美味しくて食い過ぎ飲み過ぎ　火入れのお見事な焼鳥を堪能しました : 焼鳥 茜

最近、夫婦揃って焼鳥熱が高まっています。
私はもともと低くはなかったのですが、最近はワイフもヒートアップしてきて、機会があると焼鳥屋をあっち行きこっち行きするようになりました。

焼鳥って作業工程としては鶏肉を串に刺して焼くだけですけど、食べれば食べるほど奥が深いものだなと実感します。
素材の選び方、部位によっては寝かせ方、鶏肉の切り付け方と大きさ、串の打ち方、火入れの加減、塩の選定やタレの味加減などは店によって本当に千差万別、同じ焼鳥でも、同じ地鶏でも、同じ部位でも全然違って感じることが多々あります。

本日は予約がなかなか取れないらしい神楽坂上の茜にやって来ました。
先日この近くで焼鳥をいただいてかなりの消化不良だったもので、神楽坂の仇は神楽坂で取ろうかなと。
板塀に「茜」と一文字だけ浮かび上がる店構えは、焼鳥屋のそれではなく、料亭風ではあります。
右下に「焼鳥」と染め抜かれた白い暖簾を潜ると、ガラス戸の先はコの字型のカウンターが設えられており、寿司屋かカウンター割烹と見紛うばかりのシックな佇まい。
なかなか細部にもこだわりのある造りと仕様ですね。落ち着きがあります。
あ、ガラス戸には「神楽坂焼鳥茜」の6文字が浮かび上がります。仕掛けが憎いです。

我々は焼き台の脇、入口近くのカウンターに通されました。
ここは店主に最も近い場所で焼き台が丸見えですから特等席ですね。
予約の際に焼鳥についてあーだのこーだの話したので、うるさい客だと思われたのでしょうか（笑）。
でもこの席は嬉しいです。

和服姿の品の良い女性がカウンターからふわふわタオルのおしぼりを渡してくれました。きっと奥様ですね。
店の佇まいと同じく、おしぼり一つにもこだわりを感じます。
お箸も美しく先の細いものをお使いで（割り箸ではないのがまた良いです）、ナフキンも布製の比較的大きいものがきちんと畳んで置かれています。
こういう細部に気を使う店って、とても居心地が良いものです。好きです。

ではまずはお酒を。柑橘サワーとハイボールにしました。
ワイフの柑橘サワーは何種類かある果実から選べるようで、愛媛の姫レモンサワーにしたようです。
カウンターの上に姫レモンを置いてくれましたが、見た目はどうみても小さいみかん。
でも絞ると確かにレモンの香りと味がします。不思議な柑橘があるものですね。

最初に出てきたのは比内地鶏の卵の燻製でした。燻製香が良いですね。
下に海苔が敷いてあって味わいにも工夫があります。
比内地鶏の卵って案外軽いというかあっさりしていてとても食べやすい。
やっぱり卵まで美味しい鳥なんですね。

続いて前菜はぐるぐると鞍掛豆、それに銀皮を炊いたものが一皿で出てきました。
こういう料理も割烹っぽい設えです。意識してこういう感じにしているんでしょうね。
銀皮は砂肝を覆っている薄い皮というか膜ですが、サクサクコリコリとしていてこういう風に炊くと良い酒のアテになります。
若芽と一緒に炊いてあるのも春っぽくて好きです。
ぐるぐるは芥子酢味噌を乗せていただきました。ひともじ好きです。こちらも冬から春にかけての味覚です。爽やかだ。
鞍掛豆はお浸しがちょこなんと乗っていますが、堅めに炊かれていて結構自己主張しますよ。美味しいです。
冬から春にかけての美味しいものを少し摘んで気分が上がります。

綺麗な彩りのサラダを挟んで、いよいよ焼鳥スタート。
こちらもお酒を日本酒に切り替えて準備万端です。
ワインの品揃えも豊富なんだそうですが、我々は焼鳥には日本酒なので大洗の彦市を1合いただいてちびちび。
焼鳥には日本酒です。

最初の一本は、つくば茜鶏のねぎ間です。
こちらのねぎ間は皮を残したムネ肉を使い、ふっくらした白葱を合わせてあります。
火入れは表面をしっかり炙って中は熱を籠めて柔らかく仕上げます。
非常に火入れに気を使っていることがわかります。
ムネ肉のあっさりしていながら旨味の強さを引き出してありますね。とても美味しいです。
皮のジューシー＆カリカリ感とムネ肉との対比も素晴らしい。

かぶりつきで焼き台を眺めていましたが（笑）、比較的小さめに肉を切り出して形を丁寧に整えてあり、火入れは中に熱を閉じ込めるように表面を上手に炙っていきます。
焼き台はこぢんまりしていますが、傍に珪藻土を和紙で巻いた焼き台にも炭が熾きており、部位によって使い分けるようです。

ユニークなのは鉄久（串を置くための鉄の棒のことです）で、奥の鉄久は幅広で手前の鉄久は普通幅のものを置いています。
鉄久の太さを違えている焼き台は初めて見ました。
店主は目の前にいますから、なんで鉄久の太さが違うのか聞くと、そんなこと初めて聞かれたと言いつつ、肉の中に炭火の熱を閉じ込める感覚が欲しくて奥の鉄久を太くしているんだそうですよ。
感覚的なものなんでしょうけど、こういう細部へのこだわりは大事にして欲しいです。

続いて出てきたのは大館高原比内地鶏の雌のモモです。
高原比内地鶏は雌のみの出荷で、現在2系統ある比内地鶏のうちの生産量が少ない方の地鶏なんだとか。
これもすごくきちんと形が整えられていますね。
焼鳥というと一番上（先）の肉を大きくして塩も強目に当てて焼くというのがこれまでの常識でしたが、こちらは上から下まで大きさは均一で、塩も均等＆薄めです。
モモのほうがムネよりもほんの少し火入れが強めですが、脂の強さを考慮してのことだとわかります。
こちらの串も、肉にとてもしっかりした弾力があって噛むごとに旨味が強くなりますね。とても美味しいです。
押し出しの効いた串ではありませんが、肉の特性をよく理解して丁寧に火入れしてありました。
いろいろこだわりの強い店なんですね。こういう焼鳥バカ大好きです（笑）。

このまま一本一本感想を書き記しているといつものようにバカみたいに長くなるので（笑）、以下簡潔に記します。
・トマトあまえぎみ3色　焼いてから表面の皮を剥いて出してくれます　糖度の高いトマトでした
・さつま揚げ　口直しというか良いアクセントになります
◎砂肝　ずり壁を外してあるのでユニークな形をしています　いつもの食感とは違いますがとても美味しい
○ハツ　生の黒胡椒が振り掛けてあって個性的な味　開いて焼き上げてあり火入れが完璧でした
◎えのき　えのきの概念が変わる美味しさ　焼き上がりは焼き始めの1/3くらいになります　焼き色が素晴らしい
◎レバー　一転して優しい火入れ　口溶けトロトロでクリームのような食感が堪りません　これも美味しい
○南蛮漬け　焼いた手羽先の肉をほぐして野菜と一緒に漬けてあります　爽やかな酸味と甘み　手羽先が美味い
○つくね　串から外して黄身と一緒にお箸でいただきます　タレの甘みとつくねの肉汁が口内に溢れます
◎セセリ　本日一番でしょう　弾力があって噛み応えがあって旨味の塊でした　悶えちゃいました（笑）
○肩　つくば茜鷄です　振袖とは違うとか　モモより更に強めに焼いてありますが決して焦がすことなく完璧な火入れ
○つぼみ菜　子持ち高菜とも言うそうです　ほんのり辛味と苦味があります　春っぽくていいですね
◎皮　打つ時に丸く巻いてあるので弾力がさらに増してジューシー　この店のタレが最も合う串でした
◎ぼんじり　比内地鶏です　大きめに切り出してあってジューシーですが皮とは違った食感であっさりしています
◎漬けモモ　先にいただいたモモより大きく切り出して食べ応えがあります　これは食べたことのない味です

まだ行けますかとのお声掛けをいただき、もちろんと答えて続きを。
・赤カブ　はっきりした甘みがあって脂の強い串が続いた後にはぴったりです　酒を変えるのに良いタイミング
○ささみサビ焼き　ここでサビ焼き登場　表面の火入れがお見事でここまで美味しいのはなかなか食べられない　
◎振袖　肩よりも脂が強く甘みを感じます　みかん胡椒を乗せるととても爽やかで脂の旨味が引き立ちます
◎あか　内モモです　モモ周辺をこれでもかと繰り出してくるマニアックな店主ですね　モモ好きとしては堪らない
◎ソリ　お次もモモ周辺（笑）　大きさはまずまずで火入れが完璧　セセリと同じくらい美味しかった
◎手羽　何と骨から肉を外して手羽肉だけを焼いてあります　骨をしゃぶる醍醐味はないですけど美味しいです　
○椎茸肉詰め　食べやすいように切って出してくれました　香りが高くて肉厚の美味しい椎茸をお使いです

食べたいものはありますかとのお尋ねをいただいてリクエスト2本。
本日一番美味しかったセセリをお代わりしました（笑）。この旨味を引き出す焼きの技術は素晴らしいです。
セセリには案外脂があるのですが、それを適度に落として旨味だけを残す焼き上がりです。
焼鳥が小さめですぐに食べちゃうので、極力ゆっくり噛み締めていただきました（笑）。

もう一本は背肝。これも大好物なのであれば必ずいただきますが、運良くありました。
他の串と同じく、表面を焼き締めて中にじっくり熱を入れていく焼き方です。
途中で焼き台の場所をこまめに変えてタレを纏わせつつじわじわと焼き上げます。
見ているだけで喉が鳴りますよ（笑）。
焼き上がった背肝は内臓肉とは思えない弾力と濃厚な味わいで、これも旨味大爆発です。
また悶えちゃいました。

まだまだ食べられますけど、気がつくと他のお客は全員いなくなっていて、我々二人が最後の客になっていました。
初めて来たのにまたこういう状況になるまで食べて飲んでしまい、恐縮しつつ締めていただきました。
アツアツですがあっさりした鳥スープをいただきつつ、焼鳥についていろいろ会話ができました。
焼鳥食べている最中もいろいろ聞いたんですが、店主は饒舌＆様々伝えたい想いがあるようで、かなり長居してしまいました。
親しくしている焼鳥屋も紹介してもらったりして、とても楽しい時間を過ごすことが出来ましたよ。

大満足です。とても美味しかったです。
再訪をお約束してお暇しましたが、店先でずっと見送っていただきました。
このパターン、最近多いな（笑）。
とても美味しかったので、ちょっと飲み過ぎ＆食べ過ぎましたね。

ご馳走様でした！！