究極のカウンターフレンチ : SUGALABO

３回めのスガラボ。
来るたびに印象が良くなっていく。

平日も休日も、早い時間と遅い時間の二回転の店、
いつもお世話になっているレビュアさまのアレンジで、３名でカウンターのコーナー席。
金曜日の夜、私たちは21時からの二回転めのスタート。

この日のおまかせの内容：
・（アミューズ）定番末富の最中　唐墨バージョン
・（アミューズ）アツアツの玉葱キッシュ
・（アミューズ）たらの芽のフリット
・（アミューズ）ホワイトアスパラガスのラルド包み
・北海道雄武沖毛蟹　キャビア
・和歌山うすいえんどう豆　多田さんのぺルシュウ（プロシュート）
・北海道縞海老　タモギ茸　ヒロメ
・千葉太刀魚　噴火湾雲丹　愛知春ふき
・秋田黒毛和牛　アスパラガス　モリーユ茸　たっぷりの黒トリュフ
・定番ミニカレー
・（デセール）愛媛の柑橘いろいろ　ココナッツグラス
・（デセール）奈良阪野農園いちご「古都華」　杏仁豆腐
・（小菓子）焼きたてプチマドレーヌ
・（小菓子）卵の殻に入ったコーヒープリン
・フレッシュハーブティー

いつもどおり、たっぷりの素敵なアミューズ。
今回の最中は唐墨で完全に和の装い、アツアツの甘い玉葱キッシュでおなかほっこり、
たらの芽とホワイトアスパラガスで春満載、いちいち完璧に美味。

前菜は毛蟹とキャビアをジュレが綺麗にまとめた贅沢な一品から。
その次にシェフが全国行脚で見つけたという和歌山のうすい豆とぺルシュウの一皿。
昨年の春、京味でいただいたうすい豆を思い出した、
でも上質なぺルシュウの塩気と豆の組み合わせは完全にフレンチ、
こういう食材の強弱の組み合わせも須賀シェフ、抜群に上手い。

この日の一番は、秋田黒毛和牛とアスパラガスとモリーユ茸、黒トリュフの一皿。
今年最後というたっぷりの黒トリュフ、須賀シェフ自らがこれでもかとトッピングしてくれる。
上質な濃い旨みたっぷりの黒毛和牛、やわらかくてとってもジューシー、
トリュフの香りをこれでもかと纏って、悶絶。
そして添えられたソースがすごくいい。このソースはクラシック系の技術によるものだろう。
須賀シェフはなんだって得意なのだ。

デセールは２種類、愛媛の柑橘をいろいろ使ったものと
希少ないちご「古都華」をふんだんに使った杏仁豆腐はあっさりと、
おなかいっぱいでもいくらでも食べれてしまう。
更に、ヘタのついた「古都華」そのままも２個サービス、
とても甘くてかぐわしい香りの希少ないちご、こんなにたくさんいただけて嬉しい。

今回の須賀シェフは、これまでのなかで一番リラックスされてフレンドリーだった。
お招きいただいたレビュアさまと同年代で普段から仲良くされているからかもしれない。

カウンターフレンチは世にたくさんあれど、
当店では世界に名をはせる須賀シェフ自らがほとんどの料理を仕上げ、自ら接客も担当する。
オープンキッチンを目の前にした８席のみのカウンター。二回転はやむを得ない。
ここは世界一贅沢なカウンターフレンチではないだろうか。

わたしはいつもノンアルコールだけど、
同席者さんたちが飲まれていた希少なワインを味見させてほしいと同席者さんに頼んだら
近くにいたソムリエさんが「グラスをご用意しますよ」と言って
（私にとっては）結構な量、グラスに注いでくれた。フリーチャージで。
トリュフも苺もメニューには書いてないけど、ふんだんにサービスしてくれる。
パーソナルなおもてなし感に、当店がどんどん好きになってしまう。

ドリンクは前回と同じロイヤルブルーティーをワングラス注文で、
お会計は前回より数千円上がっていたけれど、それを上回る満足感があった。
まだまだ引き出しに余裕がありそうな須賀シェフ、
これからの更なる進化がとても楽しみだ。

再訪。
２回めのスガラボ、前回は６名でテーブル席だったけど、今回は４名でカウンター席。

[この日のお品書き]
・京菓子司末富の最中（キャビア、浅葱、エシャロット、たまご）
・愛媛産豚のリエット
・長野産ゴールドラッシュを詰めたプチパイ
・和歌山紀ノ川産の稚鮎の揚げ物
・愛知県トマトのガスパッチョ
・徳島産太刀魚と茄子の冷製
・千葉大原の鮑の酒蒸し、愛知産ズッキーニのグラタン、広島の宝韶寿レモン
・フォアグラと冬瓜、鴨のコンソメ、不断草、高知の新生姜
・フランス産オマールブルーと白桃
・山形牛のハラミのグリル、焼き茄子のピューレ
・山形産アンデスメロンのブラマンジェ、紫蘇、高知の新生姜のグラニテ
・長野産杏のタルトとグラスヴァニーユ
・ミニャルディーズ
・ハーブティー

今回のコースは、フレンチと和の融合を強く感じた昨年の訪問時より
今回の訪問時では、食材のマリアージュや調理法の必然性をより強く感じ、
料理が格段に洗練されていたものに進化していた。

フランス料理の技法をベースとし、日本人としてのアイデンティティを感じる須賀料理。
今回の料理は中盤のメイン３皿が特にすばらしかったなあ。
柔らかな鮑に濃厚な肝のソース、レモンの一皿、
まろやかでくせのないフォアグラを鴨のコンソメと冬瓜、新生姜の一皿、
そして、オマールブルーと白桃の泡の一皿。

どれも旨みが濃い選ばれたメイン素材を、工夫を凝らしたソースやスープで仕上げる
フレンチの王道的手法をベースとした料理でありながら、驚きがあり、かつ凄く美味しい。
レモン、生姜、泡といった軽さや香りを出す副素材の使い方も素晴らしい。

須賀シェフの実力を思い知らされた日だった。
またぜひ再訪したい。


＝＝＝2015/10＝＝＝

パリのロブションの料理長として活躍されていた須賀シェフの
実験室のようなフレンチレストラン。

実質的な会員制をとるこちらのレストランにありがたきお誘いをいただき
お邪魔させていただいた。
隠れ家というより完全に隠されている入り口、
合言葉を言えないと入れないような、秘密結社的雰囲気。

思っていたより若くフレンドリーに見える主による料理のナレーションが始まる。
この日の内容はこんな感じであった：
・アミューズ：フォアグラもなか、チーズとラルドのプチシュー、玉蜀黍スープ、鱧のすりみ揚げ
・毛蟹　雲丹　いくら　汲み上げ湯葉
・鮑　インカの目覚め
・イベリコ豚　キャベツ　
・銀鱈　新倉ファームの香草
・熊本天草 黒毛和牛　黄金のかぼちゃ
・締めのキーマカレー
・土佐文旦　ココライチのソルベ
・神谷町ブレンドコーヒーのティラミス　栗
・食後の飲みもの（私はフレッシュミントティー）

５年ほど前はフレンチとイタリアンの境目がなくなってきたなあと思っていたが
最近は和食とフレンチの境目がかなり薄くなっているような気がする。
国産の素材を中心にした和の素材と、フレンチを基礎とした様々な技法のマリアージュ。
確かにこの料理は実験的であり、スガラボという店名は言いえて妙な感もある。

序盤に出てきた「毛蟹　雲丹　いくら　汲み上げ湯葉」の前菜はもう和食そのもの。
しかしどこかにフレンチなテイストが隠れている・・・違和感なくコースに溶け込んでいる。

全般的には、料理のテクスチャは全般的にはライトで個々の食材の質感にフォーカスしたものだけど
前評判通り、厳選された素材の持ち味を抽出するための技術にはやはり卓越したものがあると思う。

この日、難しいことは考えず、感性的に素直にとても美味しいなあと思ったのは、
銀鱈と黒毛和牛の二皿。
銀鱈はなんと西京焼き仕立て、ハーブとの一体感。
焼き茄子、オリーブオイル、魚醤という一見突拍子もない組み合わせのマリアージュ、
唯一無二の感性に脱帽。
選ばれた黒毛和牛はランプとハラミが巧みに組み合わされ、
肉らしい食感と旨みの双方の満足感を食べ手に与える。
脇を締める黄金かぼちゃ、トリュフ、マスタードといった素材の組み合わせも合っている。

そして計算されたこの日のコースの流れ。
後で振り返ってみれば、前述の毛蟹と雲丹の一皿で食べ手の感性を呼び覚まし、
次の鮑とイベリコ豚で和と西洋の世界観を融合させるべく助走をはじめ、
メインの銀鱈と黒毛和牛でその世界観の表現が跳躍する、そんな感じの流れだった。
驚きと親しみと自然な感動のある料理構成。
ただ料理は威圧的ではなく、食べ手が解釈するのに難解性は感じない。
その意味でもやはり近いようで遠いような、ラボ的な料理体験だった。

このような貴重で面白く美味しい体験の機会をくれたフレンチ大王様（と私が勝手に一目おいているマイレビュアーさん）に改めて感謝したい。