龍吟ワールド : 龍吟

今年の正月は都内のホテルに泊まったのですが、元旦に伺ったのが、此方。
ミシュラン三つ星の和食店。新日本料理という分野ですね。
マイレビュアーの方が去年の元旦に行かれたのを読んで、ほほーと思い、狙ってました。
大晦日含め年末年始ずっと営業し、３が日を過ぎてから休まれるようです。

店内はテーブル主体で、そこかしこに龍の装飾があり、日本料理屋という感じは全くないです。
スペースも思ったよりこぢんまりで、隠れ家高級中華っぽい。
これはこれで落ち着く感じです。
辰年なので、元旦から龍龍して縁起良いし。

此方の料理は完全お任せのコース一本のみ。
普段は23100円ですが、今回は正月特別コースということで29400円。
これにサービス料10%を加えると、料理だけで一人３万円越え。
かなりのお値段です・・・。
まー正月なので、よいかなと。

○焼き白子豆腐の熱々仕立て　聖護院蕪のすり流しとともに

寒い日に熱々の料理を出してくれるのは嬉しいですね。
聖護院蕪のすり流しは薄味で、なかなか美味しいです。
焼き白子豆腐は、ぷっくり♪
ただ豆腐のせいか、旨味が希薄。
最初なので、あっさり目にしたのかとも思いますが。

○柔らかな煮アワビと鳴門若布・三福海苔の冷製　　黒酢のジュレを絡めた数の子・白海老とともに

煮アワビは、さすがに柔らかい。
包丁がとても細かく入っていて、ジュレがよく馴染みます。
黒酢のジュレは、酸がまろやかで流石。
予定調和の美味しさ。

○北海道産　極上あん肝と赤貝のヌタ和え　辛子酢味噌に彩り野菜を散りばめて

あん肝はとても質が良く、ふわっと蕩けるような感触。
美味しいです。

○山陰のタグ付き松葉蟹の椀　白菜包みで

この日、山陰から届いたばかりの蟹だそう。
産地証明のタグも見せてくれました。
上には、薄氷に見立てた蕪？が乗っています。
吸い地が、蟹の出汁というか旨味がとても出ていて、非常に美味しい。
この日、一番素晴らしいと思った料理。

ここまでは、ある意味オーソドックスな日本料理に近く、極上の素材を生かした料理で、とても好みに合いました。

○平目　アオリイカ　伊勢エビ　鮑　柚子と三つ葉の香りのコノワタ和え

お造りです。
それぞれを小さく切ってコノワタで和え、大根（だったか）を散らし、上にバチコ。
あっさり系の魚介に、コノワタでコクを与えるという趣向でしょうか。
お造りというより、和え物。
お造りとして創造的ではありますが、それぞれの魚介の繊細な香りを味わうことは私には難しく、普通のお造りの方が好きかも。
わがままで、もーし訳ない。
でも、お酒にはとっても合うお造りです。

○赤ムツの炭火焼き　煎り米と黒酢をまとわせた香煎仕立て　　生うにおろしを添えて

赤ムツは焼き加減が素晴らしい。
脂もたっぷり。良い赤ムツです。
皮を剥いで、ウロコの代わりに？サクサク感を出す意図で、煎り米をまとわせてます。
煎り米、サクサク～！とっても丁寧に煎ったのだと思います。
ただ、その香ばしさが、返って魚の風味を邪魔しているような気も・・。
この二日前に、たまたま千葉のフレンチで甘鯛の松笠仕立てを頂いたのですが、鱗をそのまま生かす松笠仕立ての方ががサクサク感が数段上だし、魚の旨味、特に重要な皮ぎしの旨味・香りがダイレクトに味わえました。
そういう意味で、この料理はここまでする必要があるのかな？というのが、率直な感想。
もちろん、その創造力は大したものですが・・・。

あ、生うにおろしは、生ぬるくてあまり・・・。
魚が冷めないように温めた皿にダイレクトに置いたせいです。
豆皿に乗せる配慮が欲しいかな。添え物とはいえ、もう少し神経を配って欲しい。（魚との温度差をなくすため、わざとかも知れませんが）。

○京頭芋と大山地鶏　白味噌で仕立てた冬物語　お正月見立てで

派手な正月飾り付けた三方に乗って登場！
パリッと焼いた地鶏に、白味噌と和えたとろとろな京頭芋のピュレを射込んだ料理。
見た目はローストチキン。
クリスマスにも見た目は同じ料理が出ていたようで（射込んだ物は違うかも）、そっちの方演出としては合いますね。
やはり、焼きの技術は素晴らしいです。
囓るとトロトロの芋が出てくるのも楽しい。
普通に美味しかったです。

○黒毛和牛　サーロインと脆壊玉子のすき焼き仕立て　ふきのとうの香りとともに

すき焼き、好きなんですーーー。
上に揚げた玉子、下にはふきのとうのフライが忍ばせてあります。
揚げた玉子をパカッを割ると、黄身が流れ出て、すき焼きが一丁上がり！という寸法。

脆壊玉子ってすごい名前だけど、わざわざ揚げた理由が分からず聞いたら、「サプライズです！それと黄身が絡みやすいので。」と。
黄身の絡みやすさ狙いなら、揚げる必要はないので、味より見た目狙いか－。
うーん。

サーロインはとても美味しかったです。
ふきのとうは、初めはアクセントとして良いと思いました。
春菊より苦みより強く小さい分、すき焼きとしての一体感が出る感じ。
一足早く春らしい感じもして。
ただ、食べ進むうち苦みが舌に残って蓄積し、牛肉の甘みを味わうのにちょっと邪魔になってきちゃいました・・・。
またまたワガママでもーしわけないです。
でも、まあ、その発想には驚嘆。

○桜茶の炊き込みご飯　　駿河湾の桜海老とともに

これはとても美味しかった。
高温で揚げた桜海老はとてもサクサクで、炊き込みご飯ととても合っています。
ご飯が２～３口分だったので、もう少し量があると嬉しい。

○龍吟スペシャリテ　－196℃の苺あめと＋99℃の苺のアメ炊き

液体窒素で凍らせた苺あめ（苺ミルク）を粉状に削ったものと、アメで炊いた温かい苺の組み合わせ。
その差、300℃とか。
ふーん。
見た目のインパクトはありました！

○龍吟名物　六本木プリン

とろとろで卵の風味が濃い、とても美味しいプリンでした。

○お茶

こちらのお店で個人的に一番感動したのは、お茶です！
料理はともかく（汗）、お茶はホント感動しました！
煎れ方が素晴らしいのか、とても甘みがあって美味しい。
とくに、台湾産という金萱烏龍茶（きんせんウーロン茶）が素晴らしかった。
バニラのような香りと甘みがあるのですが、香り付けはしていないとのこと。
生涯飲んだお茶で、一番美味しかったかも。

サービスは親切で感じも良く、さすがです。

ということで、素直な前半と凝った後半で分かれる感じ？だったのですが、素直な方が断然好みでした。
凝った方は、見た目のインパクトが味のインパクトを上回らない感じ。
個人的には、見た目が普通か地味だけど、ナニゲに食べると驚愕的に美味しい料理に感動を覚える方なので。
古い人間で、スイマセン・・・。

それと料理そのものに正月らしさが全くと言っていいほど無かったのは、個人的にはやはり淋しかったかも。
おせちを再構築するとこうなるんだーー！！みたいなのをちょっと期待していたので。（勝手でスイマセン）。
まあ独自の世界を構築されているので、正月らしさを期待する方が間違っているとも言えますが。

こちらは、料理の思考が和食ではなく、フレンチとかですね。
引き算の料理ではなく、足し算の料理。
発想はどれも素晴らしいです。
ただ、和食でそれをやると、調味料が割合限られる分、フレンチよりも難しいのかな？と言う気が個人的にはしました。
少し前レビューした同じく新日本料理の店（ミシュラン二つ星）は、手法というか思考は和食で、調味料や材料に和食の域を超えたものを使っていて、その方が素材を美味しく頂けた気がします。
値段も半分だし・・・。

もちろん好みというか相性が私にはもう一つだっただけで、こちらはこちらで素晴らしいとは思います。
龍吟ワールドというか、通常の和食を超越した独特の世界なので、好みに嵌まれば陶然とした気分になるかと。
辛口に書きましたが、それも強烈な個性あったればこそでしょうし。

色々書きましたが、正月から美味しい料理を頂けたことに素直に感謝。
ご馳走様でしたーーー。