Tokyo Nouvelle Shanghainese Restraunt : ミモザ

少し味が淡すぎる様に感じられました。
シェフにそう疑問を投げかけた。

少し物足りなく感じるくらいが上海の味わいです。今上海で好まれている中華は軽いもので、強すぎない四川料理のエッセンスなどが入るのも現代の上海料理の特徴です。

そうシェフスでも腕を振るったという南シェフが食後語ってくれた。

どの料理も油分や調味料使いも穏やかで負担なくいただける。
只、多くの料理で味付けがぼやけてしまっている様に感じられたのも事実。
それが一皿であれば好みや偶然で片付けられるのだが、多くの皿でそのバランスが楽しめなかったのは残念だった。

とはいえとても美味しかったものも。
基本はアラカルトで好きなものを食べていただくスタイルが良いと思うというシェフの言葉通り、アラカルト主体。
かなりそのセレクトにより満足感が変わってくると思われるので、幾つか好みであったものを挙げようと思う。


〜麻辣豆花〜

極クリーミーで柔らかな豆花にほんのりとした甘みやコクのある甜醤油の様な老抽（たまり醤油）をベースとしたタレが絡む。
その上にはまろみを感じさせるような辣油。麻はほぼ感じさせず、トウチを使う事でコクを出すという辣油は極旨口。
そこにリズムとして桜海老の香ばしい風味やピーナツのコリコリした食感、香菜の鮮なる刺激が加わり、拍を刻む。

少し香菜のカットが大きく他の食材の口溶けに比べ少しもたつく様な印象も受けたもののアピアランスを考えるとこのカットが落とし所になるのだろうか。

兎に角、甘みと奥行きがある辣油が美味であり四川料理とは違う魅力を提示してくれた。

〜大根パイ〜

カリッとした後にほくっと割れる酥餅。
中の塩揉みしたという大根がシャクシャクと心地良い食感を放つ。根菜の旨味を引き出され、小さく切られた金華ハムが旨味を支える。
浅葱も主張せずとも野菜の風味の複雑性に寄与する。

これに関しては金華ハムと塩揉み由来なのか塩気が確りとしており、初めからガツンとくる塩分濃度であった。


他にもパイナップルや醤油で作るつけだれに1日つける事で柔らかく仕上げる叉焼も中々美味。ブニュリと柔らかな食感の後にじゅわりと肉汁が滲み、軽めな甘みとタレの旨味が悦ばしい。
タンパク質分解酵素故の鮮度断裂感ある、くしゃっとした食感も少し感じられるが柔らかさを生む個性として感じる事が出来るレベル。美味しくいただいた。

トマトの玉子炒めも炒める際に焔を纏わせる事でつける薫香が確りとついている。少し卵への火入れが強く、ふんわりとエアリーではあるものの、下のタレに蕩け馴染む食感にかけていたのは残念。
味付けも少し砂糖に起因する様な甘みが強く、それに対応する塩気がバランス的に不足していた様に感じられた。
シェフスでもこの少し前に同じ料理をいただいたが彼方の同料理には感銘を受けるレベルであり、シェフとも話したが、微妙な塩梅の好みは人によって分かれそうだ。
因みにシェフの料理はこの料理も含め、シェフスの現在のシェフと比べ全体的に丸く柔らかと言われる事が多いとの話であった。

メインの2皿は最後の一味が決まってない様に感じられてしまった。
肉団子の湯葉巻きと黒木耳とメンマのスープは味わいがぼやけている印象。量がある為、最後まで楽しむ為の淡い味との話であったが毛湯を取る際に大陸の酒ではなく日本酒を使う事、生姜の量、雑味の量など少し疑問を感じてしまった。
スープの中の湯葉包の肉団子は素揚げしてから煮込まれスープを内包しつつとろとろと蕩ける食感でありとても良いテクスチャであった。

肉料理の牛肉の米粉蒸しも老抽（たまり醤油）と砂糖で味をつけたものというが深みにかける印象。表面に米粉をまぶされた牛肉の舌滑りする食感は良いものの、牛肉は少しムシャッと繊維の硬化が目立ち質も余り好みではないレベル。強い火入れをするのであれば少し脂を噛んだ部分の方が適している様にも感じた。

海老のしっとり炒飯は湯を使いしっとりとしながらもベタつきなくふんわりと仕上がっている。油分も感じさせる事なく極軽やか。
とはいえご飯の元々の炊き加減や質が米の元々のポテンシャルを感じさせる炊き加減なのかスープを吸い込む事が出来る水分量や硬さなのかどちらにも不一致な印象を受けてしまった。

全体的に素材の質に起因する料理ではなく、油分も抑え目な為、しっかりとした湯や決まった塩気、火入れなどがばっちり噛み合ってこないとどうしても感動には至らない。
立地もあり素材に値段をかけてはこの値段で提供するのは難しいのは理解できるが食事で1万円を超えるのであればどこかで美味しいなぁと笑いたかった。

シェフはとても穏やかなお人柄であるし、洗練を感じさせる内装やオープンキッチンなどとても居心地は良かった。
今回一緒に伺った食通の友人は前回はとても美味しかったという事で日によるブレか、料理のチョイスが悪かったのかもしれず、次は刮目する味に出会える事を期待したい。
楽しい夜をありがとうございました！


〜いただいたもの〜

蘿蔔絲酥餅 大根パイ

麻辣豆花

トマトの卵炒め

肉団子の湯葉巻きと黒木耳とメンマのスープ

叉焼

牛肉の米粉蒸し、下に海老芋

海老のしっとり炒飯

揚げプリン

ワインなど