「種ものは如何に」と、二度目の訪問したら、やはり丁寧なお仕事が垣間見れました。 : 虎ノ門 元禄

久しぶりにこちらの蕎麦を食べたくなって訪問しました。前回端正な仕事に感心したこちら。普通なら天麩羅そばとかでしょうが、この日は何となく軽めで行きたい感じ。

辛子おろしと悩みましたが、冷やしたぬきにしました。

平皿に盛られたたぬきは、揚げ玉が振られた上に多めのおろし、若布、胡瓜の千切り、椎茸の含め煮、蒲鉾の下にほうれん草のお浸し、焼き餅がのっています。具の種類は多いものの量は少なめ。

蕎麦つゆは、心なしか薄目で量はせいろと同じくらい。全部かけましたが、少し量的には物足りない感じがします。薬味は以前と変わらず見事に削ぎ切られた葱に山葵が添えられています。

二八蕎麦は相変わらずの出来で美味いです。おろしのきめ細やかさ、椎茸の含め煮の甘味の付け所、お浸しの湯掻き具合と、一品一品自体が、夜の蕎麦前で出てきても通用する丁寧な仕事です。ただ、残念だったのは、柚子の皮が添えられてはいるものの2､3ミリ程に切られた蒲鉾は、興ざめだったです。一方、焼き餅は小振りながらも一つ一つ焼き目がつけられていて、たぬきに入っていたのは初めてではないかな。

全体的には、大人の昼食には十分は出来栄えですが、コスパや量を気にする方には、1200円は高いと感じるかもしれませんね。とはいえ、こちらの価格格差はそれほどではなく、700円から1700円程度のレンジは、これだけの仕事なら十分コスパ的に優れていると思うのです。

日本橋の元禄に以前伺ったことがあるのですが、正直余り蕎麦にいい印象がなかったので、こちらもスルーしていましたが、虎ノ門ランチの一環で訪れてみることにしました。

昔は虎ノ門ヒルズの方にあったようですが、こちらに引っ越してきたようです。虎ノ門の三菱東京UFJ銀行の横丁を南下して、3ブロック先の信号角右手前の琴平ビル地下にあります。

階段を降りると白壁を模した店先にはメニューが貼ってあり、新しい暖簾も相俟って歴史あるお店には見えませんが、引戸をくぐって店内に。昼前ですのでまだ二組ほどの入りでしたが、窯場を右に見て向かいのテーブルに付きます。

牡蠣汁の蕎麦が有名ですが、迷わず二色（1080円）を頼みます。店員さんが、どの蕎麦にするかと余計なこと聞く（こちらはせいろをもりせいろとざるせいろを分けているからか）ので、げんなりしましたが、田舎とせいろを指定。蕎麦を待ちます。

メニューを見ていると、夜は日本橋同様蕎麦前で飲ませる感じです。日本橋での昔の記憶を頭から消し込んで、平常心を保ちます。テーブルには、歌舞伎役者の記事や成田さんの切り絵記事があり、お店の紹介としていますが、日本橋の印象から余りロクに読みませんでした。

程なく運ばれて来たせいろは、横長の長方形に、せいろと田舎が程よく盛られ、蕎麦猪口と薬味、蕎麦徳利が整然と配されています。

先ず、せいろの水蕎麦でいただくと、常陸秋蕎麦で打たれた細見の蕎麦は長さこそ揃いませんが、程よい長さで、良い香りが口内に広がります。噛み締めてみると、少し柔らかめではありますが、弾力が有りまた、甘みが感じられます。

良い意味で予想を裏切られました。

薬味は、丁寧に下ろされた大根とこれまた皮を剥いてから下ろされたと思われる山葵、端正に刻まれた葱が用意されています。

特徴のある山葵ですが非常に細やかに下ろされており、これまでここまで用意周到に準備されたものは見たことがありません。その実、蕎麦を手繰ったあと、山葵のみ頂いてみましたが、辛味の中に感じられる本山葵独特の甘味が感じられます。思わず心の中で唸りました。

一銭玉飴の様に丸められたおろしも、十分な水気の中、薄まることなく丸みのある辛味が残されていて、単純なる辛味とは異なり大根の存在感を感じさせてくれるものです。

ここまで来れば、予想通り。葱も風味と辛味を大切に端正に削がれた物で、この薬味だけでも
再訪したいと感じさせてくれるものでした。

おっと、田舎の蕎麦を忘れるところでした。

4ミリ程の平打に切られた田舎の方ですが、星も見え、いい形をしています。小生はマッチ棒を四本束ねたような太打ちで硬い田舎は好みではありません。平打の程よい薄さが良い食感と汁との絡みが絶妙ですね。噛みしめるとせいろと同様香りと同時に甘味が広がります。正直、田舎で打たれたそばで甘味を感じることはそれほど無い気がします。

こちらは、それぞれの形を見極めていい形に打ってありますね。

虎ノ門で老舗を除けば、一番好きかもしれません。

蕎麦湯は、蕎麦とほぼ同時に運ばれてきますが、こちらも澄んでいて且つそば粉が底に残って、量もしっかりあります。蕎麦汁は、しっかり節の風味が残って且つ上品な出来で、蕎麦湯との相性がいいです。さらに、こちらの薬味が非常に繊細に用意されているので、おろし、山葵、卓上の七味とそれぞれに蕎麦湯が引き立ちますね。

会計時に日本橋との関係を訊きましたら、元は一緒にやっていたようです。どういう経緯で別れたのかは存じませんが、こちらはあちらとは別物の蕎麦を出しますよ。再訪確実です。