驚くほどの薄味で、牛肉の香りと充実した食感を引き出す。関東のすき焼きとは対極、これは関西の贅。 : 牛椀　紀尾井坂 銀座7丁目店

［東京都中央区］［来訪回数：2回］
2018/11/6（火）
銀座七丁目・昭和通りの西側にある、高級牛丼専門店。
2018年10月11日オープン。

場所は… 東銀座の三原橋交差点から昭和通りを南下、
マリオット東武ホテルを過ぎたら、右折してすぐ。
地下鉄東銀座駅（A1出口）から徒歩4分。メトロ銀座駅（A5出口）から徒歩6分。定休日なし。

黒と黄金の色使い、直線的な外装デザイン。
スタイリッシュで、ちょっとモダンな料亭風の外観。
扉を開けると、真正面に大輪の白百合が出迎える。

客席は二列のカウンター計12席程度、2～4人掛けテーブル×4卓。
全席禁煙。BGMはジャズ。

白木のカウンターにテーブル席、紫の着物で揃えた女性店員と、高級感を演出。
奥の棚にはシングルモルトのボトルが並ぶ。
着物で決めた店員さんの一部は、中国系の方のようで、インバウンド対応もバッチリ。
机の下にバッグハンガーがあると説明され、手で探ってみたが、結局分からなかった(^-^;)

ランチメニューは以下の通り。
〔単品〕　牛椀、特選牛椀、ローストビーフ丼
〔セット〕牛椀セット、ローストビーフ丼セット（小鉢・ミニサラダつき）

通常の牛椀は「国産和牛」だが、特選牛椀では「国産和牛A3」にランクアップするという。
ローストビーフ丼は、ソースを幽庵味噌／山葵おろしの 2種類から選べる。
いずれもテイクアウト可能。

ほうじ茶は、鳥獣戯画の湯吞みで提供。
卓上に調味料の類は無し。

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■牛椀セット（￥1580）
本日の小鉢・ミニサラダ・吸物・お新香つきのセット。

◎牛椀
　金の蒔絵が施された漆器で登場。
　国産牛のリブロースを使用。驚いたのは、牛肉のカットの大きさ！
　その横幅は、大きな椀の直径に匹敵するほど。
　思わず「牛肉リフト」をやりたくなるのは、私だけでは無いだろう(^-^)
　小間切れでなく、この一椀のために上等な部分を切り出してきました、というメッセージが伝わってくる。

　味付けは薄味で、驚くほど上品。
　関東のすき焼きとは全く別物で、京風というキーワードが自ずと頭に浮かぶ。
　関西風の割り下で味付けしているそうだ。

　本当に薄味だから、素材の味が伝わる。
　物足りなさを感じる人もいるだろうが、それは「牛丼」に何を求めるかの違いだろう。
　安くて旨いチェーンの牛丼と、明確な差別化を図るのであれば、確かにこの方向性に行き着きそうだ。

　薄味であるがゆえに「タレの味でごはんを食べさせる」ことは出来ず、
　牛肉そのものを吟味することが主眼となる。
　その点、こちらの牛椀は、肉の「食感」が秀逸。
　口当たりが柔らかいのはもちろん、上質な薄切り牛肉ならではの、ミシミシッと充実した食感が楽しめる。
　素材に加え、火の通し加減が上手なのだろう。

　肉のほかには、温泉玉子・葱・椎茸・白滝が乗る。
　中でも「きちんと葱の香りがする」葱が好印象。
　ご飯は、山形県産「つや姫」を使用。薄味で上品な牛椀ゆえ、ご飯の量はやや少なめか。

◎吸物
　和風出汁ではなく、チキンコンソメをベースとし、ブラックペッパーの香りを加えたもの。
　椀種は千切りにした葱・人参・三つ葉、そして椎茸。
　チキンの風味はそれほど感じなかったが、定番の魚介出汁からあえて逸脱させているのは面白い。

◎本日の小鉢
　厚揚げをメインに、枝豆・人参・椎茸・牛蒡を炊き合わせたもの。
　こちらもあくまで薄味で、ごく上品に仕上げてある。
　牛蒡のシャキシャキ感は特筆すべきところ。

◎お新香
　べったら漬・京都の壬生菜（みぶな）漬けの盛合せ。
　べったら漬は甘口で、普段の関東の食生活ではあまり出会わない味。
　壬生菜はシャキシャキ感が非常に強く、ほろ苦さがあって大人の味。

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■ローストビーフ丼セット（￥1780）
本日の小鉢・ミニサラダ・吸物・お新香つきのセット。

◎ローストビーフ丼
　大判のローストビーフが7枚。わさび入りの大根おろしが乗り、柚子味噌ソースが添えられる。
（二種類のソースから選ぶのではなく、両方付いてくる）

　肉は大きくて迫力十分！
　そのまま食べると、味付けは薄めで上品。肉質は柔らかくて上質に思える。
　肉の下に、フライドオニオンが隠れており、その甘味が隠し味になっている。
　一方で、わさびはそれほど効いていない。

　味噌ソースは悪くないが、個人的にはポン酢とか、あっさりした味付けの方が合うように感じた。
　ごはんはごくごく少量。
　かけそば一杯くらい追加で食べられそうに思うが、肉の量が多いため、意外と食べ応えはある。

小鉢は、枝豆入りの切干大根。出汁の効いた甘口で美味。
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出口にレジがないので、店員さんを呼び、席で精算するスタイル（テーブル会計）。

個人的には、ローストビーフ丼より牛椀の方に価値を感じた。
店舗があまりに整然としているので「まずは形から入りました」と感じさせる部分もあるが、
これからこなれていくことだろう。
次に伺う機会があれば、A3ランクの「特選牛椀」を試してみたい。