湯島駅近の期待店 : イーグル カフェ

湯島駅の近くには、「らしいカフェ」、「らしい喫茶店」がほとんどない。チェーン系の喫茶店はあるが、やはり喫茶店には個性がほしいのだ。
湯島駅近の久々の新規店で、早速お邪魔した。
店内はウッディーで明るく、目の前の言問通りは交通量が多いが、店の中に入ってしまえば、ほとんど気にならない。テーブル間がやや狭いとはいえ、駅から徒歩1分の立地なので、贅沢は言えまい。ともあれ、静かにお茶やお菓子を楽しんだり、気安くおしゃべりしたりするには十分だし、また、打ち合わせやちょっとした作業も可能だろう。
店内で目を引くのは真空管アンプだ。そして、入り口上の天井には有名メーカーのスピーカーが設置されている。選曲も悪くない。いい音楽をいい音で楽しんでもらいたいということに違いない。
しかし、この店「も」続かないかもしれないな、と思った。音が大きすぎるのだ。いい店なのだが、音量の失敗で閉店に至ったと思われる店を何軒も見てきた。コンクリートの密閉空間で高級スピーカーを鳴らすとどうなるか。それに、ある程度以上の音量になると、いいスピーカーであればあるほど、中低音もはっきり出てくる。耳以外に、体に受ける波動も生じてくるのだ。本を読んだり、人と話していて、ふと気づくと、何かうるさい。そう思えたら、間違いなく、音が大きいのだ。経験から言って、「この店、音が大きいな」、と感じた店は、長くもたない。ほぼ閉店している。提供しているものが立派であっても、店員の感じがよくてもだ。お店の側にとっては、なぜ客が減っていくのかわからず、不可解な思いでお店をたたんでいるのではないか（実はもう一つ、飲食店を短命に終わらせる要因がある。それは空調の風と音である。これで失敗している店も多いが、音楽ほどの破壊的な影響は及ぼさないですんでいる。なぜならば、空調がガンガン回るのは一年の限られた期間だからである）。
音の大きさは店の居心地を大きく左右する。混んでいる時に音量を上げて、客の回転を早めるという手法は、飲食店の常道だろうが、混んでもいない店内で、話す声を大きくしないといけないほど大きな音で鳴らされては、お客さんは疲れてしまう。そして、そういう店からは、意識するしないにかかわらず、足が遠のくのだ。ほとんどのカフェや喫茶店の場合、流している音楽をお客さんへのサービスだと勘違いしてはならない（もちろん、音楽を売りにする店もあっていい）。利用者の側からすると、ほぼ不要である。ただ、近くの席の話し声がストレートに聞こえないようにしたり、あまりに静かだとかえって落ち着かない人もいるだろうから、やめたほうがいいとまでは言えない。
スターバックスには、すばらしいと思える工夫がいろいろあるが、音量の管理も賞賛に値するだろう。ほぼどの店も、ぎりぎりうるさく感じないところで音を抑えている。スタバの客は長居している人が多いが（それがわかるなら、お前も長居だろうと言われそうだが）、それには音楽の大きさという要素もあるはずだ。
長居の客をどう考えるか、スタバの首脳部にとっては常に検討のテーマだろうが、長居されることのデメリットよりも、再来店してもらうメリットのほうが大きいと考えているのではないか。それは、スタバという大企業だから示せる余裕なのかもしれないものの、客の立場に立った店内環境を第一に考えなければ、競争が激しい都市部での飲食業はおぼつかない。ともあれ、おしゃべり、打ち合わせ、さまざまな作業、いずれの利用でも、音楽を意識させられることは、あまりない（もちろん、スピーカーの真下や正面に座ったら、ちがいますよ。それに、いい音楽が流れて来て、はっとすることもままある）。要するに、スタバの音量が、客が快適に過ごすことができる上限だと考えていい。
イーグルさんは、水準以上の飲み物とお菓子を出し、接客がきわめてていねい（素人っぽい、って言う人もいるだろうが、はじめは誰だって素人だ）。いい店になりそうな気配があるし、長く続いてほしいので、あえて。


追記
気持ちのいい秋の日に再訪。お店の方々のやわらかい物腰は変わらず。店内の音量だが、控え目になったようだ。曲によって音圧が違うから、音量の調節は大変なこと。フロアには、前回訪問時にはなかったワインセラーが置かれ、夜のワインバー展開に重心を移しつつあるのかも。

追追記
猛暑の今年（2020年）、しばらくぶりにお邪魔する。コロナ対策で、席を減らして営業中。
夕方近い午後で、小腹も減っていたので、コーヒーゼリーをいただく。これがすばらしい。コーヒーの味の残り具合が絶妙なのだ。実際、コーヒーゼリーはとぼけた味の店が多い。また、コーヒーゼリーは小さい店が多いが、こちらのものは、しっかりと量がある。
イーグルさんのコーヒーゼリーには、バニラアイスとホイップクリームが付いていて、ゼリーの苦味・香りと三者が高めあっている。
初めのレビューで書いた音量だが、今はまったく申し分ない。心地よい音量だ。末永く続いてほしい。