日本最古のインド料理店と聞けば、訪ねない訳にはいかない。穏やかな辛さのムルギランチは、混ぜる食文化の真骨頂！ : ナイルレストラン

［東京都中央区］
2019/8/4（日）
東銀座（銀座四丁目）にあるインド料理店。
創業1949年、日本最古のインド料理専門店。

場所は… 和光前から晴海通りを歌舞伎座方面へ。
東銀座・三原橋交差点を左折、昭和通りに入ってすぐ左手。
地下鉄東銀座駅（A2出口）から徒歩1分、メトロ銀座駅（和光前）から徒歩5分。火曜定休。
土日も通し営業、21:30まで（日曜は20:30）なので利用しやすい。

今年で70年目を迎えるインド料理界の大老舗。
戦前・戦後の日印関係において大きた役割を果たしたインド人、A・M・ナイル氏による創業。

1階席は 2～4人掛けテーブル×7卓。
2階席を含め、全70席となかなかの大箱。
全席禁煙。小さめのボリュームでインド音楽が流れる。

日曜午後、次々とお客さんが入ってくる。
カップルやファミリー層が多いが、一人でも全く問題ない。
店内はピンクの壁が印象的で、店主の著書やレトルトカレーが多数展示される。

メニューは存在するのだが、席につくなり遠くの方から
「ムルギランチ？」と聞かれるので「はい」と返答。
このあたりは食べログで予習しているので、驚くことなく受け入れる(^-^)

その他の料理を注文したい場合は「メニューを見せて」といえば大丈夫だ。
一部を紹介すると…
〔カレー〕　ムルギランチ、海老、マトン、玉子、キーマ、チキン、野菜
〔ご飯物〕　プラオ（海老・マトン・チキン）
〔コース〕　おまかせコース（8品￥2800）
〔単品〕　　ラサムスープ、ダールスープ、チキンマサラ、チャンナマサラ、ハルワ（デザート）
〔ドリンク〕インド紅茶、マハラジャピルスナー、インドワイン（Sula vineyard）、インドウイスキー

看板商品のムルギランチは、夜でも注文可能。
子供には、辛さを調整できるドライカレーがオススメだという。

インド料理で定番の "ナン" は存在しない。これはインド国内における地域性だと思う。
提供には割と時間が掛かった。作り置きでない証拠であろう。

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■ラッシー（￥650）
なかなか強気な価格設定だが、カレーが激辛だった場合に備えて注文。
ヨーグルトだけでなく、シナモンだろうか、スパイスの香りが感じられる。

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■ムルギランチ（￥1500）
骨付きチキン・茹でキャベツ・マッシュポテトを乗せたインドカレー。
ムルギーとはヒンディー語で「鶏」を意味し、メニューでは "インド風 鶏ランチ" と説明されている。

食卓に届くやいなや、インド人店員さんがチキンの骨を抜いてくれる… ので
それを静止して、一枚だけ写真を撮らせてもらう（このへんも食べログで予習済）

ナイフとフォークで骨を取り去る動きは、まさに熟練の技。
「混ぜれば混ぜるほど美味しい、完璧に混ぜるんだよ～」
太っちょで明るい店員さんが、各卓をまわりながら指導してゆく。

最初はマイルド、後からスパイスの刺激が来るが、
決して激辛ではなく、辛すぎるのが苦手な私には丁度良い。

インド料理は、大雑把にいって北部（辛さ控えめ）と南部（大辛）に大別されると聞く。
ナイル氏は南部の生まれというから、辛口の味に慣れ親しんでいたかと思うが、
まだインド料理が珍しかった日本でレストランを開くにあたり、
日本人の好みに合わせて料理を作ったことは想像に難くない。

マッシュポテトがカレーと絡んで、マイルドな味わいを生み出している。
茹でキャベツの食感と、チキンの塩気がアクセントになる。

鶏もも肉は、岩手の地鶏「いわてっこ」を7時間煮込んだもの。
黄金色のサフランライスも、岩手県産の「いわて純情米」。
最近のインド料理で主流のインディカ米（バスマティライス等）でないところに、老舗ならではの説得力を感じる。

全体的にアツアツでなく、ぬるめなのが気になるが、
酷暑の大地においては、きっとこの方が好まれるのだろう。
確かに私がインドに行ったときも、アツアツの料理は出てこなかった… たぶんそんな気がする。
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最後に、お店のバックグラウンドを紹介しておこう。
ナイル氏は1905（明治38）年生まれ。少年時代から、当時イギリス領だったインドの独立運動に参加。
1928年、兄の紹介により日本の京都帝国大学に留学。

日本陸軍とのつながりを得て、第二次世界大戦がはじまると「インド独立連盟」の事務総長として活躍。
（当時、日本陸軍はインドまでを勢力下に置くことを目指しており、
　英国戦力を削ぐ意味でインド独立運動は都合が良かった）
日本の敗戦後は、日印平和条約の締結にあたり、通訳および顧問として活躍。その後は日印親善に尽力された。

この物語を知って店を訪れると、ただの「本場の味」という以上のものを感じる。
その歴史的価値を考えれば、食べログ百名店に選ばれているのも納得である。


店員さんのアクが強いと聞いて、ちと敬遠していたが（笑）入ってみればこちらのもの。
今度は夜に、マハラジャピルスナーとあわせてカレーを味わってみたい。