琴線に触れる　和×イノベイティブフュージョン : NARISAWA

NARISAWAの前身、レ・クレアシオン・ド・ナリサワに2004年に訪問して以来、16年ぶりの再訪。
レ・クレアシオン・ド・ナリサワは絶品東京フレンチだったのに対し、全く別のレストランに生まれ変わっていた＾＾
全体的に和のフィロソフィーを強く意識したイノベイティブフュージョン。とはいっても、全体的に味のパンチが強く、その点はフレンチっぽく、和食とは別物。外国人を意識しているのか？

数ページにわたるメニューの構成、ユニークで楽しい。コース全体がストーリー仕立てになっている。特に2枚目がしみじみ素敵☆森から始まり、里、海などいろんなところに遊びに行って、最後人里に戻ってくる。
とても独創的で楽しかった。ただこの手にイノベイティブに関しては、もっともっと感動する演出＆おいしさを表現しているレストランがデンマークやスペインにはあり、そちらを一度経験してしまうと、正直。。比べるレストランのレベルが高すぎるのはあるけれど。
とはいっても、和のモチーフを使ってこのようなイノベイティブを表現している唯一無二のレストランであることには変わりなく、日本人として琴線に触れ、とても楽しかった。

コースの途中で成澤シェフがご挨拶に来てくださった。これだけの成功を収め、名声を得ていながらとても腰が低そうな方で驚いた。

22000円6品（と謳われているが実際の皿数は倍以上）のショートコースをいただいた。
オレンジジュースと炭酸水を追加したがお会計は25600円程度と良心的。
このコースでもNARISAWAのフィロソフィーは十二分の体験できたし、量的にもむしろ少し多いくらいだった。

★8引盃
光り輝く白い上質和紙の上に朱塗りの器。日本を意識せずにはいられない＾＾
そしてメニューには「引盃」に関する、日本ではこんなことしているんですよという説明。
日本酒かお茶かを選べる。
お茶の方は、京都の抹茶と福岡の緑茶を合わせたもの。
すっきりしていながらもコクが深い、まろやか。

ところでこちらのレストラン、客席から見えるセラーには日本酒のみがたくさんの種類置かれている。日本酒に力を入れているのかなと推測される。

☆9“森のパン 2010",苔
メニューのトップバッター。でもこの時点では、火を入れる前の天然酵母を見るのみっていう演出＾＾
6種類のみかんのピールなどを混ぜた、白神山地の天然酵母。
かなり水分を含んでいる様子のどろっとした生地。
蒸すために、200度の石窯に入れたところでいったん終了。
どんどんNARISAWAの世界に引き込まれていく♪

★7☆9“里山の風景 ・ 森のエッセンス”
左奥の木の器に入ったものは、なんと木の出汁。森の中にいるような気持ちを味わってください、と。
黒いパウダーで土、緑のパウダーで苔を表現している。これらはおから。
美しく飾られた草花は、自生している野草を契約農家から仕入れているそう。
白いふわっとしたフリットは、発酵させた豆乳だそう。
あと、内側にサザンアイランドドレッシングのような味の、薄緑色のソースが潜んでいる。
全部が食べられる。

見た目が美しすぎて、フィロソフィーも素敵すぎて、たとえ味がどうであっても感動する逸品。そんな中、味自体もしっかりおいしかった。
ひとつひとつの味がけっこうしっかりしていて、繊細な見た目ながらわりとパンチのある一品。

★8☆10神奈川 稚鮎・神奈川 桜
透明な立体感あるお皿と桜のピンク。可憐で美しすぎる☆
今日のコースの中で、だんとつ一番好きなプレゼンテーション。
あゆが美しい鉢の中で泳いでいるかのような、透明感、躍動感。

取り皿も美しい。
G20でも使用された常滑焼だそう。金色部分は貝殻。
NARISAWAのために作られた、ということで、お皿の裏にはNARISAWAの蜂のマーク入り。NARISAWAのために作られたお皿なので、販売もお断りされた　笑。

稚鮎は小田原から生きた状態で届いたそう。軽いフリット。苦みがいい感じに効いていて好みの味。
桜の花びらを散らした煎り酒をソースのようにしていただく。

鮎と一緒に供されたのが↓
★7広島 ジュンサイ ・三重 グリーンキャビア
じゅんさい、スナップエンドウ（グリーンキャビアに見立てている）の入った、
利尻昆布（3年間寝かせた）の冷製スープ。トマトのエッセンスも入っている。
たで酢的な役割で出てきたのかと思ったけど、口にするとそんな役割はなく、独立した一皿。さっぱり初夏っぽい。

★9“森のパン 2010",苔
ここでいよいよ、天然酵母パンのできあがり。
石窯に面していた部分のみ軽く焼き色のついた、もちもちのやわらかいパン。
★7☆9バターは北海道産。土に見立てたブラックオリーブと苔に見立てた青ゆずがまぶされていて、とってもかわいらしい仕上がり♪

このパン、とってもおいしかった。生地がもちもち弾力あって、とってもやわらかくてふわっふわ。ほのかな甘みのある生地のオレンジのピールが効いている。あきらかにできたてほやほやの状態がおいしそうだったのと、おいしくて手が止まらないのもあり、出来上がった瞬間ぜんぶいただいた。

★7.5北海道礼文島~福井クラ囲い3年熟成利尻昆布
神奈川 アオリイカ・山形 タラの芽
三重（桑名） ハマグリ

アオリイカ、タラの芽、蛤のフリット。下には鰹節と鮪節の一番出汁。
ゆずの香りの効いた、軽いフリット。春感満載☆
出汁は味が濃かったので、ソースのように少しだけつける感覚。
桑名に蛤って初めて食べた。牡蠣のような味＆やわらかい食感だった。本当に牡蠣だったのか、ミンチにしてたのか？

★7東京 湯葉と豆乳 石川 酒粕と葛
北海道 天然ホタテ
福岡 赤ウニ・山形 フキノトウ

トップにはふきのとうの炙り、緑のソースはふきのとうのピューレ。上記の素材以外に白味噌も入っている。
いろんなおいしい食材が宝石箱のようにつまった一品。白味噌の味が濃かったが、個人的にはもっと薄味でいろいろな具材の素材を味わいたかった。

★8“ラグジュアリーエッセンス”
静岡 活赤座海老・山形 コシアブラ

見た目は和の椀物。でも器が朱塗りで鮮やか。
そして出汁は、丸鶏、豚もも、生ハムを96度で蒸すという中華の調理法を用いていると伺った。

実際に口にしてみると、出汁にこれまたパンチがあって驚く。丸鶏のコラーゲンなのか、かなりとろみがある。塩気も強め。広東料理のスープのような深いコクがある。
以前どこかの和食のお店で、魚の素材と肉の素材を合わせると喧嘩してしまうので料理の世界ではタブーと伺って、それ以来ずっとそう信じてきたし、自分が料理する際も、肉には魚の出汁（かつおぶしなど）を使わないなどしてきた。この一品は、そのタブーに真正面から対峙しつつも、見事に成功している。
おいしくてやさしい味の海老と、このパンチのある出汁が絶妙にマッチしている。おもしろい＾＾

★7静岡 伊勢海老 ・ 高知 フルーツトマト
茨城 ルッコラセルバチュ
トップの白い花はルッコラだそう。初めて食べた。

★7“生と死”
北海道 蝦夷仔鹿 ・島根 花山椒 ・山形 山菜
鮮やかな赤はビーツのソースで血をイメージしている。美しく、そして残酷なこのプレゼンテーション、生と死を意識し、感謝せずにはいられない敬虔な気持ちにさせられる。
小鹿自体には赤ワインとブラックペッパーのソース。
☆8細いたけのこ、炙り感絶妙でおいしかった。
小鹿の脂と花山椒が絶妙にマッチして、花山椒って脂と合うなと改めて感じた。

★8茨城 イチゴ ・高知 フルーツトマト
フルーツトマトはバターなどでソテーしている。
ミルクアイス、オリーブオイル。
☆9ミルクアイスやバターのエキスと混ざり合ったオリーブオイルが特に好きだった♪

★8福岡 八女茶 ・鹿児島 黒糖
最後の古典的な和洋折衷のプティフールでしめくくる♪
飲み物は緑茶にして大正解だった＾＾