サントリーホールに出向いた際には便利 : 天ぷらめし 金子半之助 アークヒルズ店

　今年3月アークヒルズの3階のレストラン街が、全面的にリニューアル。
　その目玉となったのが、行列店として有名な「金子半之助」と「つじ半」の出店のようだ。
　元々この2軒は同じ系列とのことで、「つじ半」はこれまたつけ麺で人気の、神田などに店を構える「つじ田」と「金子半之助」がコラボして誕生させた経緯があり、このフロアには別に「つじ田」が新たに手掛けた「成都正宗担々麺」と「田中そば店」も出ており、まさにこのグループが席巻している様相。

　以前からこのレストラン街は、サントリーホールに出掛けた際にしばしば利用していた。
　今回もコンサート前に足を向けたが、その中から選んだのがこちら。

　本店などではメニューは「天丼」に限定しているが、こちらは「天ぷらめし」という所謂＇天ぷら定食＇に特化した店。
　ここからも近い溜池山王の駅からすぐの所に、「金子屋」という同経営の天丼専門店が在り、一度寄ったことが有るが、天ぷらのボリューム過多で味のバランスも悪く、最後の方は飽きてしまった経験が有る。
　一方「天ぷらめし」では、飯田橋のこれも同系列の「一心　金子」で試した際に悪い印象は無かったため、こちらにも相応の期待を持って臨む。

　店舗は結構広いスペースを占めており、コの字型を半分に割った左右対称のカウンターに、16席ずつが配されている。
　それぞれに専用の揚げ場が設えられており、揚げ立てが数品ずつ客に提供されるシステム。
　繁忙時は当然ながら両方が稼働していると思われるが、今回は左側の半分のみ使用されていた。

　営業は年中無休の、しかも＇通し＇で開けているとのこと。
　平日の昼時はサラリーマンで行列も出来ると聞いているが、空いている時間帯ならばゆっくり出来そう。
　この日は休日のため開演が18時とやや変則的で、17時過ぎに店の前まで行き前面を覆う横長の暖簾越しに中を窺うと、混んではいない様子。

　メニューは3種類に限定されているが、天ぷら単品の追加も可能で、アルコールなどの飲み物も用意されている。
　しかし注文が入り口脇の機械で、食券を購入するスタイルには戸惑ってしまった。
　常連の方なら問題ないだろうが、慣れない人間が機械の前であれこれ思案しながら操作するのでは、かえって時間が掛かると思う。
　何とか「穴子天ぷらめしと味噌椀」（1,580円）と「瓶ビール」（600円）を購入し、その食券を持ってカウンター中ほどの席に移動。

　まずビールが出されたが、さすがに銘柄は「プレミアムモルツ」。
　ついで大根おろしたっぷりの濃いめの天つゆの小鉢が運ばれ、＇卓上に置かれた副菜類はご自由に＇といった内容の言葉が添えられた。
　3つの壺の中には「きんぴら・いか柚子・たくあん」が入っており、私も小皿にとってみた。
　きんぴらといか柚子は副菜としても良いだろうが、ビールの肴にも好適であった。

　ビールのグラスを傾けるうちに、まず最初の4品「海老・イカかき揚げ・かしわ・舞茸」が、目の前の簀の子に置かれた。
　海老は細目でやや貧相に見えるが、旨味は感じられる。
　イカはロールイカの角切りと思われるが、歯応えも味もまずまず。
　かしわは大葉で挟んだ鶏むね肉だがこちらも悪くなく、舞茸も持ち味が生きている。

　全体的に衣は薄く、揚げは少々きつめだが、決して上物と言えない素材には相応しい手法で、かき揚げのしっかりした火通りも、舞茸のサクッとした食感も好ましい。
　塩でも良いが、ご飯のおかずとして天つゆにどっぷりと浸すには、このくらいの方が相応しい。
　この天つゆもポン酢が少々混ざったような味わいで、旨味を増幅させる効果が生きている。

　次いで「穴子・しし唐・玉子」が登場。
　穴子はかなりの大きさの一本揚げで、割ってみるとホクホクの仕上がり。
　旨味も濃く、塩で食べるとちょっとクセが気になるが、こちらも天つゆで食せばより美味さが引き立った。
　卵の素揚げが付くのがこちらの特徴で、中は半熟状態でこれには少量の醤油を垂らしてご飯の上に乗せ、箸で突き崩すとトロリと黄身が流れ出して＇卵かけご飯＇が楽しめる趣向。

　味噌椀は「あさりの味噌汁」が蓋つきで供される。
　中には結構な大きさのアサリ7.8粒が入っており、塩分は控えめだが旨味は十分。
　ご飯のやや硬めの炊き加減も良かった。
　
　お茶は予め豆が2粒入った湯呑が卓上に置かれており、これにポットの熱い「黒豆茶」を客が各自で注ぐ手法。
　しみじみとした味わいが好ましい。


　ミニコースのような一連の流れは結構充実しており、なかなか楽しめた。
　内容からすれば、ＣＰは高いと感じる。
　混雑時に並んでまで食べたいとは思わないが、今回のようなシチュエーションならそれなりの満足感は得られる。

　店内はまだ新しいため清潔感がある。
　サービス面でも、若いスタッフの応対ぶりは好感。
　客を急かすような煽情的なリズムのＢＧＭは悪印象で、昼時はともかく夜は変えるべき。
　

　これから冬場にかけて、サントリーホールには度々足を運ぶ予定が入っている。
　カラヤン広場の前の店は早々に閉まる処が多いが、こちらは少し遅い22時半まで営業しているので演奏会の後にも寄れそう。
　ちなみにこの日は休日なのでダメだったが、平日は演奏会のチケットを提示すると200円以下の天ぷら一品がサービスされるとのこと。

　利便性があるため今後も寄ることになろうが、食券販売機の操作も次回はもっとスムーズにできると思う。
　また隣の「つじ半」もこちら同様に、時間帯を選べば落ち着いているようで一度寄ってみたい。