辛汁に負けない端正で風味ある蕎麦に香ばしい天ぷら　風情も一緒に味わいたい老舗の天ざるそば : 並木藪蕎麦

以前から伺いたかったお店の一つ。

都営地下鉄／東京メトロ銀座線　浅草駅A4出口を出て左折、突き当りを右折し、交差点で道を横断して左折して少し行くと右側にお店があります。

‛藪‘という看板にぽっと灯りが入り、暖簾がかかった格式ある佇まい。

週末１７時半少し過ぎの少し早めの時間帯でしたが、既にお客様が８割程入っている状態でした。
店内は広めで一番奥に厨房、左側が小上がりの座敷席、右側がテーブル席になっていて、テーブル席の一つに通されました。
新しく建て直されても、老舗らしい風情が感じられる店内はとても心地良いです。

壁に貼られた短冊を見て注文しようと思ったら、「ありますよ」と花番さんがメニューを差し出してくださいました。

メニュー（英語表記あり）は以下の通り。

―冷たいそば―
ざるそば　800円
のりかけそば　1,000円
やまかけそば　1,100円
天ざるそば　1,900円

―温かいそば―
かけそば　800円
花巻きそば　1,000円
玉子とじそば　1,000円
おかめそば　1,000円
天ぷらそば　1,900円
鴨南蛮　2,000円

―飲み物―
ビール　750円
日本酒　800円


初訪なのでやはり冷たいそばから・・・と思って天ざるそばについて伺うと、温かい汁が付くそうでそちらを選ぶことに。

グラスに入った水が運ばれて来るのでそれで喉を潤して待っていると、１０分弱で天ざるそばがお盆にのって運ばれて来ました。

ざるそば：　淡いグレーの蕎麦は太からず細からず、端正な打ち上がり。

喉越しが非常に良く、きりっとしたコシがあります。
そのままいただくと、甘さと共に風味もきちんと感じられます。

汁は広めの口の器に入ってきて温かく、少し口に含むと辛い（濃い）けれど出汁の風味がとても良いです。
これがあの有名な辛汁か・・・と感慨深く味わいました。

汁が濃いので蕎麦をほんの少しつけていただくと、汁の強さに負けてしまうのではないか・・・との予想に反し、意外にも蕎麦の甘味が引き立っていることに気づきました。
温かい汁のお陰で味わいにまろみも増して感じるようです。

薬味は山葵と刻み葱で、山葵は香り良く、葱が綺麗な薄切りで風味も繊細に伝わってきました。

天ぷら：　海老天が４つと獅子唐が１つ、花を咲かせた揚げ方で綺麗な盛り付け。

衣がカリカリ、サクサクと香ばしく、海老はプリッとしていて軽い揚げ上がりですが、程好いコクも感じます。
天ぷらを汁につけることで、辛い汁が円やかになっていくことを感じつつ、蕎麦も一緒に楽しみました。

蕎麦湯は大きめな急須での提供。
汁があらかじめ注がれていたので新しい蕎麦猪口でいただくことにします。
釜湯に近い自然体で、とても円やかで口当たりが良いです。
最後の方はとろみが増してきましたが、汁も綺麗に伸びて、出汁の風味をふんわり感じます。
いただいた蕎麦の余韻に浸りつつ心地良く締められました。


辛い汁に負けない端正で風味ある蕎麦がとても印象的で、香ばしい天ぷらと共に満足行くゆうげとなりました。
甘味が強い汁より濃いめの汁が好みなので、こちらの汁は私の好みに合っていました。
店内が徐々に混んできたのでそれほど長居はしませんでしたが、蕎麦湯までしっかりいただきつつお店の雰囲気も味わってくることができました。

１８時少し前にどっと人が入ってきて相席になり、１８時１５分前には満席になっていたので、早めに来て正解でした。
人気店なので、週末は特に早めの来店が良いと思われます。

近くから聞こえた「せいろ１枚、ざる１枚、玉子とじ1つ」という注文に、「当店はせいろはなくてざるなので、ざるというのは海苔のかかったものということでよろしいでしょうか？」という花番さんからの確認があり、そのやり取りを聞いていて思わずくすっと笑ってしまいました。
（お店によって蕎麦の名称は少しずつ違いますが、こちらのお店だと、「ざるそば１枚、のりかけそば１枚、玉子とじそば１つ」になるわけなので。　笑）

又、「温かいお茶ください」というお客様に、「すみませんが温かいお茶はありません。蕎麦湯でいかがでしょうか」というやり取りがあったり。

そのお店の流儀をずっと守り続けていらっしゃる老舗の風格というものを感じました。
限られたメニューでやっていくことに潔さも感じます。
たくさんのお客様を迅速にそつなくさばく花番さんの対応も非常に印象的でした。

店内を覗けば、常連客から外国人客まで客層も幅広く、老若男女から支持されているお店であることがわかります。

いずれ又再訪させていただきたいと思います。