浅らかに 相見し鮨に 恋ふる頃かも ~匠 村瀬~ : 鮓 村瀬

2015.8.
6月にランチで訪れた六本木にある「匠 村瀬」。四ツ谷「すし匠」系と言われているお店の中で、2015年1月オープンの新しいお店です。「すし匠」系の特徴として挙げられるのは、『突き出しの海ぶどう』『つまみと握りを交互に出す』『白シャリと赤シャリの使い分け』などが、どのお店にもみられる共通したスタイルだそうで、それを味わうには夜の訪問が必須と思い、やってきました。

18：00。
店の明かりが付くと同時に、親方の村瀬 信行さんが自ら出迎えて下さり、名前を告げると親方の目の前に案内されました。コの字のカウンターが半分埋まったところで、今夜の幕が上がります。

実食

（2週間熟成） ♡
ムチムチしており、脂も濃厚でありながら、爽やか。いきなり↑食材です。

金目鯛 昆布〆

鰹
玉葱醤油がちょこんと乗せてあります。

石垣貝
夏が旬の石垣貝。鳥貝の仲間だそうで、甘みが強い。

塩水雲丹
余市産の紫海胆。ここ「匠 村瀬」では、夏しか供していないそうです。

宍道湖産 天然鰻 ♡
まさかの天然鰻。濃厚なこってりとした脂がとろけて、美味しい。

新烏賊 ♡
墨烏賊の子供。この握りの大きさで、1杯分だそうです。新子と同じように、この時期にしか食べられません。サクッとした歯切れの良さが心地よい。

小鰭 黄身酢おぼろかけ

白海老

鱒のヅケ
ヅケは山葵ではなく、和辛子で供されます。

障泥烏賊

毛蟹
身と共に味噌も和えてあり、お酒もすすみます。

蓴菜

赤海胆 ♡
唐津産。赤酢に負けない濃厚さ。

春子

鯵 酢〆 ♡
あえて皮は引かないのが、村瀬流だそうです。皮目にある脂も楽しめ、実に美味しい。

鱚 昆布〆

蜆の出汁

蒸し鮑 ♡

太刀魚の焼き物 ♡

焼き海胆 ♡

赤身のヅケ（2週間熟成）

中トロのヅケ（2週間半熟成）

山山葵と白烏賊
山山葵に白葱と鰹節が乗せてあり、混ぜて、白烏賊につけて食べます。

金目鯛の皮の炙り ♡

喉黒 酢醤油煮
酢醤油煮って初めて食べました。さっぱりとしていて、夏らしいですね。

茶碗蒸し
夏らしく冷たい茶碗蒸し。下には梅肉が入っており、爽やかです。

才巻海老 ♡
ここの才巻、大好きです。

黒鯥の炙り

おはぎ ♡
追加で。鮪の皮ぎしと沢庵を混ぜたもので、「すし匠」の名物ですね。もっとしつこいくらいに濃厚かと思っていたら、そうでもなくて、美味しい。

穴子

干瓢巻き
ガツン系の干瓢巻き。

出汁巻き玉子と芝海老の玉子

1つ1つに施されている丁寧な仕事ぶりは握りだけではなく、摘みにもあって、村瀬さんの気合が感じられます。握りと摘みが交互に供されるエンターテインメント的な鮨は、さすがの一言。
「鮨店で摘みを食べながら、お酒を楽しむ」
ちょっと背伸びするような食べ方ですが、ここでなら楽しみながらでき、尚且つ美味しい。飲み物は、主に『冷酒』をお任せで頂きましたが、何も言わずとも色々と飲めるようにとハーフサイズで供されました。村瀬さんをはじめとするスタッフの方々の心遣いと気遣いが、素晴らしいです。
気になるCPですが、私は今回「ビール×1 冷酒×3 追加1貫」で、20400円。この界隈ではかなりリーズナブル！

「すし匠」系のお店はまだまだあり、あと数店くらいは食べ歩いてみないと、そのお店だけの個性が分からないかもしれません。しかしながら「匠 村瀬」は、「すし匠」系食べ歩きの原点として、また行きたいと思います。


2015.6.
鮨の始まりとされる江戸時代は、冷蔵・冷凍技術もないので、保存することを目的とした酢締め・醤油漬け・火入れという仕事を施していました。その後、技術と輸送の発達と共に、鮮度のよい素材を生で握る鮨が増え、そして今日はより精密な温度管理や保存方法の確立により「熟成」へと変化しています。数日、数週間あえて、ネタを寝かせることは、とても技術と経験を要する、いわば江戸前寿司の究極の進化系と言えると思います。

「熟成」を看板にしている名店は数あれど、四谷にある「すし匠」を避けて通ることはできません。勿論、行ってみたいですが、親方の中澤さんが来年からハワイのリッツカールトンへの出店に伴い、日本を離れるそうで、ただでさえ予約が取りづらい中、一見さんには無理な状況。
でも「すし匠」ご出身の方が多く独立されており、中でも六本木にある「匠村瀬」では、ランチでも握りを提供していて、CPがとんでもないと聴き、早速電話。ランチは11:30〜13:30の間の1回転のみの営業なので、カウンター15席の席数は決して多くありません。
それでもラッキーなことに、2週間後に1席空いており、無事に予約完了。ランチは『コース(握り)』と『ちらし』が選べるそうで、ここは当然『コース(握り)』を。追加注文はできないとのことですが、値段は驚きの3000円(税込)！

当日。
六本木駅から歩くこと5分くらい。お店の暖簾をくぐると、すぐ右手に小さな個室、奥まった所にコの字の白木の綺麗なカウンターがあり、窓からは緑が見える居心地のいい店内です。握り手は3人いらして、案内されたのがちょうど親方である村瀬信行さんの前で、全てを握って頂けることになりました。

実食

先付
本日は、出汁で軽く煮た大振りの浅蜊。3000円で、先付が出されるとは。妥協はないようです。

障泥烏賊の昆布〆(一週間熟成)
ただでさえねっとりとする烏賊が、次元の違うねっとり感になり、きりりとした白シャリに合う。

小鰭黄身酢おぼろかけ(一週間熟成)
柔らかく赤酢のシャリが、小鰭を包み、ふわりと酢が感じられます。

金目鯛の皮
炙りたてを握ります。これは、直球に美味しい。

鯵の酢〆
供する前に生姜の汁とスダチをかけてくれます。〆加減も絶妙。

鱒の漬け
生ならば溶けるよう味わいなのでしょうが、ねっとりとじゅわり溶けます。

赤身の漬け
珍しくサクごと漬けられていて、旨味が凝縮しています。

才巻海老
形を整える為に切り落とした部分を細かく刻み、山葵とともにネタにかまして握ります。人肌の温度なので、甘さをより感じます。

穴子
まだ昼のみの提供だそうで、これからまだまだ美味しくなるとのこと。

太巻き
酸味と甘味が同時に楽しめ、美味しい。

出汁巻き玉子と芝海老の玉子
小さいながらも出汁巻きは出汁をたっぷりと含んでいて、芝海老のはほんのりと甘い。

椀物
蜆とアオサの吸物。

デザート
きな粉アイス・抹茶アイス・柚子シャーベットから選べます。

全体を通して、一つ一つの仕事がとても丁寧というのが、第一印象。ネタは握る数分前に握る分だけ切り分け、ペーパーに包んで、水分を抜いているみたい。シャリは米酢を使った白いものと赤酢を使った赤黒いものを、ネタによって使い分けており、数巻分を小さなおひつで厨房から持ってきています。供される鮨は、なんらかの仕事を施され、まるで化粧を施したかのような美しさがあります。

眼光の鋭い村瀬さんは一見とっつきにくそうですが、話題を振ってくれたり、聞けば色々と教えてくれたりと常連となれば、心地よいと思います。今回は味見の訪問でしたが、このお店の真骨頂はやはり夜。夜18000円で、25〜30品くらいの提供だそうで、この界隈ではリーズナブルなのではないでしょうか。村瀬さんが立つ後ろには氷を使う冷蔵庫があり、その上にあるメニュー板はコースを食べ終わった後に追加リクエストの為のものだそう。美味しそうなものばかりです。

開店から続けてこられてた採算度外視のランチですが、7月からランチの曜日が変わるそうなので、ご確認を。来年からは、もしかしたらランチはやらないかも？とおっしゃったので、行きたいと思っているならば、早めの行動がオススメです。
ご丁寧に自ら見送りして下さった村瀬さん、ありがとうございました。