東急本店だからと期待し過ぎたなぁ～ : すし屋の磯勢 東急百貨店本店

日曜に家人と渋谷の東急百貨店本店で買い物をし、そろそろ13時なので昼食をとなった。
デパートは、数寄屋橋阪急メンズ館、新宿伊勢丹男の新館、新宿高島屋、の順なのだが、最近東急本店も行っている。
尤も、東急の場合は、私のモノを買う頻度は極端に少ない。この日は珍しく私の帽子を買い求め、その後本屋へ。
7Fの丸善ジュンク堂はワンフロアー全てを占領しているので、中々楽しい時間を過ごせる。
此方でお目当ての本を見つけ、買い求め、さて昼飯はどうするかとなった。
何となく身体が疲れていて、此れから何処かに足を延ばすのは億劫な気分。
あまり気乗りがしないのだが、1階エスカレーターで上がるだけなので、8Fのレストラン階に上がってみた。

さすれば、エスカレーターを降りると目の前がすし屋の磯勢。そして、外に待ちの客がいない。
さればと暖簾をくぐってみた。カウンターを所望し、家人と腰を降ろす。
因みに、この鮨屋の本店は自由が丘にあるそうだ。

まずは生ビールを貰い、ランチメニューを見るが、案の定そそられるものがない。
家人と相談し、お好みで食べることにする。
まずは摘みにしようと意見は一致。久し振りの鮨なので鮟肝を頼む。
幸い家人は何も言わない。ついでに万願寺も注文する。
直ぐに出てきた鮟肝。紅葉おろしを載せ口に運ぶ。
これこれ、この味。ものは普通なのだが、久し振りなので美味しく感じる。
家人も半分食べているから、量的には許容範囲だろう。
万願寺も焼けて出て来た。糸鰹節の上から醤油をほんの少しかけ回す。
大きさは小さく落胆したのだが、一片を口に放り込めば、これが意外にも柔らかく美味しい。
人も食べ物も外見で判断してはいけない。「全く、そんな事は遥か昔に学んだんじゃないの」
という隣の人の声が聴こえて来る。空耳か。

続いて刺身を少し摘もうとなり、「今日は何がいいの？」と板さんに訊くと、「光ものがいいです」との答え。
青魚が大好きな私はそれではと鯵と鰯を頼む。
ついでに生ビールを飲み終わったので、冷酒で景虎特別純米をもらう。
冷酒をやりながら光ものを摘む。職人の言葉と裏腹に、鯵は身が柔らかくなっていて、鮮度が感じられなかった。
この時点で今日も外したかという思いが頭を掠める。最近外してるんだよなぁ〜。
続いて鰯を口に放り込む。これは脂がのりが良いのだが、これまた鮮度が期待ほどではない。
まあ、日曜だからこんなんものか、デパートだからこんなものか、と言って自分を慰める。
もう少し摘みたい気分なので鰹のたたきを貰う（写真撮り忘れ）。これはまあ普通。

昼なので、この辺で握りにする。食べたのは以下のもの。

まこ鰈
こち
小肌
みる貝(塩と酢橘で)
蝦蛄(つめ)
干瓢巻(山葵入)
玉(シャリ抜き)

まこ鰈はこの日一番であった。歯を押し返す様な弾力がある身を咀嚼すると、白身の上品な旨味が舌に伝わる。
寝かせて旨味がピークに高まったところだったのだと思う。他のネタとレベルが違った。
こちも悪くなかったが、まこ鰈には敵わない。

さて、鮨屋の実力を測る小肌。私の大好きなネタだ。
酢の締め方は軽め、砂糖も軽め、魚自体の美味さは普通であった。
もう少し砂糖と酢を効かせた方が、味がハッキリして私の好みだ。

みる貝はもっとシャキッとしてなくてはね。蝦蛄はまあ普通。
干瓢巻の干瓢の煮具合は濃すぎず良い。ただ山葵の効きが私には弱かった。
山葵の利かせ方なぞは矢張り行きつけでないと中々うまい具合にはいかない。
玉子焼きは自由が丘の本店で焼いているそうだが、これはまあまあ。

総括的に言えば、デパートに入っている鮨屋はこんなものかと思う。
私の住んでいる京王井の頭線と渋谷には、昼から開けていて、美味くて品の良い鮨屋が皆目見当たらない。
いい鮨屋となると銀座になるが、態々休みの日に銀座までというのは、私の歳では少々億劫なのだ。困ったものだ。
四谷三丁目の鮨 てるの宮崎さんは浜田山の物件を探していたそうだ。
結局、見つからなかったので四谷三丁目で店を開いたと言っていたが、あ〜、返す返すも残念なことだ。
カウンターでは60歳台と思しき洒落た男性が文庫本を片手に酒を呑んでいる。
後ろの棚に無造作に置かれたピンクのジャケットが目を惹く。
こんな素敵な団塊の世代が時間を費やす店にしては、鮨のクオリティーが伴っていない。
おい、東急本店だろう、もっといい鮨屋を入れろよ、と言いたくなるのは私だけだろうか。