福来軒/水、ダブルで ! : 福来軒

浅草へ行く途中、田原町での途中下車はこれまで何度かやってみたのだが、今日は新たな試みとして、2駅手前の稲荷町で下車してみる。
(お前その前にちゃんと仕事してんの ?　人間の脳はただでさえ一日9,000回の決断を繰り返してるというのに、必要なの ?　こんな決断/笑)。

スマホにあたればお誂え向きに進行方向、浅草通りを少し浅草方面に進んだところに良さげな中華屋を発見 !　ブルーシグナルを待って横断歩道でフル加速を決め、追い越しレーンを(ね～よ、そんなもん歩道に !)最高巡航速度で歩きはじめた

<R2.3.5>

「福来軒」

BGMは後頭部で鳴り響くテレヴィジョン音声。
こういったテレビが後頭部に配置されるところに着いてしまうと、周りのお客さんたちの視線を一手に集めてしまうので恥ずかしい。これは未だお客さんが少ないうちに、蝶のように食い、蜂のように帰らねば、と思うのだが ……
先客は午前11時40分くらいで男性2人連れ2組、都合4名。と思ったら、4人掛けのテーブルに2人づつ相席となっているようですべてお一人様であった。私は入店のタイミングで奇数目となったので、これから一人客が入ってきたら、今度は自動的に私の着いたテーブルが相席となる番なのだろうと、前もって見当を付けておく。

調子良く続く後客。そんな中、予想に反して料理の到着に時間が掛かっている。
私の隣のテーブルに職人さん風の30代くらいの3人組が着き、ホイコーロー定食大盛り、と告げる。他の客もホイコーローを注文しているお客が多いように見受けられたが、私はホイコーローというものが何者なのかを知らない。
回鍋肉 ……
漢字の字面をとらまえると回転する鍋に乗った肉料理のようだが、おそらくそれは違うだろう。何故ならば、既に食事している方々の中にも確実にその料理を注文しているお客さんがいらっしゃるであろうにも関わらず、店内にモータの駆動する磁気騒音が一切聞こえなかった為。
(それか、世界のマブチモーターがよっぽど凄い静音モータ開発したか)

そして後頭部のテレビ音声と、隣の三人組の内の一人がスマホで観始めたテレビだか動画だかの音声とが不協和音を奏で始めれば、もうそんなことだけでけっして小さくないストレスに晒されてしまうのは、ほんとに俺だけなのかなぁ ?　ほんとに俺だけがおかしいってこと ?

“麻婆豆腐定食” @900

店頭ではその定食が900円とあったが、テーブルのメニュウでは950円となっているが、果たして。また、そのメニュウの中には本格四川麻婆豆腐(単品)1,000なるものがいるではないか !

そんなこんなようやく本格的ではない(笑/だってそういうことでしょ ?)、言わば簡易的麻婆豆腐が舞い下りる !!
しかしこの簡易的な皿すら、日本式中華で出てくる麻婆豆腐を、色合い、風味で四川方向に軽く凌駕しているものだと思った。ただ細かいこと言うと悲しいかな、現実には四川に麻婆豆腐なんか存在しないんだけど。
味噌感、醤感というか味が非常に濃厚で、これは私好み。中華にしては注文から提供まで時間が掛かるなと訝ってしまったが、これは厨房を守る方の“一球入魂”を意味していることに間違いないと、寧ろ肯定的に評価したい。
そのうちに案の定私の前におじさんが相席で着いて、奥行寸の少々貧弱なテーブルのこと、向かいのおじさんの陣地を確保してあげる為にご飯、スープと麻婆豆腐の皿をそれぞれギリギリまで手前に引きつつ、更に黙々と食べ進む ……

添えられたスープの濁りと味気のなさから、こちらのラーメン系のポテンシャルには疑問を感ずるも(というか元々ラーメン系のラインナップはほぼないかも)、また、最初店の佇まいに対して些か強気な値付けとも思ってしまったんだけど、結論的にこちらの料理はかなりのハイレヴェルにあると思う

そしてこういったパブリックな場で(ただの大衆中華屋さんだけどね)スマホの音声をONしてテレビを観ていた私の横のテーブルに陣取る三人組が、にわかにパフォーマンスを発揮し始める !

「禁煙じゃないよね ?」
「禁煙じゃないっすよ !」

と煙草に火を入れかけたら、お店の人から「3月1日から禁煙になったんですよ」と窘められる。
こういった場面での人間の振る舞いとしては、禁煙か禁煙じゃないかというルールを気にするのではなくって、このような狭い空間に他のお客さんたちの犇めく中で、それでも煙草をやって良いのか否かを“自分の頭で”判断しなければならないということなのに、煙草飲みの人たちにはどうもそれが永久に出来ない、ということこそが、彼らが自分で自分の首を絞めてしまっている最大の要因ということが片腹痛い。

畳み掛けるように「ご相席ありがとうございました～」と、食事を終えて出て行く先客達に声掛けするお店の人のお礼が耳に入れば、その中の一人がぽつりとつぶやいた

「相席なんてやだよなぁ、知らないやつと ……」

私も相席は嫌だが、まさかこういった大衆中華屋に自ら突っ込んで吐く台詞ではないだろう。それを言うには水一杯800円のお店に行かないと !　うっかりお代わりしちゃったならば、理論上1,600円の !(笑)
(逆に水一杯800円の店が「相席お願いしま～す !」って言ってきたら、ギャグとしては最高に笑えるけど。ただそういう店で相席になるのはおそらく石田ゆり子さんとか井川遥さんだろうから、皆黙っちゃう)

―― そして口から出まかせの水一杯800円 !　骨の髄まで足立区民として心底ウケるわ (笑)　逆にワンコインランチの店で水一杯800円にしたら面白いのに。フェラーリ一台100万円ぽっきり !　で、諸費用3,000万円 !　みたいなね。またタダでヒント与えることになっちゃったなぁ ……