随所に良さはあるのですが、まだ初心者マークも？ : 蕎麦といろり焼 創

暫く前に本郷通りを小川町交差点から聖橋方面へ歩く機会があったのですが、その際、進行方向右手に新しいお蕎麦屋さんが出来ているのを発見し、その場で食べログでチェックしてみました。
すると、店舗登録が既になされており、しかも食べログ会員店であることも分かりました。

食べログ会員店によく見られるレビューの傾向については、敬愛するレビュアーのkuidouraku11さんが詳しく分析していらっしゃいますが、その点から見て、当店にもやや不安な要素を感じました。
当店の運営主体は、トゥルーバグループホールディングス株式会社傘下のドゥルーバフーズ株式会社のようですが、企業系には企業系の陥りやすい罠のようなものもあるんですよね。
kuidouraku11さんの分析も参考にしつつ、当店の今後のレビュー動向については注視していきたいと思います。

トゥルーバグループホールディングス社は、コンサル事業やファイナンス事業を主業とする会社ですが、金融機関向け事業として、ABL(ASSET BASED LENDING＝動産担保融資)関連サービス(動産評価等)を手掛けており、その延長で畜産事業(特に肉用牛の肥育事業ではABLがかなり実用化されているため)にも参入しています。
このため、トゥルーバアグリ株式会社を2017年10月に設立していますが、具体化の第一弾としては、大分県豊後高田市で放牧地を利用した肉用牛(黒毛和牛)の繁殖事業に新規参入しました(トゥルーバファーム大分株式会社)。
なかなか珍しいタイプの企業と言えると思います。

畜産分野への参入により、食の分野との縁が出来たこともあってか、2020年3月にはトゥルーバフーズ株式会社を設立、飲食分野の1号店として当店をオープンする運びになったようです。
1号店が何故蕎麦を前面に出しているのかはよく分かりませんが、農業参入した大分県豊後高田市の名産品が蕎麦や白ネギなので、そこにご縁があったのかもしれませんね。
因みに、豊後高田市の蕎麦と言えば、私は、大分出張時に「そば処 響」というお店を訪れてレビューしたことがありますが、残念ながらあまり高い評価には至りませんでした。

当店のランチタイムは11時半から。
この日は、その時間を目指して伺いました。
小川町交差点から聖橋方面へ70〜80mほど坂を登った右手にあるビルの1階にお店はあります。
連合会館の手前で、2階にインドカレーの「ガンディーマハル」が入るビル(保坂ビル)ですが、お店の入口はビル全体の入口より小川町交差点寄りの場所になります。
白いビルの外壁に合わせたように白を基調としたファサードのお店で、純白の暖簾や木製の扉、看板などが小綺麗に整えられており、蕎麦専門店らしい落ち着いた雰囲気も醸し出しています。

「営業中」と書かれた札が掛けられていことを確認して入店しますが、店頭にはランチメニューが掲示されていましたので、それもチラッと眺めます。
セットメニューが数種類あるようです。
また、新そばの表記もありましたが、産地は豊後高田市では無くて北海道の雨竜町産(元気クローラ組合)のものと表示されています。

小綺麗な店内は、入ってすぐ左手に冷蔵庫が置かれ、牛肉が保管されています。
前記の豊後牛かと思いきや表示を見ると「北海道畜産公社」と書かれていました。
しかも黒毛和種ではなくて乳用種（ホルスタイン）ですね。
実際の農業参入は大分県でも、畜産ABLが盛んなのはやはり北海道ということになるのでしょうから、トゥルーバグループホールディングス社は北海道との関わりも強いのかもしれませんね。
そうすれば、雨竜町産蕎麦や北海道畜産公社の牛肉などとも整合性が取れます。

客席は、L字型のカウンター席が10席とテーブル席が14席配置され、計24席のキャパです。
カウンターの席間とテーブル席の中央にはパーテーションが設置されています。

お店は厨房に男性2人、ホールに女性2人の計4人で切り盛りされています。
女性店員さんの誘導でカウンター席に着席しました。
卓上にはメニューが置かれており、店頭掲示のランチメニューのほか、メニューブック内に蕎麦や蕎麦あての単品メニューもあります。
ただ、件の冷蔵庫にあった牛肉はメニューに無いので、夜の部とは別メニューになっているようですね。

注文は、ランチメニューから日替り昼膳のC(鴨汁つくねせいろ＋夏野菜の天ぷら＋ご飯もの)@1,430円にしました。
本日のご飯ものは、牛すじ豆腐丼とのことでした。
この時点では、内容と値段の比較としては悪くないかなと思いました。

先客はいなかったので、厨房では私の注文の調理にかかっているのが分かります。
待つこと6分ほどで牛すじ豆腐丼と夏野菜の天ぷらが提供され、蕎麦と鴨つくね汁は、それから1〜2分での提供となりました。

蕎麦はやや緑がかって見えますが、細めで均質な蕎麦。
手打ち感、手切り感はあまり無いので、機械打ちの可能性が高いですね。
鴨つくね汁を付けていただきます。
雨竜町元気クローラ組合の蕎麦は、レラノカオリとキタワセの2品種だそうですが、今回のがどちらなのかは分かりません。
ただ、蕎麦の香りのしっかりしたコシの強い蕎麦で、とても美味しかったです。
鴨つくねも、軟骨入りなのかコリコリ感があって旨味もたっぷり。
難点は、蕎麦の量がとても少ないこと。
店員さんにお聞きすると、単品でも並盛りは同じ量とのことですが、蕎麦専門店には蕎麦の味をたっぷり楽しみたいと思っている人も多いと思うので、これは何とかしてもらいたいところですね。

夏野菜の天ぷらには塩が添えられており、それでいただくのですが、野菜が小さ過ぎです。
ナス、レンコン、かき揚げの3点ですが、ペロッと平らげてしまいました。

ご飯ものの牛すじ豆腐丼は、正直美味しくないです。
いかにも取ってつけた感が強く、この一品で全体の評価を減じかねませんね。
お店の雰囲気はいい感じだったので、それとは全く似つかわしくないご飯ものです。
例えば炊き込みご飯など、蕎麦との品の良い相性も考え、かつ、お店の雰囲気ともマッチしたものにしてもらいたいと思いますね。
鴨つくねせいろだけなら味評価3.7点くらいはあげられたのですが、天ぷらとご飯ものの減点で3.4点が精一杯です。

全体として、随所に光るものも感じさせながらも、全体としてはまとまりを欠く(高い満足度を提供出来ていない。)結果となっており、それは飲食業界に対する経験値不足からきているとも言えるのではないでしょうか。
現状だとランチで夜の部の集客に結びつけるという効果は果たせていないように思いますし、今後譜代絡みの高評価レビューが登場したとしても、それは所詮は付け焼き刃だろうと思います。
真に実力のあるお店を目指すには、是非自力で勝ち取ってもらいたいですし、そうでないと長続きはしないと思います。