松茸の香り、時々酢橘。 : 松川

ありがたいお誘いを頂いて、松茸の時期の松川さんへ。
前回が、筍の時期でしたから、私が日本料理で一番幸せを感じる2つの時期に伺えて、思い残すことはありませんm(__)m

店内に進めば、研ぎ澄まされた美意識を感じ、自然と背筋が伸びます。

物静かな松川さんのお姿も好きです。
この方が作り上げた空間なのだなぁ、としっくり腑に落ちます。
窮屈を感じるわけでは無く、その世界観にどっぷりとつかりたい。そう感じる唯一と言っても良い場所です。

ソワソワするのを落ち着かなくちゃと思ううちに、一品目、朱塗りに松葉、伊勢海老が目の前に。
添えられた零余子を頂き、秋が染みわたってきました。

気持ちが高まってきたところで、お椀は「松茸と蟹真丈」

ふんわりまとまった蟹真丈は甘みもきつくは無く、上品な香りの理想的な蟹でした。
松茸と酢橘の香りは、どうしてこんなに合うのでしょう・・・どうだ海外の民よ！！日本料理の神髄じゃ！！

松川さんの吸い地は、派手さが無く透き通ります。
後の「鱧、松茸の小鍋」しゃぶしゃぶでもそうですが、吟味された食材の、香りや清い滋味で完成されていきます。
本当に芸術・アートの中に入りこんでしまったような気がしてきます。

そして、お弟子さんが頑張って割いたという松茸の軸、これ、凄いです。
細っそいです。

このお仕事のお蔭で、カウンター全体が松茸の香りに包まれました。
そして、歯ごたえの良い事！！

本当に素晴らしかったです。
冒頭に戻って、思い残すことは有りませんm(__)m

頂いたお料理です。

◇　伊勢海老とむかごの焼き物
◇　渡蟹の飯蒸し　ベルーガキャビア
◇　お造り　淡路島の鯛
◇　お椀　松茸と蟹真丈
◇　鮑と松茸炭火焼き
◇　鱧、松茸の小鍋
◇　安曇川の鮎の炭火焼き
◇　近江牛フィレと松茸
◇　焼き無花果
◇　松茸のフライ
◇　手打ち冷麦
◇　松茸ご飯
◇　唐墨、いくら、チリメン山椒、ご飯
◇　香の物
◇　焼き栗金団
◇　水羊羹


スマホを壊した後遺症が続き、どうしてもシャッター音を消すことができませんでした。
松川さんのカウンターで、シャッター音を響かせる度胸は私にはありません。
一枚だけ撮って、諦めました。

お椀のお写真以外は、ご一緒様にお写真を頂きましたm(__)m
もろもろ大感謝申し上げます。

その後ＳＮＳでその旨呟いたところ、ご親切に色々アドバイスを頂戴しました。
お蔭様で無事に解決いたしました。ＳＮＳの善意にも感謝です♡

ごちそうさまでした。

東京に温かさが戻り、一気に桜が咲き始めた夕方。
灯り始めた街路灯に浮き上がった桜を眺めながら、松川さんに向かいました。
既に、現実離れしています。

この日は大阪のスターシェフお二人とご一緒のお席に、敬愛するレビュアー様から光栄すぎるお誘いをいただいたのです。夢の時間が始まります。
カウンターに座って、カチンコチンの私をレビュアー様が気遣い、あれこれ話しかけてくださいます(TT)

そして松川さんにご挨拶し、お料理がスタートします。
松川さんは、寡黙な中に、随所に気配りをされ、本当に素敵な方でした。
一瞬も目を離したくないような気持ちになりました。

頂いたお料理は見事としか言いようがありません。
どこまでも澄んで、上品。一つ一つの食材の味わいが、際立っています。

例えば、蕗・筍と蛤の炊き合わせでは、
蕗はシャッキリみずみずしく、薫り立ちます。
この蕗だけずっと頂いていたい、と思う間もなく、筍に驚くことになるのです。
筍は切れ目が入れられ、蛤が挟まれていますが、筍本来の軽い甘みを感じるのと同時に、蛤の塩が重なります。
同席のシェフは、添えられた木の芽の柔らかさ、大きさがそろっていることに関心していらっしゃいました。
こんな炊き合わせに巡り合ったことがありません。

そんな驚きが全てのお料理で訪れるのです。

軽く揚げられた蕗の薹をサクッと口にすると、時間差で香るお味噌のハーモニーに、
小さな子持ちの本もろこの美しさに、
お蕎麦の上に乗った、白魚の天麩羅の軽さと甘みに、
磯の香りで満たされる、鮑と若芽のしゃぶしゃぶは、お鍋全部お出汁をいただいてしまいました。
あんなに上品で美味しい赤出汁も初めて、
自分の中では天敵だと思っていた、水羊羹の奇跡の口どけに、

これが、日本一と言われる実力なのですね・・・・・

そして、この日頂いたメニューです

◇とげくり蟹の飯蒸し　キャビア
◇造り　鮑　紫うに　すっぽんのジュレ
◇造り　伊勢海老　真鯛　このわた醤油添え
◇煮物椀　帆立しんじょう　生きくらげ 　ばちこ 木の芽
◇蕗の薹に味噌を挟んだ天ぷら　本みる貝焼
◇造り　赤貝　子蕪
◇蕗・筍と蛤の炊き合わせ
◇焼物　　本もろこ
◇近江牛網焼き　鱈の目
◇京都 白子筍の丸焼き
◇白魚とふきのとう天の冷やかけ蕎麦
◇黒鮑　河豚白子　若芽しゃぶしゃぶ　
◇焼き猪
◇ご飯　蜆の赤だし　白菜の漬物
　お友　いくら　生からすみ　ちりめん山椒　刻み海苔
◇水羊羹　お薄
◇苺のゼリー

ご常連のレビュアー様が仰るには、あんなに話す松川さんは初めてだと。
スターシェフのお二人とのお話が弾み、お店をお造りになったときのご苦労話など、
たくさんたくさんお聞かせくださいました。

本当にプレミアムなお席でした。

もう、伺えることはないかもしれませんが、後悔がないほどのお時間でした。
お誘い下さった、スーパーレビュアー様に心から感謝いたします。

本当に素敵なお時間をありがとうございました。
大変大変ごちそうさまでした。