成澤シェフの里山料理は総合芸術 : NARISAWA

”予約入れたよ〜♬” バースデー・サプライズ・ランチの予約は１２pm で充分に
余裕を持って家を出たのですが楽天ビルの角を左折→１ブロック一周してもお店
が見つからず、ナビだと此処だから困ったなぁ〜とサプライズ贈り主リーチェパ
パ・・私はお店の場所が分からないとすぐに電話して聞いてしまう安易型ですが
彼は最後まで自力で頑張りたいタイプ・・その彼が珍しくクルマから電話〜する
と今どちらですか？→ 楽天ビルの前です→ ”すぐに女性スタッフが向かいますの
でお車の色を教えて下さい” なんと３秒でエプロン姿のスタッフがクルマの横に！
”駐車場はすぐそこを左折した左側です” エッ？５分前に一周した道ではありませ
んか！ビルの駐車場に店名の表示がなく通り過ぎておりました。スタッフはビル
の中を通って駐車場入口で待機〜こちらの階段を上がってください→ 螺旋階段で
地上階まで上がると左に青山通りが見えるビルのエントランス・フロアーで一度
おじゃますればどーってことありませんが初回は大変でした。ドアに蜂とN〜♬
メートルD のお出迎え〜♬

白いテーブル・クロスが掛かったテーブルに NARISAWAと刺繍が入った重厚な
クリスタル・プレート、その上に和紙のプレイス・マットが置かれると引盃で福
岡の煎茶（冷）と富山・枡田酒造の今シーズン初 '一号’ がガラス器から注がれま
す。もろみの微小な粒が浮いていますね・・美しい朱塗りの引盃は正式なお茶会
でおめでたいお酒を嗜む為の器で大切な食事のスタートを飾る儀式、と木の紐で
閉じた５枚の和紙の中に書かれていて〜ご挨拶とメニューの他に国土の７０％
が山である日本の森から海に至る地理上のどこに里山が位置するのか一目瞭然で
わかるイラスト・・漆の朱色と白い手漉き和紙は日本の国旗・日の丸と同比率で
１６世紀後半から海外に運ばれた漆工芸品がジャパンと呼ばれていたことを初め
て知りました。ハウス・シャンパンがリリースされたばかりのドンペリ２０１２
年（G ¥３６３０）だったことも驚きでしたが白神山地で採取される森の天然酵
母を使って厨房で一次発酵を終えたパンを卓上で二次発酵させ膨らんできたら
（冬は暖房が入っているので早いそう）サイド・テーブルのワゴンに載せた ’森
の石窯’ で焼くこと１２分〜♬ 焼き上がったらブラックオリーブとホウレン草の
葉緑素で苔に見立てたバターで愉しむ森のパン・・目に見えない、しかし私達の
周りに常に存在し私達をも形成する微生物の存在をパンが発酵して行く様子を見
ることによって再認識してほしいという成澤シェフの思いをお客様を楽しませる
形で最初に持ってくるというところが料理人だけに留まらない演出家としての才
覚〜♬ ナイキのスニーカーでガラスのドア越しに見える厨房からご挨拶に出て
らしたシェフは物腰柔らかな謙虚な方で私は彼のオーラを宮崎産キャビア載せ北
海道産タラの白子のフリットに重ねてドンペリで堪能〜♬ ぷっくりした白子は
塩味くっきりで厚みのあるシャンパーニュで味わいが更に深まり出色の一皿〜♬

白子に続くは京都の新米で北海道産の雲丹と静岡の前田さんが釣った本マグロの
漬け丼〜ご飯もお酢しっかりでヨイですネ！活きの状態で届く静岡の赤座海老は
２０種類のオーガニック温野菜サラダ仕立て、チーズ・フォンデュのソースでよ
く冷えたシャサーニュ・モンラッシェ（G ¥４８４０）ともっちりした森のパン
と共に・・国産小麦に柑橘、栗の木の粉をかければ木の香り〜♬ ’苔’の上の飾り
は春の七草ハコベにセントウ草、冬イチゴ、バターナイフは手に持つと温かみの
ある優しい木製で森のメッセージ満載〜♬ 海老がサラダ仕立てになっていると
勝手に冷製だと思ってしまいますが温かな逸品でございます。近年ブルゴーニュ
の白はシャルドネ専科でリーデルのバルーンで味わうシャサーニュ・モンラッシ
ェ２０１８年に昔フレンチ以外のディナーは考えられなかった時代が懐かしく甦
ります。続くは ’五穀豊穣’〜スモークした石川産サワラを載せた器に和紙の蓋を
して藁の煙を閉じ込めテーブルで蓋を開けて Voila〜♬ という演出〜藁の香り〜
ビタミン大根と紅くるりを透明のポン酢で和えた大根おろし２種、周りは玄米と
黒米のあられで紅麹味噌に赤紫蘇と梅、白味噌と木の芽の２色のソースが賑やか
にサワラを囲みます。なんという発想〜♬（私は日本のお祭をイメージ）なんと
いう手間！！ 等間隔で２色のソースをぐるぐるっと描くのも小さなお米の粒を一
粒ずつソースの上に載せて行くのも！ いただく方はクリスピーな粒々とソースを
合わせ２色の大根おろしを交互に混ぜて〜ふっくらサワラをサクッと満喫〜♬

お肉は神戸ビーフでここでもサプライズが待っていました。お肉の前にナイフで
す！ひと目で特注品とわかりますが伺ってみますと世界のトップ・シェフを顧客
に持つ福井県越前市の高村刃物製作所にお願いして日本人の手になじむサイズで
作って戴いたとのお話。彫りが見事！もちろん、おネーム入り・蜂にNでござい
ます。オーナーシェフのこだわりはご自分がお使いになる包丁だけでなく、お客
様のナイフにまで！！ 和紙のメニューに始まり、特注の漆、選び抜かれた美し
い和食器の数々、ピシッ！と糊の効いたテーブル・クロス、リネンから森のパン
の魅せ方まで〜♬ お料理の独自性、完成度の高さだけでなく研ぎ澄まされたシ
ェフの美意識の高さに圧倒されます。神戸ビーフも肉質、サシの入り、ロースト
で柔らかさを最大限に引き出す焼きの妙と葛粉を使ったソースが珠玉の逸品！！
絶妙なタイミングで ”赤ワインはどうなさいますか？” とメートルD氏・・８３年
のボルドーがあるんですよ〜♬ お断りする理由など、どこにも見当たりません
が（笑）お値段が心配・・するとハーフでしたら（¥７４８０→ ¥３７４０）と
ご提案があり〜サンテ・ミリオンのグラン・クリュ・クラッセ〜シャトー・ラル
シス・デュカスの古酒がテーブルに載りました。３９年という年月が茶褐色の透
明な液体の中に・・枯れ色の中でワインが息をしていてワイン・セラーのひんや
りとした黴の匂いと湿り気・・あのセラー独特の湿った空気がグラスいっぱいに
広がって熟成ワインだけが持つアロマに包まれます。時間よ、止まれ〜ハーフは
ほぼ試飲ポーションでお料理と一緒にじっくり味わうというより単独で一口ずつ
という感じになりましたが添えられていたのは海老芋とキクイモで神戸の瀬戸さ
んが大切に育てた牛を黒トリュフとボルドーの古酒で〜♬ なんとも贅沢な時間
でございました。

デザートは２種でバニラ・クリームとカスタードを薄いスポンジで層にしたバー
スデー・ケーキにブラジル産の豆を自家焙煎したコーヒー、日本茶は花器のよう
なガラスの器で供され〜３ヶ月熟成させた鹿児島産つるし芋の天ぷらに京都の和
栗ソース、山崎のウイスキー・アイスを合わせた冷たいデザートと福岡・八女茶
の濃厚な抹茶の寒天と白玉、小豆が入ったビジューのような富山の ’蜂印’ 最中で
ランチのハーフ・コース（¥２２０００x２）終了となりました。これでハーフ？
私達には充分なボリュームで成澤由浩シェフの森から海に至る行程に里山と人里
があること、ロゴの蜂は自然界になくてはならない存在のシンボルであるという
彼の哲学と革新的な里山料理のコンセプトがコースの中で揺らぐことなく表現さ
れていて一環したメッセージとして伝わりました。世界ベスト・レストラン５０
に１０年連続選出（２０１６年世界８位・アジアでトップ、２０１７年世界１８
位・アジア６位・２０１９年世界２２位レビュー参照）サスティナブル・レスト
ラン・アワードで世界最高得点キープ！ 納得でございました。レビューの中に小
田原の早川にあったフレンチ・レストラン ’ラ・ナプール’ が懐かしいと書いてあ
るのを見つけましたが聞いたことがありました。フレンチ出身でいらしたのです
ね・・２００３年に此処でオープンされた時はレ・クレアシオン・ド・ナリサワ、
２０１１年にナリサワと改名〜現在に至る・・この日、私達の他は３０代前半カ
ップル一組に高齢女性お一人様という静かなランチ〜スタッフは万全で（駐車場
までお見送りがあったことは言うまでもなく）偉大なシェフがいらしても優秀な
スタッフ陣とお料理を魅せる器なくしてレストランは成り立たず、オペラ好きな
私はグラン・シェフは素材を光らせる演出家であると同時に指揮者であり舞台監
督であり、いかに珠玉の逸品を際立たせるかに命をかける総合芸術のディレクタ
ーとして日々食物という生き物と絶え間のない対話を続ける思索者なのだと理解。
ナリサワ・ワールドに光あれ〜♬