開楽/快楽にうつつを抜かすオトコ独り …… : 開楽 本店

天気予報では晴れマークがその大勢を占めていたが、見上げて未だ空は明るい部分と、そして真っ黒い雲がマーブル模様で同居しているようである。
明治通りを走る路線バスに乗っていた。滝野川のあたりで、とうとう運転手さんがワイパーを動かし始めたか。池袋ビックカメラの前、終点で下車して歩き始めるのと、雑踏がぽつぽつと咲かせた傘をたたみ始めるのが同時くらいだったと思う。路地の押し出し十割蕎麦(笑/でもそれを私は否定はしません)の店の手前に、今度は餃子を押し出しているお店を発見 !　店頭ではお店に出す餃子の焼いてないやつをウィンドウに並べて販売しているようである。ちょっと迷ったが、入ってみることにした

<R1.7.24>

「開楽」

手を離すと自重で自動で閉まってゆく、あの銀座「あづま」式のからくり戸を引き入れば、銭湯の男湯と女湯のように、センターの階段で隔てられるように左右にフロアが別れ、まだ午前11時半のぎりぎり手前、空席が目立っていたので苦労なく左手のカウンターに着くことが出来た。
(のだけど、私が食べ終わるまでのその後のほんの15分から20分ほどで、席は瞬く間に埋まってしまうほどの勢いであった)

なんかふつうの中華屋とは違い急かされるような感じ、というかどことなく遊び(ゆとり)のない独特な雰囲気の空間であったので、もしや最初に食券でも買わなきゃいけないとか、ハウスルール満載のお店かと警戒するも、ホールの女性にそのまま注文でOKのよう。
餃子と白いご飯が欲しく、いち早くそのセットは見つけたのだが餃子が三つしか付かないようで、それでは些か貧弱ではないかと訝った。
半炒飯とのセットで餃子5ヶ、というのもあるし、麺類単体というのもやっているようだが、よく分からなかったので、それでもここは初志貫徹でいくことにした

“餃子定食” @680
“餃子1ケ追加” @130
〆て810円也。

いくらジャンボ鶴田といえども餃子三つは寂しいと思い、一つ追加。
と、餃子の焼きに10分ほど時間を頂戴するとの、真っ当なスパゲッティ屋のようなことを品書きに記載していたくせ瞬間的に(ものの1分ほど ?)そのご飯は舞い降りた !(笑)
自慢の餃子が作り置きかよ !　と、瞬間的にがっくりくる。
と、何か距離感の狂いを感じる。餃子が近いのだ。一瞬自分がいつハズキルーペ掛けたんだっけ ?　とにわかに混乱させられたのだが、私はハズキルーペを持っていないし、私の遠近両用メガネに物を大きく見せる機能は備わっていない。とすると、これは大変なことが起こっているかも知れないことに気付き、にわかに焦る !
そう、私自身がいつの間にか縮小してしまったのかも知れないのだ !!!
(んなわけない)

―― これ、フォルムがふつうの餃子と同じだから錯覚させられるけど、でけえよ !　餃子。おい !　やればできるじゃないか鶴田 !!(笑)

知らないで餃子を一つ追加してしまったが、これで餃子が味まで“大味”だった場合、途中で厭きて食べられなくなることが心配になる。また半炒飯に餃子5ヶセットというのは、明らかにこの餃子でお腹いっぱいにする、という意味合いのものであったのだと悟る

早速その“作り置き”を一口。
熱ちいいっ !!!
早速やけどさせていただいたわ !　全然作り置きじゃねえよ !　つ～かランチラッシュタイムへの突入に備えてお店が見切り焼きしはじめたロットに、ちょうど上手く嵌まっちゃってLucky !!!　餃子はごめんなさい !　予想に反しぜんぜん大味ではなく、皮がもちもちで美味しい ♬　逆にやけどしないようにちょっとづつ食べている自分の女々しさがひどく情けなく、打ち拉がれる。
こういうのを全身大やけどを負いながらも痩せ我慢で一口で食っていく(それをマドンナに見せつけなければならない局面に陥ったときだけだけど)星桃次郎のようなオトコをただひたすらに目指しながら、いつもジョナサンにしかなれない自分が、でも堪らなく愛おしい ……

落ち着いたところで左右を見回せば、意外に餃子から逸れたメニュウを注文してらっしゃる方も多いかな、と思った

けっして餃子に厭きたわけではないんだけど、カウンターに備え付けられている食べれる辣油みたいなのに着目してみる。
何に使うものかは不明のまま、ザーサイを食べ終わったお小皿にそれをちょっともらって、そして最後の餃子につけて食べたみたら、それがまた、まるで餃子にのせるのがほんとうの使い方のように美味い !!
ご飯との口中調味は餃子三つで十分に釣り合うもので、ボリウム的にふつうの一人前分は完全に満たすと思う。
それではプラスαの餃子一つが余計だったかと言えばまったくそんなことはなく、その一つは、自分へのご褒美として余裕で捉まえられるもの。

明朗会計を済ませ(品書きには内税、外税併記であったので)、餃子に食べる辣油(に似たやつ)を使うことは自分が編み出した技と思って得意気にお店を出てみれば、店頭のお土産コーナーにもそれが並んでおり、正体は何らかのアレンジが施された豆板醤とのこと。そしてなんのこっちゃない、餃子に合わせてくださいと書いてあるではないか !

肩を落としながら、路面は濡れているが、日が照って灼熱と化した池袋の街を彷徨う。
本日“俺の文芸坐”では、降籏康男監督追悼フェスティバル開催中。混雑具合はとんと分からないがウィークデイなので、自由席制のその劇場には30分ほど前に入ればいいかなと楽観してる。

「居酒屋兆治」「鉄道員 ぽっぽや」「駅 station」「冬の華」etc.
降旗監督、もう高倉健さんとのコンビでの凄まじい作品群を、ほんとうにありがとうございました。とりわけ私の映画人生の中でも「夜叉」が一番好きな作品です。でもごめんなさい、それは「トラック野郎」の片平なぎさがマドンナのときのやつの次に、ですけど ……

―― あの時の「トラック野郎」、反則的なまでに凄かったからなぁ ……

あともう一つ、高倉健さんと降旗監督の作品をいつも引き立ててくださって、ほんとうにありがとうございます、小林稔侍さん !