唯一無二の料理と探究心 : ボニュ

来栖けいさんとは、４年ぶりぐらいの再会となりました。

「エキュレ」時代には、何度かお邪魔したのですが、４年経って、まったく外見は変わらないのに、

料理についての見識は恐ろしく進化していました。　

そのこだわりたるや、まず、日本国中探してみても、たぶん他にはありません。

来栖ワールド、「ボニュ料理」のほんの一端を拝見させていただきました。

「食」を追及したら、料理はこうなる。　料理をこうするために、この食材が必要。

だから、この食材なのであって、けして、高級食材オンパレード、とはわけが違うのです。

出来上がりの味を計算し、その味には、この方法、というフィロソフィーが徹底して貫かれていました。

つまり、食と食材の「本質」をとことん探究しているのです。　

さて、この日、平日の昼ですが、４名の食いしん坊が集まりました。

コースは、夜も同じで、２５０００円か１６０００円です。

予約時に、１６０００円をお願いしました。

参宮橋と初台のちょうど中間地点の住宅街の中。

真っ白の壁。　看板には、赤でロゴと店名。

店内は、ベージュを基調とし、シックそのもの。

この日は、私たち４名だけでした。

奥がカウンターになっていますが、客席としては使用していないそうです。

まずは、飲み物ですが、平日ゆえ、アルコールは抜きと告げると、

「東方美人」を勧めてくれました。　どの料理にも合うよう、よく計算されています。

さて、コースです。

まずは、アミューズ　　　　　　　　　　　　　　　　村上牛をシャンパーニュでマリネしたジャーキー。

１、自然　　～太陽・空・土・ハーブ～　　　　　　　どの料理にも、その料理に合うよう、皿をデザインして作ってもらっている、とのこと。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　中央には、太陽に見立てたオレンジのソース。　トマトベースです。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　その周囲が、お皿のブルー、淵が茶色。　これが空と土を表現しています。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ソースの上には、青森産のハーブ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　極めてシンプルな出だしです。

ここで、風見鶏のパン

２、体温　　～村上牛・黒トリュフ～　　　　　　　　まず、来栖さんが、重厚なシガーボックスをもって登場。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　その中には、かなり上質な黒光りするトリュフがゴロゴロ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「シガーボックスに入れて、冷蔵庫で保管するのがベスト」と来栖さん。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　村上牛の生肉の薄切りが登場。　ちなみに、オリーブオイルなどを使用していないので、

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　カルパッチョではありません。　味は塩のみ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　なぜ、「体温」かというと、３８℃～４０℃という、牛が生きているときの体温で、

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　供されるからです。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さて、この部位。　ブラインドです。　　ふつうの部位ですが、まさか？？　と思える部位で

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　だれも当たりません。　いらしたときの楽しみにとっておきましょう。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　その村上牛の上に、黒トリュフをたっぷり。

３、シンプル　～キノコ～　　　　　　　　　　　　　外見は、キノコのリゾット、です。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　キノコと水だけで出汁をとっているそうで、出汁用のキノコは捨て、

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　リゾットには、新しいキノコを追加。つまり、「追いキノコ」という贅沢さ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　水と塩だけで造られた、これ以上引けない「シンプル」さ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　キノコは、舞茸、エリンギ、シメジです。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　動物性のものは、まったくなし。

ここで、どんぐりの粉とくるみのパン

４、墨　～イカスミ～　　　　　　　　　　　　　　　いか墨のパスタです。が、なぜか、タイ料理のような風味が。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　トマトとこぶみかんで酸味をつけた、茶と貝の出汁を、テーブルで注ぎます。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　この出汁にパスタを混ぜていただきます。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　お皿は、イカスミを散らしたようなデザイン。　どこまでがデザインがわからなくなって

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　きます。

５、ボニュ焼き　～村上牛～　　　　　　　　　　　　部位はイチボ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　大きな塊で、見事なローズ色です。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　来栖さんといえば、「エキュレ」のときに、天然記念物である「見島牛」を

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　食べさせてくれました。　今、さらに、希少な牛も入手しているそうです。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　さて、ボニュ焼きとは、６時間かけて、フライパンとコンロだけで焼き上げるという

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　もの。　休ませたり、強火をあてたりを繰り返し、肉の中の肉汁なのか、余分な水分なのか、

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　を見極めるのだ、そうです。　外はカリッと、内部は均一に火が通っています。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ナイフを入れても、肉汁は出ず、口で噛んでいると、じわっと沁みでてきます。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　わさびをたっぷりつけて。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　写真をとっていると、温度が変わってしまうので、お早目に、とのことで、写真は１枚。

６、ナチュラル　～神果卵～　　　　　　　　　　　　プリンです。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「プリンの本質は、卵、ミルク、砂糖。　卵黄や、クリームを足したりしません。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　なぜなら、卵黄と卵白の黄金比はひとつの卵で完結しているから。　卵白はコシをだすので、

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　重視。　卵とミルクの比率で、つるんとした食感をだしています。」とのこと。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　お皿は、このためにデザインされ、卵とミルクと砂糖の色。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ちなみに、卵は四万十の神果卵（しんか）で、ひとつ３２４円。

水チョコ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　これには驚きました。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「通常の生チョコは、カカオと生クリーム。　しかし、これでは、カカオの良さが

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　失われてしまう」という衝撃的な一言。　これは、カカオと水という相反するものを

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ひとつにしたショコラ。　なるほど、カカオの味と風味が存分に伝わります。

最後に、ミカフェートのコーヒーを。

いやはや、来栖ワールド、楽しませていただきました。

しかし、これはほんの序の口で、まだまだ守備範囲が広いのだそうです。

次回が楽しみです。

ちなみに、要予約で、テイクアウトできるスイーツもあります。　

これにも興味津々。　本型の焼き菓子用パッケージは、奥様のデザイン。

これも近々トライしたいものです。