パレルモ/先ずは生バナナから : パレルモ 池袋店

「コッチクレバ ?　ソコウシロヒトトオルカラ !」

今日は空いているだろうと突っ込んでみれば、いつもの私の席の後ろにわざと接近させるように学生8～9人のチームを陣取らせているものだから、また店長ろくなことしね～ !　と訝りつつ、入り口側のカウンターに着いた。
ら、Y～ちゃんが、そこは背中の往き来が忙しないだろうから、いつもどおりにこっちに着いたほうがいいから !　とまるで母親のように私を促してくれて、よくよく考えたらそうかも知れないと思い狭い隙間を伝って腰を下ろす私に、Y～ちゃんがとどめの一言を私のハートに深々と突き刺してくるではないか !

「アリガトネ～ ♥」

目の前では昨日おれのことを見放した店長が、ちょっと後ろめたそうな顔しながらぼぉ～と突っ立っているので、今夜は焼き場に助っ人もいることなんだし、もう帰ればいいのに !　と心の中で念じつつ、おれはもしかしたら、いつかY～ちゃんのことが好きになってしまうかも ……
と、その必ずや国家に押しつぶされるであろう純愛について、ちょっと不安に陥ってみちゃったりして ……

<R3.12.19>

「パレルモ 池袋店」

いつも前を通りながらthroughしていたitalianのドアを、今日は勢い引いてみちゃう。
そしたらちゃんとした日本人男性の方が出迎えてくれ、現実路線をとって「ミ・アモーレ～ !」の掛け声も廃止されているよう(廃止じゃないでしょ !　そんな無駄なこと、最初っからやってなかっただけじゃない ?)。

メニュウ立ての一番真ん前に、私がRestaurantで最も警戒するHolidayメニュウという罠が仕掛けられていたが、敢えて無視。
ふつうの品書きに目を通すものの、私が欲しいのはサラダだけだったが、やっぱりそれを満たした上でリーズナヴルなのはHolidaylunchかな ?　と決意を固め、注文しようとフロアを見渡したところ ……

「すみません、大変お待たせいたしました !」

そういう仕草をみせて(注文しようとフロアに視線を泳がせて)、(ホール係の女性が)他の仕事に掛かっているなと思ってさっと引いた私の動作を完全に捕捉していらっしゃったか、それを片付けて即座に注文をとりに来てくれた感度高き赤毛のベリーショートのこのお姉さんの爪の垢をぜひママに煎じて飲ませたいという気持ちでいっぱいになったが、この世知辛いご時世、「すみません、爪の垢もらっていいですか ?」と要望すること自体、なんらかの罪に問われてもいけないのでやめておく。

因みに一人の私はカウンターへと誘われたが、それを隔てるパーティションの間隔は二人分十分にとられており、何の圧迫感もなく広々と使うことが出来ている

“ホリデーランチ” @1,530也。
グリーンサラダ+自慢のミートソースボローニャ風+チョコバナナ+カフェラテ

またもの“ボローニャ風”に“自慢の”、との冠までついていたならば、ボローニャ風専門家として黙っているわけにはいかない。
※ 私はあくまでもボローニャ“風”専門家であって、ボローニャ専門家ではない

しかしグリーンサラダに続きやってきたスパゲッティの、そのオーヴァル断面を見た瞬間、落胆する気持ちを抑えきれず。
いや、“ボローニャ風”仕様を守ろうとしたがローコストのタリアテッレが見つからず、苦し紛れに選定したリングイネであろうが、私の目からは、どうもこの形状のスパゲッティがうどんに見えちゃうもので ……

―― 氷見細うどんなんかそばつゆでやったほうが確実に美味いと分かり切ってるのに、それがこんなトマト・ラグーソースにまみれているのを見ると、もう不憫で仕方ないわよ

その完全自家製、100%デュラムセモリナ粉を謳うスパゲッティは、安価な店でよくよく出会う生パスタとしては決して悪いものでもなかったが、これであれば、やっぱりふつうの乾麺のスパゲッティのほうが、という感じかな。
逆に“なま”にして欲しかったのは、ドライフルーツだったチョコバナナのバナナのほう(笑)。
されとてこの人間芋洗い状態の池袋において、スムースに着席出来た点も、目の行き届いた接客とともに、まったく悪くないと思っている。
店外に出て振り返れば、やはり“完全自家製生パスタ”という宣伝文句が踊っているのに気付き、ああ、これでおれは今まで避けていたのか、と腑に落ちる。

またここで図らずも明るみとなった非常に重要なポイントは、わざわざ“完全”生パスタと謳われているということは、当然、市場に出回っているものの多くは“不完全”生パスタとなるという冷徹なる事実であり、そしてそのことは、私の生パスタ忌避衝動にいみじくも符号する