野菜達のオーケストラに拍手喝采 : iCas storia

最近肉が色々とブームだ。肉の塊を食べることが健康にとってどれほどの効果をもたらすかについて以前も書いたかと思う。がしかし。人は肉ばかり食べて生きていくことは出来ない。出来なくはないが野菜も食べないとね。

しゃもじ隊の若い頃は、野菜の存在意義といえば「育ち盛りの子供に肉だけ食わせてたら家計が破産してしまうのを回避するための母親の満腹策略アイテム」くらいにしか思っておらず1ミリも興味がなかったのだが、年を重ねると野菜の美味しさに気づいてくるのが人生の醍醐味ということでしょうか。生きてて良かった。

そんなわけでたまには美味しい野菜が食べたい。それもとびきりのヤツだ。

ということでやおらニンジンの全身着ぐるみを着て外苑前の交差点で仁王立ちしていたら、一人の男性に呼びかけられた。彼がいうには「そんなに野菜が食べたいならニンジンの着ぐるみを着て街かどに立つのではなく、インターネットで調べるのが21世紀だよ」と優しく諭してくれ、近くに良いレストレンがあるので一緒にいきましょうと誘ってくれた。なんて良い人だ。

外苑前駅から歩くこと5分程度か。目の前に現れたナチュラルローソンにその男性が入っていく。うーん、ナチュラルローソンは確かに普通のコンビニより良質な野菜を売っているかもしれないが、そういうことじゃないんだよなぁブツブツ。

と恩知らずなことを考えていると、なんとお店の一角に地下へ続く階段が！

降りると突如として現れたのは「iCas storia」さん。究極のオーガニック料理を提供するというではないか。

聞けば、こちらで提供される「たんじゅん野菜」というのは、まぁなんて単純！じゃなくて、炭素循環農法と言われる土壌の微生物が持つ力を活用した農薬などに頼らない農法で育った野菜のことらしいです。

有機野菜や無農薬野菜というのは聞いたことがあるが、炭素循環農法野菜というのは、さすがに堅苦しい。だから略して「たんじゅん野菜」か。なるほど。

ただ問題は料理においては、その野菜が美味なのかどうかが当然ながら重要なファクター。美味であればしゃもじ隊のしゃもじがドラを鳴らす。それだけのことだ。

ということでさぁ入店！店内は暗めの照明で隠れ家っぽい雰囲気があっていい感じ。今回は奥の席に通していただきます。どこから野菜が飛んできてもいいようにしゃもじをイチローばりに目の前にかざします。さあ来い！

と思ったら着席してください、と促され着席。

こちらのiCas storiaさんは、コース料理で楽しんでほしいという趣旨から4種類のコースで供される。今回はイタリア料理コンクールの受賞作品を散りばめた至高のこだわりコースと書かれた「ROSSO（赤）」をチョイス。

ROSSOは、たんじゅん野菜のグリッシーニ・たんじゅん野菜「皮ごと」ベジピー・カプレーゼTipo'00'・たんじゅん畑のパルフェ・フォアグラパスタ・ベジフォカッチャ・本日の魚料理・特選肉料理・デザート盛合せ・エスプレッソor紅茶のラインナップ。このボリュームで8,500円は間違いなく価格破壊な気がする。

さぁまいろうか！まずはスパークリングワインで乾杯。

まずはテーブルにグリッシーニ登場。ポリポリします。このグリッシーニにも野菜が練りこまれているそうです。そしてすかさずテキーラグラスのようなグラスに入った液体が登場。これがたんじゅん野菜を皮ごと活かしたベジピーというアミューズのようです。すかさずクイッと。おおお！美味しい！

濃厚。そして甘い。皮ごとにしては雑味もないし、味わいが非常にクリア。

ここから白ワインに移行。と同時にシェフの受賞作品だというカプレーゼさん登場。と思いきや。何とグラスボールに入ってカプレーゼらしきものが登場。近距離で見てみると下から白いチーズ・真っ赤なトマト・鳥の巣のような何か？？・バジルの葉という色彩豊かな見た目。こんなカプレーゼ見たことない。オシャレすぎて気絶しそう。では早速。ん！チーズとトマトだけかと思ったらシュリンプが入っていてアクセントになってます。これはいい！カプレーゼはチーズとトマトとバジルというピッツァマルゲリータを引き合いに出すまでもなく完璧な組み合わせなので、もう誰もそこに割り込めないドリカム状態なわけだが、まさかのここへシュリンプさんコンニチワ。確かにシュリンプでカプレーゼが一層厚みを増した味わいになった気がする。

ということで一瞬で完食。お次は「たんじゅん野菜のパルフェ」の登場。パルフェとはつまりパフェ。こちらも何とワイングラスに入って登場。これもよーく観察すると、ワイングラスの底には土に見立てた食材が敷き詰められていて、その上に野菜たちが盛られていて美しく畑をイメージしています。いつも通り彦摩呂になっとくと「ワイングラスの中がまさしく自家菜園状態やー」

またこの野菜の美味しさといったら。表現が難しいけど野性的で骨太な味がして、それでいてちゃんと甘みがあり、さらに色合いもよい。野菜たちもシェフの腕でこのように素晴らしいスポットライトを浴びてさぞ本望だろう。

ここでベジフォカッチャの登場。聞いたまんまで恐縮だが、「シルククイート」というサツマイモを練りこんだ上品なフォカッチャです。とここでフォアグラパスタの登場。これもシェフの受賞作品とのこと。お皿が到着した瞬間にポルチーニ茸の香りがお鼻を通り過ぎていきます。そしてなんと！このパスタ。単に茹でるのではなく、濃厚なソースで炊いて調理しているとのこと。炊くって…まぁ確かにご飯は炊くよ。うん。でもパスタは炊いちゃいけないのではないだろうか。うおっ！ウマイ！！

本日の魚料理はブリと…えーっとえーっとなんだっけ。ソースは柚子と冬瓜とのことです。ステキな一皿。添えられてる野菜なんだっけなーと思って聞いてみたらつるむらさき！幼い頃に食べたことあるわ。

続けて特選肉料理。今回はカッチャトゥーラとボリート。丁寧に繊細に調理されたことが食べると感じられるのはシェフの芝原氏の腕なのでしょう。まさに料理を奏でてる感じで至福です。

冒頭で「美味であればしゃもじ隊のしゃもじがドラを鳴らす。それだけだ。」とカッコつけていたが、もはや鳴らし過ぎてドラが原形を留めていないレベル。普段はアラカルトオーダーが中心なしゃもじ隊だが、コース料理って独特の旋律があって心地よい気分になれる。身を委ねている感覚も好きだ。

美味しい野菜を美味しく料理していただく。これで美味じゃなければ世界の終わりだ。ありそうでない。そんなお店がまた１つ。体とココロを綺麗にしたい時にちゃんと予約して来たくなる。そんな場所でした。

ごちそうさまでしたー