華燭の宴、父落泪す ε-(´∀｀*) : 権八 西麻布

このレビューをアップするか否か、随分と迷ったのだが、未来の招福の祈念として、敢えてアップすることとした。。。
この日は、長男坊の結婚式。『赤坂 氷川神社』〔東京都港区赤坂6-10-12〕での挙式に、家の奥さん、次男坊、お袋とともに参列した。その後、両家家族のみによる披露宴、身内だけの華燭の宴が挙行され、こちらの利用となった次第である。
因みに、「華燭の典」と言うのが正しいらしいが、今回は、結婚式後の正に宴（うたげ）であり、「華燭の宴」の方が間違いなく相応しかろう。


『権八 西麻布』
東京都港区西麻布1-13-11
050-5571-2171

Official Website : https://gonpachi.jp/nishi-azabu/


起点を東京都品川区の「北品川2丁目」交差点とし、終点を新宿区の「富久町西」交差点とする東京都道418号北品川四谷線は、終点の「富久町西」交差点から「四谷四丁目」「南青山三丁目」「西麻布」「天現寺橋」を経由して「白金六丁目」で左折、「白金台」交差点に至るまでの区間には「外苑西通り」の名称がついている。その「外苑西通り」の沿線上、港区の「西麻布」交差点の北東角に『権八 西麻布』はある。


今回、長男坊夫婦の結婚式が挙行された『赤坂氷川神社』は、1,000年 に及ぶ深き由緒ある神社で、その御祭神ゆえに、結婚式挙行に於いても大人気となっていると言う。その辺りを含めて改めて調べてみてた結果、長男もよくぞこちらを選んだものよと、親馬鹿丸出しながらも感心頻りの私なのであった。『赤坂氷川神社』、その概略は以下のようになっている。

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『赤坂 氷川神社』
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縁結びご利益が随一として人気を集めている『赤坂 氷川神社』〔Official Website : https://www.akasakahikawa.or.jp/〕は、御祭神を、素盞嗚尊（すさのおのみこと）、奇稲田姫命（くしいなだひめのみこと）、大己貴命（おおなむぢのみこと＝大国主命）とする。創祀は天暦5年〔951年〕とのことで、1,000年 以上に及ぶ歴史を有している由緒あるお社だ。現在の社殿は、享保15年〔1730年〕に、8代将軍 徳川吉宗公の命により現在地に遷座されたとされ、以来、安政の大地震・関東大震災・東京大空襲の被災を奇跡的に免れてきたのだそうだ。総欅作りの江戸時代建立当時そのままに、荘厳な姿を現在まで残しており、東京都指定有形文化財（建造物）に「氷川神社社殿 」の名称で指定されている。

赤坂のパワースポットとも言われる『赤坂氷川神社』であるが、縁結び・厄除け・商売繁盛のご利益で知られており、ご祭神である素戔嗚尊（すさのおみこと）、奇稲田姫命（くしいなだひめのみこと）がとても仲の良い夫婦だったことに由来している縁結びは、特に効果的だと言う。

また、本殿に向かって右の階段を降りると、末社の『四合（しあわせ）稲荷神社』があるが、赤坂周辺にあった、「古呂故（ころこ）」「地頭（じぬし）「本氷川」「玉川」の四社の稲荷を、1898年に合祀したものだそうで、「四社が合わさる → 四合（しあわせ）」と言うことから、『四合（しあわせ）稲荷神社』と命名したのは、幕末の幕臣、勝海舟なのだそうだ。

こちら『赤坂氷川神社』での結婚式は、二管の雅楽が生演奏で奏でられる中、所要時間約 30分。東京都指定有形文化財（建造物）である本殿で、古式ゆかしく、厳かに挙行される。
特徴的なのは、こちらの結婚式式次第にある「御櫛預けの儀（みくしあずけのぎ）」だろう。これは『赤坂氷川神社』独自の儀式となっている。女性の分身ともいわれる櫛（くし）を新婦から新郎へ預けることで夫婦二人一体となり、新しい生活を二人三脚で営む誓いを立てるのだそうだが、これは『古事記』の中にある逸話で、建速須佐之男命（たけはやすさのおのみこと）〔一般的には須佐之男命〕が、八俣の大蛇（やまたのおろち）を退治にする際に、愛する櫛名田比売（くしなだひめ）を守るために、姫を櫛に変えて自らの角髪（みずら）に挿したことに由来している。

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『古事記』
【原文】爾速須佐之男命、乃於湯津爪櫛取成其童女而、刺御美豆良、
【本文】ここに速須佐之男命、すなはち湯津爪櫛（ゆつつまぐし）にその童女（をとめ）を取り成 して、御角髪（みずら）に刺して、
【口語訳】そこで、須佐之男命は、（櫛名田比売が八俣のおろちの餌食にならないように、）直ぐにその少女の姿形を歯の多い神聖な爪櫛（つまぐし）に変えて、ご自分の角髪に挿し、
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また、須佐之男命は、この後、八俣の大蛇を退治して、その体内から取り出した「草那藝之大刀〔草薙の大刀（くさなぎのたち）〕」を天照大御神に献上する。そうして、出雲の国にご夫婦の新居となる宮殿〔須賀宮〕を造営するのだが、その折、日本初の和歌を読んだことでも有名だ。

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【原文】夜久毛多都 伊豆毛夜幣賀岐 都麻碁微爾 夜幣賀岐都久流 曽能夜幣賀岐袁
【本文】八雲立つ 出雲八重垣 妻籠み（つまごみ）に 八重垣作る その八重垣を
【口語訳】盛んに八重の雲が立ちのぼる出雲の地では、沸き起こる雲が八重の垣をめぐらしてくれる。私はその八重の雲のように、愛する妻が誰にも奪われないように、神殿に八重の垣根を作った。あの素晴らしい八重垣よ。
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斯様に、素戔嗚尊は奇稲田姫命を心底愛したわけだが、その両柱をご祭神とする『赤坂氷川神社』ならではの、神話に基づいた独自の儀式が、この「御櫛預けの儀（みくしあずけのぎ）」になるのだそうだ。

なお、『赤坂氷川神社』では、10:00、11:00、12:00、13:00、14:00、15:00、16:00 の開式時間が用意されているとのことだ。挙式料は 85,000円、その御利益からしたら存分な破格かと思われる。
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今回は、昭和6年生まれ、満 88歳 のお袋を連れての東京都内の移動であった。これはなかなかに厳しい。全行程を歩かせるわけにも行かず、階段等の要所要所では歩いてもらったが、その大半は車椅子での移動となった。駅舎でのエレベーター探しなど、なかなかに苦労を要すことが予測され、当日朝、前橋から出向くのは困難であると考えられたために、赤坂に宿を取り前泊した。宿泊ホテルは『ホテルモントレー赤坂』〔東京都港区赤坂 4-9-24 ホテルモントレ赤坂〕、『豊川稲荷神社別院』の、青山通りを挟んだ直ぐ南側に位置するホテルである。

挙式当日は、ホテルを朝8時半に立って、一旦、こちら『権八 西麻布』へ集合、その後、TAXY で『赤坂 氷川神社』へと向かった。無事に挙式を結び、こちら『権八 西麻布』へ復しての披露宴となったわけだ。


こちら『権八西麻布』の店舗詳細紹介は、こちらの Official Website に詳しく、それを見れば、全容が分かろうと言うものだ。その内容が以下になる。

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「権八 西麻布」は西麻布交差点すぐ、東京メトロ六本木駅、乃木坂駅、広尾駅より徒歩10分、深夜3時半まで営業。会食、宴会、接待、デート、海外からのお客様のおもてなしに。厳選した国産蕎麦の実を使用し、毎朝石臼で丁寧に挽いた蕎麦粉を職人が手打ちしている蕎麦、備長炭で丁寧に焼きあげる串焼き、揚げたて熱々の天ぷらなど、こだわりの料理を権八ならではのアレンジで提供しております。カウンター席、テーブル席、個室とシーンに合わせてご利用ください。ブッシュ元大統領と小泉元首相の歴史的な「居酒屋会談」や、映画監督クエンティン・タランティーノの「Kill Bill」のシーンのモデルになったことで世界的に有名なった「権八」。2018年現在は、蕎麦・串焼き、天ぷらなどを提供する和食レストランとして、日本国内はもちろん、世界各国のお客様からもご愛顧いただいております。古き良き日本を思わせるダイナミックな内装に国内外からのファンが絶たない「権八 西麻布」をぜひお楽しみください。
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『権八』の店名は、歌舞伎の登場人物「白井権八」に由来しているのだそうだ。

白井権八とは、実名を平井権八と言い、実在の人物である。江戸の遊女 小紫 に入れ込み、辻斬りまでして貢いだ末に、公儀に捕縛され、1679年に処刑されてしまう人物だ。小紫もあとを追って自害したと言う。
特に、4世 鶴屋南北 作 の『浮世柄比翼稲妻（うきよづかひよくのいなづま）』全九幕十九場（うち一幕五場は未上演）の第五段「鈴ヶ森」 で、大勢の雲助を相手に大太刀周りを演ずる権八と、そこに駕籠で来合わせた侠客、江戸・花川戸の親分「幡随院長兵衛（ばんずいいんちょうべえ）」との出会いのシーンが有名だ。長兵衛に「お若えの、お待ちなせえやし」と声を掛けられ、「待てとお止めなされしは、拙者がことでござるかな」と応える台詞はかなりの人気となっている。その後、「通りかかった鈴ヶ森、お若え方の御手のうち、あまり見事と感心いたし、思わず見惚れておりやした。気遣いはござりません。まあ、お刀をお納めなせえまし」と長兵衛が権八の剣の腕を褒めると、「雉（きじ）も鳴かずば 討たれまいに、益なき殺生いたしてござる」と口にする権八の台詞もまた人口に膾炙しているところであろう。立ち回りの一部始終を見て権八に惚れ込んだ長兵衛は、江戸での世話を引き受けると言うくだり全般も含め、何とも小粋なストーリーである。

そんな、「白井権八」を店名の由来とする、こちら『権八』、蕎麦・串焼き・天婦羅・寿司などを提供してくれる和食レストランとして、小粋に和の味わいを貫こうとする姿勢が、店名から伺えるような気がするが如何であろうか？


さて、いつもの能書きはこのくらいにして、そろそろ実食へと移って行こう。

当日の、『権八 西麻布』現着は 12:00 ちょうど。『赤坂氷川神社』での結婚式での雅楽の調べが、まだ耳に残る中での訪問である。会場は通常席と異なる3階席で、今回は、その 3F フロア全体をたった 8名 で貸切である。そこへ店舗スタッフ、ウエディングプランナーを初めとする面々が 10名 以上で取り仕切ってくださる。

12:10、新郎新婦笑顔の入場に始まり、ウェディングケーキ入刀が 12:35、新婦感謝文、新郎感謝文朗読を経て、14:15 の新郎父挨拶、新郎新婦退場まで、2時間少々の華燭の宴が、談笑の中、和やかに執り行われた。
因みに、司会は新郎新婦当人が行うと言う、ユニークな設定であった。

それでは、当日の料理の数々を実食レビューしてみたい。もちろんのこと、いつもの計量は今回は封印である。流石にこの場面で計量していたら、この私、人でなしに成り下がってしまう。。。f^_^;


「前菜三点盛り」


盛り込まれた三品は、「土佐酢和え」「フォアグラのムース」「生湯葉」である。

「土佐酢和え」の中には、マグロ、数の子、アボガド、胡瓜、カニ、ワカメ、ポン酢のジュレが所狭しと盛られていた。表面をポン酢のジュレが覆い、そこに九条細ネギが小口切りに刻まれて載せられているのだが、見た目以上に、具材の種類が多く、食し進めるごとに新たな味わいが口腔内に満ちるので、なかなかに贅沢感のある品である。
ポン酢のジュレの塩分濃度、酢の酸味ともに薄口で程良く、素材の味わいを重視した作りとなっている。

「フォアグラのムース」は、濃厚なフォアグラの香りが、食す前から芳しく匂い立つ。箸で割ると、その香りは弥増しになり、食すものの期待感を高めてくれる。
味わいは洋の品であるフォアグラが、和のテイストにまとめられていて、意外性があって面白い。これもまた味付けは薄口で、フォアグラの濃厚さを邪魔することがなく、小気味好い感じであった。
そこに載せられた蓮根の素揚げが、香ばしさを醸し出し、フォアグラと共に食すと、その食感が「カリッ」「ぷにゅっ」として、実に愉快であった。

「生湯葉」は、添え物は山葵のみ。何とも簡素な品だ。が、「生湯葉」そのものが作り立ての新鮮な品であるために、豆乳の香りが鼻腔を擽り、実に心地良い。
口当たりはとろんとしたまろやかな味わいで、そこに山葵をつけて生醤油を軽く垂らせば、実に繊細な味わいとなる。この簡素な配膳こそ、「生湯葉」の醍醐味だろう。


「平目のカルパッチョ」


兎に角、素材となっている天然平目の歯応えが堪らない。弾力が高く、跳ね返るような食感だ。これぞ天然！ そう思わせてくれる食感であった。

添え物は、ルッコラと紫玉ネギのみ。これまた簡素な配膳で、素材に対する板長の矜持が垣間見える。これらの野菜を天然平目で巻いて、タレを軽くつけて食すと、平目の新鮮さが如実に伝わってくる。

タレは、醤油ベースにポン酢を混ぜたタレとのことで、仕込みに手練手管は用いられていない。カルパッチョとは言い条、酢の使用は極くわずかだ。が、このポン酢タレ、とても好いアクセントとなって、平目の味わいを引き立ててくれていた。薄味の妙味、これを存分に愉しめる。


「オーシャントラウトの西京焼き」


脂がよく乗った「オーシャントラウト」を、京都で作られる甘い白味噌である西京味噌に三日間漬け置き、味噌漬け焼きにしたものに、ほうれん草の素揚げを添えて提供されるメニューとなっている。

白味噌の甘味と旨味が、魚本来の味わいを最大限に引き出してくれる西京焼きゆえに、「オーシャントラウト」のコクと旨味がぐんと深まる。そうして、嚥下後に口中で広がる後味にも濃厚な旨味が感じられ、漬け置きの時間を感じさせてくれる味わいとなっている。新鮮な「オーシャントラウト」ならではの甘い味わいに加え、香ばしい皮のパリッとした食感もまた、実に好い。

特に、目新しい感じがしたのはほうれん草の素揚げである。これは実際のところ初めて目にした料理であった。ほうれん草の葉脈がそのまま残る素揚げであるが、パリッとした食感で、先ず先ずの味わいを感じさせてくれる。「オーシャントラウト」の濃いオレンジの色味と対照的な濃緑の一枚葉が、実に印象的な品であった。


因みに、「オーシャントラウト」とは、海で養殖した虹鱒〔ニジマス : Rainbow trout〕のことで、今や日本では一般的となった「サーモントラウト」と基本的には同じものだ。

「鮭」は海で捕れて、「鱒」は川で捕れると、簡単に考えがちだが、実際はそんなに簡単なものではなく、何が「サーモン〔鮭（サケ）〕」で何が「トラウト〔鱒（マス）〕」なのか、両者の分類は意外と分かりにくいものとなっている。
取り敢えずの「サーモン〔鮭（サケ）〕」と「トラウト〔鱒（マス）〕」の大まかな分類が以下となる。

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「サーモン〔Salmon〕」…… 川で産卵して海で生活する、サケ科サケ属の一種。
「ニジマス〔Rainbow trout〕」…… 川や湖など淡水に生息する、一生を淡水で過ごす陸封型のサケ科タイヘイヨウサケ属のニジマスの一種。成魚の体長は 30cm 前後。
「スチールヘッド〔Steelhead trout〕」…… 川で産まれて海で生活する降海型のサケ科タイヘイヨウサケ属のニジマスの一種。レインボートラウトと比べて大型になり、大型のものは 60cm〜120cm まで成長することもある。
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「サーモントラウト（Salmon trout）」
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人工的に作り出した「ニジマス」の新品種で、「ニジマス」を海面養殖したものを指す。名称の意味は、サーモン（降海型 : 湖や河川で生まれ、海に下って成長する魚）とトラウト（陸封型 : 陸水にとどまって成長・繁殖するようになった性質の魚）を掛け合わせたものという意味である。なお、「サーモントラウト」は商品名であり、魚種を示す名称ではない。

アメリカ合衆国「ワシントン州立大学」のドナルドソン博士が作り出したニジマスの改良種を、海で養殖することで、さらに品種改良したものである。「ドナルドソンニジマス」のメスと「スチールヘッド（降海型のニジマス）」のオスをかけ合わせて海で飼育できる世代を作り出したものである。種としては「ニジマス」そのものであり、サケ科タイヘイヨウサケ属に分類され、サケ科サケ属のいわゆる「鮭」とは全く異なる。市場での呼び名は「トラウトサーモン」「サーモントラウト」「トラウト」などが通称されている。

もともと身色、味のいいニジマスを人工的に養殖用に改良したもので、遺伝子的に三倍体であるために生殖能力を持たない代わりに、通常ならば生殖のために使われるエネルギーまでも自己の生育に向けられ、体長は 50cm を優に越える。産卵期がないため肉質は劣化せず、一年を通して高品質を保つことが出来ると言う。更には、成熟しないことから、出荷調整が出来るのだそうだ。

要するに、三倍体になると、成長はするけれど、卵を産まない体になる。普通、メスの魚は、成熟すると卵をつくる方に栄養をとられてしまい、成長が止まり肉質も落ち、産卵が終わると死んでしまうのだが、三倍体のメスは卵を産まないので成長し続け、美味しい肉質のまま大きな魚になると言うことだ。

三倍体処理では、三倍体の雄魚は性成熟してしまうが、三倍体の雌魚は成熟しないことから、いったん全雌の集団を作り、その後に染色体を増やして全雌三倍体という集団を作ると言う方法がとられている。全雌を作るには、生まれたばかりの子供に性ホルモンの入った餌を与えて雌を雄に性転換させ、遺伝的には XX という雌の性染色体構成を持ちながら精子を形成する「性転換雄」を作る。この雄は Y染色体 を持たないため、作り出す精子は全て X精子 となり、受精によって得られる子は全て雌になる。その全雌集団の受精初期の未分化卵を、通常の自然界ではあり得ない圧力〔受精4～5時間後に650気圧6分間の圧力処理を10分間隔で6 回実施〕や温度環境下〔26℃程度の温水に20分間程つける〕に置くことで、減数分裂を抑制し倍数体個体を作出するとのことである。

「サーモントラウト」は、世界各地で養殖されている。その適水温は、およそ 20℃ 以下とされ、国内でも養殖されているが、国内では夏の海水温が適水温を超えてしまうために、水温が上昇してしまう前に、水揚げしてしまわねばならないという事情があって、なかなか大きく育てられない。夏の海水温が低く、周年海面養殖が可能な、チリ産・ノルウェー産・デンマーク産などが、日本に入ってくるものとしては流通量が多いと言われている。
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三倍体処理などと言う言葉を聞くと、何となく食指の動きが渋るような気もするが、要は種なし西瓜と似たようなものなので、遺伝子組み換え食品のような怪しき危険性はないようだ。

脂の乗りが最高の旨味となる「オーシャントラウト」=「サーモントラウト」、その旨味に和のテイストをふんだんに重ねる西京焼きでの提供。この工夫に感動しつつ、美味しく戴いたのであった。


「鴨のステーキ」


鴨肉のローストに、やや甘めで醤油のような食感を有する梅肉のソースを付けて食する一品だ。味わいに関しては、鴨肉のジューシー感がやや欠けていて、残念な感はあったが、梅肉のソースが好い味わいで、鴨肉のパサつき感を減じてくれるように思われた。

この梅肉のソースは、ボイルされただけの人参、カリフラワー、グリーンアスパラガスとも良く合って、その甘味が印象的なソースであった。これもまた、洋のビジュアルに和のテイストを絡めた工夫ある逸品と言えよう。


「寿司ビュッフェ」
「味噌汁」


長男坊夫婦が、披露宴の会場決めで、この『権八 西麻布』を選んだ一番の決め手となったのが、この「寿司ビュッフェ」だったのだそうだ。手握りの握り立てを食すのだが、握られたシャリの様態から、板長の自負を感じる味わいとなっている。

「寿司ビュッフェ」とあって、「寿司食べ放題」をイメージするが、これが、カウンターで、思う存分に好きな品をオーダー出来るようであれば、さぞかし至福感に包まれることであろうとは思ったが、流石にそこまでのサービスには至らないのが実情だろう。そこは致し方なし。。。

提供品は、中トロ、ビントロ、赤身、墨烏賊、サーモントラウト、帆立、ボタン海老の握り 7種 と、アボガドとイクラ、ズワイガニと海老天麩羅、とび子、焼き椎茸、カッパのロール巻の 5種 である。
家の奥さんは、アボガドロールが美味しかったと口にしていたが、私個人は、ズワイガニと海老天麩羅ロールが大いに気に入った。天麩羅のロール巻きは、意外に嵌まる品なのだ。


併せて提供された赤味噌の味噌汁の酸味が、非常に寿司と合い、喉奥で混じり合う感じがそこそこに美味であった。とても細かく 8mm 大に刻まれた豆腐、なめこ、三つ葉等の具材の食感と共に、喉越しに心地良さを感じる味噌汁であった。


「葛餅ときなこのバニラアイスクリーム黒蜜がけ」
「ウエディングケーキ」


幸せのお裾分け「ウエディングケーキ」、切り分けで少々型崩れを起こしてしまったようだが、この点に関して、見かけの問題は棚上げにして問題なかろう。新郎新婦と共に食す、そこに意味がある。
極々一般的な味わいの「イチゴのショートケーキ」だが、その大元は、かなり巨大な 30cm 四方のウエディングケーキであったわけだ。両家家族で新たに家庭を築く新郎新婦を祝す。言わば「祝すべく食す」のである。味わいは、当然のことながら甘々で然るべきであろう。(笑´∀｀)


そんなウェディグケーキが添えられた、『権八 西麻布』が提供するデザートは「葛餅ときなこのバニラアイスクリーム黒蜜がけ」だ。何とまあ、これまた甘々の味わい。ウエディングケーキに負けず劣らずの甘さであった。これも、また一興♪

きなこが塗されたバニラアイスクリームの横に鎮座する葛餅は、サイズ感の大きい 3cm×2cm 角の品であった。この大きさの葛餅は、なかなか味わえないものと思う。もちもち食感とその甘さが、1ピースが大きくなることで弥増しになった感があった。


ううむ、総じてこちら『権八 西麻布』、薄口を旨とした料理で、素材の味わいを大切にした数々を美味しく戴けたように思う。晴れの門出を華美に装うことなく、自然体で祝えたのも、こんな料理があったればこそであろうか。
結婚披露宴と言う式典の故もあったろうが、スタッフの接客も芳しいものがあった。温かく包まれるような接客は実に心地好い。お蔭様でとっても素敵な時を過ごさせてもらったように思う。

いや、幸せだ。親として、至福の時を味わう会場として然るべきであったように思う。
ううむ、誠に美味しうござった。m(_ _)m


さて、今回の実測値は、

実食総重量 : 計量せず
完食時間 : 計測せず
支払額総額 : 通常外利用

訪問日 : 2019.11.2（土）吉日


数々の結婚式に参列してきたが、我が子の結婚式は勿論のこと初めてだ。淡々と時間が流れていき、あっと言う間にお開きかと思っていたが、最終局面の新婦感謝文でにこやかに聞き入っていたところ、その直後、まさかの新郎感謝文にはやられてしまった。「そこでこう来るか！」
数々の想い出が脳裡を駆け巡り、子育ての時間の流れが、津波のように我が身に押し寄せる。あとは、湧き出ずる泪を抑えることも出来ない。。。

今回使用した「泪」と言う文字、、、飽くまでも私見ではあるが、鼻は啜っていないので「涕」ではないし、悲しみの感情が一切ないので形声文字の「涙」と言うのには何となく抵抗がある。そこで人情感溢れる会意文字の「泪」、これが一番合うような気が、個人的にしたわけだ。それ故の「落泪」である。因みに、こう書いてもその読みは「らくるい」である。

新郎父挨拶を、泪を抑えつつ、どうにかこうにか結んだのだが、どうにも長男坊にしてやられた感が大きい。
「父落泪」!! 長男坊よ、見事な演出だ。親は斯くも子を愛し、子を育てることで自らの人生を豊かにしているのだなと、思い知らされた次第だ。
『赤坂氷川神社』『権八 西麻布』この二箇所で過ごした今日という時間を、忘れることはないだろう。幸せとは、直ぐ傍にあるものなのだな。。。そう思わずにはいられない私なのであった。(*´ω`*)