"熟成(うらし)"ぐあひを探究(さぐ)り、
新(あらた)なる産地(さんち)・仲卸(なかおろし)を見出(みいだ)さんとするも"若手(わかて)"。
相互(たがひ)に切磋琢磨(きそひあ)ひ、時(とき)として祕技(ひめわざ)すら教(をし)へあふ。
車蝦(くるまえび)・蝦蛄(しやこ)を茹(ゆ)で上(あ)げて用(つか)ふも"若手(わかて)"。
"年輩(ねんぱい)"は茹(ゆ)で置(お)きたるものをその儘(まゝ)に、
あるいは、醋洗(すあら)ひをし、黄身(きみ)おぼろを塗(まぶ)すが關(せき)の山(やま)。
【山葵(わさび)】:
"年輩(ねんぱい)"の多(おほ)くは纏(まと)めてこれを卸(おろ)し、
方(かた)や"若手(わかて)"は粗方(あらかた)小(こ)まめに擂(す)り卸(おろ)す。
山葵(わさび)の匂(にほ)ひにさまざまあれど、
鼻竅(はな)を刺(さ)す香(かをり)は瞬(またゝ)く中(うち)に失(う)するが通常(つね)。
・・・
故(ゆゑ)に、僕(やつかれ)、
"熟練度(じゆくれんど)"、眼(め)にも止(と)まらぬ早技(はやわざ)、
肩肘(かたひじ)張(は)らず"品書(しなが)き"に無理(むり)なきこと、などを除(のぞ)かば、
"年輩(ねんぱい)"の鮨(すし)よりも寧(むし)ろ"若手(わかて)"の鮨(すし)を嗜(この)む。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
案下某生再説(それはさておき)、當家(こちら)『松波』。
有一日(あるひ)、相知(なじみ)の鮨屋(すしや)に誘(さそ)はれ、
駒形(こまがた)なる當家(こちら)『松波』に伺(うかゞ)ふ。
近傍(ちかく)にはかの名(な)にし負(お)ふ『駒形どぜう』も、、。
僕(やつかれ)が同朋(はらから)の中(なか)でも、懐石(くわいせき)、法蘭西(ふらんす)から
鮨(すし)、天麩羅(てんぷら)、鰻(むなぎ)に至(いた)るまで無所不通(つふじざるところな)き友(とも)あり。
神(かみ)の舌(した)に、鐵(くろがね)の鰓(あぎと)と鋼(はがね)の胃袋(いぶくろ)をあはせ持(も)つ。
その彼(かれ)が云ふには、「『與志乃』門下(もんか)では『松波』」。
それを想起(おもひおこ)しつゝ、亭主(あるじ)松波親方(まつなみおやかた)に挨拶(あいさつ)。
身長(みのたけ)五尺二寸(ごしやくにすん)に滿(み)たぬ小躯(ちいさなからだ)。
"卅二相八十種好(さんじふにさうはちじふしゆがう)"、その面(おもて)は浮屠(ほとけ)そのもの。
物腰(ものごし)柔(やは)らかく、言葉遣(ことばづか)ひも叮嚀(ねんごろ)。
最初(いやさき)に玉薤(さけ)を貰(もら)ふに、酒菜(さかな)は"海鼠醋(なまこす)"。
想定外(おもひのほか)に柔(やは)らかく、その理由(ことわり)を訊(たづ)ぬれば、應答(いら)へて、
「さッと湯通(ゆどほ)しするが吉(よい)。」
「生(なま)の儘(まゝ)では硬(かた)く、火(ひ)も過(す)ぐれば齒應(はごた)へを失(うしな)ふ。」
鮨下駄(すしげた)は黒(くろ)き輪島塗(わじまぬり)。
主人(あるじ)、「醋(す)によりてかくのごとく傷(いた)みぬ。」と歎(なげ)くこと頻(しき)り。
上(うへ)に載(の)るのは、風習(ならひ)の卸(おろ)し山葵(わさび)・生薑(はじかみ)に加(くは)へ、
纖切(せんぎ)り茗荷(めうが)に梅(むめ)、さらに海苔(のり)までも。
海苔(のり)は色黒(いろくろ)き儘(まゝ)にて聊(いさゝ)か口溶(くちど)けに難(なん)。
そもそも鮨屋(すしや)が海苔(のり)を炙(あぶ)るは、香(かをり)と口溶(くちど)けが目的(ねらひ)。
梅(むめ)は鹽(しほ)效(き)かせたる紀州(きしう)のものを、鹽拔(しほぬ)きして裏漉(うらご)しゝ、
鰹(かつを)など練(ね)り込(こ)みたるものとか。
手(て)に拿(も)つ庖丁(はうちやう)は"かね惣"。
使(つか)ひ込(こ)み 砥(と)ぎ込(こ)まれ、纔(わづ)か四年(よとせ)でこの爲體(ありさま)。
宛然(あたかも)、手入(てい)れの行(ゆ)き屆(とゞ)きたる小柄(こづか)を髣髴(おもはす)。
※冩眞左:新(あらた)しき柳刄(やなぎば)、中:蛸引(たこひ)き、右:四年物(よとせもの)柳刄(やなぎば)。
僕(やつかれ)は握(にぎ)り、他(ほか)の二人(ふたり)はつまみから。
件(くだん)の鮨屋(すしや)では先(ま)づ烹調(にたき)せしものを何皿(なんさら)か貰(もら)ふところなれど、
當家(こちら)の酒菜(さかな)は生魚(なまうを)を切附(きつりつ)けたゞけ。
隣(となり)の鮨職人(すしゝよくにん)が"刺身(さしみ)からとは、、"、と、密(ひそ)かに苦笑(にがわら)ひ。
注文(たのみ)たる鮨(すし)は、
鮃(ひらめ)、鮃(ひらめ)縁側(えんがは)、墨烏賊(すみいか)、小鰭(こはだ)、眞鯖(まさば)、眞鰺(まあぢ)、
赤貝(あかゞひ)、鮑(あはび)、鮪(しび)、鮪(しび)脂身(あぶらみ)に近(ちか)きところ、海膽(うに)、
穴子(あなご)、海苔卷(のりま)き、鶏卵燒(たまご)き。
椀(わん)は豆腐(とうふ)と滑子(なめこ)の未醤汁(みそしる)。
水菓子(みづぐわし)としてグレープフルーツも、、。
以爲(おも)ふに、鮨店(すしや)の椀(わん)は潮汁(うしほじる)に限(かぎ)る。
鮃(ひらめ)や眞鯛(たひ)・鰈(かれひ)など白身(しろみ)の骨邊肉(あら)、せめて蛤(はまぐり)か、、。
つぶさに親方(おやかた)の所作舉動(ふるまひ)を檢(あらた)むるに、
俗(よ)に云ふ"本手返(ほんてがへ)し"と思(おぼ)しき手數(てかず)の多(おほ)き握(にぎ)りなれど、
『喜久好』清水親方(しみづおやかた)ばりの俊敏(すばや)さ。
弓手(ゆんで)の拇(おやゆび)を效(き)かし、瞬(またゝ)く中(うち)に鮨(すし)となす。
慥(たしか)に、その容(かたち)は、
自(みづか)ら「扇(あふぎ)の地紙形(ぢがみがた)」を誇(ほこ)るに相應(ふさは)しき姿形(すがた)。
さりながら、縱(たて)からの眺(なが)めは"下膨(しもぶく)れ"の異形(いぎやう)。
※"鮃(ひらめ)の縁側(えんがは)"と"小鰭(こはだ)"の畫像(がざう)參照(さんせう)。
二度三度(ふたゝびみたび)と舎利(しやり)を千切(ちぎ)り捨(す)つるも、
『水谷』水谷親方(みづたにおやかた)ほどの醜惡(みにく)さはなし。
握(にぎ)りたる鮨(すし)は鮨下駄(すしげた)左隅(ひだりすみ)に竝行(へいかう)に置(お)く。
今時(いまどき)の若手(わかて)なれば利(き)ゝ手(て)に應(よ)り斜(なゝめ)に置(お)くが尋常(つね)。
口(くち)に抛(はふ)り込(こ)むや、鳳仙花(ほうせんくわ)の種(たね)ごとく口内(くち)に彈(はじ)け、
奧齒(おくば)の上(うへ)には纔(わづ)か幾粒(いくつぶ)か殘(のこ)すのみ。
これぞ、松波順一郎(まつなみじゆんいちらう)親方(おやかた)が奧儀(あうぎ)・眞髄(しんずい)。
この技藝(わざ)を襃(ほ)むるや、親方(おやかた)莞爾(につか)とうち笑(ゑ)み胸(むね)を張(は)る。
米(こめ)は硬(かた)めで滑(なめ)らかなれど、
"若手(わかて)"に比(くら)べ聊(いさゝ)か冷(つめ)たき恨(うら)みを殘(のこ)す。
鹽(しほ)・醋(す)ともに穩(おだ)やか。
少(すく)なくとも『すきや者゛し』や『青空』ほどに醋(す)が立(た)ゝぬ舎利(しやり)。
眞鰺(あぢ)は通年(つふねん)相模灣(さがみわん)とか。
やはり、眞鰺(まあぢ)は薩州(さッしう)出水(いづみ)の右(めて)に出(いづ)るものなし。
眞鰺(まあぢ)は醋洗(すあら)ひをし、鮪(しび)は"漬(づ)け"にも再(ふたゝ)び煮切(にき)りを通(とほ)す。
小鰭(こはだ)・眞鯖(さば)の醋(す)は弱(よは)く、『すきや者゛し』とは著(いちじる)しき相違(たがひ)。
小鰭(こはだ)に通年(つふねん)小(ちい)さなものを用(つか)ふは、銀座(ぎんざ)『小笹壽し』に同(おな)じ。
とは云へ、小(ちい)さな小鰭(こはだ)では『小笹壽し』が東正横綱(ひむがしせいよこづな)ならん。
穴子(あなご)の煮詰(につ)めの、煮切(にき)りを髣髴(おもはす)ほどの稀薄(うす)さは、
他(ほか)の『與志乃』一門(いちもん)に異(こと)ならず。
水平(たひら)に限(かぎ)りなく薄(うす)く削(そ)ぐ鮑(あはび)。
「吉野末吉(よしのすゑきち)親方(おやかた)とは異(こと)なる流儀(やりかた)」とのことにて、
慥(たしか)に、どの一門(いちもん)のどの親方(おやかた)とも異(こと)なる切附(きりつ)け。
とは云へ、「薄(うす)ければ薄(うす)いほどよい」と云ふは、首傾(くびかし)ぐるほかに方策(すべ)なし。
海苔卷(のりまき)に用(つか)ふ干瓢(かんぺう)は淡味(うすあぢ)。
これを堪能(あぢは)ふに、出汁(だし)も效(き)かず、味淡(あぢあは)きのみ。
鶏卵燒(たまごやき)また然(しか)り。
徒(いたづら)に沙糖(あまみ)を控(ひか)へ、鹽分(しほ)を惜(を)しむは締(しま)りを缺(か)くばかり。
山葵(わさび)はこまめに卸(おろ)すを厭(いと)ふ。
これ、"年輩(ねんぱい)"親方(おやかた)にありがちなる舊弊(あしきならひ)。
人當(ひとあた)りは甚(いと)柔(やは)らかく、融通無碍(ゆうづふむげ)。
宛然(あたかも)、艸木(くさき)が風(かぜ)に靡(なび)き、水(みづ)が器(うつは)に沿(そ)ふがごとし。
檜(ひのき)の一枚板(いちまひゝた)には魂(たましひ)を消(け)す。
その長(なが)さたるや幾許(いくばく)ぞ。
惜(を)しむらくは照明(あかり)が暗(くら)きに過(す)ぎ、
逢引(あひゞき)には好適(む)けど、鮨啖(すしくら)ふに不適(むかぬ)こと。
辭別(いとまごひ)に當(あ)たり、『ふじ井』*)藤井親方(ふじゐおやかた)の安否(あんぴ)を問(と)ふ。
勿論(いふまでもなく)、御内儀(おかみ)は吉野末吉(よしのすゑきち)が娘(むすめ)。
漬場(つけば)からは引退(しりぞ)き、現今(いま)漬場(つけば)を守(まも)るは次男坊(じなんばう)とか。
「行(い)ッてやつてくれ」との頼(たの)みに、僕(やつかれ)もこれを快諾(くわいだく)。
友人(とも)は、"年輩(ねんぱい)"の凄技(すごわざ)・力量(うで)の慥(たしか)さを重視(おもん)じ、
僕(やつかれ)は、"若手(わかて)"の精進(しやうじん)ぶり、新(あらた)しき試(こゝろ)みをよしとす。
彼(かれ)とは異(こと)なり、僕(やつかれ)、赤坂(あかさか)では『喜久好』よりも『さいとう』、『壽々』、
『與志乃』門下(もんか)では『青空』、淺草(あさくさ)界隈(あたり)なら『橋口』を擇(えら)む。
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*)"食(た)べログ"では閉店(へいてん)扱(あつか)ひ。
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店名 |
鮨松波(すしまつなみ)
|
---|---|
ジャンル | 寿司 |
予約・ お問い合わせ |
03-3841-4317 |
予約可否 |
予約可 |
住所 | |
交通手段 |
浅草駅(東武・都営・メトロ)から372m 田原町駅から368m |
営業時間 |
|
予算 |
¥6,000~¥7,999 ¥2,000~¥2,999 |
予算(口コミ集計) |
¥20,000~¥29,999
|
支払い方法 |
カード可 (VISA、JCB、AMEX、Diners、Master) 電子マネー不可 |
席数 |
15席 (カウンター15席) |
---|---|
個室 |
無 |
貸切 |
可 (20人以下可) |
禁煙・喫煙 |
全席禁煙 |
駐車場 |
無 |
空間・設備 | オシャレな空間、落ち着いた空間、カウンター席あり、ソファー席あり |
ドリンク | ワインあり、ワインにこだわる |
---|
利用シーン |
こんな時によく使われます。 |
---|---|
お子様連れ |
子供可(乳児可、未就学児可、小学生可) |
ホームページ | |
備考 | |
お店のPR |
日本の伝統を感じる浅草で、粋な江戸前鮨を愉しむ。地元の方からも愛され続ける、人気の鮨処。
浅草駅にほど近い場所に佇む『鮨松波』。浅草でも人気の鮨処です。入口の扉を開けると、玉砂利が敷かれた和の空間が広がります。目の前の螺旋階段を上ってお入りください。店主が紡ぐ握りは、伝統の技が生きた江戸前鮨。「本手返し」でさっと握られたお鮨は、シャリ・ネタ・握りの妙を感じます。カウンター越しの店主とお話をしながら、ゆったりとお愉しみください。初めて来る方も大歓迎です。どうぞ、お気軽に浅草の江戸前鮨を。 |
初投稿者 |
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十年(とゝせ)ぶりの『鮨 松波』。
主人(あるじ)"松波順一郎親方(まつなみじゆんいちらうおやかた)"、
昭和十五庚辰歳(せいわじふごかのえたつのとし、=1940)、東都生(えどむ)まれ。
その父親(てゝおや)は「"大膳職(おほかしはでのつかさ)"」と云ふ。
近會(ちかごろ)、
主人(あるじ)を「大將(たいしやう)」呼(よ)ばわりする"鼠輩(ねづみのともがら)"、
跳梁跋扈(すしやにのさばり、ちまたにはびこる)。
耳障(みゝにさは)り焦躁(はらだちいらだ)つこと無限(かぎりなし)。
『江戸前芝濱』にて記述(ふ)れたる「×懐石○會席(くわいせき)」に同樣(おなじ)。
「おつくり」、「造里(つくり)」なる語(ことば)にも蟲唾(むしづ)が走(はし)る。
雞(とり)が啼(な)く東國人(あづまびと)が、
濫(みだ)りに西國人(にしのひと)ゝ口癖(くちぐせ)摸倣(まぬ)るは恥辱(はぢ)。
"生魚(なまのうを)"に非加熱(ひをいれぬ)儘(まゝ)、
"薄作(うすづく)り"、"細作(ほそづく)り"、"八重作(やゑづく)り"、
"角作(かくづく)り"など、多種多樣(さまざま)なる形狀(すがた)に切(き)るを、
往古以來(いにしへよりこのかた)「さしみ」と喚做(よびな)す。
參考(ちなみ)に、【古事類緣】 明治末 政府編纂(元の史・資料は~江戸期)には、
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> 《つくり》:
> "名詞(めいし)"として記述(しるされたる)はなし。
>
> 《指身(さしみ)》:
> 〔大和本草〕 〈十三魚〉
> 生肉ヲ大ニ聶(へぎ)テ醋或煎酒ニ滲シ食フヲ指身ト云。
>
> 〔倭爾雅〕〈六龍魚〉
> 魚軒(サシミ):
> 肉塊小切爲レ膾、大切爲軒、、、
>
> 〔倭訓栞〕〈後篇七佐〉
> さしみ:
> "魚軒"也といへり。
> "刺身"の義也。
> 身は肉を云。
> 雪の"さしみ"は鯛をあつゆもて色をとりつくりたるをいふと"大諸禮"に見えたり。
>
> 〔松屋筆記〕〈百四〉
> 刺身:
> 鱠、ぬた和、膾に"刺身"といふ。
> 名目おこり、製法も一種出來たるは、足利將軍の代よりの事なるべし。
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その刀工(はものづかひ)を「作(つく)る ※←動詞(どうし)」と號(よびな)す。
"●●作(づく)り"を總稱(まとめ)て「作(つく)り身(み)」と言ひ、
「さしみ」と畧(ほゞ)同義(おなじこゝろ)として用(つか)はる。
江戸中期(えどのなかごろ)迄(まで)は無(な)き詞(ことば)なるべし。※←卍調べ
熟々(つらつら)【料理物語】(寛永年間、1624~1644)を精査(みる)に、
「作(つく)り身(み)」なる辭(ことば)は無(な)く「指身(さしみ)」とのみ。
不思議(いぶかし)きことに、この用語(ことば)を初出(はじめてみる)は、
【八百善料理通】(江戸、文政五年、1822)。
ところが、【八百善料理通(これ)】には「さしみ」が無(な)く「つくり身(み)」のみ。
『八百善』十代目(じふだいめ)"栗山善四郎(くりやまぜんしらう)"曰(いへら)く、
「東都(えど)では"さしみ"と稱(い)ひまする。」
とのことなれど、事實(まことのところ)は彼邊此邊(あべこべ)。
閑話休題(それはさておき)、當日(このひ)の晩餐(ばんめし)。
"魚介(うをやかひ)"は一級品(とびきり)、"廚藝(わざ)"も超一流(をりがみつき)。
"紫菜乾捲(あまのりまき)"に用(つか)はるゝ、
"乾瓢(かんぺう)"の調劑(あぢつけ)は以前同樣(まへにことなるところなし)。
そも、"壺盧(ゆふがほ)"は佳(あぢよ)き食材(もの)にして、
"乾瓢(ほしゆふがほ)"は"淨鐉(しやうじん)"の"溏油(にだしゞる)"にもなる。
否(いな)、江戸(えど)のみならず皇都(みやこ)・浪華(なには)にても、
"甘湯(にだしゞる)"とは、第一(まづ)は"鰹脯(かつをぶし)"を意味(さ)しき。
【料理物語】寛永年間(1624~1644)
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> 《"だし"は》
> "かつほ"のよきところをかきて、一升あらば、水一升五合入、
> せんじ、あぢをすひみ候。
> "あまみ"よきほどに、あけてよし。
>
> 《"精進(しやうじん)のだし"は》
> "かんへう"、"昆布(こんぶ)"、やきても入、ほしたて、
> "もちごめ"、ふくろに入に候。
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【會席料理祕嚢抄】皇都、嘉永六年(1853)にも、
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> 《甘湯(だし)の事》
>
> 一、"だし"は"煮出(にだ)し"の畧言(りやくげん)なり。
> 又、"下地(したぢ)"ともいへり。
> "精進(せうしん)"・"魚類(きよるい)"とも料理(れうり)のもとなり。
>
> 心(こゝろ)を用ゆべき事也。
> "鰹(かつほ)だし"は、"松魚(かつを)"を吟味(きんみ)し、
> 眞(しん)を用べし。
> 尤(もつとも)、"出し(だし)"多(おほ)く入ときは、
> 上皮(うはかは)をけづり除(のけ)、鐵(かな)づちにてうちくだくべし。
>
> "精進(せうじん)"には、
> "昆布(こんぶ)"、"かんぴやう"、"しゐたけ"、"めうがだけ"、
> "柿(かき)の皮(かは)"など用ゆへし。
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とあり、これは旣述(すでにべた)るが若(ごと)し。
仍(すなは)ち、皇都(あちら)でも幕末(えどのをはり)に至(いた)るまで、
イ)"溏油(にだしゞる)".................................."乾鰹(かつをぶし)"
ロ)"喫素(しやうじん)の甘湯(にだしゞる)"..."昆布"、"乾瓢(かんぺう)"など
ま、そんなこんなで一通(ひとゝほ)り、
名人(たくみ)の廚藝(わざ)を十分堪能(こゝるゆくまであぢはひつく)し、
對價(あたひ)、
税歛(みつぎ)を含(ふく)め一萬六千五百圓也(いちまんろくせんごひやくゑんなり)。
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【暗匣】:富士膠片(Fujifilm)X-T4 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡珠】:福倫達(Voigtländer)MACRO APO-ULTRON 2/35 @F2.8~F4
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