新メニューも美味しい : AURELIO

今年初めての訪問。
この日は珍しく１人。
17時半頃の入店で流石に口開け客だ。　
大本、鈴木両氏と遅い新年の挨拶を交わす。
予約客が来るまで軽く飲んで食べて帰るパターンだ。

カウンターに腰をおろすと大きな丸いパンの様なものが目に付く。
何だろうか？と尋ねれば、玉葱のフォカッチャだそう。
薄い飴色にソテーされた玉葱がフォカッチャの上に敷き詰められている。
美味しそうなので貰うことにする。
焼き立てなので生地が落ち着くまで少し待って欲しいといわれる。
これが意外なことに、シェフの鈴木さん作ではなく、オーナーの大本さんが作ったのだそうだ。

待つ間にピノに似た赤を大本さんに選んで貰う。
彼が選んだのはグリニョリーノと言う品種。
私にはイタリアワインの品種は全く解らない。
それに舌を噛みそうな名前だ。
グラスの中は薄めの明るい赤。
飲んでみると確かに軽くてフルーティ。
但し、味の透明感と豊さではピノに一歩譲る。

生地が落ち着いたフォカッチャを大本、鈴木の両氏が試食している。
２人が同時に「うん、旨い」と言った。
「良いできだ」と二人とも満足そう。
こりゃ、楽しみだ。

皿に２切れ載って供される。
早速食べる。
うん、中々美味い。
玉葱の甘さと旨味がフォカッチャとあっている。
玉葱のソテーの具合が適切なのだ。
これ以上炒めると甘すぎるし、少ないと歯触りがフォカッチャとあわなくなるだろう。
２人の言う通り良い出来だ。
美味いので、帰りにお土産に包んでくれるように頼む。
客がいないので２人と遠慮なく会話出来る。
これも私にとっては楽しみの一つだ。

新しい料理があるというので訊けば、ビーツとオレンジとセロリのサラダだそうだ。
フランボワーズビネガーでマリネしたビーツと、オレンジにセロリを併せ、ローストしてクラッシュしたカカオが振りかけてあるとのこと。
勿論、貰うことにする。
カップルの予約客が入店してくるが、カップルは２人の世界に入っているので、私は２人との話を続ける。

出て来た皿の中は、ビーツの深いルビー色とオレンジの黄色が目に鮮やか。
この華やかさは女性向きの一品だろう。
ビーツを口に運ぶと、フランボワーズビネガーの仄かな香りが鼻孔をくすぐる。
酸味は控え目で食べやすい。
ビーツとオレンジがあうのには少々驚いた。
鈴木シェフがイタリアで修行していた時に、イタリア人の料理人がこの組み合わせを使っていたそうだ。

もう一皿新しいものを勧めてくれた。
天使の海老のソテー、大麦のサラダと共に。
海老の火入れも適切だが、何よりも白いクリーム系のソースが天使の海老と良くあっている。
訊けば、タイムとエシヤロットをソテーし、白ワインビネガーと生クリームを加え、タイムとエシヤロットを漉したソースだそうだ。
海老だけではなく、大麦のサラダとも相性が良い。気に入った。
このソースならば家でも出来そうだ。今度試してみよう。

お腹が出来たしワインも適量。
フォカッチャを含め新作も美味しかったし、
2人との会話も楽しんだ。
さて、そろそろ予約客が来る頃だから、帰るとしよう。
今回の様に、早い時間にサクッと飲んで食べて、という使い方は私には良いかもしれない。
何しろ飲み過ぎないから(笑)。

再訪

娘の様な二十歳過ぎの女性と待合わせ。
話をしながら私はワインを飲み彼女は食べる。
美味しさに微笑みが彼女の頬に広がる。
それを見て今度は私に笑みがもれる。
心地良い宵と酔いが進むのは早い。

佐渡産黒イチジクとプロシュート
ムール貝とお米のティエッラ(お試し)
トリッパの白ワイン煮込み ジュリアーナ風
ストロッツァプレッティ サルシッチャとフレッシュトマトソース
じゃが芋のニョッキ フォンテュータソース 黒トリュフをたっぷりと
フランス産オーブラック牛のステーキ

黒イチジクとプロシュートの美味しさに瞠目し頰が落ちそうになる。
黒イチジクの熟れた甘みが際立ち、その柔らかな舌触りは官能的ですらある。
生ハムの上品な塩気がイチジクの甘みを引き立て、イチジクは生ハムの旨味を引き立てる。
二つは口の中で渾然一体となり別次元の食べ物に昇華する。
黒イチジクならではの珠玉の一品。

大きなプレートに入ったグラタンの様な料理が目の前にある。
「何？」と訊くと「ムール貝とお米のティエッラという料理です」と言う。
食べたことがないと話していたら、スプーンに盛って出してくれた。
客の心のくすぐり方を心得ている。
大本さん、君は客垂らしの素質充分だ。

ムール貝、お米、じゃが芋で作るのが代表的なプーリア州の料理。
パエリアはしっとり、ティエッラはドライ。貴方は何方の娘が好み？
チーズとパン粉がオーブンで旨味を増され、どお美味しいでしょうと囁いている。
パエリアという名の娘は売れっ子だが、ティエッラと言う娘も味がある。

トリッパは定番のトマトソース煮込みではなく白ワイン煮。
トマトソースでないからがっかり？
まるで待ち合わせに彼氏の友達が来たかのよう。
いや、いや。友達の方が素敵なこともある。
トリッパという男、見かけはしょぼいが中身は濃い。
トマトソースを着ている彼は如何にも見た目が派手。
白ワインを纏っている彼は見た目は地味。
しかし中身はしっかりと味が付いている。
だから噛みしめると旨味が湧いてくる。
白ワイン煮を出す店は多くない。貴重な一品。

客垂らしの君が、パスタは私の食べていないものを進めてくれた。
されど私はお気に入りの2品を彼女に食べさせると決めていた。
ストロッツァプレッティとニョッキ。
鼻腔に届いたトリュフの香りにゾクッっとし、
絹のように滑らかなフォンテュータソースに頬の内側を優しく撫でられているかのよう。
至極のソースにうっとりとし、心は現から一瞬離れる。

さあメインだ。
ボーイッシュな彼女が選んだのは牛のステーキ。
フランス産のオーブラック牛のランプ肉だ。
火入れのリクエストは弱目。
周りはこんがりと焼かれ中は艶やかな紅のスライスの行列。
人参、茄子、南瓜など野菜が脇を固めヴォリューム満点。
目が引き寄せられ、フォークを伸ばすのをためらっているのは誰…
しっとりと落ち着いた赤身が、牛本来の肉の味はこれだよと目くばせしている。
一口食べた彼女。その顔は満面の笑みで満たされていた。
今はランプからイチボに変え定番メニューになっているそうだ。

お腹がいっぱいだという彼女。
此処のパンナコッタクラシコを食べずに帰すわけにはいかない。
パンナコッタと共に宴の幕を降ろす。
新泉駅の反対側ホームで電車に乗る私に何時迄も手を振っていた君。
また一緒に来よう。

2016年11月

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再訪

次男の誕生会を家族と渋谷の寿司屋でしたのだが、鮨を食べたいと言ったのが2日前。
いい鮨屋が予約出来るわけもなく初めての寿司屋に出かけた。
心配した通り今一なので途中で箸を止め、嫌がる次男を拉致して再訪した(笑)。
寿司屋を出て電話すると幸運にもカウンター2席が空いていたのだ。
１回行っただけなのに名前を言うと直ぐに反応してくれた。
覚えていてくれるのは嬉しいものだ。

満席の店内は女性が殆どである。
オーナーの大本さん、シェフの鈴木さんに加え
土曜だからか、大本さんの義理の弟さんが手伝いに来ていた。
この若い3人が皆なイケメンなのである。
女性が多いのが判ると次男が言っていた。

次男はお腹が出来ていたので、
前回メニューになかった真鰯のヴェネツィア風マリネ、
自家製サルシッチャ、
パスタはジャガイモのニョッキのトリュフかけ、
の3品だけにしたが、またもや大満足！

鰯は前回メニューになかったので、大本さんが勧めてくれた。
大きめの鰯は旨味十分。適度な酸味と松の実が食欲を刺激する。
揚げ焼きしてマリネしてあるので食べやすいし、若い人にもヴォリューム感がありいいだろう。

サルシッチャは少し塩分が強い気がしたが、旨味が凝縮されている。
野菜が食べたいと言ったら野菜と茸を多めに一緒にソテーしてくれた。
この辺の気遣いが心をくすぐる。
この自家製ソーセージがこれまた茸との相性がいいのだ。
お腹が出来ているはずの次男も食べている(笑)。

そして今回の驚きはニョッキ。
最高に美味かった！
大袈裟ではなく、ニョッキに対する見方が変わった。
実は、私はニョッキはあまり好きではないのだが、ここのは別だ。
弾力がそれほどなく食感が滑らかで、普通のニョッキとは全く別物。
その上、トリュフ(サマートリュフじゃないよ)が香り、ホワイトソースが極上の滑らかさ。
滑らかなニョッキがシルクのベールをまとっている様なのだ。
食べると誰しも目を大きく見開くだろう。
「ソースをパンですくって食べると旨いんですよ」
と大本さんが言う。
「そりゃそうだろう」
と答えると、直ぐにパンを2切れ持って来てくれた。いいねぇ～、この素早い反応。
次男と２人でソースをパンですくい口に運ぶ。思わず顔を見合わせる。
幸せの微笑みを運ぶ魔法のニョッキとでも言おうか。

次男にはパンナコッタが濃厚で美味いからと勧めたら、何と誕生日仕様にしてくれた。
突然来たのにこの気遣い。嬉しいねぇ〜。
濃厚な味には次男も感心していた。
今回は家人と長男用にこれをお土産にした。

旨い料理とワインに、大本、鈴木コンビの笑顔とサービス。
寿司屋の不満は一気に霧消し、私は上機嫌で店を後にした。

ところで、家に帰って土産の包みを開ければ、
「先日は有難う御座いました。またのお越しをお待ちしています」
との家人けのメッセージカードが入っているではないか。
特別な事ではないが、若いが細かい気遣いもキチンとできるところがいい。
家人も勿論喜んでいた。好感度がまたアップした様だ。


2016年10月

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私が信頼してフォローしているレビュアー2人が勧める店なので家人と行ってみた。
この店の駅から掛かる時間で一悶着あり、レビュアー様から「駅から何分かかるか計測すること」
との指示があったのであるが、これについては最後に記載することにする。

店に着くと月曜の夜だというのに予約で満席。
飛び込みの客は断られていた。
結論から披露すると、文句なくいい店である。
まず、料理が美味い。ワインがいい。
接客がオーナーとシェフ共に気持ち良い。
料金が懐に優しい。そして駅から近い。
いい店の条件が揃ろっている。
行くならば今のうち、でも今でも予約した方がいいと思う。

頼んだ料理は以下の通りであるが全て美味しかった。
鈴木シェフはここの前は川崎透シェフのラ スフォリーナでスーシェフをしていたそうだ。
だから、腕は間違いないだろう。
但し、パスタを除き塩が効いている感が強い。
この塩加減はジャンルが違うが和食の器楽亭器楽亭、浅倉鼓太郎店主に通じる。
若い人は全く気にならないだろうが、我々の様な年輩者の中には少し塩がキツイと感じる人もいるだろう。

名物 陽気なポテトサラダ
名物と言うから食べてみたが、確かに旨い。
ポテトサラダに卵のポシェがのせてあるだけなのだが、
ポテトサラダにマルサラ酒が使われていて、
更に自家製のマヨネーズのせいか食感がフワッとしている。
おまけに、そのままと、卵の黄身をかけて食べる2通りの味が楽しめる。
スプマンテとの相性も良いからスターターとしてぴったり。

牛タンのソテー アンチョヴィとケッパーのソース
私がフォローしているレビュアーも指摘していたが、塩が若干強目である。
酢漬けのケッパーと塩気の強いアンチョヴィのソースが使われているので、
タンの下味を弱目ににしても良いだろう。
若しくはアンチョヴィの量を少なめにするか。
話が逸れるが、このアンチョヴィとケッパーのソースは我家ではメカジキのソテーに使っている。
ワインヴィネガーを使い酸味を出すと、脂ののったメカジキにぴったりなのだ。

モッツァレラと秋茄子のカポナータ
これは文句なく旨い。まず、水牛の乳を使った本物のモッツァレラの質が良い。
秋茄子を使ったカポナータも美味い。
茄子は油と最高の相性をみせるが、それも秋茄子を揚げてあるのだから美味くないはずがない。
「秋茄子じゃないと作らないの？」
とオーナーさんにちょっかいを出せば、
「夏の茄子も美味いですから、作ってもいいですね〜」
と言う答えが直ぐに帰って来た。
この辺の当意即妙な遣り取りが出来る辺りにもサービス担当としての素質が伺える。
また、話が若干逸れるが、カポナータはフランス料理のラタトゥイユと似ているが、
ラタトゥイユは揚げていないしトマトソースも使わない。
カポナータはあくまでもイタリアンである。

イカ墨を練り込んだタリオリーニ
このパスタは師匠の川崎透シェフのところにはないそうだ。
タリオリーニにはイカ墨が練り込んであるが量が適切なのだろう。
旨味が上手く出ていて、それでいて生ぐささやえぐみは全くなく、食べやすい。
当然だが、ヤリイカとの相性もいい。

ストロッツァプレッティ サルシッチャとフレッシュトマト
これは美味い！超お勧めパスタだ。
このうまみはサルシッチャからか。
トマトの味がうまく調和している。
そして生パスタの小麦の旨味がしみじみと感じられる。
久々に素晴らしい生パスタを食べた。
でもこれいつもあるかは定かではないので、
食べたい人は確認してから行くべきだろう。

パンナコッタ クラシコ
家人が注文したものを一口味見した。
生クリームが大量に入っているのが舌に感じられる。
これ、美味しいけれど、カロリーがかなり高いだろう。“カロリーは旨い”を実感させる味。

ワインはスプマンテから白、赤と全てオーナーの大本さんが選んでくれた。
下北沢のクオーレ・フォルテ、バールアルメンターリ ダニエラの後、イタリア修行もしていたそうだ。
だからクオーレ・フォルテで初めて飲んだラディコンなども置いてある。
ワインはリーズナブルな値段で楽しめるから、若い人にも向いているだろう。

大本さんは、人当たりが良く、会話もスムースで、身体もよく動く。
鈴木シェフは機敏な動作でよく鍛えられていて、料理の腕も確か、その上話も出来る。
この夜は、カウンターに座って2人と楽しく話しながら、美味い料理とワインを家人共々堪能した。
夜に外出するのを嫌がる家人も、この日の帰りは機嫌が良かった。

この若い2人のコンビはかなり強力だと思う。
2人でやっている店は多いが、今の能力も評価できるが、伸び代もあり、此れからも店は良くなっていくのではなかろうか。
早晩予約が取れない店になると思う。
行くなら今のうちがよいだろう。

さて、最後に駅から何分かかるかを記しておく。
私は歩くのが比較的早いので、この時は意識的に少しユックリ歩き、一般的な速さになるように心掛けた。
井の頭線は5両編成で渋谷発で最も前の車両の一番前のドア、即ち改札から一番遠いところから改札まで45秒。
吉祥寺発ならば最も後ろの車両の最後尾のドアで降りることに当たる。
因みに3両目の真ん中付近からは30秒で改札。
改札から駅の階段を降りて店まで2分10秒。
駅からをどう解釈するかだが、
改札から一番遠い車両を降りた時から計測すれば2分55秒。
真ん中の車両から降りたら2分40秒。
私のよく利用するグーグル地図では、駅の階段を降りた駅前の地点から1分と表示される。
辛口レビュアー様の投稿にクレームをつけた輩はグーグルで計測したに違いない。
Seeing is believing！実際に自分で確認しないとね。

2016年9月