熊本の名店の味と心意気を受け継ぐ居心地の良い洋食屋 : ブリボン

目白です。
目白と言えば、私の世代では田中角栄です関係ないけど。
味と心意気に感激した熊本の洋食屋、橋本の薫陶宜しきを得た平木さんの店がある街です。

クルマや自転車で通り過ぎたことは何度もありますが、5年は確実に来ていませんでした。
駅前はずいぶん変わった印象があり、見覚えがあるのは駅舎くらい。
最早初めて来たと言っても良いくらいです。

池袋まで来て時間が早かったので一駅歩いてみたのですが、途中特に何があるという訳でもなく、そのまま目白駅周辺を散策してケーキを買ったり、雰囲気の良い居酒屋やフレンチを覗いたりして楽しみました。
案外近くなのにあまり知らない街を歩くのって楽しいです。

さて、予約した時間になったので散策を終えて店内へ。
地下に続く階段を降りて店に入ると、開店時間直後だというのに先客が2組。
お、やっぱり相変わらず人気店なんだな。
厨房前にある大きいテーブルに通していただき（アクリル板で仕切ってあって予め相席仕様ですが今日は最後まで我々夫婦だけでした）、早速グランドメニューを拝見します。
先客のところにあった黒板メニューもやってきたので、見比べながら選びました。

今日は・・・最後にカレーをいただくことを念頭に、前菜は榎本農園のトマトとモッツァレッラ・ブファラのカプレーゼ、橋本さんから届いたという熊本のサラダ玉葱とせとか（は柑橘です）とサラミのサラダ、豊後水道の鮃を使ったカルパッチョ、ラミ亭で必ずいただくフォアグラのクレーム・ブリュレ、浜松の雫という希少品種の葱を炊いたブイヨン煮・・・で。
あ、それとせせりのレモンバターソースとふわふわ鯵フライもお願いします！

オーダーを取りに来たお姉さんが、お二人で7品ですけど大丈夫ですか？と心配してくれましたw。
ウチはそこそこのポーションがあるので・・・と言われてそれなりのポーションだった試しがないので、全然大丈夫ですとお答えして、ワインをお願いしました。
ワインは平木さんのご担当です。
今これとこれとこれをお願いしたと言ったら苦笑しつつワインを5本ほど並べてくれ、いろいろと説明してくれました。
その中からよく冷えたソアーヴェをワイフがチョイスしました。
まあ1本目だから軽めで。

最初は榎本農園のトマトとモッツァレッラ・ブファラです。
カプレーゼかと思ったらプチトマトなんですね。
彩りのきれいなカプレーゼ風の一皿ってことで。
このプチトマトが甘いです。
ブファラのモッツァレッラも味がはっきりしていて美味しいです。
素材をきちんと吟味して提供する橋本イズムが浸透しています。

熊本のサラダ玉葱は橋本さんからの贈り物で、せとかは愛媛のまだ生産量の少ないみかんで、それにサラミを入れたサラダは爽やかな味わい。
このせとかという柑橘はすごく口当たりが良くて酸味も穏やか、サラダに入れても違和感がないどころか玉葱とサラミの味をしっかりまとめてくれています。
あら、これは意外なことに（失礼）旨い。
オーダーをとってくれたお姉さんも厨房で味見させてもらってます。
そうそう、せとかって何ですか？と必ず客から質問がきますから、味覚えて説明しないとね。
客に優しい店はスタッフも和気藹々で楽しそうです。

鮃のカルパッチョにもプチトマトが乗って登場。
うん、鮃ももちろんですが、オリーブオイルがとても美味しいです。
フレッシュで軽くて旨味と苦味のバランスがいいですね。
鮃の旨さをぐっと引き上げてくれている感じ。
ワインがスイスイ進んじゃう味ですね。

自分のテーブルからは厨房の様子がある程度見えます（手元までは見えない）から、次に何が出てくるのか予想できるのも楽しいです。
自分達のところに来るかは分かりませんけど、あれはきっとクレームブリュレだな。
じっと見ていたら（物欲しそうな顔してるんだろうね）、お姉さんが我々のところに持ってきてくれました。
わーい！＼(^ ^)／

しっかりめに焼き色がついたクレームブリュレにはミントの葉が乗っていて見た目はかわいい。
スプーンには煮詰めたプルーンソースが添えられていて、味変もできます。
ぶ厚いブリオッシュにクレームブリュレをどさっと乗せていただきます。

甘塩っぱいものって何でこんなに美味しく感じるんだろう。
子供の頃から歌舞伎揚とか塩大福とか安倍川餅のきな粉掛けとか御手洗団子が好きでしたが、そういう味覚嗜好にフォアグラやレバー系のクレームブリュレってドンぴしゃなんです。
甘いものは苦手ですが、甘めの日本酒をいただきながら食べる焼鳥で7割方私の身体はできていますからw、このクレームブリュレにどハマりしました。
ラミティエのクレームブリュレは最高ですが、こちらも甲乙つけ難い美味さ。
幸せです。

浜松の雫はエシャロットと玉葱を掛け合わせた新しい葉玉葱だそうで、平木さんによるとまだまだ生産者が少ない野菜とか。
ブイヨンでクツクツと炊かれた見るからに美味しそうな土鍋風の器で出てきました。
洋食屋だけどル・クルーゼとかスタウブじゃないのがいい。
玉葱の甘味がスープに溶け込んでいてこれも甘塩っぱいです。
主役はこのブイヨンですね。
これは病みつきになる美味さ、玉葱の御御御付けがお好きな方は絶対好きな味ですよ。
慌ててワインとパンを追加しました。
このスープは乾坤一擲ならぬ乾坤一滴ですw
ワインはおすすめに従ってネッロ・ダーヴォラです。

お次は鯵フライ。
洋食屋の定番メニューがふわふわとはどういうことなのか興味津々でしたが、よくある開きではなく半身で登場です。
あ、こういうスタイルなんだ。
早速いただくと確かに柔らかいです。
小骨も全部抜いてあるようです。
半身でもわかる大きさ、身も厚いですから型の良いものを選んで使っているんですね。
とても上品な鯵フライです。
辛子とソースでオーソドックスにいただきました。

で、美味くて驚いたのがせせりのレモンバターソース。
これはワインでももちろん良いですが、ハイボールかちょっと甘めの焼酎にぴったりなんじゃないかと。
レモンの酸味とバターのコクが弾力のある肉の食感をいい感じでサポートしています。
すみませーん、ハイボールくださいｗ
ワイフはワインで良いそうですが、私はハイボールでいただきました。
これは純粋にアテです。

うーん、前菜はどれもとても美味しかった。
さすがに橋本さんの薫陶宜しきを得ている店です。
食事をする楽しさが溢れ出ている店ですよね。
厨房の奥に控えるシェフも手前で店内を睥睨する貫禄のあるおばさまも美味しいもの作りまっせオーラ全開だし。

さて、ワインも2本空いちゃったし、洋食屋なので好きに食べればOKですから、ワイフは私からの強烈なバイアスを受けて抗し切れずにイベリコ豚のカツレツ、私はまだお腹に余裕がありますから蛍烏賊のタリオリーニをabbondanteでお願いしました。
平木さんすみません、締めに食後の締めカレーもお願いしますね。
まだ食べるんですかと言われましたが、美味しいものはいくらでも入りますｗ

グラスワインをもらって飲みながら待つこと15分ほど、先に私のタリオリーニが来ました。
おお、どう見ても手打ちだ。卵を使っているからタヤリンですね。
ソースは蛍烏賊どっさりでワイフは嫌な顔してますけどｗ
とても弾力があってソースとの絡みも抜群のパスタです。
ああトリノで白トリュフぶっかけたタヤリン食べたい・・・
でもタリオリーニが蛍烏賊とこんなに合うなんて思いもしませんでした。
ベースはバターのソースが多いんですけど、あっさり塩味も美味しいんですね。

ワイフは完食する気なしでイベリコ豚のcôteletteを注文しましたが、バルサミコソースが軽く仕上げてくれるようでパクパクと快調に食べてます。
お、やっぱり美味しいものはお腹に収まるんですねｗ
イベリコ豚は日本ではまずまずのコストなので分厚くはありませんが、味わいは濃くてパルミジャーノがさらに風味を豊かにしてくれます。
バルサミコソースがとても上手にとんかつじゃなくて洋食の揚げ物にしてくれます。
これも美味しいねえ〜。

タリオリーニと蛍烏賊とイベリコ豚を喜んで頬張っていると、頃合いを見て締めカレーが登場。
お茶碗一杯分のカレーですね。
これだとあっという間に食べちゃいます。
フルポーションにすれば良かったよ。

平木さんがこれ使ってみてくださいとグルメミルと書かれた調味料を持ってきてくれました。
京の黄真珠という唐辛子が入っているそうです。
まずはそのままご飯とよく混ぜて一口。
お、師匠の橋本さんのカレーよりもスパイシーですね。
東京の流行りの味を取り入れたんでしょうか。
マイルドな印象ですがじわじわと辛くなる感じです。

平木さんオススメの京の黄真珠を少しふりかけるとあら不思議、却ってマイルドになる印象です。
香りが甘いのですが、辛味ははっきりしています。
でもそれほど辛くはないのですっきりマイルドな味わいです。
瞬殺してしまったのでよくわからないけどｗ

デザート代わりにワイフは珈琲、私はブルネッロのグラッパをもらって本日の食事も無事終了。
美味しいものばかりたっぷりいただきました。
2人で10皿いただいて満足です。
でも筍のフリットと米沢牛のローストビーフも食べれば良かったな。

平木さんに表までお見送りいただき、心身共に楽しい時間を過ごせたことに感謝してお店を後にしました。
ああ美味しかった。
熊本にはなかなか行けませんけど、行きたくなったら目白詣でｗ（昔の政治家か）することにします。
ご馳走様でした！！