デパート大食堂って大人のファミレス : イセタンダイニング

カジュアルレストラン・イセタンダイニングと気取った名前が付いているけど、結局中身は「大食堂」。
和食があって中華があって、洋食もありつまり「料理の百貨店」のような多彩なメニュー。
昔、百貨店に家族で出かけるということは、大食堂で家族みんなが食べたいものを選んで食べてたのしい一日の思い出にする…、そんなステキな場所でもあった。
そんな時代を思い出しつつ、にたのしく迷う。

冷えた体をまずコーンポタージュであっためる。
カップに入ってたのむとあっという間になって来るのにちょっとびっくり。もう少しもったいぶってもいいのになんて思いながら飲んだら案外これがおいしくあったまる。

友人たちは五目あんかけかた焼きそばにドリアをたのむ。
具材たっぷりのあんかけが一品料理のように思える贅沢さ。ドリアはアメリケーヌソース味で昼のパスタの復習をしているみたいでこれまた贅沢。

何をたのんでもハズレがなくて、普通のレストランがしないであろう工夫に溢れているところ。
例えばドリアの上にカジキのグリルが乗っているとか、あんかけ焼きそばに伴い出て来るお酢がドレッシング容器に入ってやってくるとか、そういうところも百貨店的。オモシロイ。

ボクはそばのセットをもらう。握り寿司がサイドについていたのが決め手。河岸がきちんと動くはじめるまで寿司は我慢しようと思っていたのにフライング。これはあくまで付け合わせ。メインじゃないからと言い訳しました。言い訳上手でございます（笑）。
そばもそこそこ、寿司もサイドと思えば案外しっかりしていて何よりシャリの散らかり具合と酢の味になんだかホッとして笑う。茶碗蒸しがおいしかったのがまたうれしくてみんなで分け合いお腹をたのしくあっためた。

昼、新宿でランチ。打ち合わせを軽くしながらと思って場所をちょっと迷った。
時間がランチのまっただ中。新宿三丁目界隈はどこのお店もかなりの混雑。
しかも何が食べたいかなかなかイメージがつかなくて、なかなかお店が決まらない。

ゆっくり話をしながら食事ができる場所。
しかもいろんな料理が揃ってて、何を食べればいいかわからぬときのヒントを与えてくれる店。
ランチタイムでもある程度の席数がある大箱ならば、なんとか座れるに違いない。
…、と、いろいろなコトを鑑みて、ポーンっと出てきた答えがデパート食道でした。
それで伊勢丹のレストラン街。イセタンダイニングっていうお店。行ってみたらすんなり入れてなんともラッキー。

お店の中には老若男女を問わぬ人たち。特に小さな子供を連れたママ友グループと、シニアカップルの多いこと。
メニューを見ると和食、洋食、中国料理と多彩で多様。
ラーメン、炒飯から蕎麦に寿司。ビーフシチューにカレーと大衆料理がほとんどすべて揃うたのしさ。
お子様ランチも当然ながら充実してて、そういえば昔、百貨店に行く目的のひとつがこういう大食堂で食事をするコト。
子供ながらに背筋がシュッと伸びるような気持ちがしたのを思い出す。

考えてみればファミリーレストランはこういうレストランを目指して仕組みを作ったのね。家族がたのしく食事ができる、利用動機やお客様を敢えて選ばぬ懐広さをシステマティックに組み立てる。
けれど今ではファミリーレストランもテーマがなくちゃ生き残れないと、ある特定のお客様にやさしい工夫をしはじめた。マーケティングをすると必ず、２０代の女性をターゲットにしなきゃいけないって事になり、どこもが同じお店のようになってった。
デパート食堂にかつて憧れた大人世代にとってもこういう店はたのしい。

メニューを前に存分に悩んでまずは野菜を食べようと、サラダをたのむ。シーフードグリルサラダっていうメニューがあって、四角いお皿に野菜がたっぷり。ドレッシングをただかけたのじゃなく、オリーブオイルとハーブソースをしっかり葉っぱにドレスしたもの。
お皿の縁にはジェノベーゼソースを散らして飾る。紅芯大根にエディブルフラワー、トマトと彩りうつくしくて、その真中にはカジキマグロとエビのグリル。それが焼きたて、ホカホカで周りにトロリとチリビーンズ。しばらくすると周りの葉っぱがしんなりしてきて、甘みが出てきてまた旨い。

それからも一つ、シュウマイたのむ。
蒸し器に四個。
ふたつはエビのシュウマイで、ふたつは豚と蟹肉焼売。どちらもふっくら。周りに葉っぱ野菜がたっぷりあって、それと一緒にシュウマイ食べると、なんだか不思議。シュウマイ味のサラダになっちゃう。オモシロイ。

メインの料理は蕎麦にした。
今朝も蕎麦ではあったんだけど、ちょっと変わった蕎麦の提案。のってみようと「小エビの冷たい蕎麦」にしてみる。
深いお皿にたっぷり蕎麦。上にハーブ野菜が飾られて、そこに天ぷら。
上からタレをぶっかけ食べるという提案。
蕎麦のサラダのようでありつつ、タレはあくまで蕎麦ダレだからずっと蕎麦として味わえるのがまずよくて、しかも野菜をたっぷり味わえる。健康的でいい感じ。
オモシロイかな天ぷらが、小エビの他にトマトとアボカド。
トマトの天ぷらがプチッとはぜて、トマトソースのような味。
そこですかさず蕎麦を食べると、ほんのちょっとだけパスタのような感じがするのもオモシロイ。
実はアボカドの天ぷらは、食べる瞬間までてっきりししとうの天ぷらだって思ってて、口に入れたらトロリととけた。それでビックリ。予想以上の甘みが口に広がっていく。意外性もゴチソウのひとつなんだ…、って思ったりした。オモシロイ。

一緒についてくるのがいなり寿司。
柚子の香りのいなり寿司っていうのが売り物。
けれどお揚げが甘くて油の香りがこうばしく、だからあんまり柚子の匂いは感じなかった。
代わりに胡麻がプチプチはぜて、甘い香りにしてくれる。サイズ小さく女性の口にいいサイズ。こういう料理を見るといつも思うのが、「女性向け」であることと「お年寄り向け」であることは、ほぼおなじだなぁ…、って。
お年寄りに向けた料理を、わざわざたのみたいと思うシニアは少ないはずで、けれど「女性にやさしい」というメッセージ。
それがそのまま、お年寄り向けってたのしく変換されればいいんだ…、って思ったりする。これがそう。

ちなみにココの一番人気は松花堂のようであります。
ぶりの照焼、レンコンと海老のすり身のはさみ揚げ。天ぷら、刺身と食べたいものがもれなくあって、しかもご飯が白米、十穀米から選べるやさしさ。
茶碗蒸しもなめらかで、食後のたのしみがわらび餅っていうのがこれまたステキでやさしい。たんのうしました、仕事もスルスルはかどった。