【1258】久兵衛出身「すし縁」の2号店 : 六本木 すし巽

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食べログ3.70（2017年9月現在）と高評価な銀座のすし縁。
今年（2017年）7月に2号店の「すし巽」を六本木に出店したようです。

今のところ食べログのスコア3.16と低調ですが口コミ9件中8件が4.0以上の評価で一番低くても3.8。
結論から申し上げると食べログの先行レビューにある通りコストパフォーマンスに秀でた良店でした。
13,000円のおまかせ一本となるのですが、すし匠系のように握りとおつまみが交互に出されて計27種類。
チョコチョコと色々な料理を楽しむのが好きな自分の嗜好にも合致します。

ご主人は久兵衛出身で新宿や京都の和食でも修業経験（鮨より和食歴のほうが長いとか）。
銀座の1号店はご主人より年上という部下に任せたようで、
食べログで3.70まで登り詰めた料理人の握りとおつまみを味わえるお店となっているわけです。

六本木駅から徒歩1分の好立地にあるビル5階、小さなエレベーターで上って入店。
店内は厨房を囲むL字カウンター13席と個室6席と8席の2室（計27席）。
同伴でカウンター、接待で個室など様々な利用シーンで使えるお店ではないでしょうか。

飲み物は生ビールからスタート。
日本酒は鳳凰美田、伯楽星、寫樂など人気の銘柄をきっちり抑えています。
美しく彫刻された江戸切子のグラスもお酒の美味しさの引き立て役。

この日の「おまかせ（13,000円）」の内容は以下の通り。

01.鳥取境港本鮪大トロ（握り）
02.江戸前穴子 三陸若布 土佐酢
03.長崎鯵（握り）
04.静岡イシガレイ昆布〆（握り）
05.明石蛸やわらか煮
06.明太子わさび漬
07.クリームチーズ西京漬
08.熊本天草新子（握り）
09.利尻バフンウニ軍艦
10.北海道イクラ小どんぶり
11.茗荷甘酢漬
12.愛知太刀魚醤油焼き
13.鳥取境港本鮪大トロ炙り串
14.神奈川三崎本カマス炙り（握り）
15.宮城秋刀魚炙り（握り）
16.静岡金目鯛カブト煮
17.夏野菜のマリネ
18.静岡金目鯛炙り（握り）
19.三重車海老（握り）
20.鳥取境港本鮪赤身ヅケ（握り）
21.千葉鮑 アワビ飯 自家製肝ソース
22.鳥取境港本鮪トロ炙り（握り）
23.江戸前煮穴子炙り（握り）
24.干瓢（握り→セルフ海苔巻き）
25.赤出汁（静岡金目鯛アラ潮汁）
26.鳥取境港本鮪大トロ とろたく巻き
27.ブリュレ風玉子焼き

まずは本鮪のトロの握りをいきなり出してきて先制パンチ。
先日は回転寿司で奮発して1貫162円の中トロを食べましたが、やはり六本木の鮨屋のトロは別次元。
マグロの旨味、香り、蕩け具合など全ての面で別物となっています。

下町のリーズナブルな優良鮨店であればマグロのクオリティは肉薄しますが酢飯は及びません。
久兵衛出身の同店では魚沼産コシヒカリを米酢と赤酢の半々で酢飯に。
お店によっては淡泊な白身魚に米酢の酢飯、脂の乗ったトロに赤酢の酢飯を合わせる場合もありますが、
同店はこの半々の酢飯を全てのタネに合わせているとのことです。

この酢飯が都心の高級鮨店ならではの洗練された酢飯といったレベルの高さで下町の鮨を凌駕。
27種類の料理で13,000円ということは料理1種類あたり単純計算481円。
回転寿司の3倍の値段ですが美味しさは3倍を遥かに超えるのではないでしょうか。

鮨の世界は資本主義が徹底されているので、例えば同じく六本木にある食べログ超高評価の鮨さいとう。
おまかせ2万円を超える鮨さいとうに比べるとタネのクオリティ、タネの厚みなど流石に劣るのですが、
六本木の駅すぐの好立地で1万円台で楽しめる鮨としては上出来と思います。

2品目は握りからおつまみに移行して江戸前の穴子と三陸のワカメを土佐酢で。
高級店にしては酢を強めに効かせていますが、今が旬の穴子がフワフワ蕩けて絶品。
しっかりと歯応えのあるワカメも非凡なレベルでした。

ネギ生姜が乗った鯵の握りは、鮨さいとうの鯵に似たヴィジュアル。
鮨さいとう（鮨かねさか）も久兵衛出身なので、同じ久兵衛系ということで似通った部分も多いです。

明石の蛸は弾力や歯応えがなくなるレベルまで柔らかく煮ています。
例えれば「飲める」ぐらい柔らかいタコ、西京味噌に漬け込んだクリームチーズもトロッと蕩けます。
こういう口当たりの良さを求めるのも都心六本木の高級店らしさなのかも知れません。

握りで白眉と思ったのが新子から小肌になりかけているという「天草の新子」の2枚付け。
酢の〆加減が自分の理想と思う塩梅で唸りました。
穴子の土佐酢のときは酢が強いお店なのかと思いましたが料理で酢の強弱を全然変えてきます。
例えば夏野菜（パプリカ、ナス、ブロッコリー）のマリネは野菜を引き立てる程度の僅かな酢加減でした。

軍艦にしたバフンウニ（ミョウバン入りで超高級鮨店のウニよりは劣ります）、
青柚子を擂って爽やかなイクラ丼と濃厚な食材を楽しんだ後は茗荷の甘酢漬で口直し。
そしてウニやイクラより濃厚な大トロ炙りの串焼きが登場。
原価が高いと言われるマグロを随所で使って、しかも色々な食べ方というのが心憎いところ。

モツラーの自分としては金目鯛がカブト煮でドーンと登場してきたのも歓喜するポイント。
27種類も料理を出すコースなのに金目鯛の頭がしっかりと大きいです。
目玉を抉って周りのゼラチン質に恍惚となったら、肉、皮を可能な限りこそげ取っていきました。
和食での修業経験も長いご主人だけあってカブト煮の味付けも優しさと旨味の強さがあってハイレベル。

本鮪赤身のヅケにはイクラ同様に青柚子をプラス、トロは炙り握りも登場してマグロを堪能。
小さなサイズですが2時間半蒸したという鮑を酢飯に乗せて「アワビ飯」に、味付けは自家製肝ソース。
薄いスライスとはいえアワビの適度な歯応えを感じられて想定以上に好印象。

煮穴子の握りは穴子がアツアツになるまで炙ってあって「熱い」握り。
干瓢は握りにして山葵を乗せて、客側でセルフ海苔巻きにすることも可能と面白いです。

おつまみで白眉と思ったのが金目鯛のアラの潮汁がベースな赤出汁。
金目鯛の脂と旨味が味噌と抜群に合っていて、この椀の美味しさは京都での和食経験の賜物でしょうか。
お椀に関しては鮨さいとうの蜆の味噌汁より遥かに好印象です。
「アラ」でありながら刺身でも食べられそうな金目鯛の身が入っていて、こちらも蕩ける美味しさ。

鳥取境港の本鮪の大トロを贅沢に叩いたトロタク（沢庵は築地から仕入れ）。
キャラメリゼしたのか「ブリュレ風」という玉子焼きは表面パリパリ、中は芋羊羹のように滑らか。
13,000円のコースでこれだけ楽しめるということでコストパフォーマンスはやはり良いです。

下町のリーズナブルな優良鮨店は店舗兼住宅となっている老舗で家賃負担が無いことが多いですが、
同店は六本木駅すぐに賃貸で入ってこの安さというのが驚異的なところ。
食べログの先行レビューで9件中8件が4.0以上の評価なのも納得でした。