日常に祝福とサプライズを与えてくれる : レストランエール

平日のディナーに伺いました。
二度目となる今回、ランチ、ディナーともに11月から値上がりになると知り、滑り込み予約しての訪問です。

銀座の中心地とはいえ、すっかりインバウンド仕様のカジュアルな商業施設、そして内装もシンプル。そんな外見の気軽さを裏切るようにユニークで複雑で、味覚と視覚を刺激する料理の数々。更に現時点で8,000円という、内容に比して良心的なお値段。二重三重に驚かされるお店です。

ディナーお任せコース　税サ別8,000円です。

#1. 花束
#2. どんこ椎茸
#3. 蛸
#4. スイートポテト
#5. エール(+1000)
#6. アオリイカ　長崎産生からすみ
#7. エストラゴン　枝豆
#8. 本山葵　玉露
#9. チョコバナナ
#10. アサイ　アーモンドキャビア　キウイ
#11. お茶菓子

#1.はアミューズの尊い花束。山本シェフの食材への想いを知る時間です。

#2.から#6.まで怒涛の前菜が続きます。
#4.までの3品は小さいポーションながら、それぞれ素材の特徴を存分に感じられる料理です。
#5.はスペシャリテで野菜のパフェか、エール(+1000)から1品を選びます。エールは、トリュフや魚介などの具材に、卵黄や動物性の旨味を凝縮したムースを合わせています。繊細な容姿とは裏腹に、混ぜ合わせるほど複雑で奥深く、野菜のパフェを更に濃厚にしたような一品でした。
#6.の生からすみの風味が鮮烈なアオリイカも食べ応えがあり、前菜だけでミニコースを一巡してしまったような贅沢さがありました。

この辺りで登場したパンは、甘みがあり美味しかったです。入店の際、レジカウンターに見覚えのあるブリコラージュのショップカードがありました。

エールの濃厚さが響き、お腹は満たされつつありましたが、メイン2種に続いてアヴァンデセール、グランデセール、と休むことを許されません。次回頂くとしたら、スペシャリテは野菜のパフェにしようと思います。小さめのポーションでも11皿展開されるにつれ、私自身が満足を超えてしまいそうになります。

グランデセールは、同じ銀座通りにある『サバース　ギンザ』というジュエリーショップとのコラボレーションデザートとのこと。アサイーなどの美容に良いとされる食材を使い、宝石をイメージして華やかにデコレートされたスイーツに、目の前でアイスパウダーをかけてスモークを上げるという演出でした。

日常が思いがけず、祝福を受け特別な日になったような気がしました。サプライズに満ちているお店です。

予約困難店、恵比寿のビストロ間さんの野菜のパフェを頂きたいと時期を伺っていましたが、いつの間にか名前を変えて銀座に移転していました。恵比寿の跡地やその周辺には姉妹店ができていたり、何が何やらですが、私にはより交通の便が良い、こちら銀座のエールさんをやっと訪問できました。

銀座中央通り沿いのEXIT MELSAの8階で便利ですが、外観は正に商業施設のレストランフロアですから、拘りある方を記念日にサプライズでお連れしたら一見拍子抜けされてしまうかもしれません。これは立地で損をしているか、逆に驚きの振り幅が大きいか、どちらでしょう。
店内は白を基調にしており、シンプルで清楚です。厨房やワインセラーが見えカジュアルさもあります。

6月のディナーお任せコース　税サ込9,504円です。
ランチ、ディナーともにお任せの各1コースのみで、約2ヶ月ごとにメニューを一新するそうです。

#1. 花束
#2. バーニャカウダ
#3. 沢蟹　稚鮎
#4. 宮崎 とうもろこし
#5. 野菜のパフェ or エール(+1000)
#6. 島根 雲太
#7. 京都 ひも茄子　愛知 紫人参 (メダイ)
#8. 八丁味噌　あおさ海苔 (鳥取のトトリコ豚)
#9. チョコバナナ
#10. 京都 上玉露　熊本 アンデスメロン
#11. お茶菓子

#1. まずは小箱を開けるとドライフラワーの花園。4種の野菜のチップスが乗っています。命を頂くことに対するシェフの想いを噛み締めながら頂きます。

#2. #3. #4. と小皿の前菜が3皿続きます。シンプルに素材の良さを味わうお料理ですが、どれも目にも楽しく食べてしまうのが勿体無いほど。

#5.こちらのお店のスペシャリテです。野菜のパフェを頂きました。野菜を中心とした様々な食材に、ゆずと日本酒のアイスクリームやスモークした鮎など意外なトッピングがアクセントになりながらもまとまり良く調和し、これらを混ぜ合わせて頂くとあっさりし過ぎずなかなか奥深い味です。

#6. 島根産の雲太という大きな椎茸にモンゴウイカ。醤油で香ばしくソテーされアンチョビのソースで整えられた和食感覚の品。フレンチとしては異色ですが肉厚で美味しいです。

#7. 京都 ひも茄子　愛知 紫人参。メダイ (魚の名前違っていたら申し訳ありません) を極力生に近い火入れで、最もしっとりする焼き加減に仕上げているとのことです。

#8. 八丁味噌　あおさ海苔。トトリコ豚という、イベリコ豚のようにどんぐりだけを与えて育てた鳥取豚とのこと。柔らかくてジューシーです。

#9. #10. #11. と可愛らしい甘味が続きました。

国産の食材を使用し、和の調味料で仕上げるという、フレンチの顔をした和食に思えました。フランス料理とは何なのか、考えさせられます。海外からいらした方や年配の方にお勧めしたくなる、日本らしさ、そういう意味では、銀座という土地柄に合っているかもしれません。

既存のジャンルの枠を超えて美味しい、そして美しく楽しい、驚きが凝縮したレストランでした。