三回目からは馴染みといい #言いっぱなし : HALE WILLOWS

茅場町で一仕事終わり、時計の針は1115時。

グーグルマップを開くと徒歩で15分。こりゃ結構と歩き出し、予定到着時間通りに店に入る。

前回は湯麺をいただいたので今回はご飯もの。

昼のチューカでご飯ものは什錦炒飯（又は揚州炒飯、こちらでは肉炒飯という）に決めている。

決めているのに理由はない、あったとしても忘れてしまった。

もしあるとすればカニカニカニカニ、おまえは小林多喜二か！ とは、共謀罪論議喧しい折、剣呑だから、黙っている。

そう思いながら、ネギと潰した鶏卵、刻み叉焼とひき肉だけを具に、中華鍋で炒めあげられたそれに着目すると、いっけんそっけないようで目に優しく、レンゲが歯に当たるのは業腹なので、箸でつまむと、ぱらりではなく、ほろりとするところが奥ゆかしく、口に含むと過不足のない調味、油の加減、加熱具合にうむ、これこれとなり、傍のスープに顔を向けるとフンワリと浮かぶ生姜の風味が芳しく、舌に乗せれば、やや塩気に勝つうらみはあるものの滋味に富み、ひとつから頼めるシウマイを醤油に浸さず辛子だけで食うと、豚肉と油脂、小麦粉の混ざり具合が、やや駄菓子的だが嫌味はなく、人気と言われている、カニがゴロゴロ入っていて、お客からするとコスパいいという事になり、言い換えれば店側にしてみればいかにも原価率が高そうな、という事になるカニチャーハンもいいが、まずはシムプルにいくというのも、含羞溢れる中高年のたしなみとしちゃ、悪くないモンだぜ！ と、甚だデッケえお世話を呟いては #だからワタシは嫌われる と嘯かない、事もない。

表題からして #言いたいだけ というか #言いっぱなし なのであるが、気に入った店には、間をおかず再訪してみる、という、犬コロの帰巣本能みたいなところがあり、「昼の部」に再訪。

エチゴ県央でいうところの「ちゃしうめん」社会通念上の「チャーシューメン」が目当て。

前回、あったかいおそば、食べてませんからね。

お運びさんは「夜の部」の、いい顔つきをした大陸系の若い衆に加え、やはり大陸系だが奥部の、ほんの少し穆斯林の血が漂うような風情のカワイコチャン（死語 がひとり。

善き哉。（雰囲気の★★★★★は、これ由来、はは。）

清湯、クリアスープというより、「丁寧に出汁をひいた」という表現が似合いそうな見た目のつゆに、意多利のカッペリーニをちょっと縮らせた、というか、素麺にアイパー（死語 を当てたような、というか、とにかく細く、儚い感じの麺が泳ぎ、そこに脂身の少ない部分にしっかりと熱を通した叉焼が結構たくさん載って出てくる。

つゆに油のつぶは殆ど浮かんでいない。「乳化」もしていない。

イマドキの「個性的」で「インパクト」のある、ミッキーマウス・メカニズム™️ （複雑怪奇）なラーメンスープ好きの人からは「薬にもしたくない」と言われそうなそれは、単純なようで滋味深く、それでいて大昔の「夜鳴きそば」のような一本調子ではなく、なんというか舌に染み入る、とでも表現すべきか。

自家製と思しき（店内に製麺機が置いてある）麺は先述のような見た目であるがそこそこに噛み応えがありつつ喉越しもよく、するすると胃に収まり、有り体に言えばやや硬めの叉焼も、つゆを吸い出すと旨味がギュッと出てくる様子。

全体に当たるところ、イヤになるところがなく「あっ！ 」という間に平らげてしまい、空になった丼を前に、茫然としてしまう。

しかし口腔には仄かに「チューカ的なものを喫した後味」が残ってい、なぜか「完全犯罪」なる言葉が脳をよぎる。

ボーッとしたまま「カワイコチャン」に勘定を払い店を出て、路地を歩きながら、あ、次はワンタン麺にしようかな、と、早速次回の訪問を計画しない、事もない。

いつの間にやら、日式中華という言い方が「発明」され、世の食通諸兄の人口に膾炙して久しい。

曰く、ラーメン、チャーハン、ギョーザにレバニラ、酢豚にとりから、ホイコウロー。チューカ丼に天津飯に（なぜか）スタミナ定食と別称される生姜焼き、あたりになるんだと思うが、早い話が「餃子の王将」か「日高屋」のプラッチック・ラミネイトの品書きに載っているもの、が、そのカテゴリ、と言い切ってしまっても、あながち大きな間違い、という事にならない

…のかもしれない。

ハウエヴァ©︎常盤新平、しかしながら、である。

同じ「日式」でも、メニュの絞り込み、材料や調味料の吟味、割烹の巧拙と丁寧さ、なにより「個人営業か、大手資本によるチェーン或いは/及びフランチャイズ・システムか」により、出てくるものの出来栄えや良否、そしてなにより、わたくしどもが受け取る「印象」に大きく差異が出る事、道理であり、社会通念であり、ワールド・ヴァリュー（世界基準©︎副島隆彦）である事、いうを待たぬ。

他評ご案内の通り、こちらの前身、銀座の外れ、普請中の日航ホテルの脇路地地下に「よし町」という名前で商っていた。

先の「個人営業」にして「丁寧な烹調」による佳良にして適正な価格の御菜が界隈勤務のサラリー・パーソン、ならびにわたくしどものような「のぼせ症の好事家」に受け、繁盛していたが、諸般「オトナの事情」で二年ほど前に惜しまれつつ閉店。

世の「上等な日式」を好むひとびとは、大いに悲嘆にくれた（オオゲサ！ ）ものであった

…のだが、あるSNSで

「どーやら、ヨシチョーが復活したらしい」

「今度の名前はタイショーケンで、そもそもはそちらが元の名前だったらしく、先祖がえり？ らしい」

「場所はコデンマチョーらしい」

などなど、さまざまな「つぶやき」が交わされているうち、かつての名物「シウマイ」や「叉焼」のシャシンがアップされていくうち、我慢がきかなくなる。

電話をし、席を確保し、「いつもの」お調子者数名でなだれ込む。

おお、厨房には懐かしの店主と奥さま。

ありがたや、もったいなや！ と、手を合わせ額ずき（ウソ）、おもむろに品書きに臨む。

懐かしの瞼の母、一本刀土俵入り©︎長谷川伸な店？ では、片っ端からじゃんじゃん頼む、に決めている。

決めているのに理由はない、あったとしても忘れてしまった。

もしあるとすれば、イイトシこいた中高年は、そろそろ「次の機会に」と先延ばしにするほど、自身の状態に自信が持てない程度に健康診断、人間ドックの結果表が汚れているから、とは、あまりにも #冷酷な現実 だから黙っている。

そう思いながら、しっかりと手抜きなく、しかし凝り過ぎずに調製されたスープ、出汁を基調としたかに玉や、炸獅子頭と言いたくなる、餡掛けの肉団子にうっとりし、疲れた油のにおいがまるでしない、カリッと小気味よく揚がった「あげワンタン」に舌を喜ばせ、あれも！ これも！ ととりながら、越後酒造場謹製「越後辛口」をひや（ここでは冷蔵庫で冷やしてある、の意味）をがぶ飲みし、多幸感に身を悶えさせているうち、情けない事に腹が膨れてしまい、南無三！ 次回は数名、若い「食べ役さん」を雇って、もっともっとやるゼ！ と、無駄にコーフンしつつ、お店の復興をまこと目出度いと、目尻を下げない、事もない。