故三代目(きみ)がため お江戸(えど)に出(い)でゝ 鯗(すし)摘(つ)まむ 白衣(しろきころも)の 油井(ゆゐ)は四代目(よだいめ) : 喜寿司

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喜寿司

(㐂寿司/きずし)

この口コミは、酔狂老人卍さんが訪問した当時の主観的なご意見・ご感想です。

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4.0

¥3,000~¥3,9991人
  • 料理・味3.8
  • サービス4.0
  • 雰囲気4.5
  • CP3.8
  • 酒・ドリンク-
2018/06訪問2回目

4.0

  • 料理・味3.8
  • サービス4.0
  • 雰囲気4.5
  • CP3.8
  • 酒・ドリンク-
¥3,000~¥3,9991人

故三代目(きみ)がため お江戸(えど)に出(い)でゝ 鯗(すし)摘(つ)まむ 白衣(しろきころも)の 油井(ゆゐ)は四代目(よだいめ)

油井隆一(ゆゐりゆういち)三代目親方(さんだいめ)急逝(にはかにみまかり)、
合掌(てをあは)さむと、當家(こちら)『喜壽司』に、、。
漬塲(つけば)には、倅兄弟(せがれのえおと)と、山岸親方(やまぎしおやかた)。
後繼者(あとをおそ)ひ、四代目(よだいめ)と成(な)りしは兄(このかみ)。

齢(よはひ)、五十歳(いそぢちかく)。
旣(すで)に四代目(よだいめ)主人(あるじ)の風格(ふうかく)
午刻(うまどき)には櫃臺(つけばまへ)は滿席(うま)り、
已(や)むことを得(え)ずして、脇(わき)の食臺(つくゑ)に、、。

これも清掃(ていれ)行屆(ゆきとゞ)きたる檜(ひのき)の一枚板(いちまひゝた)。
楊枝容器(やうじいれ)は朱漆(しゆうるし)、牙簽(やうじ)は黑文字(くろもじ)。
小碟(こざら)には草書體(くづしゞ)""の字(じ)。
善哉(よいかな)、善哉(よいかな)!

上記(かゝる)事情(わけ)にて、"お好(この)み"を諦(あきら)め、
"握鯗(にぎりずし)"、一人前(ひとりまへ)、
對價(あたひ)、三千七百八十圓也(さんぜんなゝひやくはちじふゑんなり)。
握鯗(にぎりずし)八(やつ)に卷物(まきもの)。

老舖(しにせ)の誇(ほこ)り、
星鳗(はかりめ)、小鰭(こはだ)に、雞卵燒(たまごやき)。
煮(にもの)、酢〆(すじめ)、炙(やきもの)、猛者(たけきもの)揃(ぞろ)ひ。
雞卵燒(たまごやき)には(おぼろ)を挾(はさ)み、鞍掛(くらかけ)に、、。

"星鳗(はかりめ)"に酒精分(さけ)、
"(すゞき)"には柑橘(かちばなのかをり)、
精麁(よしあし)はさておき、當家(こちら)に傳統(つたは)る技藝(わざ)
その餘(ほか)、以前(まへ)に異(こと)なるところなし。

舎利(すめし)は、典型的(よくある)老舖(しにせ)のそれ。
ほかけ』、今(いま)は無(な)き『喜久好』、銀座(ぎんざ)『小笹』、、。
小人(それがし)、若手(わかて)の舎利(すめし)を嗜(この)めど、
これはこれで完成品(きはみ・いたゞき)。

不快(いや)な甜(あまみ)はなく、顏色(いろ)、薄紅(うすべに)を帶(お)ぶ。
醋(す)は、中埜(なかの)"優選(いうせん)"に"白菊(しらぎく)"との噂(うはさ)。
"優選(いうせん)"は紅醋(あかす)なれど、
"山吹(やまぶき)"、横井(よこゐ)"與兵衞(よへゐ)"ほどの、强列(つよ)さはなし。

舎利(しやり)と鮨種(すしだね)は、
天地開闢(あめつちひらけし)昔(むかし)より和合(むつみ・ちぎり)たるがごとく、
難別(わかちがた)く結合(つよくむすびつく)
その容(さま)、蛤蚧(おほやもり)に髣髴(さもにたり)。

三代目親方(さんだいめ)、
長期間(なが)の鬪病(わづらひ)なれど、
 なほ、赫奕(かくやく) と漬塲(つけば)に立(た)ち續(つゞ)け
 陽暦五月(せんげつ)急逝(にはかにみまかりぬ)」、との説明(はなし)。

正(まさ)に、
大往生(だいわうじやう)」と號(い)ふべき歟(か)?
南無阿彌陀佛(なむあみだぶ)、南無阿彌陀佛(なむあみだぶ)!
合掌(がつしやう)!

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【照相機】:東京通信工業 索尼(Sony)α7 III 無反光鏡可換鏡頭照相機(みらーれす)
【鏡頭】 :旭光學 S-M-C 琢磨(Takumar)1.8/55 @F2.4~F4
      旭光學 S-M-C 琢磨(Takumar)4.5/20 @F11

  • 喜寿司 - 外觀(かまへ)

    外觀(かまへ)

  • 喜寿司 - 菜單(しながき)

    菜單(しながき)

  • 喜寿司 - 生薑(はじかみ)

    生薑(はじかみ)

  • 喜寿司 - 小皿(こざら)に"喜"

    小皿(こざら)に"喜"

  • 喜寿司 - 茶(ちや)

    茶(ちや)

  • 喜寿司 - 握鯗(にぎりすし)之一

    握鯗(にぎりすし)之一

  • 喜寿司 - 墨烏賊(すみいか)

    墨烏賊(すみいか)

  • 喜寿司 - 鰹(かつを)

    鰹(かつを)

  • 喜寿司 - 鰹(かつを)

    鰹(かつを)

  • 喜寿司 - 鱸(すゞき)

    鱸(すゞき)

  • 喜寿司 - 握鯗(にぎりすし)之二

    握鯗(にぎりすし)之二

  • 喜寿司 - 小鰭(こはだ)

    小鰭(こはだ)

  • 喜寿司 - 星鳗(はかりめ)

    星鳗(はかりめ)

  • 喜寿司 - 雞卵焼(たまごやき)

    雞卵焼(たまごやき)

  • 喜寿司 - 扇貝(ほたて)

    扇貝(ほたて)

  • 喜寿司 - 河童巻(かつぱまき)

    河童巻(かつぱまき)

  • 喜寿司 - 漿醤(しやうゆ)

    漿醤(しやうゆ)

  • 喜寿司 - 楊枝容器(やうじいれ)

    楊枝容器(やうじいれ)

  • 喜寿司 - 牙簽(やうじ)、黑文字(くろもじ)

    牙簽(やうじ)、黑文字(くろもじ)

  • 喜寿司 - 神棚(かみだな)の類(たぐひ)

    神棚(かみだな)の類(たぐひ)

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2015/01訪問1回目

4.2

  • 料理・味3.8
  • サービス4.0
  • 雰囲気4.5
  • CP3.0
  • 酒・ドリンク-
¥15,000~¥19,9991人

鮪(しび)ずきの 誰もが嗜(この)む 煮穴子(にあなご)の 柔らかき身を ひとりかも食む

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撮影掲載了承濟み
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【2015-01-20追記】:
近會(ちかごろ)、能(よ)く鮓(すし)を識(し)り、
「これを探求(きは)めばや」とうち励(はげ)む丈夫(ますらを)少(すく)なからず。
彼等(かれら)薦(すゝ)むる舖(みせ)に佳店(よきみせ)多(おほ)きこと、
宛然(あたかも)、砂場(すなば)を撈(さぐ)りて鐵(くろかね)採(と)るに似(に)たり。

しかはあれど、狙(ねら)ふ一軒目(いつけんめ)に空(あ)きはなく、
いま一軒(いつけん)は暮六(くれむつ)からの商賣(あきなひ)。
かくて、俄頃(にはか)に水天宮前(すいてんぐうまへ)より人形町(にんぎやうちやう)に、、。
目指(めざ)すは久方(ひさかた)ぶりの『喜壽司』。

此度(こだみ)は、鮪(しび)、鮃(ひらめ)、眞梶木(まかぢき)、墨烏賊(すみいか)、
玉珧(たひらぎ)、筋子(すぢこ)、鶏卵燒(たまごやき)、穴子、鐵火卷(てつくわまき)、
追加(ついか)で、鮃(ひらめ)縁側(えんがは)、小鰭(こはだ)、眞鯖(さば)。
支拂(しはらひ)は大約(およそ)七千圓也(なゝせんゑんなり)。

やはり、
 ■"穴子(あなご)"など煮(に)て拵(こしら)へたるもの
 ■"小鰭(こはだ)"など醋〆(すじめ)したるもの
滅法(すこぶる)旨(うま)く

 ■舎利(しやり)と鮓種(すしだね)は些(いさゝ)か口(くち)に冷(つめ)たし
と云ふは以前(まへ)に秋毫(つゆ)變(こと)なることなく、首(くび)傾(かし)ぐるばかり。
これ、今(いま)はなき『喜久好』など、古(ふる)き鮓店(すしや)は、
多(おほ)かれ少(すく)なかれ同(おな)じ特徴(しるし)を有(も)つが尋常(つね)。

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【照相機】:日本光學 尼康(Nikon) Df 數碼單鏡反光照相機
【鏡頭】:.....蔡司(Carl Zeiss) Makro Planar T* 2.0/50 ZF.2 @F2.0

【2013-12-25追記】:
有一日(あるひ)、蒼穹(あをぞら)に誘(いざな)はれ、人形町散策(すゞろあるき)。
扨(さて)、晝飧(ひるめし)を如何(いか)にせん?
折惡(をりあ)しく、午刻(むまのこく)過(す)ぎなれば、
周邊(あたり)の道(みち)と云ふ道(みち)には夥(あまた)衆人(もろびと)が犇(ひし)めく。

慌(あは)て、書肆(ほんや)に逃(に)げ込(こ)むや、爰(こゝ)もまた人(ひと)だらけ。
堪(たま)りかね、舖(みせ)より出(い)で、近邊(あたり)をふらつく。
かくて、久々(ひさびさ)の『喜壽司』。
案内(あない)されしは、廛(みせ)の奧、"油井(ゆゐ)"なる職人(しよくにん)の前。

倩(つらつら)その面(おもて)を眺(なが)むるに、慥(たしか)に三代目親方(さんだいめ)似。
いづれは四代目(よだいめ)となるべき器量(うつは)。
かくて、此度(こだみ)選(えら)みしは價格(ね)の廉(やす)き"上握(じやうにぎ)り"。
値(あたひ)、三千百五十圓也(さんぜんひやくごじふゑんなり)。

その内譯(うちわけ)は、めじ、鮪(しび)、墨烏賊(すみいか)、帆立貝(ほたてがひ)、小鰭(こはだ)、
穴子(あなご)、鶏卵燒(たまごやき)、河童卷(かつぱまき)。
僕(やつかれ)、かつては當家(こちら)の流儀(やりかた)を黴臭(かびくさ)く思ひしかど
何の故か、舎利(しやり)も小鰭(こはだ)も穴子(あなご)も嗜(この)みに合致(あふ)

適切(ほどよ)く粒(つぶ)の立(た)つ舎利(しやり)
唐茶(さけ)の匂(にほ)ひこそ強(つよ)めながら、
固有(こいう)の臭氣(くさみ)を抑(おさ)へ、蕩(とろ)けんばかりに煮上げし穴子
瑞々(みづみづ)しく、鹽(しほ)も醋(す)もよき加減(かげん)の小鰭(こはだ)

なんたる旨(うま)さ、なんたる心持(ゐごゝち)の好(よ)さ
就中(わきても)この普請(しつらへ)は、東都(とうと)廣しと云へど竝(なら)ぶものなし
管待(もてなし)ぶりにもそつがなく、いかでかこれを冷笑(あざわら)ふべき
嘲(わら)ふべきは、作法すら辯(わきま)えず鮓通(すしつふ)を氣取る愚者(しれもの)。

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【照相機】:旭光學賓得士K-三數碼單鏡反光照相機
【鏡頭】:.....旭光學smc賓得士(Pentax) A Macro 2.8/50 @F2.8
.....................旭光學smc賓得士(Pentax) A 2.0/35 @F8.0

【2009-11-21追記】:
ある日、にはかに「鮨(すし)でも啖(くら)はゞや」と思ひたち、あれやこれやと心煩(わづら)ふ。
溜池寿し処 寿々は、●●ちやん目當(めあ)てと疑(うたが)はるゝが口惜(くちを)しく、
御徒町鮨処 寛八 本店は、乘換への面倒(めんだう)臭きは劍術道場(けんじゆつだうじやう)。
さらばと、「昭和(せうわ)の帝(みかど)」、乘(の)り換(か)へ要(い)らずの人形町に。

「御免(ごめん)蒙(かうむ)る」とばかりに暖簾潛(くゞ)れど、油井親方は姿を見せず。
五十(いそぢ)がらみの職人(しよくにん)山岸さんの前に座(すは)りて先づは酒(さけ)。
酒菜(さかな)は烏賊(いか)の鹽辛(しほから)。
思(おも)ふに、まともな鹽辛(しほから)喰はんとすれば名のある鮨屋(すしや)に如くはなし。

鮃(ひらめ)、鮃(ひらめ)縁側(えんがは)、墨烏賊(すみいか)、煮槍烏賊(やりいか)、
小鰭(こはだ)、鯖(さば)、蛤(はまぐり)、鮪(しび)、脂(あぶら)多き鮪(しび)、
茹上(うであ)げ車蝦(くるまえび)、皮表(おもて)と皮裏(うら)の穴子(あなご)、
鶏卵燒(たまごや)き。

酒一合に鮨(すし)十三(とあまりみつ)、支拂(しはら)ひ一萬五千圓餘(あまり)。
ほどなく油井親方(おやかた)も現れ、三十餘(みそぢあまり)の夫婦(めをと)の前に。
慣(な)れぬさまにて、怖(お)ず怖(お)ず頼(たの)みし「特上握り」二人前(ふたりまへ)。
直(す)ぐ後(あと)に來(き)たりし夫婦(めをと)も然(しか)り。

やむことを得ずして、山岸さんにあれやこれやと伺(うかゞ)ひつゝ、鮨(すし)を摘(つま)む。
穴子はいふまでもなく、鮃(ひらめ)、鯖(さば)も江戸灣(えどわん)で漁(いさ)りしもの。
鯖(さば)は蝦蛄(しやこ)で名高(なだか)き小柴(こしば)。
鮪(しび)は津輕(つがる)大間にて漁(いさ)りしものにて、その目方(めかた)六十貫目。

さるほどに、油井親方、横(よこ)から口(くち)挾(はさ)むこと一度(ひとたび)ならず。
「鯵ヶ澤(あぢがさは)の鮃(ひらめ)は養殖に異なるところなく、心ある者これを用(もち)ゐず。」
「穴子(あなご)の酒臭(さけくさ)きはこの拵(こしら)へ方(かた)なれば致(いた)し方なし。」
「この鯖(さば)は小柴(こしば)でも飛(と)び切(き)りのものにて僅(わづ)かに五本のみ」。

穴子(あなご)は顏色(いろ)薄(うす)く、酒(さけ)が香(か)頗(すこぶ)る強し。
鶴八一門やすきやばし次郎一門とは別物ながら蕩(とろ)けんばかりの旨さ。
鶏卵燒(たまごや)きは、芝蝦(しば)と山の芋を擂り込み、朧(をぼろ)挾みたるもの。
蝦(えび)は茹(う)で置きか踊(をど)りの何れかなるも、活けの車を茹で上げに。

遍(あまね)く知らるゝごとく、車蝦(くるま)は茹(ゆ)で上(あ)げに限(かぎ)る。
鮪(しび)に鮃(ひらめ)など、切りつけの厚(あつ)きはともあれ、何とも口に冷たし。
近來(ちかごろ)は切り附けて暫(しばら)くそのまゝ打ち遣り、馴染ますが尋常(つね)。
赤坂喜久好、木挽町ほかけなどゝともに、鮨の漬け方には黴臭(かびくさ)さが目立つ。

舎利(しやり)も七日(なぬか)前の寿々初め、青空鮨さいとうなど、
勢(いきほ)ひある若手(わかて)職人(しよくにん)、老舖(しにせ)の親方に勝(まさ)る。
以爲(おもふに)、およそ鮨(すし)の舎利(しやり)たるもの、須(すべか)らく、
粒(つぶ)が立ちながら舌觸(したざは)り滑(なめ)らかなるを旨(むね)とすべし。

誰彼を問はず、皆(みな)均(ひと)しく舎利(しやり)つるを憚(はゞか)らず。
青空高橋親方を除かば近會(ちかごろ)の若手でかゝる所業(ふるまひ)は稀。
老舖(しにせ)の秀(ひい)づるは、四千圓足らずの一人前(ひとりまへ)を出(いだ)すこと。
昨今(このごろ)、妄(みだ)りに「お任(まか)せ」強ひる小賢しき若手少なからず。

【2007-06-12記】:
およそ魚(うを)・獸(けだもの)の肉(しゝ)を鹽(しほ)漬けとなすは、鹽の發見とともに古く、遙(はる)か昔に遡(さかのぼ)る。魚(うを)を鹽(しほ)漬けしたる後、鹽拔きし、あらためて飯とともに漬け込み・釀(かも)せるを、唐土(もろこし)では「鮓(サ)」と稱(とな)ふ。その濫觴(はじまり)亞熱帶照葉樹林地帶にありと云へり。

鹽漬けし釀(かも)されたる魚(うを)、もしくは、それより滲(し)み出したる汁を魚醤(うをびしほ)と云ひ、古(いにしへ)の羅馬にてはガルムとして知らる。唐土(もろこし)にて「鮨(シ)」と稱(とな)ふるは鹽辛のごとき魚醤(うをびしほ)なりとか。因(ちな)みに、獸(けだもの)より拵(こしら)へるを肉醤(しゝびしほ)と云ふ。

華屋與兵衞の末裔(すゑ)、小泉迂外に據(よ)らば、華屋與兵衞握り鮓始めしは文政七甲申(きのえさる)年*)。兩國與兵衞すしは昭和の初めに滅び、今に名を留(とゞ)むる店、その生い立ちを尋(たづ)ぬれば、粗方(あらかた)屋臺より始むる店と云へり。喜寿司のごとく與兵衞すしの流れを汲むは世に稀(まれ)なり。

五年(いつとせ)ばかり前のことなりしか、喜寿司の暖簾潛(くゞ)りて、酒とともに鮓九つほどを摘(つま)む。ネタ、垂れんばかりに長く、舎利との調和に乏(とも)し。その値(ね)一萬一千圓餘(あまり)。近頃、淺草田原町鎌寿司、日本橋芳町太田鮨と、續けざまに舎利が口に馴染まず、舌、大いに戸惑(とまど)ふ。

およそ、握り鮓の出來を左右するに、舎利の良し惡しに如(し)くはなし。良き舎利は、甘過ぎず、温か過ぎず、鹽・酢ともに程よく、粘らず、滑らかなるがその徴(しるし)。一度(ひとたび)口に含むや忽(たちま)ちに解(ほど)け、口に殘る幾粒かを奧齒で二噛(か)みするや瞬(またゝ)く間に喉(のんど)の奧へ消ゆるが倣(なら)ひ。

・「上握り寿司」三千百五十圓、+小鰭七百三十五圓、都合、値三千八百八十五圓也。

その内譯、鮪(しび)赤身、鱸(すゞき)、黄めじ、鳥貝、穴子、玉子燒き、鐵火卷き。追加で小鰭(こはだ)。舎利の出來榮え、幾日(いくにち)か前に確かめた喜久好に劣るところなく、その姿容(すがたかたち)も麗(うる)はし。鮓漬くるは、名にし負ふ油井某(なにがし)なる齢(よはひ)七十(なゝそぢ)ばかりの翁(おきな)。

鮪(しび)赤身は程よき酸味ありて旨味に富む。今をときめく若手の、氷室(ひむろ)にて寢かし置きたる鮪(しび)のごとき味はひ。切り附け方も程(ほど)よく、件(くだん)の舎利と妙(たへ)なる調べ奏(かな)づるもめでたし。鱸(すゞき)に酢橘(すだち)は首傾(かし)ぐる外(ほか)になく、畫龍(ぐわりやう)點睛を缺(か)く思ひ。

穴子はメソより大きなるを柔らか目に澤煮(さはに)にし、濃い目の煮詰めにて供す。澤煮とは云へ酒の香り強く殘りて、穴子の風味を覆(おほ)ひ隠(かく)す。弁天山美家古鮨のメソ穴子澤煮、鶴八一門の煮穴子とも異なる味はひ。煮詰めは甘きに過ぎず、旨味・濃さともめざましく、太田鮨との格の違(たが)ひをあらはす。

名のある店の常(つね)として、玉子燒きはカステイラごときに朧(おぼろ)挾(はさ)みて鞍掛けに作る。鐵火卷きは六つ。海苔の炙(あぶ)り工合・鮪(しび)の質・切り方ともに非の打ちどころなし。小鰭の尾を捻(ひね)りたるさまは小粹(こいき)なれども〆は竝(なみ)。小鰭は今の時季、何處(いづく)の店もよろしからず。

外と云はず中と云はず、店の佇(たゝづ)まひはいとめでたし。漬け臺は厚さ三寸に餘(あま)る檜の一枚板。一段高き臺は實(げ)に美(うつく)しき塗りにて、舎利の白きが眩(まぶ)しく映(は)ゆ。楊枝は黒文字、箸は杉。主(あるじ)の手捌(さば)き水の流るゝごとく、客あしらひの心地よきこと音に聞く旅籠(はたご)にも似たり。

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*)樣々な異説あり。

  • 喜寿司 - 胸を張る主(あるじ)油井親方

    胸を張る主(あるじ)油井親方

  • 喜寿司 - 鮪(しび)

    鮪(しび)

  • 喜寿司 - 鮃(ひらめ)

    鮃(ひらめ)

  • 喜寿司 - 眞梶木(まかぢき)

    眞梶木(まかぢき)

  • 喜寿司 - 墨烏賊(すみいか)

    墨烏賊(すみいか)

  • 喜寿司 - 玉珧(たひらぎ)

    玉珧(たひらぎ)

  • 喜寿司 - 筋子(すぢこ)

    筋子(すぢこ)

  • 喜寿司 - 鶏卵焼(たまごやき)

    鶏卵焼(たまごやき)

  • 喜寿司 - 穴子(あなご)

    穴子(あなご)

  • 喜寿司 - 鐵火卷(てつくわまき)

    鐵火卷(てつくわまき)

  • 喜寿司 - 鮃(ひらめ)縁側(えんがは)

    鮃(ひらめ)縁側(えんがは)

  • 喜寿司 - 小鰭(こはだ)

    小鰭(こはだ)

  • 喜寿司 - 眞鯖(さば)

    眞鯖(さば)

  • 喜寿司 - 櫃臺(かうんた)の修繕(つくらひ)

    櫃臺(かうんた)の修繕(つくらひ)

  • 喜寿司 - 櫃臺(かうんた)

    櫃臺(かうんた)

  • 喜寿司 -
  • 喜寿司 -
  • 喜寿司 - めじ

    めじ

  • 喜寿司 - 鮪(しび)

    鮪(しび)

  • 喜寿司 - 墨烏賊(すみいか)

    墨烏賊(すみいか)

  • 喜寿司 - 寒鰤(かんぶり)

    寒鰤(かんぶり)

  • 喜寿司 - 帆立(ほたて)

    帆立(ほたて)

  • 喜寿司 - 小鰭(こはだ)

    小鰭(こはだ)

  • 喜寿司 - 穴子(あなご)

    穴子(あなご)

  • 喜寿司 - 鶏卵焼(たまごやき)

    鶏卵焼(たまごやき)

  • 喜寿司 - 溜漬(たまりづけ)

    溜漬(たまりづけ)

  • 喜寿司 - 河童巻(かつぱまき)

    河童巻(かつぱまき)

  • 喜寿司 - 無理言ひて茹で上げたる車蝦(くるまえび)

    無理言ひて茹で上げたる車蝦(くるまえび)

  • 喜寿司 - 芝蝦(しば)と山芋擂(す)りこみたる玉子(たみゃごん)焼き

    芝蝦(しば)と山芋擂(す)りこみたる玉子(たみゃごん)焼き

  • 喜寿司 - 小柴の鯖(さば)

    小柴の鯖(さば)

  • 喜寿司 - 鮃(ひらめ)縁側(えんがは)

    鮃(ひらめ)縁側(えんがは)

  • 喜寿司 - 生薑(はじかみ)

    生薑(はじかみ)

  • 喜寿司 - 油井親方

    油井親方

  • 喜寿司 - 油井親方

    油井親方

  • 喜寿司 - 油井親方

    油井親方

  • 喜寿司 - 隣の建物と喜寿司

    隣の建物と喜寿司

  • 喜寿司 - 近傍(ちかく)の建物

    近傍(ちかく)の建物

  • 喜寿司 - 門構へ(二)

    門構へ(二)

  • 喜寿司 - 門構へ(一)

    門構へ(一)

  • 喜寿司 - 二番手鮨職人山岸さん

    二番手鮨職人山岸さん

  • 喜寿司 - 烏賊(いか)鹽辛(しほから)

    烏賊(いか)鹽辛(しほから)

  • 喜寿司 - 酒

  • 喜寿司 - 鮃(ひらめ)

    鮃(ひらめ)

  • 喜寿司 - 煮槍烏賊(にやりいか)

    煮槍烏賊(にやりいか)

  • 喜寿司 - 小鰭(こはだ)

    小鰭(こはだ)

  • 喜寿司 - てうせん蛤(はまぐり)

    てうせん蛤(はまぐり)

  • 喜寿司 - 鮪(しび)赤身(あかみ)

    鮪(しび)赤身(あかみ)

  • 喜寿司 - ほどよき脂身(あぶらみ)の鮪(しび)、所謂「中とろ」

    ほどよき脂身(あぶらみ)の鮪(しび)、所謂「中とろ」

  • 喜寿司 - 穴子(あにゃごん)表(おもて)

    穴子(あにゃごん)表(おもて)

  • 喜寿司 - 穴子(あにゃごん)裏(うら)

    穴子(あにゃごん)裏(うら)

  • 喜寿司 - 近傍(ちかく)の建物

    近傍(ちかく)の建物

  • 喜寿司 - 近傍(ちかく)の建物

    近傍(ちかく)の建物

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酔狂老人卍

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店舗基本情報

店名
喜寿司(㐂寿司/きずし)
受賞・選出歴
寿司 百名店 2021 選出店

食べログ 寿司 TOKYO 百名店 2021 選出店

ジャンル 寿司
予約・
お問い合わせ

03-3666-1682

予約可否

予約可

住所

東京都中央区日本橋人形町2-7-13

交通手段

地下鉄人形町駅 A3出口より徒歩1分

人形町駅から115m

営業時間
予算(口コミ集計)
¥20,000~¥29,999

利用金額分布を見る

支払い方法

カード可

(VISA、Master、JCB、AMEX、Diners)

電子マネー不可

サービス料・
チャージ

サービス料なし(2階は10%)、お通し550円

席・設備

席数

42席

(カウンター12席、テーブル4席、座敷26席)

個室

貸切

不可

禁煙・喫煙

全席禁煙

駐車場

空間・設備

落ち着いた空間、カウンター席あり、座敷あり

メニュー

ドリンク

日本酒あり、焼酎あり

料理

魚料理にこだわる

特徴・関連情報

利用シーン

一人で入りやすい 知人・友人と

こんな時によく使われます。

ロケーション

一軒家レストラン

オープン日

1923年

備考

アメックスが使えます(情報提供元:アメックス)

お店のPR

江戸前寿司伝統の仕事を施すことで、厳選素材がさらに魅力を増す

創業大正12年、江戸前寿司の伝統を頑なに守り続ける名店。その本質は、すべてのネタに施す丁寧な仕事にあります。柔らかく煮た蛤や穴子、オボロを挟んだ海老、筋を剥がした鮪、浅く〆られた光物。ひと手間加えることで、素材自体の持ち味がさらに輝きを増しています。シャリは白酢、赤酢、塩だけでさっぱりと。砂糖を一切使わないことで、米自体の甘みが引き立つのです。さらに品書きには手綱巻きや印籠詰めといった、見慣...

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久留米指向久留米指向(2263)

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