Le Petit Bedon ≠「小さなお腹」 : ル・プティ・ブドン

旧山手通り沿いの地下にあり、同じ代官山にある一ツ星レストラン「パッション」の姉妹店です。店舗ではフランス人オーナー、アンドレ・パッションさんの息子さんのパトリックさんが接客に当たっています。フランス国旗が目印です。

地下にありながらも店内は天窓から日差しが入り込む明るく開放的な席もあり、心地良い空間です。一方奥側はワイン蔵をイメージしたような落ち着いた雰囲気です。

今回はアラカルトから前菜とメインを選択できるメニュープティ・ブドン(￥3300)をいただきました。平日は軽めの￥1900、￥2600とアラカルトからそれぞれ選択できるメニュークルトワジー(￥4200)、メニューグルマン(￥4900)の５種類(税込み、サービス料別)。メニューにはオーソドックスな料理が並び、全体的にしっかりとした味付けです。プラス料金の表記が多い気がします。食事の前にアミューズとして小さなクリームチーズのタルトが提供されました。

私は前菜に「本日のオードブル」から鴨肉のテリーヌ、メイン料理に「本日のお肉料理」から仔羊のローストをチョイスしました。デザートはワゴンから３種類(チョコレートケーキ、バナナケーキ、シブースト)。

鴨肉のテリーヌにはフォワグラ、トリュフ、ピスタチオが入っていて、色々な野菜のピクルスとマスカットのゼリーが添えられていました。ビーツや金柑、カリフラワー、玉ねぎのマーマレードなど彩りが良く、味の変化を楽しめました。テリーヌ自体にはもう少し鴨の肉々しさが欲しかったです。味付けもぼやけている気がしました。

仔羊のローストはプロヴァンス風に調理され、付け合わせにナス、セミドライトマト、赤パプリカのペースト、ソースは仔羊のジュとバジルソース。フレッシュなバジルとニンニクの香りが食欲をそそります。そして何より、骨付きのままローストされた仔羊肉が見ためにもインパクトがあります。こちらの仔羊肉はきちんと調理され、味付けも抜群でした。香ばしく焼かれた脂身は何とも言えない味わいで、久しぶりに美味しい仔羊料理をいただきました。フィンガーボールを用意していただいたので最後は手掴みでいただきました。ソースも濃厚でしっかりとしているのでパンが進みました。今回はワインを注文していませんが、つい飲みたくなってしまう味わいでした。こちらにはリーズナブルで美味しいワインや珍しいワインがあるので、そのワインと合わせて食事するのも良いと思います。ただ、付け合わせのナスの火入れが不十分でアクっぽさを感じたのが残念です。

そして、ワゴンデザートの前にチーズを注文。別料金ですがこちらに伺うとつい食べてしまいます。名物と言うべき、カマンベールチーズのアイスクリームをいただきました。濃厚できちんとチーズの味がしてとても美味しく、珍しい逸品だと思います。チーズ好きには堪りません。是非オススメです。デザートはワゴンから３種類選べます。ケーキの他にもアイスクリーム・ソルベ、フルーツのコンポートもチョイスできます。ワゴンデザートを提供しているレストランも珍しいですね。

サービスは堅苦しくなく程良い距離感です。女性スタッフは声が小さく表情に硬さがあるように感じましたが、料理の説明をしていただいた男性スタッフはとてもわかりやすく、料理のイメージもしやすかったです。またパトリックさんの流暢な日本語も印象的です。サービスの良し悪しには関係ありませんが、それを楽しみに来店される方も多いのではないでしょうか。私もその一人です。

最後に一点、こちらではおしぼりが提供されないようです。食事前にトイレで手を洗えば良いだけの話ですが、スマートではありませんし、手で摘まんで食べるアミューズも提供されるので入店時におしぼりを出していただけると嬉しいなと思いました。

若干、料理の提供に時間が掛かったように感じましたが、きちんと確実に丁寧なお仕事をされているなと思いました。盛り付けも丁寧にされていました。フィリップ・バトン氏の頃から利用していますが、一年を通してメニューにあまり変化がないので、その点も更に工夫があると良いと思います。

帰りには別の男性スタッフが私たちの姿が見えなくなるまで頭を下げて見送ってくださいました。退店時の見送りを疎かにするレストランも多くあるなかでこのような気持ちはとても有難いことです。

久しぶりに利用させていただきましたが、とても良い時間を過ごせました。お腹も心もいっぱいです。ごちそうさまでした。