揺るぎない美味さのビーフンと、それを昇華させるニンニク醤油 : ビーフン東

「あの素晴らしいビーフンをもう一度」と、再訪の機会を伺っていたカントナに、いよいよその時が訪れたのが平日の１１時３０分少し前。

予定通り口開け前の到着が叶いましたので、一番乗りでの入店を果たす、気合充分のカントナなのでありました。

座らせていただいた隅っこのテーブル席で早速メニューを拝見いたします。ダメ元で、念の為ビールが提供されない事を確認してから、オーダーを検討いたします。

オーダーしたのは、蟹玉の焼きのビーフンを普通サイズ。それからバーツァンこと、ちまき。

オーダーを通して待つこと１分もかからずに、まずはちまきの到着であります。大振りのちまき。竹の皮に包まれていて湯気が出ている見た目からして、もう美味しいのであります。早速熱いうちに皮を脱がしますと、露になる成型されて醤油系統の色が付いた艶めかしい姿。「ドレドレ」と箸を使って解体作業に入りますと、角煮にウズラに落花生等が発掘出来るちまきは、その風味にもその食感にも多様性を発揮して、アチアチでモチモチで柔らかくて甘辛の味が染みていて美味しいのであります。「是非ともビールのお供にしたかった」と、コロナを憎むカントナなのでありました。

そしていよいよビーフン。こちらも数分でのスピード到着であります。蟹玉はフワフワで卵の味がストレートに味覚に到達する、良い出来の蟹玉なのであります。ビーフン自体の絶妙でシンプルな味付けとシャキッとした食感に、蟹玉による卵のコクと甘さとフワフワの食感が加わって、味覚も食感も全方位的に充足される美味しさの相乗効果が産み出されるのでありました。

前回は一気に食してしまいましたので、確認が出来なかった卓上のニンニク醤油による味変を試みてみる事にいたします。早速ひと垂らししてみる事にいたしますと、全然期待はしていなかったのではありますが、ビーフンの味がキリッと引き締まった上品且つニンニクによるパワフルな味に昇華するのであります。前回ニンニク醤油を試さなかった事を後悔したカントナは、ちまきにも垂らしたりしてニンニク醤油の美味しさを堪能するのでありました。

相変わらずの美味しさであったちまきとビーフン。「次回は夜の訪問で宴会であるな」と、ちまきとビーフン以外の一品にも舌なめずりをするカントナなのでありました。

今まで「ビーフン」と聞いても食指が動くような事は一切無く、お店でオーダーする事も無ければ自宅で作るような事も無いくらいビーフンへの興味が薄かったカントナなのでありましたが、こちらのお店のレビューを拝見した際に「ビビッ！」と何か強いものを感じたのでありました。

そんなカントナをビーフン好きにさせてもらおうかと上から目線で向かったのが、新橋駅近くにあるディープな雑居ビル。

早速、ビルの中をくまなく探しますが、なかなかお店を見つける事が出来ないカントナは、スマホを片手に落ち着きなくウロウロするのでありました。すると、カントナ同様にウロウロと落ち着きの無い中年サラリーマン同志を目撃いたします。「この人もビーフン東狙いで迷子になっているのであろうな」と、微笑ましく思うカントナはようやくお店を発見いたします。

細かくは言及しませんが、ビル内に記載の案内板の表現が誤解を招きやすい内容である事が、中年男子達をウロウロとさせた原因では無いかと推察するカントナなのでありました。

入店が叶ったお店は、まさに町中華の雰囲気の落ち着く内観。お母さんに一番奥のカウンター席に案内されます。お昼時を少し外した時間ではありますが、8割くらいのお客さんの入り。なかなかの盛況振りなのであります。

卓上のメニューを拝見しておりますと、先程のウロウロしていた中年同志もようやくお店を見つけられたようで、入口近くのテーブル席に着席されたのを目視して安心したカントナなのでありました。

ランチ用のメニューなのでありましょうか、A4サイズで完結する潔いメニュー構成なのであります。

ビーフン目的のカントナは、ビーフンの焼きを小サイズでお願いする事にいたします。「ビーフンへの薄い興味」と言うのが、カントナに小サイズのオーダーを実行させたのであります。そしてバーツァンと言う名の「ちまき」。ちまき好きのカントナでありますので、オーダーしない訳が無いのであります。それから中年同志の無事の入店を祝して、青島ビールもお願いする事にいたします。

すぐに到着した青島ビール。グリーンの瓶と小さなサイズが「らしい」ビールなのであります。早速トクトクと注いでグイッとやりますと、よく冷えた青島ビールは軽くて炭酸がキリッと締まった軽快なビール。スッキリとしていて美味しいビールなのであります。そして、お昼時から呑む行為が更に美味しさを増しているのでありました。

そんなビールを嗜んでおりますと、すぐにビーフンの到着であります。「小サイズ」でお願いしたビーフンは、確かに小さなお皿にちょこっと盛られた、要求通りのビーフンなのであります。「何だか寂しいな」と思うカントナなのでありました。キャベツにモヤシに豚肉と言う、家庭的な具材の構成のビーフンはあまりにも普通の見てくれで、興味がそそられる事が無いカントナなのでありました。

全く期待値の上がらないビーフンを箸で摘んでいただいてみますと、何とも驚きの旨味が口内に充満するのであります。ベースの出汁の厚みのある味わいが旨さの底上げをおこなって、軽い塩味が素材の美味しさを引き出すと言う具合の味付けの妙に、目をパチクリとするカントナなのでありました。

ビーフン自体はしっかりとした歯ごたえが残っていて、プチリと噛み切る快感の感触が美味しくて、キャベツとモヤシはシャッキリで美味しく、豚肉はしっかり肉の味であるのが全部まとめて美味しいのでありました。

「お好みで卓上のにんにく醤油を」と提案されたのではありますが、「そんなの要らないな」と思うくらいのカントナ好みの抜群の味付けなのであります。「こんなに美味ければ普通サイズにしておけば良かったな」と思うも後の祭りなのでありました。

感動のビーフンを離れてお次はちまきに手を伸ばします。竹の皮らしきもので巻かれたゲンコツ以上の大きなサイズのちまき。皮の服を優しく剥いでご対面するのは、薄茶の色が入ったモチ米の美味しそうなビジュアルの三角錐。

早速、箸で突っついてみますと、みっしりと密着しているモチ米はホロホロと崩れるのであります。そんな崩壊したちまきの中からお目見えするのは、豚肉に椎茸にピーナッツにウズラの卵。

柔らかく煮られた豚肉は大きなカットでジューシーで、椎茸は旨味と食感を提供してくれて、ピーナッツの食感と香ばしさ。そして、ウズラの卵のラスボス感。

甘辛に味付けされたモチ米が具材の旨味を吸収して複雑な旨味に昇華しているちまきは美味しくない訳が無いのであります。

両者共に期待値以上の美味しさである事を深く体感して満足のごちそうさま。失礼ながら、つまらない食べ物であると思っていたビーフンがこんなに美味しいものであったのかと目から鱗のカントナは、「池波正太郎も通ったお店である」と言う事を知って頭を垂れるのでありました。

「もっと早く知っていれば人生の幅が広がったのにな」と大袈裟に考えるくらい感銘を受けたカントナは、「ウロウロ中年同志」が食べている焼きビーフンの普通サイズを横目で見ながらお会計を済ませるのでありました。