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一年の締めくくりとして訪れたのは、ハイレベルな蕎麦屋酒が楽しめる名店
才気を感じさせる蕎麦前の充実
禁酒法が解禁になった暁に訪れたいと思う蕎麦屋は数多あるが、こちらはその中でも最優先したかった店。
こちらは都内の蕎麦屋でミシュランガイドのビブグルマンに選ばれている20軒ほどの1つで、蕎麦の出来のみならず蕎麦前の料理のセンスに光るものがあり、私も開店当初から何度か訪れて好ましい印象が残っている。
こちらも暫く昼だけで酒の提供も自粛していたが、10月に入り夜の営業を開始し「蕎麦屋酒」が楽しめる体制になっている。
一応当日の昼に電話を入れて、席を確保の上で向かう。
18時少し前に到着したが初客であった。
入口のドアは常時開け放たれており、手前のテーブル上には次亜塩素酸のミストを発生させる装置が稼働している。
ご主人夫妻と、手伝いの女性の3人体制。
座り慣れたカウンターの端の席を選ぶ。
まずは生ビール(ハートランド)で始める。
メニューはパウチされた定番や手書きの'旬のもの'、さらに目の前にも蕎麦を中心とした品書きが貼られている。
その中で「旬のセット」なるものが目に付き、季節の肴が少量ずつと蕎麦がセットされている。
他の物を追加することも可能とのことで、とりあえずこちらを頼む。
角皿に体裁よく盛られて登場したのは次の4品。
「焼き松茸」:小振りの一本分のスライスが焙られており、香りも旨味も今一つだが食感は良好。
「生いくら」:軽く塩をしたイクラの粒が、大根おろしの上に盛られている。色も綺麗で決して悪くないが、やはりイクラはある程度漬け込んだ方が旨味が乗るかなと言うのが正直な感想。
「栗と銀杏の素揚げ」:渋皮付きの栗と翡翠色の銀杏の取り合わせ。食感も上々で季節の味わいを堪能。
「冷いちじく」:大ぶりの無花果で、ほど良い甘さで吟味されていることが判る。
追加で「焼きししゃも」をもらう。
添え書きに'北海道広尾沖 天然 雄'とあり、期待して注文。
北海道でししゃもと言えば鵡川が有名だが、広尾も同じく襟裳岬の近くのため'本物のししゃも'が揚がるようだ。
模擬ししゃもの「カペリン」などでは子持ちの雌に人気が有るようだが、実際には卵に養分を取られていない雄の方が身がしっとりして美味しく、これは蝦蛄にも言えること。
多少パサついてはいたが、塩気も程よく美味しかった。
肴にはもう一品「鴨 豆腐煮」を注文。
深めの丼が登場、大振りにカットされた豆腐と小さ目にカットされた鴨もも肉、さらにたっぷりの葱が煮込まれて三つ葉があしらわれている。
つゆは蕎麦屋としては異例と言える塩味ベースで、一見薄いように思うが鴨の出汁が良く効いており、その旨味を含んだ豆腐は食感もしっかりで食べ応えが有る。
特筆すべきは葱の美味さで、一般的な関東の葱は葉の部分は硬くて捨てるが、緑色の部分も太めにカットされてサッと煮込まれており、鴨との相性の良さもあって実に美味しい。
ご主人に訊いてみると普通の葱とのことだが、吟味されていることが判る。
原了郭の「黒七味」が添えられ、これを振り入れるとさらに味が深まる。
酒は冷酒に「風の森」ついで「日高見」を一合ずつもらう。
洒落た錫の酒器に注がれ、ガラスのぐい飲みが添えられて供される。
料理の美味さと相俟って、快適な蕎麦前となる。
後客は単身者がちらほらの状況で、食事オンリーの客にも違和感が無いのがこちらの特徴。
もう少し長居したい気持ちを抑えて蕎麦を注文。
久々なので基本の「もり」を一枚。
一式が角盆で登場。
蕎麦は'越前大野産'の十割とのこと。
微粉を綺麗に繋いで中太に揃っており、香りが芳しい。
シャキッとした食感と喉越しも良好の、優れた仕事である。
つゆの美味さも相変わらず。
やや薄めだが、出汁の旨味と返しのコクが融合したすっきりとした味わい。
徳利で出されるひと手間がゆかしく、少量ずつ注いで啜れば爽快な喉越しが楽しめる。
蕎麦湯が自然体だったのは意外。
こちらは開店当初は手を加えた粘度のあるタイプだった記憶があるが、すっきりしたスタイルに変わっている。
この点をご主人に伺ったら、江戸前の仕事に立ち返り見直したとのことで、この見識には賛辞を贈りたい。
期待通りの充実した「蕎麦屋酒」が楽しめた。
夜の再開から間が無いため、まだ調子が戻っていない部分も感じられるが、仕事面では概ね満足。
味については相変わらずのレベルが保たれてはいたが、今回は他の面で気になることが幾つかあった。
まず薬味の山葵が、不可思議かつ残念な代物だったこと。
また衛生上の配慮からと思われるが、箸は袋入りの割り箸で、それも町場の弁当屋で出されるような、太さも長さも十分でない爪楊枝入りの安物である。
他の方のレビューに、水が紙コップで出されたという記述が見られたが、コロナへの防御対策は決して悪いことでは無いが、風情までを度返しするのは如何なものかと思う。
暫定亭な対応であるためこれを理由に評価を下げることはしなかったが、釈然としない思いは残る。
改めてご主人の技とセンスの良さに感服
都心の優良店への定期訪問。
と言っても、前回は親しいレビュアーさんとご一緒したオフ会なので、3年近くも間が空いてしまった。
5時半の開店と同時に入店。
ご主人に無沙汰を詫びつつ、いつものようにカウンター左端の席を選ぶ。
生ビール(ハートランド)で始める。
お通しには「そば味噌」が付いたが、江戸前の老舗のような仕事で味も良い。
結構多めに出されたが、後で確認したらこれはサービスだった。
肴はいつもながらの充実ぶりで、定番の他に15品ほどの'季節のもの'が品書きに並び、いずれも垂涎もの。
迷った末に次の3品を選択。
「牡蠣酒蒸し」:どういったスタイルで出て来るか興味津々だったが、蒸し煮にされた熱々の大粒が3個、半分にカットされて木の椀に盛られている。
しっかり目の火通りだがその分味が凝縮し、塩気減も丁度良い。
あおさ海苔の色と食感がアクセントとなっており、旨味たっぷりの蒸し汁も余さず頂く。
「鴨おろしポン酢和え」:こちらも調理法に興味が有ったが、湯通しした鴨のもも肉の小角切りの上に大根おろしが乗っている。
周囲にポン酢が回し掛けられ、さらに青葱と一味唐辛子が散らされている。
鴨肉は適度な弾力があり味が深く、ポン酢の加減も丁度良い。
「いくら海苔巻き」:以前こちらで「雲丹の海苔巻き」を試したが、それのいくら版。
いくらは自家製とのことで、淡い塩加減が好ましい。
海苔は江戸前蕎麦屋ならではの、炭火を忍ばせた'海苔箱'で登場。
この香り高くパリッとした海苔で、いくらを包ませる趣向が楽しい。
酒の品揃えも豊富。
その中からまず島根の「十旭日」を冷酒で、その後に福島の「田村」をぬる燗で、さらに広島の「雨後の月」をグラスでもらう。
いずれも結構な味わいで大いに満足。
これらで快適な時間を過ごす。
蕎麦の注文は、こちらではやはり季節の種物が気になる。
今回目に付いたのは「松茸おかめそば」。
「おかめ」は江戸前蕎麦屋伝統の種物の一つで、おかめの顔を模した上置きに特徴があり、かつて松茸がそれほど貴重品では無かった頃は、これで鼻を表現するのが決まりとなっていた。
面白そうなので、こちらにしてみる。
運ばれた丼は木蓋で覆われている。
「花巻」では海苔の香りを閉じ込めるために木蓋を被せて供されるのが定法だが、こちらにも松茸の香りを逃さぬために同じ手法が施されている。
この点をご主人に指摘したら'わが意を得たりと'と、微笑みながら頷いていらした。
蓋を持ち上げるとなるほど、松茸の芳しい香りが湯気と共に立ち上った。
丼上の景色は、予想通り中央の鼻は結構大きめの松茸半本分で、頬を表すのはお決まりの蒲鉾2枚、髷には結び湯葉、それに2粒の銀杏が刺された竹串が簪を模している。
他には青味として、小松菜と三つ葉が散らされている。
まず松茸を摘まむが、2つに割いて焼かれており香気と歯触りが心地よい。
次いで蕎麦を啜るが、細打ちながらきちんと食感が保たれている。
蒲鉾は上物で、分厚くカットされている。
つゆは敢えて醤油味を薄めに仕立ててあり、見た面も味も上品。
このままでも飲み干せそうだが、江戸前の定法通りに'かけもの'にも湯桶が添えられた。
中身は自然体で気持ちよく伸びる。
全てを平らげた丼のみ、卓上に残る。
まことに充実した「蕎麦屋酒」を堪能。
今回の肴類、さらに松茸入りのおかめを試してみて、改めてご主人の抽斗の多さを確認。
蕎麦の出来もさることながら、和食料理人としても優れた腕前とセンスの良さを兼ね備えている。
懐石料理のコースで最後に蕎麦が出るというスタイルでは無く、肴類はあくまでも「蕎麦前」としての役割を果たしている点も、江戸前蕎麦屋の流儀に則している。
お勘定は内税で7,000円弱なので、内容からすれば極めてリーズナブル。
この辺りには個性的かつ優秀な蕎麦屋が多いが、総合的な満足度では随一と言える佳店。
これからも私にとって、大事な蕎麦屋であり続けることは間違いない。
蕎麦屋酒が楽しめる佳店となったことを歓迎
今回は親しいレビュアーさんをお誘いしての、オフ会での利用。
メンバーは4人で、テーブル席をお願いしておいた。
更新のレビューは、注文した品を列挙し、簡単に注釈を入れるくらいにとどめることをお許し願いたい。
まずは「ハートランド生」で乾杯。
料理は次の通り。
「おまかせ五点盛り」:内容は、いたわさ・鴨焼き・黒豆の酢大豆・大和芋磯辺揚げ・大根柚子漬けで、この中ではカリッとした食感を残した酢大豆が面白かった。
「ほたて貝柱の塩焼き」:一人前2個なので2皿注文したため、食べ応えが有った。
「巣ごもりそば」:私は2回目だが、かかった餡に加えられた大振りの具材の豊富さが秀逸で、こちらの名物としてしっかりと定着した様子。
「牡蛎衣揚げ」:下味を付けて粉をまぶして揚げた竜田揚げといった趣で、牡蠣の味が凝縮している。
「豆腐抜き」:温蕎麦のメニュー載る「豆腐そば」から蕎麦を抜いた「煮やっこ」のようなスタイルで、なかなか美味い。
「白菜漬け」:さっぱりとしており、箸休めにはぴったり。
「鴨葱焼き」:噛み応えも旨みも十分で、葱の甘味も楽しい。「原了郭の黒七味」が味を引き締める。
「芹抜き(鶏肉入り)」:これも「芹そば」の蕎麦ぬきで、長めにカットされた芹がたっぷりと入り、シャキッとした食感と程良い苦味が心地良い。
どれも季節感が溢れており、なかなかの満足感。
銘々の取り皿や小鉢を、その都度出してくれる気配りが嬉しい。
酒はこちらの一押しの丹後の「玉川」(前回も記したが、杜氏はフィリップ・ハーパーなる英国人)より数種類(純米吟醸・無濾過生原酒こうのとりラベル・にごり酒」など、他に「日置桜」なども注文。
それぞれを一合の徳利で頼んだが、銘柄ごとに猪口を替えてくれるサービスも好ましい。
料理と酒を楽しみつつ、皆さん方との会話も弾むうちに、蕎麦のラストオーダーの時刻も迫って来た。
4種類を注文する。(ちなみに今回の蕎麦は、福井の大野産の十割とのこと)
冷たいものから「辛みおろし」「磯雪」、温蕎麦から「味噌なめこ」「かき玉」。
ひとり一品ずつは多いかなと思ったが、取り分けて難なく完食。
ほとんど同時に出て来たのでちょっと忙しなかったが、バラエティに富んだ味が堪能できた。
今回は大人数だったので、いつもより多くのものを試せたのは有難かった。
皆さん方にも満足して頂いたようで、安堵している。
改めてご一緒してくださった方々に、感謝申し上げたい。
(重複するものを避けて、11枚の写真を追加掲載)
≪2015年8月のレビュー≫
多くの方に良い店だとお薦めしておきながら、私自身は1年以上のご無沙汰。
こちら方面の用事の帰り、開店時刻に合わせて足を運ぶが、5分ほど早く到着してしまった。
ちょうど店頭で準備をしているご主人に、急ぎませんからと告げて、定刻まで表におかれた竹の縁台に腰を下ろしていた。
これからずっと私の定位置になりそうな、カウンターの左端の席を選ぶ。
生ビール(ハートランド)と、肴は「おまかせ三点盛り」をまず注文。
内容は「鮎丸干し・冷やしトマト・板わさ」で、上々のスタート。
次いでこちらで一度試してみたかった「巣ごもりそば」を頼む。
この一見奇を衒ったような種物は「池の端藪」が考案したものだが、これを系統の違うこの店で出しているのも、ご主人の創意の賜物。
食事としてではなく、酒の肴向けの蕎麦を使ったアレンジ料理として、メニューに加えるようになった。
出てきた皿を見てまず目を引くのは、揚げた蕎麦の太さを敢えてバラバラにしていること。
中には板状のものも有り、徐々に潤びていくなかで食感の違いを出そうという配慮とみる。
具材は鶏肉・帆立・海老・蒲鉾・椎茸・油揚げ、それに小松菜の緑が見た目と歯ざわりを演出している。
そばつゆベースの餡かけとなっており、酢も添えられているので、これを少量垂らすとまた味に変化が出る。
酒の品揃えには、以前にも増して意欲的な姿勢が感じられる。
その中からまず選んだのは、山形の「羽前白梅」。
洒落た縦長の陶器の水差し状の酒器で出され、飲み口も結構なもの。
次いで、丹後の「玉川」という銘柄を注文。
杜氏は英国人とのことだが、これもなかなか美味く、その後さらに同じ蔵元の「にごり酒」もグラスで追加。
肴にもう一品「万願寺とうがらし」をもらう。
大きめで肉厚のものを筒切りにして焼いて、醤油と鰹節がかかっている。
種が丹念に全部抜かれているところに、丁寧な仕事ぶりが見て取れる。
蕎麦は多くの方がレビューされている、この時期ならではの「雲丹の冷やかけ」にする。
前回はつまみでもらって、しっかりとした食感と甘みが印象に残っている雲丹だが、これを贅沢に乗せて「冷やかけ」に仕立てている。
さすがに美味い。
蕎麦の精妙な茹で具合も、薄味のつゆの加減もよく計算されており、ご主人の確かな腕とセンスが顕れた逸品と言える。
帰り際に開店2周年とのことで、家庭で使える「鰹節パック」をお土産で手渡してくれた。
ご主人と'もう2年経つのですね'と言葉を交わす。
開店当初はやや方向性に迷いが有ったが、今ではすっかり安定した仕事ぶりを見せるようになり、接客面でも余裕が出てきた。
快適な蕎麦屋酒が楽しめる店として、これからも益々の伸長が期待できる、私にとっても大事な一軒である。
評価はさらに少し上げさせていただいた。
(値段が改定されているメニューを、一部差し替えた上で、新規に19枚の写真を追加掲載)
≪2014年6月のレビュー≫
昨年8月の開店直後に訪れて以来、再訪せねばと思いつつ大分間が空いてしまった。
まだ外は明るい、5時半ごろに寄ってみた。
カウンターの端の席を選び、前回同様「生ビール」(ハートランド)で始める。
メニューの冊子を広げると、開店当初から比べ蕎麦も酒肴も格段に充実している。
しかもかなり意欲的なスタイルが前面に出ていることに、ちょっと驚く。
まず料理は定番ものも増えているが、それに加えて'旬のもの'が目を引く。
その中から早速次の3品を注文。
「小鮎丸干し」:一見「うるめ」のようで実際の食感も似ているが、味はやはり鮎である。
ワタのほろ苦さが乙な味わい。
「生雲丹の海苔巻」:どういったものが出て来るか楽しみだったが、何と老舗蕎麦屋で時々見かける、炭火を忍ばせた蓋付きの塗り物の「焼き海苔箱」(合羽橋などで見ると結構高価)が、生雲丹が盛られた小皿とともに登場。
蓋を開ければ、和紙の上で焙られた焼き海苔が4枚。
これに客が自ら雲丹を乗せて巻き、醤油をちょこっと浸けて食させる趣向。
雲丹は小粒の「エゾバフンウニ」と思われるがなかなか上質で、どこの産かと主人に問うと「北方四島」と言う答え。
へーという思いであるが決して輸入物では無く、今ではあちらから新鮮なものが手に入るのだそうだ。
「茄子の揚げ浸し」:注文の度に丁寧に包丁目を入れられた茄子が色よく素揚げされ、薄味の出汁に浸されたもの。
鰹の糸がきとおろし生姜が添えられ、品の良い一品に仕上がっている。
酒も多くの銘柄が並ぶようになったが、別書きの大きな前衛的な筆文字が気になる。
「杯中至楽」:「勝沼醸造」と言うワイナリーの白ワインで、名前からしてこだわりを感じるが、実際の味もしっかりとした手応え。
「佐々浪」:'活性にごり酒'なる説明につられて頼んでみたが、「どぶろく」のような濃度と力強さはやや想定外で有ったが、これもなかなか面白い。
蕎麦のラインナップは、更に創意のふくらみを感じさせるもの。
特に目立つのが「巣ごもり」「磯雪」の文字。
これは「池の端藪」が考案した種物で、どういった関わり合いが有るのか早速尋ねるが、単に主人が色々と食べ歩いた中で、好みのものを加えただけとのこと。
「巣ごもり」は値段からして酒の肴として出しているようなので、これは次回のお楽しみにして、今回は「磯雪そば」にしてみる。
「池の端」ではその昔に一度試したことが有る。
冷たい蕎麦をメレンゲ状に泡立てた玉子に混ぜ込み、つゆに浸けて食べるスタイルは同じ。
乾燥した「あおさ海苔」が彩りと食感のために散らされているのが、こちらのオリジナル。
フワッとした玉子の舌触りと、硬めに茹で上げられた蕎麦の対比が楽しい。
しかしつゆが「池の端」ほど濃くないので、玉子が入る分、味が薄まって感じられたのが残念。
これにはもう一工夫が欲しい。
「蕎麦湯」が自然体の濃さになっていたのは意外。
「磯雪」向けに、敢えてさらっとしたものを出したのかどうか、確認すれば良かった。
今回は6時過ぎから数組の「蕎麦屋酒」目的の客が来店。
開店当初、良過ぎるほどの立地とストイックとも取れる姿勢が気がかりであったが、主人の個性が徐々に発揮され、良い方向を見出したように思う。
主人の真摯な仕事振りは好感できる。
一方女将さんの接客には、もう少し落ち着きが欲しいかなと思う。
近所の「東風庵」が閉店したため、あそこの常連だった業界系の客が増えることも予想される。(尤もこちらは全面禁煙だが)
今後も新しい発見が有りそうで、これからも時々覗いてみたい。
星の評価は、少し上げさせていただいた。
(刷新されたメニューを含め、21枚の写真を追加掲載)
≪2013年8月のレビュー≫
地元の「七五郎さん」のレビュー並びに情報をもとに、初回は昼に蕎麦だけで訪店。
再度夜に「蕎麦屋酒」目的で訪れた。
場所は首都高の通る「旧築地川」と「平成通り」の間で、真新しいビルの1階。
七五郎さんが仰るとおり、「東風庵」からも「布恒の支店」からも、一分とかからない所。
その他にもこの周辺には「流石」「湯津上屋」「さらしなの里」「成富」といった、個性豊かな蕎麦屋が集まっている。
夜は5時開店で、5時半過ぎに到着したが先客は無し。
昼は手伝いの女性が二人いたが、夜は早い時間帯は主人一人、6時からホール担当の女性が加わった。
カウンターの端に座り、まずは「生ビール」(ハートランド)。お通しは付かない。
品書きに並ぶ肴類はシンプルで、値段も手ごろ。
七五郎さんの写真とかぶらないようにと選んだものは、
「蕎麦味噌」:やや甘目で柔らかく練り上げた味噌に蕎麦の実が混ぜ合わされた、スタンダードなスタイル。
「水なす」:浅めの塩漬けが、手でちぎって盛られている。上に炒った金胡麻が散らされ、新生姜の甘酢漬けのスライスが添えられている。味は期待通りといったもの。
「大山地鶏焼き」:フライパンで焦げ目をつけて、醤油ベースのたれを絡めた「蕎麦屋の焼き鳥」。一味を振って口に運ぶが、鶏の旨みと歯応えが心地よく、甘くないたれも嬉しい。
酒の銘柄も絞られており、その中から奈良の「風の森」、その後に和歌山の「黒牛」をもらう。
洒落たガラスの酒器で供される。
まだ時間も早いせいか、私の後には食事だけの客がポツリポツリの状況。
追加で「粗挽きそばがき」を頼む。
文字通りの粗く挽いた蕎麦を、やっと箸でつかめるくらいの柔らかさで練り上げたものが、小鉢で出てきた。
このスタイルは珍しく、パウダー岩塩だけで食させる。
もちもち感は少ないが、蕎麦自体の甘味と香りが強く、粒々の歯触りもなかなか面白い。
打つ蕎麦はひといろで、メニューも「もり」と‘旬のそば’と付された「冷やかけ」と「サラダそば」の3品しかない。
昼でもこれにサイドメニューとして、‘季節のごはん’が加わる程度である。
「もり」を一枚注文。
配合は聞かなかったが、十割かそれに近いと思われ、色合いは中庸で、鼻を近づけると香りが感じられる。
細めだが切り斑は無く、つながりも良く、茹で上げや水切りも精緻な仕事。
歯触りはシャキッとしながら、しなやかさも兼ね備えた、なかなか良くできた蕎麦である。
つゆは甘味を抑えた、きりっとした味わい。
やや薄口だが、細目の蕎麦には良く合っている。
薬味は擦り山葵のみで、質は良い。
蕎麦湯は今どきの流行に則った、濃度の添加が顕著なもの。
私の主義主張とは異なるが、それなりに考えがあってのことと評価したい。
手の空いた、イケメンの若主人と色々と言葉を交わす。
修行先は綾瀬の「重吉」とのこと。
「重吉」は名店としてかねがね噂には聴いているが、なんとなく未訪のままとなっている一軒。(亀有には「やざ和」目当てに足を運ぶのに、その手前の綾瀬をとばしているのは怠慢か)
店名の「文化人」についても聞いてみたが、‘蕎麦を一つの食文化ととらえ、その担い手としての気構え’を表したそうだ。
店の様子は今風にお洒落だが、しっかりとした理念に貫かれていることが分かる。
打ち場は小部屋にはせず、ガラス越しに外から見える簡単に囲った一角で行っているようだ。
後ろには最新式の石臼の製粉機が鎮座し、木鉢と延し棒が展示物のように静かに置かれている。
粉が舞ったりして掃除は大変だろうが、その点は抜かりなく、もちろん真新しいせいもあるが清潔感の漂う店内である。
蕎麦の出来は確かに見事である。
しかし種物はじめ、肴の種類も限られているため、周辺の他店に比べ地味さは否めない。
私のような‘蕎麦屋には蕎麦前有りき’の人間は、どうしても物足りなさを覚えてしまうが、蕎麦屋は蕎麦のみで勝負すべしとするストイックな「蕎麦鑑定人」の方々には、この潔さは歓迎されるのではないか。
蕎麦屋に限らず飲食には多くの選択肢のある築地の、決して家賃は安くは無い場所で、このスタイルの商売を始めたことは立派。
しかしその高邁な精神が、どこまで受け入れられるかは未知数である。
まだ開店から一か月も経っていない新店。
これからも注視していきたい。
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蓼喰人
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店名 |
つきじ 文化人
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受賞・選出歴 |
そば 百名店 2021 選出店
食べログ そば 百名店 2021 選出店 |
ジャンル | そば |
予約・ お問い合わせ |
03-6228-4293 |
予約可否 |
予約可 香水など香りの強いものはご遠慮頂いております。 |
住所 | |
交通手段 |
東銀座徒歩3分、築地徒歩3分、新富町徒歩5分 築地駅から237m |
営業時間 |
|
予算 |
¥8,000~¥9,999 ¥2,000~¥2,999 |
予算(口コミ集計) |
¥6,000~¥7,999
¥1,000~¥1,999
|
支払い方法 |
カード可 (JCB、AMEX、Diners、VISA、Master) 電子マネー可 (交通系電子マネー(Suicaなど)、iD、QUICPay) QRコード決済不可 |
領収書(適格簡易請求書) |
適格請求書(インボイス)対応の領収書発行が可能 登録番号:T8010001184008 ※最新の登録状況は国税庁インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイトをご確認いただくか、店舗にお問い合わせください。 |
席数 |
14席 |
---|---|
個室 |
無 |
貸切 |
可 (20人以下可) |
禁煙・喫煙 |
全席禁煙 |
駐車場 |
無 |
空間・設備 | オシャレな空間、落ち着いた空間、カウンター席あり |
ドリンク | 日本酒あり、焼酎あり、ワインあり、日本酒にこだわる、焼酎にこだわる |
---|
利用シーン |
こんな時によく使われます。 |
---|---|
ロケーション | 隠れ家レストラン |
お子様連れ |
夜の営業はお子様のご入店ご遠慮頂いております |
ホームページ | |
公式アカウント | |
オープン日 |
2013年8月7日 |
備考 |
4月のお休み… |
初投稿者 |
このレストランは食べログ店舗会員等に登録しているため、ユーザーの皆様は編集することができません。
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皆様、明けましておめでとうございます。
昨年中は大変お世話になり、改めて御礼申し上げます。
本年もどうぞ宜しくお願いいたします。
さて、今年最初のレビューはこちらの蕎麦屋。
年末の都心の老舗蕎麦屋は何処も行列必至で、それが暮れの風物詩のようになっているが、この時期外に並ぶのは難儀であり、提供される蕎麦も大挙して押し掛ける客を前にすれば、普段に比べて雑な仕事に陥っても致し方ない。
昔から'大晦日の蕎麦屋'と'土用の丑の日の鰻屋'は避けるべきと言うのが常識。
直近のレビューの中には、寒い中長時間並んだ挙句に店を貶す書き込みを載せている方も居るが、笑止千万である。
ゆっくりしたければ、大晦日は避けて訪れるのが順当である。
年末最後の蕎麦屋巡りには、ハイレベルな蕎麦屋酒が見込めるこちらを選択。
29日の夜の口開け時を指定して、数日前に予約を入れておいた。
定刻に入店すると、かなりのご無沙汰にも関わらず私の顔は覚えていてくれたご主人の松田さんに、温かく迎え入れられる。
私には定位置のカウンター端の席が用意されていた。
料理は3種類のコースから「じん」という9千円のものを頼んである。
まずはビール(ヱビス中瓶)をもらう。
先に突き出しとして「そば味噌」が少量出されたが、「まつや」や「並木」に匹敵する出来。
料理は次のような品々が適度な間を置いて登場。
☆「先付」:「広尾の雄シシャモ焼き」「銀杏素揚げ」「栗の素揚げ」の3点盛りで、この中ではやはり卵に養分を吸い取られていないことで、しっとりした旨味の有る広尾産のシシャモが良い。
☆「からすみ蕎麦」:精妙に茹で上げられた蕎麦の上に、細かに砕いたからすみが振りかけられ少量のつゆが注がれている。
からすみのクセは全くなく塩気も控えめなので、旨味が蕎麦に絡まり実に美味しい。
☆「ふぐ白子の天ぷら」:下関産のとらふぐの白子が2つにカットされて揚げられている。
表面はカリッとしているが中はトロトロで、濃厚な旨味を塩で頂く。
添えは原木栽培の舞茸で、こちらも味が濃い。
☆「牡蠣抜き」:大粒の宮城産の牡蠣2粒がたっぷりの短冊切りの葱とかけつゆで煮込まれた、所謂'牡蠣南ばんの抜き'のスタイル。
三つ葉と柚子皮が色と香りを添えている。
牡蠣の味もしっかり感じられるが、何と言っても旨味が溶け込んだつゆの旨さが'抜き'の身上。
☆「焼き鴨」:ローストされた蔵王鴨の抱き身が程よい厚みにスライスされており、添えは生のルッコラ。
噛めばジューシーな旨味がほとばしり、甘さの少ないタレが味を引き立てる。
香りの良い粉山椒と粗めにおろした辛味大根が添えられており、味のバリエーションも楽しい。
☆「店主おすすめ盛り合わせ」:横長の皿に少量ずつだが、数多くの品々が八寸風に盛り合されている。
内容は「ホタテの蟹あんかけ」を中心に「鯛刺身・蒲鉾・数の子・やなぎ松茸・スティックセニョールお浸し・伊達巻・干柿のクリームチーズ乗せ・梨のワイン煮・柿の実」。
この中ではやはり、蟹の身がたっぷりと餡に入った帆立が秀逸。
☆「焼き海苔」:江戸前蕎麦屋ならではの下部に炭火を忍ばせた'海苔箱'が運ばれ、中には8つ切りが4枚収められており、パリパリの食感が好ましい。
有明海産とのことで、香りも味も上々。
コースの中にこういった江戸前伝統の、小粋な一品が加わるのが嬉しい。
☆「出汁巻き玉子」:焼き立てのフワフワが登場し、使用するのは'七ツ釜平飼い卵'なるブランド卵とのこと。
焼き目を付けない手法だが、出汁多めの関西風とも異なる和風オムレツの趣。
混ぜ込んだ三つ葉の緑が綺麗で、染めおろしを添えて頬張れば実に美味しい。
この後が蕎麦になるが、その前に酒について。
まずは食前酒的に「風の森 無濾過無加水生酒」をグラスでもらう。
マッタリした口当たりと、豊潤と言う言葉が相応しい味わいがなかなか良い。
次いで花番さんが勧めてくれた3種の中から「日高見 超辛口純米」を1合。
錫の徳利で出され、キレの良さとすっきりした味わいが心地よい。
その後は私には馴染み深い「菊正宗 本醸造」をぬる燗で1合。
安心できる味わいが、焼き海苔や出汁巻きには良く合った。
この日は予約客で満杯で、私の後からは5組11人が次々と入店。
全員コースの注文だが内容が複雑で、ほぼ一人で調理を賄うご主人は八面六臂の活躍ぶり。
こちらは急がない旨を告げて、チェーサー的に「ハイボール」を頼みのんびりと構える。
☆「とろろ鮑蕎麦」:こちら店のスペシャリテで通常は冷製だが、今回は温蕎麦として出された。
かけ蕎麦の上に生の鮑のスライスが乗り、山芋の摺おろしが掛かり大葉やとさか海苔があしらわれている。
鮑のコリコリとした食感、さらにとろろが加わったつゆの具合も良く、蕎麦自体も決して悪くないが全体のまとまりとしてはちょっと残念。
温蕎麦なので鮑にも少し熱を加えた方が、しっくりいくと思う。
☆「もり蕎麦」:ご主人渾身の十割蕎麦を王道の「もり」で楽しむ。
やや細めで切り斑なく端正に揃っており、香り高く適度な歯触りとしなやかさを兼ね備えた優れた仕事である。
さらに感心したのはつゆの仕上がりで、出汁の芳しさとかえしの深みが融合した雑味の無い味わいが秀逸。
蕎麦湯は外連味の無い自然体で清々しく伸びるためたっぷりと注いで、起伏に富んだコースをしみじみと振り返る。
☆「デザート」は「林檎のコンポート」で、柔らかく煮られ薄いピンク色に仕上げられたリンゴには、喜界島のキビ砂糖が塗されておりシャリシャリした食感が面白い。
適度な酸味で甘さもきつくないのが良かった。
バラエティに富んだ内容で満足できた。
品数の多さから全てに渡り完璧とは言えないまでも、繊細な仕事ぶりは随所に感じられる。
特に白子・牡蠣・鴨と言った旬ものの料理が良かった。
相変わらずご主人の蕎麦職人としての才能と、料理人としてのセンスの良さと卓越な技に感心。
色々と食べた後でも、「もり」の印象が強く残ったのは流石である。
勘定は14,000円ほどだったが、内容からすればリーズナブルに映る。
年末の忙しい時に伺ったため多少慌ただしかったが、居心地は決して悪くない。
一年の締めくくりとして、最後にこちらの店を選んで正解。
信頼のおける一軒として、これからも私にとって大事な店で在り続けることは間違いない。