緩急自在の流れが見事！ : 銀座 しのはら

2回目の訪問でもしっかりと覚えてくれていた。

アワビ、ウニなどを盛り付け、出汁のジュレで纏めた先付けの出汁の加減も見事。バカラの140年前の器の繊細な造形が見事。

かぶらとアラの吸い地。
これは少し昆布を強めに引いている一番出汁。
透き通る感覚のなかで、昆布の柔らかな加減が舌に感じられる。

やはり今度もアンティークバカラの器でお造りはふぐ、鯛、まぐろ、イカ。醤油の煮こごりもつまみながら、ハマボウフウを添えてある。
チリ酢でフグをいただく。
煮こごりでタイをいただくとなかなか良い。

しのはらさんの器を遊ぶ感覚は好きだ。

デンスケアナゴを乗せた飯蒸し。
藁の香りがふうわりと蒸されていてご飯に移って実に旨い。
栗の配分もほっこりしてバランス良い。

大徳寺麩を添えた青菜の煮浸し、スコティッシュサーモンキャビアサーモンのスモークされた香りが素晴らしい。黄身しぐれを固めたもの。イチジク胡麻味噌。海老芋の唐揚げは一度炊いて柔らかく、表面カリリッと塩味で食べさせる。サツマイモのサッパリとした蜜煮。

マグロとべったら漬けの手巻き寿司わさびあんをかけて。甘めの仕上がりが、海苔の香りと抜群の相性。

フォアグラとあんぽ柿の最中。
炊くときに使ったお酒の香りがフワリとして上品で旨い。フォアグラを使うともっと甘みをつけたくなるところをググッとここで抑えているのは上品さに必要なバランス。最中の皮のハラハラッとした崩れ感、香りも相まって素晴らしい。

うなぎは揖斐川からパリリと焼いた。うなぎは4日寝かしてサッパリとして川魚であることがわかる旨さで、柔らかい。

鮎は岐阜。鹿は北海道から蝦夷鹿。
鮎は子持ちで、豊かな味わいを素晴らしい絶妙な塩加減の塩焼きで。頭の苦味とカリカリ感が好み。

鹿は甘だれでこれも抜群。
鮎と鹿の皿は素晴らしかった。

この二種盛り合わせは川と山との野生の力を前面にしっかりと出してくる豊かな秋の自然を感じさせる目眩がしそうなほど自然の力を思い知ることのできる素晴らしい一皿。

なめこ、大黒しめじ、黒アワビ茸を煮込んだ出汁でイノシシをサッと洗って。

この自然、秋というシリーズはしのはらさんの十八番なのだろう。
見事すぎるほどの出来。

毛蟹のコロッケを混ぜ込んだご飯。「95%蟹のコロッケです。」ということはカニと油の馴染みで完成するご飯なのだろう。
そう考えながら一口目を口にすると…。なんと！見事な出来栄え！
一杯目は生卵の卵黄と蟹味噌を溶いたものをかけていただいたのだが、油と蟹の相性がいいのがわかる。

二杯目は、フカヒレを入れたスッポンの出汁をかけて。
筑紫楼のフカヒレの味付けより上品。しかしスッポンの出汁の濃い旨味が効いていてコラーゲンハーモニー。

三杯目は先ほどのキノコ猪鍋の出汁で雑炊に炊く。
スッポンの出汁かけと比べるとサッパリとしていて、それでいながら出汁の香りもいい。

で、4杯目、お替わりは最初の一杯目の感覚を思い出したくて…。旨い！

丹波栗の栗きんとん。
小豆を中に数粒包んで、
ほんのり一口。

お抹茶を点てていただき締めとなる。

前半の透明感、半ばの華やかさ、後半の力強さ、そして炭水化物の満足感。圧倒する流れは見事。

イケメン、篠原さん。
やるなー！見事！

初訪問は三ヶ月前からの予約で行って来ました。赤丸急上昇の「しのはら」さんへ。
好奇心の溢れる仲良しの友人が、「予約出来たー！」と言って誘ってくれてから三ヶ月。


文具の銀座二丁目のITO-YAのすぐ裏。ゼットンの古くからのザ・ロビーの直ぐ近く。おそるべき一等地。

新築ビルの地下に入ったとのこと自体、なかなかこんな幸運に恵まれている店はないのではないでしょうか。運を持っている人なのだと思います。

特に印象的だった品について、
ウニを紹興酒でアレンジしたもので酢飯を投入したものこれは素晴らしかった。
ウニが殻にそのまま入っている。しかも身を剥がしていない。鮮度を丁寧に香りで確認して仕込む念の入れよう。紹興酒の香りづけで、甘エビもが入っているのだがこれが混然一体となり、抜群の香り味わい。
当然のごとく鮮度が素晴らしかったし、なかなかこのインパクトは印象的だった。

それから、加茂茄子と、里芋と穴子の炊き合わせ。これはなかなかすばらしい出来であった。だしがなすにも染みていて期待していた味わいを超えていた、滋味溢れる一品。

3つ目はうなぎの蒲焼木の芽和え。

滋賀出身の店だからというわけではないらしいのですが、琵琶湖の天然のうなぎ！です。

大きな、大き過ぎない天然の鰻を脂を落としながら、じっくりと炭火であぶりあげたものでパリリッと皮目がよく焼けていて、噛みしめるほど旨さが実感できる品です。すばらしい料理としての完成度は仕上げの山椒の芽を細かく刻みかけて完成。

琵琶湖の上物くんは、儚き木の芽の香りで完全に仕上がっていた。この季節には確かに、山椒の実をつけるより名残の木の芽でまぶしてくれていた方が季節感もありとても素敵な品だった。

ご飯の趣向も楽しかった。新生姜の炊き込みご飯に最初は香の物でいただき、二杯目はフカヒレのあんかけでいただく、そして3番目は雑炊にしていただくのだ。この三段構えの趣向はお客さんを楽しませるのに充分だ。添えてあった牛肉のしぐれには素晴らしい出来だった。

また、最後に感激したのは甘味でよもぎの香りを漂わせた素晴らしい練り切り。流石料理屋で出すので、日持ち日持ちを気にせず甘みを抑えて出すことができる。よもぎの香りも最大限に練り込まれており素晴らしい出来だった。もはや上生菓子の概念を超えていて、超生菓子だった。

味の濃いものの完成度が高く、味を薄く引いている出汁は、まだ模索中なのかもしれない。味の奥に少し水感が残る。

僕の好きな薄い出汁は「水のような繊細さにそこはかとない旨味の儚さ。」というものなのだが、篠原さんの模索もおそらくはそこに向かっているのだと思う。

何より篠原さん、探究心が深い事と、自信に満ちた笑顔と、利発そう何より眼、積極的に外部に働き掛ける明るさが素晴らしい。

あと、器に対する趣味の深さも素晴らしい。
最初の寄り付きで出してくれた茶の器の繊細さから、春慶塗りの鮮やかさの統一感も良く、現代作家から骨董まで自在に使っている。
最後に出されたお新香の乗っていた古九谷の漆を塗ったものなどは実に珍しく繊細で、食べ終わって撫で回すほどの素晴らしさだった。

とはいえ、ここの店人気店で、いま予約を取るのも半年後の予約も取れないくらいに人気急騰中です。

月一か、せめても季節ごとに一度来たいけど、予約が取れないのは残念。常連になりたくてもなれないもどかしさがありますね。

銀座と言う地の利で同伴のお客様も多いらしく、栄えること間違いなしですね。

しばらく、半年に一度で諦めますか。