: おが和

退院して食べたいもの！


年末年始をはさみ70日強の退院生活を強いられ、病院食を遵守する日々を耐え抜いた結果、募りに募った日本人の本能・欲望の本質は何と、「醤油の効いたソバつゆと焼きダレ」だと判明した。

最近の病院食では、塩分制限があってもカレーやラーメン、パスタや丼などの驚きのメニューが供され、飽きさせない患者への配慮や減塩なのに味の濃さを感じさせる技術の向上を感じるが、私の喜びは日に日に「ソバつゆに浸されたそば・うどん」、朝食のお浸し或いは無塩調理で供される焼・煮魚用の「減塩醤油パック」になっていった。醤油パックに至っては、これを投入したお浸しをご飯にオン、或いは直接満遍なく振りかけることで、不味いくらいに柔らかく炊かれた生温いご飯への満足度を劇的に変える、そんな奇跡のアイテムとあがめていた。
食事の満足度は、量とか素材の質とか、味とか食感とかで決まると思っていたが、日本人の私にとっては、「一定の塩分の醤油を主軸とした和ダシ、和タレ」、たったこれだけだったことがよく分かった！

だから、退院して食べたいものの中で、「タレが効いた丼もの」はかなり上位にランクインしていた！

こちらのお店は、鶏料理の激戦区人形町の焼き鳥店。私にとってこちらの焼鳥は「心地よい下町のスローフード」。ゆったりした時間の中で、オーダーが入ってから丁寧に串を打ち、丁寧に炭火で焼かれ供される大きめかつ強めに塩を振った焼き鳥は、じっくり味わえる逸品。
焼鳥と共にこのゆったりした時間を味わえるパラレルワールドである。そして、こちらは行列ランチの有名店でもある。名物の「やきとり重」である。今回は私見ではあるが「私の究極の昼飯」のひとつを紹介したい。

ランチのメニューは「やきとり重」のみ。開店は11：30だが11時にはついていたい。席は一階のカウンター数席に二階のテーブル席10席程度であり、焼鳥を炭火で焼く時間がかかるため、間違いなく行列が発生する。外の行列から中に入れても若干待つことを覚悟しておいた方がいい。

オーダーは、ご飯の量は金額に影響せず自由自在。男性なら大盛をお勧めする。プラス百円でやきとりの肉増しができる。これは男性なら必須かと。多くのサラリーマンはご飯大盛のダブルとコールし、蓋が閉まらず浮いている重を供されている。本日、私は病み上がりにつき、ご飯普通の肉増し。家内と娘はご飯少なめでオーダー。熱いお茶をすすりながら着重を待つ。
っと、程なく着重。鶏スープと漬け物ご飯普通でも肉増しは蓋が閉まらないことがわかった。早速蓋をあけると大振りでタレの照りがついた焼鳥がゴロゴロ。海苔の香りとともに香ばしさが鼻と胃袋をつきたまらない。

重の隅から、早速焼鳥を人かじり。この甘辛ダレたまりません。やきとりに沁みながら部分的に焦げた香ばしさ！胸肉中心で皮付きのプリプリとゴリゴリの二つの歯応えが混じり合い、食の満足度が高まる食感差の仕掛け。計算づくかどうかは別として、兎に角美味い！！
ちなみに、私はMy七味として携行しているが、卓上に備えてある京都祇園の原了敦の黒七味と山椒を多めに振りかければ、高級な味変が出来ることは間違いなし。半分食べた頃に、是非お試しを。メインの重以外も素晴らしい。自家製と思われる糠漬けは名脇役！ほんのり醤油を垂らせば最高の箸休め。そして鶏スープは抑えめの塩味と生姜が好印象間違いない！鶏本来を味わえるスープは最近なかなかお目にかかれない。やきとり重単品でもかなりの秀逸だが、定食としてのバランスも最高。私の中では、こちらのやきとり重は、伊勢廣の焼き鳥丼、閉店した港屋の肉そばと双璧の「究極の昼飯」である。
しかし、このタレはやはり絶品である。これだけで白米は何杯でもいける。やきとりに付焼きするからの味だとはわかってはいるが、たかがやきとりのタレ、されどやきとりのタレである。

退院後の「本能が欲する醤油ツユ、タレツアー」第3弾は、炭火焼で味の濃さと香ばしさを増す絶品タレと、異なる食感が混じり合う炭火焼やきとりが最高の究極の昼飯やきとり重でした！

焼鳥をスローフードと捉える！


ランチの鳥重で有名なお店。以前から気になっていたがいつも満員で入れなかった。
今日は仕事始めだが賀詞交換会を早めに抜け出し17:30に人形町に到着。どんな人気店でも座れる可能性の高い絶好の機会を得た。同様にランチの鳥重が有名な久助と迷ったが何となく格を感じるこちらへ初来訪。

カウンターと個室一部屋？のこじんまりした店内。小料理屋に近い良い感じの雰囲気。お客さんは私含め二人だけ。これは、ラッキー。メニューを見るとサッポロ黒の大瓶が目に入る。即オーダー。お通しは小松菜に鰹節を和えたものだが食べて見るとビールに合う独特の苦味が。間違いなくふきのとうを何らかのやり方で和えている。美味いです。

お新香を皮切りに頼み、なんこつ、レバー、せせり、ハツ、皮をオーダー。どうやらこちらはオーダーが入ってから鳥を切り串に刺しているようだ。早めだったからかもしれないが、好感がもてる。また、夜はタバコも吸える。

まず、お新香到着。ぬか漬けです。キュウリは浅いが白菜はしっかり目のつかり方。しかもここ、大好きな原了郭の黒七味がある。迷わず黒七味をふりかけ、醤油を二、三滴。美味しいです。これだけで大瓶は半分は飲んでしまえる。

かなり時間を置いてせせり到着。塩焼きにレモンを絞り、やはり原了郭の黒七味で。美味い。何故こんなにふっくらしているのだろう。脂のノリも最適感を感じる。この食感は初めてである。塩はやや強めで酒の肴に相応しい焼鳥。

さらに時間を置いてレバー到着。このゆったりしたインターバル、意外に良い。一本一本をゆっくりしっかり味わえる。レバーは割と火を通している。常連さんは、半生とコールしていた。レバーのみタレで食べたがこれもかなりふっくらで美味い。またタレは甘めでレバーと合う。半生は追加の時にとっておこう。この時に大瓶を追加。真剣に食べることを誓う。

ハツと皮は同時に到着。まるで、私の食べるスピードに合わせてくるかのような絶妙なタイミング。美味い。ハツは適度な歯ごたえと強めの塩がビールを進める。皮は、カリカリ感よりももっちり感が強い。肉の厚みを感じる。

ここで、一休み。付け合わせの大根おろしをそのまま一口。ん、青首大根！冬の青首は辛味が強い。その辛味が鳥の脂を一気にリセットしてくれる。私は、福井のおろし蕎麦が大好きなこともあり、辛味ある大根おろしはお気に入りである。都内の焼鳥屋では初めて食べた気がする。ここでレモンハイを追加。甘さよりレモンの酸っぱさが強く、こちらも鳥の脂をサッパリさせてくれて、焼鳥によく合う。

で、なんこつ登場。所謂、三角だが見た目も味も食感も違う。肉が多いのである。このなんこつは唯一無二だと思う。そして、即、このなんこつとせせりを追加する判断をしてしまった。そして、目に入ったジャックダニエルのボトルを引き金に、バーボンハイボールも追加。

バーボンハイボール即着。こちらのお店、ハイボールもそうだが、さっき飲んだレモンハイ含め、かなり高濃度である。これにも好感が持てる。しかし、弱い人は気をつけた方がいいかも。

久々に大好きな焼鳥をじっくり味わいながら、ひとり酒。焼鳥をスローフードと捉えるのも一興である。