ワインマニア向けのしっかり系本格フレンチ : レストラン ラ フィネス

私はワインマニアではありませんが、記念日の妻のリクエストで、こちら新橋のフランス料理店「ラ・フィネス」初利用。

今まで利用したレストランの中で一番シェフの方と会話したのではないかと思うぐらい、説明が本当に丁寧なレストランでした。

●頼んだメニュー構成と値段
コースは１コースのみで税抜サ抜22,000円。これにペアワインを選ぶ形になっており、お酒の弱い私は一番安い8,000円コース。お酒の強い妻はスタンダードの12,000円でこちらはハーフボトルぐらいの量だそうです。これにガスなし水、2,200円にサービス料１０％、税込で計80,000円（昨年の記念日は六本木のピエール・ガニェール67,000円）と、私の利用レストラン史上最高額となりました。

単価40,000円のレストランは、日本のレストラン中でもトップクラスの高さだと思いますが、割高というわけではなく40,000円の単価でお値段以上という印象では、あります。ここは重要。

◼️ラ・フィネスのワインについて
私はワインはよくわからないので、猫に小判状態＝オーバースペックでしたが、明らかに飲んだことのない、かつ美味のワインが勢揃い。

世界トップクラスのワインというのは、こんな味なんだなという貴重な体験でした。

●水を与えない葡萄畑
杉本シェフによると、フランスではワイン用の葡萄畑には水をあげないらしい（法律違反らしい）。その土地土地の「土」が含んでいる水のみで育てないと、その土地ならではのミネラル成分が十分に葡萄に吸収されず、葡萄としての価値が落ちてしまうから。つまりワインの品質が落ちてしまうからだそう。

フランスでは収穫年はもちろん、その土地土地ごとに、あるいはその土地の中の場所で取れる葡萄ごとに味が変わってくるのが「ワイン文化」というもので、「テロワール」という言葉で表現されています。

だから水をあげずにその土地ならではのミネラルを含んだ水を吸って育ったブドウがその土地ならではのワインを生み出すということです。

●大きいボトルほどワインは美味しい（＝量あたりの金額も高い）
シェフの面白い話もう一つ。ワインは詰めるボトルが大きければ大きいほど熟成がうまくいくので、できるだけ大きいボトルのワインを頼むべきという。

ほとんど酒屋ではみかけない「マグナボトル」のワインも飲ませてもらいましたが、フルボトルの量あたりの料金は1.５倍だそうです。熟成が良くなるだけでなく、ワイナリーも大きなボトルから順番に品質の良いワインを入れていくので、さらに美味しくなるらしい。

最後のデザートで飲んだワイン（バリュヌス）は、1962年（60年前！）に大きな貯蔵瓶に入れて地下で寝かせ、上詰みだけを詰めたワインも飲ませていただきましたが、チョコレートとの相性も良く、チョコを舌でワインで溶かしつつ、じっくり味わうという至高の瞬間でした。

ワインの世界は深い。だからハマる人が多いのもよくわかります。もちろお金のかかる趣味ですが、車の趣味よりは、よっぽど安上がりかもしれない。毎月4万円クラスのレストランに行って高級ワイン飲んでタクシーで帰っても、多分高級外車を持っているより遥かに安いでしょうから。

もうこのレベルは価値観の違いというしかありませんが。

●料理について
料理は全般的にしっかり系で濃い目の味です。「濃厚」という言葉がぴったりの料理で、旨味が充満して溢れ出てくるような感じといったら良いのか。

そして高級食材オンパレード。アワビ、フォワグラ、黒トリュフにジロル茸にセップ茸などなど、日本各地・世界各地から高級食材を取り集め、伝統的なフランス料理の手法でソースもしっかりたっぷりでした。

アミューズ→猪鹿鳥のコンソメ→鳩肉の赤ワイン煮→有機野菜と伊勢海老のジュレ→アワビ・黒トリュフ・セップ茸→鴨ロースト→お口直し→デザート→ミニャルディーズ（生チョコ）＋飲み物という構成。

その分デザートは、夏ということもあってライト系で、最後はさっぱりしていただきましょう、というコンセプトか。デザートが本当の「メイン」という私のようなタイプにとっては物足りない印象でした。

特に美味だったのは、鳩肉の赤ワイン煮込みだったか。フォワグラと黒トリュフにセップ茸を組み合わせた伝統料理だそう。これは豊潤な旨味と鳩肉の様々な食感、そしてトリュフの香り満載の濃厚な料理。

シャラン鴨ロースト（ジロル茸付き）もオーソドックスなメインのフランス料理でたっぷりの黒トリュフソースはまさにフランス料理の世界。

●スタイルなど
このように、しっかり味の料理の方がワインと合わせるには良いのかもしれません。コロナ禍の中でもあり、今日も３組までで満席にしてしまうなど、非常にパーソナルなお店。

ソムリエさんを雇うと人件費が高くなってしまうので、給仕も厨房のメンバーで、シェフ自らワインと料理を説明するなど、できるだけ人件費を抑えてワインや食材の単価をあげたいというお店のコンセプトなのだといいます。

私自身、フランス料理店は１００軒以上利用したことがありますが、ここは他とは全く違う、実に独創的なフランス料理店です。特にワインマニアの方にお勧めします。こんなに美味しいワインをこんなにたくさんの種類飲めるんですから、堪らないのではないでしょうか？