Pâté en croute et Volaille de Bresse en vessie 至福の味わい : a table

8月後半に雌伏の時を経たので、明けたら至福の時を味わいたいとa tableのテーブルを予約。
店舗は自宅から歩いて10分ちょっとの妻恋坂下にあります。
対面にいつも調整や部品購入でお世話になっている自転車屋があってちょくちょくこの界隈には来るのですが、食事モードではないのでこの10年間一度も食事したことがありません。
満を持しての訪問です（ってことにしておこう）。

この界隈にはすき焼きのいし橋、丸五、小川軒、こなから、神田川、個人的に気に入っている焼鳥としなどが立ち並んでいて、どちらかというと江戸下町の美味しいものがいただけるイメージがありますが、フレンチもこちらと川端がありますから人知れず明神下はグルメタウンｗになっているということで。

こちらは先日まで改装中とのことで休業していましたが、無事終わったようで店内すっきりしています。
これまで吹き抜けだったホールをなくして2階にテーブルを増設し、1階のカウンターはウエイティングバーのようなイメージですが、事実上使われないようです。
2階正面のテーブル席に座り、クレマン・ド・リムーをいただきながら早速メニューを眺めます。
ワインリストも見ているだけで楽しいですね。素敵です。

笑顔がチャーミングなホールの女性（マスクでよく見えないけど）によると、とてもポーションがあるので、通常お二人であれば Entrées を2皿、les plats principals を1皿シェアして召し上がればお腹いっぱいになりますとのこと・・・うーん、この言葉に今までずっと騙され続けてきたのでｗ簡単には信じませんけど。

実はここから à la carte で注文するまで30分くらいかかりましたｗ
いつものようにお互い食べたいものを主張し合って一歩も譲らないので膠着状態な訳です。
Paul Bocuseのスペシャリテがご近所で食べられるんだったらもうこれは絶対外せないでしょ。
日本ではこれまで出会ったことがありませんが、このメニューを覚悟と矜恃なしに掲げる店は100％ないですから、これは何としても譲れません。

ということで、揉めに揉めてようやくメニューを決めましたｗ
まあこの工程がいつでも一番重要かつ楽しいので、時間が許せば素材一つ一つまで伺いたいくらいですけどご迷惑でしょうから最低限の情報で想像力を膨らませて楽しみました。
ホールの女性にお願いしたら、お二人でそんなに召し上がって大丈夫ですか？クスクスの仔羊は200g、ヴェッシー包みのブレス鳥も400gはありますがとのこと、わははは、雌伏の時を経て至福の時を迎えるわけですな。

ワインは最初から赤です。
パストゥグランかぁ、ガメイがブレンドされていて若干軽いですから仔羊には負けると思いますが一本めにはいいよね。
抜栓したてでもブーケがはっきりしていてまずまず美味しいです。

お腹減ったね、などと話していたらアミューズが出てきました。
とてもいい色に焼けたキッシュロレーヌ、それと豚と鳥レバーのテリーヌが楊枝に刺さってます。
このキッシュはふわっとしっとり、テリーヌはしっかりした味わいですね。
なるほどこういうしっかりめの味わいなんだね。
フュージョンだの軽さがどうのと喧しいのは苦手なクラシックフレンチ好きとしてはとても好ましいです。

アミューズを美味しくいただくとすぐに pâté en croute が登場。
お〜期待通りの美しくて端正なパテですね。
コンクールにそのまま出しても優勝しそうな申し分のない色とかたちです。
ファルスの詰まり方が完璧、冷やし固めたコンソメジュレもシックな色合いで食欲をそそります。
焼き上がりのホールの状態をぜひ拝見したいものです。

で、早速いただくと、まあすごい。
泣くほど旨いよこれ。
パテの焼き切った感のあるさっくりとした食感に、ファルスのしっとり肉とコンソメがついてきて、大変味の余韻が長い一品ですね。
レバーにほろほろ鳥、ハツなどの内臓も細かく刻んであるんだそうで、しっかり混ぜ込んでピスタッキオなども入れて空気を抜いて慎重に詰め込んであるのがわかります。
目を瞑って食べていると永遠に味が口の中で広がり続けるような錯覚に陥りますｗ
ああ、こんな旨い pâté en croute 初めて食べた。
フランスでもこんなに美味いのに出会ってないよ。
すごいですびっくりです参りました。

絶品の pâté en croute でいきなり呆けましたｗ
続いてじゃがいもの冷製ヴルーテです。
ヴィシソワーズと同じじゃがいもの冷製ポタージュですが卵黄と生クリームを使って濃度を高めるのがヴルーテですね。
たっぷりのキャビアにチキンコンソメも申し分のない量が投入されています。
ポタージがとても贅沢な味わいになっています。
温泉たまごのとろりとした味わいがまたゴージャスなんです。
パセリまで美味しく感じるよ。

パテもマイギネスでしたが、このポタージュも冷製ではこれまでのNo.1かもしれない。
いや、北島亭のほうが・・・いい勝負ですｗ
クラシックフレンチの大御所、最近厨房から愛ある怒声が聞こえなくなってちょっと寂しい。
それにしてもこのチキンコンソメのジュレは凄すぎる。
こんなに美味しいのをいただいちゃうと自宅でヴィシソワーズなんて作れないよ。

Entrées でこれほど満足感が高いとは思ってもいませんでした。
ご近所にこんなにクオリティの高いクラシックフレンチがいただける店があったなんて、ウルトラ機会損失ですｗ
チャリンコ屋に寄ってる場合じゃなかったよ。
さて、いよいよメインですね。楽しみです。

先に登場したのはピカピカの銅鍋に入った仔羊です。
しっとりと炊かれたクスクスが別皿で供され、自分で好きなだけクスクスに乗せてよく混ぜていただきます。
仔羊のほかに芽キャベツ（こんな時期に手に入るんですね）、ズッキーニ、人参、ペコロス、蕪なども入っていてバランスの取れた一皿です。

これは・・・ヤヴァい×100ですね。
この仔羊とんでもなく美味いです。
たしかにプレサレで、肉にほんのり塩気があり、驚異的に柔らかくて口の中で数回噛むと消えます。
旨味と香りだけが口の中に余韻として残ります。
すごい。こんな美味い仔羊は食べたことない。

つけ合わせのアリッサを少し乗せてもピリッと辛くなってクスクスにアクセントがつきます。
アリッサってこういう使い方もありなんですね。
モンサンミシェルのプレサレ仔羊は大変希少で、半身だけ仕入れることができたんだそうです。
いただくことができて大変ラッキーでした。
雌伏の時を経てもまだ食運の良い状態は続いているようです。

お、同じくピカピカの銅のパンに乗せられてヴェッシー包みがやってきましたよ。
先ずはお披露目の撮影会ｗあれ、イメージよりも小さいですね。
久しぶりにお目にかかりましたが、丸鶏じゃないから大きさは控えめでした。
一旦テーブルから下げられて膀胱ちゃんがナイフで裂かれ、ブレス鶏がデクパージュされて再び登場です。

トリュフの香りが鼻腔をくすぐります。
バターの濃厚なソースをたっぷりとつけていただくと、しっとりとしたムネ肉がほろほろと崩れていきます。
さっきプレサレの仔羊に感激したばかりだというのに、今度はブレス鷄かあ。
なんて贅沢なｗまさに至福です。
ブレス鷄というとバロティーヌとかクリーム煮などでいただくことが多いですけど、まさかまさかのヴェッシー包みがいただけるとは大感激です。

で、こちらの garniture はグラティネです。
どこまでもクラシックだねいいねぇ。
シンプルな味わいでブレス鷄の濃厚なソースにもよく合いますね。
こういうお腹にズシンと溜まる感覚のフレンチは久しぶりです。
懐かしい感覚です。日本でもこういう感覚が味わえるなんて嬉しいなぁ。

Entrées と les plats principals だけでこんなに満足感が高いとは望外の幸せです。
先日いただいたラトラスとも違ってとても骨太なフレンチを堪能しました。
これはすごい。すごいっていうか素晴らしい料理でした。
パテもヴルーテも仔羊もヴェッシー包みもびっくりです。
完全にやられちゃいましたよ。
あんまり美味しくてワインを飲むのを忘れちゃったくらいですからｗ

ディジェスティフにブルゴーニュのマール、アヴァンデセールにはアルマニャックのクレーム・ブリュレをいただいて、デセールはガトーショコラです。
ベルガモット、ホワイトチョコ、マロングラッセ、カスターニャが宝箱のような皮製の箱に入っています。
きれいすぎてちょっと手が出せないｗ

食後の珈琲をいただいて素晴らしい皿を振り返りました。
まるで将棋の感想戦みたいだｗ
話しているとまた最初から食べたくなっちゃうから困り物です。

ああ美味しかった。
中秋シェフにお見送りいただいて（たくさん召し上がっていただいてと言われてしまいましたが、まだ全然食べられますのでメニューを見ながら次回の楽しみにしようと思います）名残惜しいですが店を出ます。
これはすごい店を見つけたもんだ。
ビストロ風ではありますが、名のあるレストランのコース料理にも全く引けを取らない素晴らしい料理でした。
店名はとてもアットホームですけど（お母さんが家族にご飯ができたからテーブルに着いて！という意味でa table !といいます）、出てくる料理はグランメゾン級ですよ。

ご馳走様でした！！