過橋米線/憂いを共に : 過橋米線 秋葉原店

新型コロナ、即ちコロナ・マークⅡの季節をやり過ごす中で、毎日ではないものの在宅勤務、及び家飲みというものを余儀なくされている私だが、今まで自分の部屋というものは、夜中に這う這うの体で帰ってきてバタンキューする場所でしかないと割り切っていたんだけど、そこである程度の時間を座卓で過ごさなければならないという羽目に陥って、ちょっとお尻の座りが良くない。

先日、歴代仮面ライダーの中では最も狂暴なライダーに似た名前のインターネット通信販売コーナーでmy枕を買って、続きmyロックグラスを買ってしまった。ケチったので持ち重りがして、口当たりも高級感もいまいちなんだけど、ふつうのコップでウィスキィをやるよりはそれでもかなりマシになったと思う。
あとはこのマットレスに座って、枕のお尻への挿入量を加減して骨盤の確度を調整するという原始的な健康法をなんとか改善したい(そんなの健康法ではない !)。
気を抜くと腰が疼きだし、かなり良くなってきてはいるというもののそれが今悩まされている足の痛みと相乗しだしたら堪ったものではない !　という恐怖に背を押され、同じく仮面ライダーに似た名前のやつで、生まれて初めて座椅子というものの注文ボタンをクリックしてしまった !

―― ダブルクリックしたら2つ届いちゃうのかな ……　謎だ ……

<R2.5.21 末広町>

「過橋米線」

メニュウの中の屋号には、“中国雲南酒膳坊”と冠されている。
そこでスマホのマップにあたってみれば、雲南省というのは四川省の南に隣接しており、ということは東十条の上海のママからしたら、どっちどっちのも田舎ということになろうが(おいっ !)、西側がミャンマーにくっついているからであろうか、Black主体の内装には中華、というよりも、もっと深いオリエンタルを感じる。

―― これみよがしに張られた数枚の芸能人のサインに、否が応でも世俗に引き戻されるけどね

フロアはすべてテーブル席でけっこうに賑わっていたが、その大半は彼の国の人たちであったので、この瞬間は幸いにも集団免疫が確立された空間となっており、にわかにホッとする。
ホワイトボードの中に本日の日替わりランチ、“海老と玉子の炒め”、とあるのを注文後に気づいて一瞬動揺したが、こういったお店の、こういった安価なランチに用いられる海老はまず間違いなく例のリン酸加水加水のものだろうと、自分の洞察力のなさを慰めつつ料理を待った

“麻婆豆腐セット” @730也。

一見してご飯に対し、麻婆豆腐が大量。
そのカラーリングは、オレンヂの深みが若干不足気味か。ふつうの肉薄のメタルスプウンが添えられており、確かにそれは食べやすいだろうが、情緒的にはそこはかとなく物足りなさを覚える。逆に箸は中華居酒屋にしては珍しく、洗い箸ではなくふつうの割り箸で、これは高得点 !

その麻婆豆腐は、作り置きをどうこう言うつもりはないが、そして挽肉の質も良いとは思えないがしかし、別段筋張ってもいなく、でもなんだろう、不味くはないが頭抜けて美味しくはない、としか言いようのないもの。
小鉢のザーサイを細切りにして辛くしたもの(なんだよそれ !/笑)とも白いご飯を相乗させたかった為、余計に麻婆豆腐が余っちゃったわよ ……

ホールの彼はお客のほとんどが同胞にも拘らず、日本人にもとても丁寧な接客をキープしてくれており、こういった状況で晒されやすい“仲間外れ感”を少しも覚えることなく、このことがお店の人気に直結しているのだろうと腑に落ちた

透明なイクラの砂糖牛乳漬けのディザート(ふたたび、なんだよそれ !)をやりながらあらためてあたりを見直せば、数枚のサインの中で一枚だけ、誰のものか分かるものがあった。
落語家のヨネスケさんのものである。何故分かったのかというと、横っちょにルビがふってあったからなのだが(笑)、その座右の銘がとりわけ印象的であった

“優しさは　人の憂いを　共にすること”
―― 桂米助 ――

―― 優しさってなんだろう ?　愛することがけっして後悔しないこと、ってことだけは知ってるんけど ……

【以下余談】

前の晩、帰宅したらデカい段ボール箱が届いていた。
開梱にはカッター厳禁と書いてあったが、護身用、兼鉛筆削り用のスパイダルコのブレードを片手で引き出し、テープを素早く切り裂いていく。その時にもしも品物まで斬りつけてしまったときには、もう電気工事士をやめる覚悟で !
(お前電気工事士じゃないだろ。ただ断線した家電のケーブルを詰めることしかできないオトコだお前は !)

そしていよいよ“ブツ”をとり出す。
これまでの人生、まさか自分が座椅子を買うような人間になり果てるとは夢にも思わなかった。男というものはこうして、老人という名の別の生き物にすり替わっていくのだろうか。俺とかクリント・イーストウッドとか高倉健は、絶対にそうはならないと信じていたが ……

―― そして屈辱の中、試しに腰を据えてみた人生初のmy座椅子は !　思いの外座り心地良く、ちょっとニヤけてみちゃったりして ……