移転】　おぢさん酒場　【1010日より新装開店 : 厨房酒場 カモメセラー

と、いう訳で、旧店での営業は終了。移転先の新しい店が楽しみです。


再訪201609月】
好事家諸兄にはご案内の通り、此方の店、201609月末を持ち一時閉店、1008日に徒歩数分の場所に移って新装開店の予定。

もちろん移転後も通うつもりだが、その前に世話になった既存店舗へ敬意を払い、名残を惜しむというのも、酒徒としての常識であり、社会通念であり、ワールド・ヴァリュー（世界基準©️副島隆彦）である事、いうを待たぬ。

と、言うわけで閉店間際の某日、顔を出し、当店名物ジン・トニック・アズ・ユー・ライク（勝手に命名）、そしてチルド・スーパーニッカ・ハイボールをシングルで一杯。

食事は済ませてきたので塩茹での豆を所望し、炭酸のキックを喉に感じつつ酒をジンワリと味わい周りを見回すと、お世話になった、又、よろしくお願いするゼ！ と口の中でつぶやかない、事もない。

再訪201603月】

これだけ頻繁に通っていると飽きてしまいそうなものだが、それでも、何日かごとに書き換えられる黒板の「オススメ料理」を見ると、かならず「はっ」とさせられる。

三陸出身の店主の店では、焼きウニに決めている。

決めているのに理由はない、あったとしても忘れてしまった。

もしあるとすれば、アワビの殻に詰め、蒸したのち冷凍保存されたそれを蒸かしかえすと、生のとろりとした触感こそ消えるが粒はしっかりと形をとどめ、加熱により生臭さは消え去り、全体にほろほろとした触感と旨みのみが残るさまは、いかなる酒精に対しても寛容を見せ、調和し寄り添い、こりゃオトウサンいい調子だネ、とは道理であり、社会通念であり、ワールド・ヴァリュー（世界基準©︎副島隆彦）だから黙っている。

そう思いながら京都で味を占めた氷入りレモンピールなしスーパーニッカ・ハイボールをぐいぐいと使うと、調子もあがり、メートルもあがり（死語　これぞ男子の本懐と、大見栄を切らない、事もない。

再訪201508月】

もはや「息をするように通う」域に達している一軒。

「分かる人にはわかる」限定のスカッチ・チルド・ハイボール、そしてレギュラーなスーパーニッカ・ハイボール、100通りの組み合わせを愉しむ事の出来るジン・トニックなどを片手に、大のオトコが心の底から「好物」と思わずにはいられない御菜の数々を摘んでいると、おぢさんになる、というのも決して悪くない事だと感じさせられる。

今回は新幹線移動前の小一時間でカルイチ兼軽食。

カルイチでは（ボッタルガではなく、乾燥品でもない）ナマのからすみ・（パスタじゃない）スパゲッティ・ポーチド・エッグ乗せに決めている。

決めているのに理由はない、あったとしても忘れてしまった。

もしあるとすれば魚卵と卵黄でコレステロールをグーン！　と上げたところにウヰスキーの酒精がどーん！　とくれば、新幹線の中でぐっすり眠れるから、とは、普段後期チューネン者にはナカナカ許されない悪徳であり、口に出すのがはばかられるから黙っている。

そう思いながら、「期待通り」にふにゃふにゃ領域まで茹で上げられた麺に絡む、こってりと舌にこだわるナマからすみと卵黄の仕事に着目してると、俺、丸亀製麺で温玉のせブッカケ食ってるンじゃないよね、と、錯覚しない、事もない。

再訪201505月】さらに繰り返し再訪続けている冷徹な事実。

なにしろ土曜日休みで日曜日営業、しかも1630時から、というのだから、休みの日ザギンに寄った時、最優先での選択となる事、言うを待たぬ。

週末のザギンではカツサンドに決めている。

決めているのに理由はない、あったとしても忘れてしまった。

もしあるとすれば、ココやココのが、どちらかというとビフォア・アフター・オンザウェイ・包起唔該！　に用いられるのに適切なよう、専らパッケージ・見た目の秀麗さに重きを置いているように拝察されるのに対し、当店のものは肉肉しさ、シズル感満点で、他人に見られることなくひとりガブガブとやるのに適切だから、とは半可通の知ったかぶりのようだから黙っている。

そう思いながら、まずは尿酸結晶排出に効果的なもずくとワカメの茗荷和えを食らい、グレンフィディックのチルド・ハイボールを啜りつつカツの断面に着目していると、これこそゼータクというモノだと、ビンボーくさい充足を覚えない、事もない。


くりかえし再訪時のレビュ201412月】

当店で酒食すると、ニッポンのおぢさんの「本能的嗜好」がどこにあるかが明確に分かる。

フレンチだイタリーだ、コンチネンタルだ鮨だ割烹だ、と気取ったところで、所詮牛乳とコッペパンとカレーシチューの「学校給食」とハンバーグライスとカツ・カレーで塗り固められた「舌の記憶」は、後付けの知識より強固であり、あるタイミングによって強烈に「先祖がえり」を起こす。

だから当店でグラタンだのメンチカツ・サンドだのを頼み、ウヰスキーの水割りやハイボールを嬉々として注文しているオトウサンがたの表情は明るく、屈託がない。

佐々木店主は銀座の古株である。が、開店4年めの若い当店のありようには、今世紀最初に開業した頃の初期のロックフィッシュに通じる空気の愉しさ、オトナのオトコのフリーダムみたいなものを感じる。

そう思いながらスパゲッティ・ナポリタンに思うさま粉チーズをブチまけると、そう、これこそ快楽と思わない、事もない。

再訪201411月】

短期間に再訪複数。

それだけあれこれの具合がいい、という事であろう。

バーフードの時は水割りに決めている。

決めているのに理由はない、あったとしても忘れてしまった。

もしあるとすれば、大昔の小僧時代、上司に連れていかれたスナックの思い出が捨てがたく...などという事も、ない。

とは言え当店のオールド・ボトルとまではいかぬもののチョイ古いデュワーズで作られる水割りは旨い。

そう思いながら、バーでこんなにガブガブ喰ってばかりでいいのかよ、と言いつつ、主人が次々に繰り出すお菜をパクついていると、理想郷とはこんなものかもしれないな、などと感じない、こともない。

登録時201410月】
バーとはチルアウト、内省の場所である一方、社交の場でもある。

時間とシーンを切り取り、自らを投影する舞台である。

だから長居は無用。酒を使い、軽い会話のやり取りを愉しみ、じぶんじしんを見つめるためにある。

従い、酒とともに摘むにしても、箸やカトラリを用いずにすむ乾き物、豆類などが適切であり、本格に腹をくちくしてしまうのは野暮の骨頂...

と、若い時はかたくなに思っていた。

食事の前に寄って一杯、食後のチルアウトに二杯程度、そんな通い方を専らとしていた。

しかし、である。

おぢさんと言われる年齢になると、二軒三軒と河岸を変えることがやや億劫になってくる。

加えて、鮨・西洋旧大陸料理・華菜のフル・コースなどの「ごちそう」に気持ちが向かない夜が増えてくる。

と、いって、ファストフード・立って食うそば・ラーメンギョーザではやりきれない晩も又、めぐってくる事が多くなるのもこの年代。

と、なれば、あれやこれやが一軒で片付き惨めでもない「フードを出すバー」への依存も高まってくるというのが人情であり、社会通念であり、ワールド・ヴァリュー（世界標準）である。

バー・フードは洋食メニュに決めている。

決めているのに理由はない。あったとしても忘れてしまった。

そう決める事自体、それだけ長い事、銀座を、酒場を、漂流している、という証拠なのかもしれない。

そう思いながら氷なしスーパーニッカ・ハイボールで喉を潤し、酔っ払いには嬉しいハーフ・サイズのメンチカツ・サンドなど齧っていると、漢の居場所を見つけたゼ！　という感慨をもたない、事もない。