年間100食：うなぎマーケッター訪問記　いちのや（西麻布）：西麻布の隠れ家鰻屋 : 西麻布いちのや

訪問と弁当お合わせてこれまでに5回程度訪問。川越の他、渋谷神泉にも店舗がある。予約の段階で鰻は出来上がりまでに40-50分程度かかりますということを言われた。鰻を割くところから調理をすれば、その程度の時間はかかるので「問題ないです」と伝える。

場所は西麻布交差点にほど近い場所にある鰻屋。外観は黒くて、入り口はわかりにくい。この日は、数名で訪問。2階は襖で仕切られた小部屋とテーブルがあり、今回は4人が入る小部屋に通された。

注文は白焼き、うざく、う巻き、肝焼き、鰻重。今回は一年間に2,3回鰻を食べるかどうかという人たちと一緒だったので、とりあえず一通り注文。鰻重は3枚がご飯の上に乗った（上）とご飯の上＋ご飯の間に挟み込まれた（弐段）を2個づつ注文。私は個人的にタレがご飯にかかりすぎないタイプが好きなので（上）を注文したが、今回連れてきた人の中には（弐段）を初めて食べる人もいて、そのボリュームとビジュアルインパクトに驚いていた。鰻の量としてはどちらも一緒だ。

まず運ばれてきたのは肝焼き。肝焼きはまったりとして、かすかな苦味はあるものの、臭みはない。まったりした肝にタレがしっかりとかかっているので濃厚な味わいだ。これも初めて食べた人は驚いていた。私的には、ボリュームはあるものの（一般的な肝焼きよりもボリュームはあるが、友栄さんほどではない）、本来肝が持つ滋味をそれほど強くは感じなかった。もちろん、美味しいのだが、大きなインパクトは感じなかった。

うざくやう巻きは、連れてきた人たちに全て差し上げて、私は白焼きをいただく。運ばれてきた白焼きは老舗鰻屋らしい佇まいをしている。見た目に、少しふっくらした白焼きを、何もつけずまず一口食べると、弾力ではなく、身のフワフワ感が感じられた。ただ、身の脂の旨味が凝縮された感じや、尾花さんのようなやわらかさを追求しきった感じではない。鰻を丁寧に蒸して白焼きにした感じではあるが、食べた時のインパクトはそれほど強くはない。総じて、老舗の鰻屋は、こうした白焼きが多いので、本わさびを擦って、醤油を少したらしていただくことが多い。

鰻や青魚以上に鮮度が落ちるスピードが速い。そのため、その場で鰻を捌き、手際よく調理をし、提供できる場合、白焼きも醤油やわさびなしで十分美味しい状況もある。しかし、有名店や老舗も含めて、多くの鰻屋はそこまでの状態に持っていくことは難しい。だから、醤油やわさびをつけた方が美味しい状況になる。これはこれで鰻を美味しく食べるための工夫である。醤油やわさびをつけてしまうと、白焼き本来の味が損なわれてしまうので、そのまま食べた方が抜群に美味しいという鰻屋もあるが、すべての店がそんなことは出来ない。ここで書いた、白焼きを醤油とわさびで食べるということを私は否定するつもりはない。その店が出来るベストな方法で、提供しようとしているのだ。

いちのやさんでも、適切な量の醤油をたらし、乗せる生わさびの分量を調節し、白焼きと醤油のバランスを整え、美味しくいただいた。

いよいよ鰻重の登場。いちのやさんの鰻重は、タレの甘みがメインでく来る。辛味はかすかに感じられる程度だ。香りは、香ばしさではなく、タレの香りが強い。したがって店内も鰻の匂いが漂っている感じではない。身はふわっとしているが、身の厚さは極端に厚くはない。身の脂はまったりしているが、質の良い雰囲気がある。ただ、これまでに全国300軒以上の鰻屋を巡っている印象からすると、脂の旨味についてはもっと引き出され、凝縮されても良いのではないかと感じた。また他の鰻屋よりも、小骨感の感じられ方がやや強い。気になる人と気にならない人でわかれるところだろう。鰻重全体の感想としては、普通に美味しいのだが、私がトップ10に入れている店のような「すごい美味しい！」というレベルではない（ただ私がトップ10に入れている店は、これまで全国400軒以上の鰻屋を食べ歩かせて頂いてのトップ10なので、スーパースタークラスである＜https://tabelog.com/rvwr/000404370/＞）。

今回、一緒に行った人たちは年に1,2回鰻を食べる人たちで、うざくもう巻きも初めてということだった。彼らは、本当に美味しそうにすべての料理を食していた。普通に「鰻を食べたい！」と言われて連れて行ったら、牛丼チェーン店やスーパーでの鰻とはまったく異なるので「美味しい」と言われることは確実だ。

最後に、今回は小部屋にいたこともあってか、お茶のチェックや注文取りがあまり来ない。もしかすると芸能関係者が来店することも多いエリアのため、店員さんが必要以上に部屋を訪れるのを控えているかもしれないが、いちいち席を立って注文の声がけを外に行かなければならないのは不便に感じた。注文ボタンがあったら、嬉しい。

リピートの可能性：鰻をそれほど食べたことのない人とゆっくり鰻を楽しみたい時や、商談のために個室で鰻を食べたい時には利用することもあるだろう。