新たな伝説誕生か、オリジナリティあふれる佐藤慶料理 : 銀座 盡

今年４月、芦屋から単身、銀座に。

「天狗になっていた自分をリセットするため」と佐藤シェフは語りますが、

半年もしないうちに、すでに予約至難なお店に。

エルメスの裏手の古いビル。　以前は鉄板焼き屋さんだったところを

スケルトンにして、一から内装をやり直したとのこと。

６時の予約の少し前に到着したので、戸口の外で待っていると、

６時ジャストに、中で、「お～～」と掛け声があがりました。

スタッフ全員で、気合いを入れているようです。　

で、なんだか体育会系のお店なのかと思いきや、佐藤シェフは、

まったり、やんわり系。　宇和島のご出身で、恵比寿「コルシカ」で修業した

シェフがやっている松山のフレンチを皮切りに、キャリアをスタートしたそうです。

６席のカウンター。

左右には、フュメ・ド・ポワソンの銅鍋と、ビーフコンソメの銅鍋が

設置され、今宵登場する様々な具材が並んでいます。

フレンチでも、和でもない、本当においしいと思うものだけを

供してくれます。

そして、この日、最後には、ものすごいサプライズが！！


さて、これから、めくるめく、佐藤慶ワールドの始まりです。

１、白湯（ブイヨン）　　　　　　　魚のあらと蟹の甲羅を炭火焼きしたものに、
　　　　　　　　　　　　　　　　　水とゲランド塩だけを加えたスープ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　シェフは、「白湯」と表現していますが、
　　　　　　　　　　　　　　　　　旨みのあるスープです。

２、鱚のフリット　　　　　　　　　淡路島の鱚に米粉をつけ、米油でフリット。
　　　　　　　　　　　　　　　　　フュメ・ド・ポワソンに帆立貝と
　　　　　　　　　　　　　　　　　白バルサミコ酢を加えてつめたもので、
　　　　　　　　　　　　　　　　　オクラをあえたものを添えて。
　　　　　　　　　　　　　　　　　因島のレモン。

　　　　　　　　　　　　　　　　　付け合せの凝り方に唸ります。

３、のどぐろの炭火焼き　　　　　　対馬の佐須支所ののどぐろ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　白ワイン蒸ししてから炭火で焼いています。
　　　　　　　　　　　　　　　　　青りんご酢と檜扇貝をつめたものを皮目に。
　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　長崎ののどぐろは今が一番脂がのっているそうですが、
　　　　　　　　　　　　　　　　　オリジナルの酢使いが、素晴らしいです。
　　　　　　　　　　　　　　　　　酢のツンツンはまったくなく、さっぱりと。

４、新烏賊といくら　　　　　　　　淡路島の新烏賊に隠し包丁をしたものと、
　　　　　　　　　　　　　　　　　岩手のすじこを、９０度のブルゴーニュで
　　　　　　　　　　　　　　　　　２分洗ったもの。　
　　　　　　　　　　　　　　　　　湯ではなく、ブルゴーニュ、というところが
　　　　　　　　　　　　　　　　　驚きです。　いつものいくらとはまた別モノ。
　　　　　　　　　　　　　　　　　奥多摩の山葵と千鳥酢で。
　　　　　　　　　　　　　　　　　蓋つきの小さな器から、いくらがはみ出しているのも
　　　　　　　　　　　　　　　　　かわいい。

５、しらかわ　　　　　　　　　　　尾道の骨董屋さんで見つけた、という美しい
　　　　　　　　　　　　　　　　　茶碗蒸し椀の蓋をとると、
　　　　　　　　　　　　　　　　　愛媛　八幡浜の２．６ｋｇもののしらかわと
　　　　　　　　　　　　　　　　　礼文の帆立貝をシャンパンと自家製バターで
　　　　　　　　　　　　　　　　　３時間蒸したものが。
　　　　　　　　　　　　　　　　　「帆立貝は出汁がでちゃっているので、食べないで
　　　　　　　　　　　　　　　　　　ください」とシェフ。でも、全員食べます。笑
　　　　　　　　　　　　　　　　　シェフは、バターが食べられないので、自家製を
　　　　　　　　　　　　　　　　　作る、とのこと。

　　　　　　　　　　　　　　　　　こっくりして、旨みもやわらか。

６、パン　その１　　　　　　　　　自家製バターは、北海道　根釧の生クリームを
　　　　　　　　　　　　　　　　　バターとホエーに分け、そのホエーで、パンを練った
　　　　　　　　　　　　　　　　　とのこと。
　　　　　　　　　　　　　　　　　小さな丸型パンからはみ出すほど、自家製バターを
　　　　　　　　　　　　　　　　　塗って。

７、真鯖　　　　　　　　　　　　　淡路島、沼島の真鯖の脂を白ワインで浮かし、
　　　　　　　　　　　　　　　　　炭火焼きに。
　　　　　　　　　　　　　　　　　黒バルサミコ酢とタイラギ貝の貝柱のソースで。

　　　　　　　　　　　　　　　　　余計な脂が削がれて、きれいな鯖の旨味を感じます。

　　　　　　　　　　　　　　　　　白のマットな皿は、陶芸家、横山拓也さんの作品。

＊ここで、今宵の米を精米するので、「音がうるさいですが」とシェフ。

８、ししゃも　　　　　　　　　　　鵡川産
　　　　　　　　　　　　　　　　　胡麻とバルサミコ酢をそえて、海苔巻で。

　　　　　　　　　　　　　　　　　胡麻の風味が効いています。

９、パン　その２　　　　　　　　　水、レモン、蜂蜜のみで焼いたパン
　　　　　　　　　　　　　　　　　酵母は、レーズンとドイツの天然酵母。
　　　　　　　　　　　　　　　　　クラストが薄くて、ぱりぱり。

１０、牡蠣　　　　　　　　　　　　明石の牡蠣と噴火湾の毛蟹のグラタン

　　　　　　　　　　　　　　　　　アツアツで、牡蠣がぷっくり。

１１、鰆　　　　　　　　　　　　　淡路島の鰆の炭火焼き
　　　　　　　　　　　　　　　　　鰆は、春と書きますが、シェフは秋しか
　　　　　　　　　　　　　　　　　使わないそうです。
　　　　　　　　　　　　　　　　　先ほどの新烏賊のイカ墨ソースで。

１２、トマト　　　　　　　　　　　京都山崎のトマトを一晩塩水に漬けたものと、
　　　　　　　　　　　　　　　　　トマト、セロリ、エシャロット、クール　
　　　　　　　　　　　　　　　　　ブイヨンを冷凍してクラッシュし、
　　　　　　　　　　　　　　　　　カッペリーニと合わせて。
　　　　　　　　　　　　　　　　　お口直しがわりのさっぱり味。

１３、赤牛のとうがらし　　　　　　阿蘇の赤牛のとうがらしの部分を
　　　　　　　　　　　　　　　　　塊のまま、炭火焼きし、
　　　　　　　　　　　　　　　　　１６㎏の牛からとったコンソメに
　　　　　　　　　　　　　　　　　少し漬けたり、出したり。

　　　　　　　　　　　　　　　　　極上に柔らかく、つるりとした食感。
　　　　　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　陶芸家、小関康子さん作、薄紫の柔らかな皿で。

１４、白雲丹と卵黄のご飯　　　　　青森産白雲丹の箱を見せてもらいます。
　　　　　　　　　　　　　　　　　蘭王という卵の卵黄と雲丹をあたり、
　　　　　　　　　　　　　　　　　最初に供されたスープで炊いたご飯を。

　　　　　　　　　　　　　　　　　もう何も言えません。

　　　　　　　　　　　　　　　　　陶芸家、杉島大樹さん作の極薄の磁気風器。

１５、デザート　　　　　　　　　　なんですが、なんと、キャンドルが添えら
　　　　　　　　　　　　　　　　　れ、やさしい友人の配慮で、私のバースデー
　　　　　　　　　　　　　　　　　スペシャルバージョンが。
　　　　　　　　　　　　　　　　　これがただものではありません。
　　　　　　　　　　　　　　　　　「和」のバースデープレートは、
　　　　　　　　　　　　　　　　　生まれて初めてでした。しかも、
　　　　　　　　　　　　　　　　　「吹き寄せ」をテーマにして
　　　　　　　　　　　　　　　　　内容が、とにかく秀逸。
　　　　　　　　　　　　　　　　　日本の伝統のおめでたいもので
　　　　　　　　　　　　　　　　　構成されています。
　　　　　　　　　　　　　　　　　練り切りの鯛
　　　　　　　　　　　　　　　　　白あんの水ようかんの鶴
　　　　　　　　　　　　　　　　　白あんともち米で岡山の小豆を
　　　　　　　　　　　　　　　　　包んだ桃山
　　　　　　　　　　　　　　　　　銀杏に見立てた寒氷（干菓子）
　　　　　　　　　　　　　　　　　大和芋と粉糖を乾燥して焼き上げた
　　　　　　　　　　　　　　　　　雲錦
　　　　　　　　　　　　　　　　　すはま
　　　　　　　　　　　　　　　　　焦がしきな粉や青小豆きなこで
　　　　　　　　　　　　　　　　　作られた干菓子

　　　　　　　　　　　　　　　　　ガラス皿の上には、鶴と亀が和菓子素材で
　　　　　　　　　　　　　　　　　描かれています。

　　　　　　　　　　　　　　　　　「吹き寄せ」は、いいことが
　　　　　　　　　　　　　　　　　　たくさん集まりますように、とのこと。

　　　　　　　　　　　　　　　　　これは、北海道　浦川出身のお弟子さんが
　　　　　　　　　　　　　　　　　作ってくださったのですが、
　　　　　　　　　　　　　　　　　シェフ曰く「今朝、こいつ、ドヤ顔で
　　　　　　　　　　　　　　　　　きました」。　大爆笑。
　　　　　　　　　　　　　　　　　これほど、秀逸なものが作れたのですから、
　　　　　　　　　　　　　　　　　それもそうですね。
　　　　　　　　　　　　　　　　　さらに、その後、
　　　　　　　　　　　　　　　　　シェフが、「なんで、それ白いねん？」
　　　　　　　　　　　　　　　　　と、鶴を指して聞くと、
　　　　　　　　　　　　　　　　　お弟子さん「鶴ですから」と。
　　　　　　　　　　　　　　　　　シェフは、なにを使って白くしたのか、と
　　　　　　　　　　　　　　　　　聞きたかったのですが・・・。
　　　　　　　　　　　　　　　　　で、またまた大爆笑。

１６、茶　　　　　　　　　　　　　そのお弟子さんが、淹れてくれるお茶です。
　　　　　　　　　　　　　　　　　１、狭山茶　　　一煎目から三煎目までの味を
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　楽しみます。

　　　　　　　　　　　　　　　　　２、玄米と加賀棒茶

　　　　　　　　　　　　　　　　　骨董屋さんで見つけたという常滑焼の急須や
　　　　　　　　　　　　　　　　　万古焼の急須の美しさに見とれました。

お供は、赤ワインをグラスで。

フルボディをお願いしたところ、料理が引き算なので、ワインは

ブルゴーニュが中心、とのことでしたが、

なんと、TSUGANEを出してくれました。


食後も、いつまでも、シェフたちと会話していたいくらい、

居心地がよかったです。

シェフは、「料理なんて、あまり好きじゃない」といい、

和菓子を作ってくれたお弟子さんも「甘いものは苦手」と。

謙遜なのか、ホンネなのか・・・。

ま、どちらにしろ、唯一無二な料理を探究していることだけは

間違いない、です。

銀座に、またひとつ伝説が誕生しそうです。