〜 別荘の夜に四季折々フレンチが浮かぶ 〜 : AMOUR

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フレンチTOKYO百名店2023選出店

食べログ フレンチ TOKYO 百名店 2023 選出店

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4.5

¥15,000~¥19,9991人
  • 料理・味4.4
  • サービス4.7
  • 雰囲気4.6
  • CP4.5
  • 酒・ドリンク4.3
2019/11訪問1回目

4.5

  • 料理・味4.4
  • サービス4.7
  • 雰囲気4.6
  • CP4.5
  • 酒・ドリンク4.3
¥15,000~¥19,9991人

〜 別荘の夜に四季折々フレンチが浮かぶ 〜

土曜日の夜だというのに、今夜も静けさに包まれる住宅街を歩いている。


恵比寿駅から離れた明治通り沿いの住宅街は、週末の夜にも関わらず、都会の喧騒とは関係ないかのように、ひっそりと静まりかえっている。辺りに靴底が鳴る音が響き渡り、歩いているひとさえ見当たらない。まるでこの一帯だけが街から切り離されているようだ。

やがて、暗がりの中に、きれいな灯りが浮かぶ建物が現れる。高い囲いに沿って中まで進めば、緑豊かな庭に無数の灯りが浮かんでいる。美しい樹々の間からは、別荘のような一軒家レストランが顔を覗かせている。

そこからこぼれてくる灯りがとても暖かそうだ。

都心を離れたような気分に浸りながら、僕は吸い込まれるようにレストランの中へと進んでいく。受付で名前を告げると、見たことがあるような男性に丁寧に迎えられる。そして、ウェイティングルームで待つように言われる。

灯りが浮かぶきれいな庭を横目に、僕はふかふかのソファーでゆっくりくつろぐ。優雅で本当に暖かい空気が流れている。期待などしていなかった雰囲気の良さに驚きを隠せず、始まる前から気分があがっている。

そう、僕はいつか訪れなければいけないと思っていたAMOURにいた。

しばらくすると、優しい微笑みを浮かべる女性スタッフにテーブルへと導かれる。柔らかい絨毯が敷かれる階段をゆっくり昇っていく。フロアーを変えるなんて、本当に別荘に招かれたようだ。

ダイニングルームにも柔らかい絨毯が敷かれており、ややブラウンがかった色調の部屋が優しい。ここにも優雅で暖かい雰囲気が漂っており、いつもと時間の流れかたが違う。慌しく尖り切った毎日の、何十倍も、柔らかくゆっくりと時間が流れている。

お出迎えの手紙を受け取り、手書きなのに驚いていると、この日の料理の説明が始まる。その後、優しい微笑みの女性スタッフに、疑問に思っていたことを質問する。最初に迎えてくれたのは後藤シェフか、と。実はそうなんです、たまにあるんですよね、と上品に笑いながら答えてくれる。なんとも耳触りの良い暖かい話し方だ。

それにしても、シェフがお見送りすることは日常的だが、お出迎えするのは聞いたことがない。なんとも言いない特別感に包まれながら、ますます僕の気分はあがっていく。目の前にはコペンハーゲンの美しい下皿が置かれている。


さて、この日のコースは以下に。


1.栗の収穫
落ち葉や落ちた栗、木の葉がいっぱい敷かれる、美しい籠が目の前に現れる。秋に染まる森で栗拾いをするという趣向であり、この中から栗パイを見つける。小賢しい僕はランベリー同様、違うやつを掴んで笑いをとろうと試みるが、愛想笑いしか生まれない。

栗パイは刻んだ栗とともに、クルミやコンテチーズがパイ生地に包まれている。栗のコリコリの食感の隙間に、甘みとチーズの風味が広がり、熱々で美味しい。始まりから、美しく、四季折々の料理でこころを掴まれる。

2.落花生、いくら、山葵
赤い江戸切子のグラスに、落花生のブランマンジェを敷いて、いくらと静岡の本山葵を載せ、コンソメ餡で覆う。

小さなスプーンで拾って口に含めば、ブランマンジェが滑らかに舌の上をすべり、ほのかな甘みと、いくらの塩味、コンソメの旨味と山葵の辛味が、重なり合い、調和し合いながら、口の中で静かに交わっていく。懐石料理のような味わいであり、絶妙なハーモニーを奏で、たまらなく美味しい。

ここで、京都の吉田パン工房のパンが供される。

3.鯖、昆布、柚子胡椒
北海道のおぼろ昆布を敷いた大船渡の炙り〆さばに、揚げた米と柚子胡椒を載せ、エルダーフラワーで華麗に飾りつける。鮨をイメージしたひと皿であり、このきれいな〆さばをおぼろ昆布に巻いていただく。

口溶けしていく〆さばに、揚げた米の食感とおぼろ昆布の旨味が絡みつき、美味しい。

4.松茸、ハモ、梅
銀箔の箱を開けると、燻製の香りと煙りがふわっと浮かびあがり、松の葉を敷いた松茸のフリットが現れる。厚めにスライスした2枚の松茸に、ハモのすり身とモッツァレラチーズを挟み、やや厚めの衣で揚げてから、梅のペーストを添える。

燻製臭を漂わせる松茸をひとくちで頬張れば、チーズと松茸の香りと一緒に、熱々の松茸汁がジューシーに広がり、舌触りの良いハモの食感とともに、交わり合う旨みが喉奥へと消えていく。和に接近した四季折々の料理であり、これまた美味しい。

瞬間燻製したのは森の中で松茸を見つける楽しみを提供するためであり、本物の松茸の香りは奥に忍ばせているのだという。

5.戻り鰹、茄子、かぼす
炭火で焼いた茄子のペーストを底に敷いて、その上にトマトと鰹のジュレを広げ、かつおの藁焼きを散らした上に、柚子酢で和えたみょうがとかぼすのピールを添える。藁焼きの香りは豊かであり、鰹の皮の旨味は美味しいが、やや酸味の主張が強い。

6.オマール海老、百合根、トマト
後藤シェフのスペシャリティのオマール海老のビスクであり、こちらは実に素晴らしい。トマト風味のフランに、オマールの身と百合根を浮かべて、ビスクのスープを後がけする。

様々な甲殻類を長時間かけて煮詰めたビスクは、その滑らかな舌触りからは想像できないほど濃厚であり、オマールを初めとした甲殻類の旨味が凝縮されている。僕は唸り声をあげながら、繰り返し繰り返しスプーンですくってビスクを堪能する。たまらなく美味しい。

こちらのビスクの秘密を教えてもらったが、秘密なので打ち明けられない。

7.甘鯛、茸、銀杏
和歌山県の甘鯛の松笠焼きに、長野県の花びら茸、椎茸、野生種えのき、銀杏を付け合わせて、ナスタチウムを添え、甘鯛の骨ときのこの出汁を後がけする。こちらの出汁はジュでも、フォンでも、ブイヨンでもなく、純粋に和出汁の取り方をしているという。

鱗のカリカリの食感とともに、甘鯛の身が口溶けしていき、弱いかもしれないと思っていた出汁の旨味が力強く濃厚に絡み、たまらなく美味しい。ときどき入ってくる銀杏もいいアクセントになっている。

マルミツポテリの和食器を使っており、懐石料理として供されても違和感はない。

8.紀州鴨、南瓜、ほおずき
皿の提供前に、鍋で藁焼きにした一羽の鴨が見せられる。蓋を開ければ、藁焼きの煙がふわっと宙に舞い、魅惑的な香りを漂わせる。

その後、鴨は炭火で焼かれ、ササミ、胸肉、腿肉に分けて、皿に盛りつけられる。ガルニには、スパイスの効いた南瓜のピューレ、フレッシュなコリンキー、焼いたむかごが配され、ほおずきで和えたヘーゼルナッツも添えられる。ソースにはシンプルにジュドソースを合わせる。

胸肉の表面はしっかり焼き目が入っているが、中はレアでしっとりしており、滑らかに舌の上をすべっていく。腿肉はかなり筋肉質であり、やや野性味があふれる味わいだ。ササミはしっとり滑らかで、格別に美味しい。

9.和梨、柚子
スライスした和梨のコンポートで、薔薇の花のように飾り立てて、柚子のソルベを添えて、柚子のゼストを振りかける。甘くて美味しい。

10.ピオーネ、シャインマスカット
フレッシュなシャインマスカットを、部分的にくり抜いて花のクリームを詰め、ホワイトチョコでコーティングしたヌバーグラッセを添えて、ぶとうの皮パウダーを散らす。ヌバーグラッセがたまらなく美味しい。

12.余韻
薔薇のマカロン、レモンのマシュマロ、ショートケーキ、抹茶ロールケーキ、アムールドショコラと呼ばれるホワイトチョコレートなど、ミニチュアのミニャルディーズが並んでかわいい。

その後、お願いしたコーヒーとともに、庭で採れたという干し柿が供される。ホワイトチョコでコーティングしているが、超密着型の地産地消ミニャルディーズで、ゆったりとコースの余韻を楽しむ。


以上だ。


料理は、フレンチとして、あるいは和食として、ときに美しく盛りつけ、ときに動きを加えて、どれも美味しくいただけた。印象に残るのは四季折々の品々であり、それらを巧みに使い、丁寧に味を重ねているところだ。常に期待値の上をいく料理が供されていた。

最初の印象通り、終始、優雅で暖かい雰囲気に包まれており、それを支えていたのが最初にテーブルに案内してくれた女性スタッフのサービスである。澄んだ耳触りの良い声で、優しい笑顔を浮かべて、料理の説明をしたり、難しい質問にも丁寧に答えてくれる。ホスピタリティが高く、料理に詳しいだけでなく、滑らかな英語で海外のお客さんも丁寧にもてなす。

いったい何者なのかと思ってしまうほど、突き抜けたホスピタリティの高さを持っている。何者ですか?とは聞いていない。後藤シェフには感動のビスクだと伝えたのに、その女性には、ホスピタリティ高いですね、と伝えなかったのが今は悔やまれる。

元々AMOURを知ったのは1年以上前に訪れた国立のLeCiel平田オーナーを通じてだ。初めてのおひとりさまフレンチのお相手をしていただいたときに、AMOURの支配人をしていたと教えてくれた。その女性も平田オーナーをよく知っており、少し前にLeCielでコラボ企画を行ったという。

AMOURに関連するアロマフレスカやカーザヴィ二タリア、カーザのスーシェフをしていた笹川シェフのボッテガには訪れてはいても、AMOURだけ訪れていないのはどこか不公平な気がして、いつか訪れなければいけないと思っていた。

アロマフレスカはもうAMOURとは関係ないらしいが、こうしてAMOURを訪れてみれば、別荘に招かれたような庭付きの一軒家レストランで、優雅で暖かい雰囲気に包みながら、美味しい料理とホスピタリティあふれるサービスを振る舞っている。


別荘の夜に、四季折々のフレンチが、美しく浮かんでいる。


帰り際、後藤シェフと和を謳うフレンチ増えましたよね、という話しをしていたが、後藤シェフは10年前からやっているのだという。和フレンチはミュシュラン受けがいいのだろうか、加速度的に増えている印象だ。食べるほうとしては美味しければそれでいい。


しばらく話した後、僕は灯りが浮かぶ庭を通り抜け、裏道にある駐車場に向かった。ふと、曲がり角で振り返ると、見えなくなるまで後藤シェフはお見送りをしていた。結局AMOUR自身のホスピタリティが高いのかもしれない。


その夜、僕はいつまでも幸せの余韻に浸っていた。


やっぱり素敵なお店との出会いは、生きることを豊かにし、多くのひとを幸福に包みながら、明るい未来を照らしてくれるのかもしれない。


そう、僕は信じている。

  • AMOUR - 栗拾い

    栗拾い

  • AMOUR - オマール海老のビスク、ビスクは後がけ

    オマール海老のビスク、ビスクは後がけ

  • AMOUR - 炙り〆さばのおぼろ昆布巻き

    炙り〆さばのおぼろ昆布巻き

  • AMOUR - 優雅で暖かみのあるダイニングルーム

    優雅で暖かみのあるダイニングルーム

  • AMOUR - 松茸のフリット

    松茸のフリット

  • AMOUR - 鴨の藁焼きプレゼン、煙もくもく

    鴨の藁焼きプレゼン、煙もくもく

  • AMOUR - 梨のコンポート

    梨のコンポート

  • AMOUR - アプローチ

    アプローチ

  • AMOUR - 別荘にいるような灯りが浮かぶ庭

    別荘にいるような灯りが浮かぶ庭

  • AMOUR - 入口

    入口

  • AMOUR - ソファ席が心地よいウェイティングルーム

    ソファ席が心地よいウェイティングルーム

  • AMOUR - 窓際の丸テーブル、今夜も端の席で

    窓際の丸テーブル、今夜も端の席で

  • AMOUR - テーブルセット、コペンハーゲンの皿

    テーブルセット、コペンハーゲンの皿

  • AMOUR - 栗のパイ

    栗のパイ

  • AMOUR - 落花生のブランマンジェ

    落花生のブランマンジェ

  • AMOUR - 京都吉田パン工房のパン

    京都吉田パン工房のパン

  • AMOUR - おぼろ昆布で巻くところ

    おぼろ昆布で巻くところ

  • AMOUR - 鰹の藁焼き

    鰹の藁焼き

  • AMOUR - ビスク、想像を絶する濃厚さ

    ビスク、想像を絶する濃厚さ

  • AMOUR - 甘鯛の松笠焼き、出汁を後がけする

    甘鯛の松笠焼き、出汁を後がけする

  • AMOUR - 鴨の炭火焼き

    鴨の炭火焼き

  • AMOUR - チーズ

    チーズ

  • AMOUR - シャインマスカット

    シャインマスカット

  • AMOUR - ミニチュアのミニャルディーズ

    ミニチュアのミニャルディーズ

  • AMOUR -
  • AMOUR - 蓋を開けると、スモークが宙に舞う

    蓋を開けると、スモークが宙に舞う

  • AMOUR -
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店舗情報(詳細)

店舗基本情報

店名
AMOUR(アムール)
受賞・選出歴
2021年Bronze受賞店

The Tabelog Award 2021 Bronze 受賞店

2020年Bronze受賞店

The Tabelog Award 2020 Bronze 受賞店

2017年Bronze受賞店

The Tabelog Award 2017 Bronze 受賞店

フレンチ 百名店 2023 選出店

食べログ フレンチ TOKYO 百名店 2023 選出店

フレンチ 百名店 2021 選出店

食べログ フレンチ TOKYO 百名店 2021 選出店

ジャンル フレンチ
予約・
お問い合わせ

050-5600-9586

予約可否

完全予約制

ご予約のキャンセル、ご人数様のご変更につきましては、事前に当店までご連絡をいただけますようにお願いいたします。なお、当日のキャンセルにつきましては、キャンセル料といたしましてご人数様分のお料理代金を100%頂戴させて頂いております。ご理解の程よろしくお願いいたします。

住所

東京都渋谷区広尾1-6-13

このお店は「港区西麻布4-10-3」から移転しています。
※移転前の情報は最新のものとは異なります。

移転前の店舗情報を見る

交通手段

日比谷線恵比寿駅1番出口から約7分
JR恵比寿西口から約7分

恵比寿駅から426m

営業時間
  • 月・木・金

    • 18:00 - 22:00

      L.O. 19:00

    • 18:00 - 22:00

      L.O. 料理19:00 ドリンク09:00

  • 土・日

    • 12:00 - 15:00

      L.O. 12:30

    • 18:00 - 22:00

      L.O. 19:00

    • 定休日
  • ■ 定休日
    水曜日を中心に月6~8日(お問い合わせくださいませ)
予算

¥20,000~¥29,999

¥15,000~¥19,999

予算(口コミ集計)
¥20,000~¥29,999 ¥10,000~¥14,999

利用金額分布を見る

支払い方法

カード可

(VISA、Master、JCB、AMEX、Diners)

電子マネー不可

QRコード決済不可

領収書(適格簡易請求書) 適格請求書(インボイス)対応の領収書発行が可能
登録番号:T8480001003260

※最新の登録状況は国税庁インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイトをご確認いただくか、店舗にお問い合わせください。

サービス料・
チャージ

サービス料10%

席・設備

席数

12席

個室

(4人可、6人可、8人可)

貸切

(20人以下可)

禁煙・喫煙

全席禁煙

駐車場

近くにコインパーキングがあります。

空間・設備

オシャレな空間、落ち着いた空間、席が広い

メニュー

ドリンク

ワインあり、ワインにこだわる

料理

野菜料理にこだわる、魚料理にこだわる、英語メニューあり

特徴・関連情報

利用シーン

接待 知人・友人と

こんな時によく使われます。

ロケーション

景色がきれい、隠れ家レストラン、一軒家レストラン

サービス

お祝い・サプライズ可(バースデープレート)、ドリンク持込可、ソムリエがいる

お子様連れ

ご同伴は10歳以上で大人のお客様とご一緒のコースをお楽しみ頂けるお子様に限らせていただきます。
何卒ご理解の程宜しくお願い致します。

ドレスコード

スマートカジュアル

ホームページ

http://www.amourtokyojapan.com

公式アカウント
オープン日

2012年6月3日

電話番号

03-3409-1331

備考

アメックスが使えます(情報提供元:アメックス)

初投稿者

gourmefightergourmefighter(246)

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