夏だ！お鮨だ！天然ものの縞鯵（しまあじ）にシビれる！...「鮨かねさか　銀座本店」、青ものの最高峰、縞鯵。この舞うような香りとシャリとの一体感は、夏にしか味わうことができない風物詩だ！ : 銀座 鮨 かねさか 本店

お鮨というと、やはりその愉しみは冬場に集中する感がないでもない...それこそお鮨屋さんの格が決まるといわれる鮪（まぐろ）の魚体がもっとも充実してくるのは冬場だろうし、フグの白子も、カラスミも冬の風物詩である。春が旬と思われている鯛だって実はその身肉（みしし）が一番充実するのは、春の産卵に備えてしっかり餌を蓄える冬場とする見方すらあるほどだ...

でもしかし、夏場でしか味わえない素晴らしい魚介も紛れもなく存在する。それをあげろといわれたならば、もう既にわたしの中で、答えは固まっている。

鱸（すずき）
鰈（かれい）
縞鯵（しまあじ）
鮑（あわび）
雲丹（うに）

夏場の味わいに、これらばかりは外せない！暑さに額の汗を拭うこの時節が訪れるたびに、これらのネタだけは、素敵なお鮨屋さんで味わっておかなければならないと、毎年、なにか急き立てられるような焦燥感を覚えるほどである...２０１５年７月１８日（土）、「鮨かねさか　銀座本店」。ここで饗された神津島の天然ものの縞鯵は本物だった！キロ１万２千円の青物の最高峰を口に含んだ際の幸福を以下できるだけ詳細に書き綴っていきたい。

１１：１８東京メトロ日比谷線銀座駅から休日の銀座の街に出る。銀座中央通りを新橋方面に歩を進め、銀座７丁目交差点を左折する。辻２本目を右折したところに「鮨かねさか　銀座本店」の暖簾が見える。店内に入り、予約名を告げると金坂さん前のカウンター席へのご案内となる。店内にはＪＡＺＺＹなＢＧＭが静かに流れている...

飲み物を聞かれるので、ビールを頼み、あわせて１５,０００円の摘みと握りのコースをオーダーする。（１５,０００で全て握りのコースも心惹かれるが、摘みと握りのコースでも後から握りを追加オーダーできるとのことなので、安心してこっちを選択する）ビールを味わいながらほどなく出てきたのが、１品目の摘みである。

１．富山の白えびに、鯛の酒盗（鯛のハラワタを塩辛にしたもの）
富山の宝石...そんなフレーズが頭をよぎる。ため息が出るほど美しい。これも今が漁の最盛期である。上に乗っている鯛のハラワタの酒盗が、またなんとも滋味に味わい深く白えびの上品な瑞々しさを引き締めてかかる。また、器が素晴らしい。あまりの美しさに思わず目を惹きつけられてしまう。

２．唐津の赤ウニ
旨い...西の赤雲丹。これも夏場にどうしても味わっておきたい一品である。瑞々しくフルーツのような味わいすら感じ取れるほどである。濃密だけれど一所にとどまることなく、清々しく鼻腔を駆け抜けていくこの感じが、夏の雲丹特有の持ち味である。

３．佐島のタコ
（マ）「これは佐島ですか？」
（金）「ええ、そうですね」
（マ）「タコといえば、明石か佐島ですよね」
（金）「ええ、ええ、明石のヤツは、まわりにゼラチン質があるものですから、煮蛸を作るときに使うんですが、塩蛸みたいに歯ごたえを愉しむお料理の場合は、佐島の地蛸を使いますね」

４．小柱にこのわた
これも滋味である。シャリシャリとした小柱の食感を、なまこの卵巣の悩ましいほどの滋味が覆い尽くす。素晴らしいの一言である。バチコといい、なまこの卵巣はわたしの中で酒肴の王様である。

５．島根県清流高津川の稚鮎、蓼酢を添えて
稚鮎にタロイモ。これはきわめて上品な一品であった。パリパリの焼き目からほのかに漂う鮎の風味を強すぎない蓼酢が包み込み、それを、タロイモの朴訥な味わいが寄り添う。

６．白神山地のじゅんさい
（金）「いっきに呑んでください」とのご案内である。猪口を傾ければ、風鈴が鳴り響くような心地よい音の連なりが耳元を通り過ぎたような気がする。

...ここから握っていただく。

７．すずき
やはり、夏場はすずきの洗いである。まず、その白縮緬のようなアピアランスが素晴らしい。そっと舌の上に載せて噛み締めれば、歯にしっかりと絡みつく弾力性にうっとりとしてしまう。

８．神津島の天然ものの縞鯵
付け台に、すっと縞鯵の握りが饗される。しかしでも、この仄かに茜（あかね）さす艶やかなフォルムはひとを陶然とさせるものがある。気持ちを落ち着けて指先で摘んで、口に放り込む...同系統の魚と比較するとその肉質は強い弾力性があり、脂の載り方が緻密である。これは紛れもなく青ものの最高峰である。この慎ましやかな品性と落ち着いた存在感に思わずため息がもれる。
（マ）「これはすごいですね。天然物だと、築地でキロ１万円はくだらないでしょう」
（金）「ええ、ええ、縞鯵は幻の青身ですね。今日のは神津島のものなんですが、築地でキロ１万２千円です」
とのことである。これは後ほど追加で注文する。

９．白甘鯛をお出汁で炊いて
このタイミングで、白甘鯛の炊きものが饗される。なんとも上品。木の芽（このめ）の香り漂う潮汁の爽やかな味わいに言葉を失う。そして鯛独特の風味が余韻となっていつまでもいつまでも鼻腔を漂い続ける...

１０．能登のマグロの中トロ
「８０キロくらいの小ぶりなものなんですけどね...」とのご案内である。んん、冬場の圧倒するような迫力はないものの、実に端正な一品である。やはりマグロは中トロが旨い。

１１．おんなじマグロの大トロ
この脂に満ちたアピアランスが素晴らしい。一口口に放り込むが実に品性に満ちている。するりと入ってくる感じがなんとも素晴らしい。ひとを驚かせるような派手さはないものの、シルクのような滑らかなテクスチャにしばし言葉を失う。

１２．ヤリイカ
ヤリイカ独特の歯切れの良い食感。ネットリとしたアオリイカやコウイカの食感も素晴らしいがヤリイカの襟を正した、キリっとした佇まいもまた夏らしくてよいものである。

１３．赤身漬け
これも実に旨い。漬けだけれどやはり実に端正である。粋でいなせな柳腰...これも後ほど追加で注文する。

１４．車海老
海老も今が旬である。茹でたての温もりの中から海老の甘味が香り立つ。

１５．コハダ
コハダ。こればっかりは鮨から外せない。青身特有の味の濃さの奥に不思議な魅力が感じられる...

１６．浦賀水道に面した千葉県竹岡漁港であがった鯵
刃金のようなアピアランスが素晴らしい。そして、肉厚な身肉にのった脂のりにはうっとりとするものがある。滑らかに滑るようにとろける鯵の身肉。上に乗っている薬味はなにか？
（マ）「あさつきと生姜でしょうか？」
（金）「ええ、そうですね（笑）」

１７．トリガイ
このシャリシャリとした肉の響きの中に鄙びた味わいが響く。旨い。ほのかにきのこ香のささやきが感じ取れるかのようだ。

１８．煮ハマ
このミルキーな甘味がハマグリの醍醐味だ！奥歯で噛み締めるほどに跳ね返るこの存在感がハマグリである。

１９．白ウニの軍艦
ムラサキウニの軍艦。濃厚な香りの分子が緻密に濃縮され、鼻からもったりと抜けていくこの感じに酔いしれる。

２０．穴子
今から旬の穴子の握り。鳴門金時のような傷のない甘味が素晴らしい。

２１．海苔巻き、玉
ここで、海苔巻きと玉が饗されてひととおりとなる。
冬場もさることながら、夏場もやっぱりお鮨は外せない！最高の夏の涼を味わいたいなら、今すぐ「鮨かねさか　銀座本店」に駆けつけようではないか！